これって転生に入りますか?   作:非単一三角形

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 事ある毎にテンプレテンプレ言ってますが、テンプレを軽んじるつもりは全くありません。
 テンプレとは文字・行数を割かずとも読者に情景を伝えられる有難い土壌であり、先人の方々が積み重ねてきた偉大な文化です。



C1-10 お祓い屋?

 

「―――お祓いの依頼を受けて来ました。Eランク冒険者のユズといいます」

 

 

 壁に浮かんだ鬼の顔を祓ってくれ、という実に怪しげな依頼を受注したのは、胡散臭さ漂う自称霊能力者―――ではなく、素朴な印象の少女だった。

 

 見た目の年齢は十二から十四ぐらい、この辺では珍しくはない若草色の長髪を首の後ろで軽く括って背中に垂らしている。

 如何にも長閑な田舎から出てきました、という感じの、人あたりの好さそうな目つき。

 わりと整った顔立ちをしているので、化粧をすれば化けるような気がするね。

 

 装いは如何にも冒険者らしく、関節各部にプロテクター(?)の付いた無地の膝丈ワンピース。

 肩から提げるは大体の冒険者が持っているのと同じ革製の鞄。

 そして腰には細身の剣らしきものを収めた鞘に、加えて革袋が幾つか。

 ……何というか、動きやすさと女の子らしさを両立させた感じですな。

 

 ちょっぴり尻込み気味なのは、主に相対する領主さんのせいだろう。

 まるで砂漠でオアシスを見付けたか如くキラッキラした瞳を向けられていれば、よっぽど自分に自信がない限りは気後れするというものだ。

 

 

 ……しかしマジで凄い食いつきだな。霊能力者ってのを微塵も疑ってる様子が無い。

 ひょっとしてそういう冒険者ってありふれて―――少なくとも『私』は聞いたこともないみたいですね、ハイ。

 

「え、ええと、それで依頼の方は……街の噂で聞いた限りでは、死んだ女性の恨みがこちらの館に取り憑いていると考えられるとのことでしたが……」

「……ええ、大筋はその通りです」

 

 彼女が冒険者として仕入れてきたであろう情報を、領主さんが補完するように説明する。

 この数日ですっかり参ったのか、説明には息子くんが方々で恨みを買っていた事や、ここまでの恨みを向けてくる対象に関しても、噂になった女性以外にも山程の心当たりがある等、今までなら隠していただろうことまで彼女が尋ねる前から彼の口より次々と暴露されていった。

 

 もはや懺悔の体をなしてきた説明を、ユズと名乗った冒険者ちゃんは真剣な顔で聞いていく。

 そうして領主さんが一通り話し終わったらしいところで、部屋の隅に意味深な目を向けて一言。

 

「確かに……今までに経験が無いほどの強力な霊が見えますね」

「おお……では、やはり……」

 

「ですが、今はそれほどの悪意は……既に恨みはほぼ晴らし終えているのではないかと」

 

 うーむ……鋭いのか適当言ってるだけなのかはまだ分からんね。

 実際、他人の恨みを代理で届けてる、つもりなだけで私自身は恨みなんて無いわけだし。

 

 更に言えば、恨みを晴らし終えてるってのもなかなか的確なところだ。

 ……というのも、ここ数日の私は本当に何もしてないのである。

 

 

 壁鬼に関しては動くといっても部屋を移動するようなことはしないので、近付かなきゃ目に入るようなことはないし、視界に入れなきゃ害も無い。

 誰も居ない部屋でただただ静かに笑ってるだけだ。……あれ、そう言っちゃうと十分怖いな。

 

 「返せ返せ」の幻聴についても【夢枕の囁き】は結構前から使ってないので、親子揃って本当の意味での幻聴を聞いているだけ。既に勝手に怖がってるのを見守っているだけの状況なのだ。

 大変美味しゅうございます。『霊力源』的に。

 

「し、しかし、毎夜私どもを苛む声が続いているのですが……」

「……では、こちらをお持ちください。霊の弱い思念であれば遮断できるはずです」

 

 

 そう言って彼女が取り出したのは───如何にもな紋様が描かれた『御札(おふだ)』でした。

 

 ……ここで御札と来るかー。

 教会があって十字架がある所に御札ですかー……和洋折衷っていい言葉だよね、うん。

 

 

 まあまあ、これも霊の定番弱点には違いない。いつものようにレッツ実験だ。

 ありがたそうに領主さんの手に握られた御札をつんつんっとな。

 

 

 はい、指先確認ー。欠け無ーし、痛み無ーし、痺れ無ーし。

 次はバレない程度に掴んでみましょー。……はい、オッケーでーす。

 

 ……ふふふ。まだまだ敗北には遠いようだな。

 

 

「…………ええっと、次は、地下室の鬼の顔、でしたよね?」

「!! は、はいっ、そちらも何とかなりますかッ!?」

 

「ふえっ!? み、見てみないことには何とも……」

 

 ほらほらがっつき過ぎだよ領主さん。

 合コンで引かれる男みたいになってるから。落ち着きたまへ。

 

 

 

 

「―――ふひゃ……っ!」

 

 壁鬼と目が合った瞬間のお祓い屋ちゃんのリアクションがこちら。……やっべ可愛いなこの子。

 ちなみに領主さん以下、館の方々は全員部屋の扉を開ける前から目を逸らしておりました。

 

「ど、どうでしょう……?」

「は、はい、ええと……驚きましたけど、こちらはわたしの手が及ぶ範囲だと思います」

 

 ほほう? なかなか自信ありげね。

 それではお手並み拝見といこうではないか。

 

 

 そんな私の視線を浴びつつ、彼女が徐に取り出したのは先程も見せたような御札が一枚。

 ニヒルな笑みを浮かべる壁鬼にずんずんと近付き、その顔の中央にペタリと叩きつけ───

 

《「……おおっ!?」》

 

 果たして御札を張り付けられた瞬間から、壁鬼の貌は苦しげなものに変化した。

 逃げ出したいとばかりにグニグニ蠢きつつ、端からジワジワ削れるように消えていく。

 

 

 ……オイ、今「アイルビーバック(I will be back)」って言っただろ、口の形で。やめろ、帰ってくんな。

 

 

「あ……あああ……」

 

 消えゆく壁鬼を食い入るように見つめていた領主さん。

 やがて、実に自然な動きで、その場に膝を折り始める。

 

「―――ふえぇっ!?」

 

 振り返った彼女を迎えたのは、領主を含む大人三人の華麗な五体投地であった。

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「―――で、マジで依頼完了してきたわけ?」

「は、はい……」

 

 依頼主から完了のサインを貰って、冒険者ギルドに提出。これにて依頼完了。

 掲示されている他の依頼から察するに、なかなか良い額の報酬を受け取ったようだ。

 ……うん。初めて見る流れの筈なのに何の疑問も無く見守ってたよ。これが固定観念の怖さか。

 

「まさかユズの『不思議ちゃん設定』が役に立つ日が来るとはなあ」

「だからこの子のは設定じゃないって言ったじゃないか私は。ねえ、ユズ?」

「え、あ、は、はい……」

 

 そしてそんな手続きを終えた彼女に声を掛けるは良い体格をした二人の男女。

 大金を受け取った少女に因縁でもつけにきたのかと思ったが、どうやら元から知り合いの様子。

 

「分かった分かったこれからは信じるから……だからちょっと、な?」

「何言ってんだいっ! こいつはユズが一人で稼いできた金だよっ」

 

「わ、分かってるって。けどほら、こないだまでパーティ組んでたよしみで一杯ぐらい……」

 

 ……台詞だけ聞くと少女に集るクズ男だが、本気で言っている風ではないかな。

 周囲の冒険者やギルド職員も何も言わないし、この程度の軽口が許される仲ではあるらしい。

 

 女性の方もそれは分かっているらしく半笑いで窘めていたが……恐らくその両方が予想だにしていなかった一言を放ったのは、当の少女。

 

 

「い、良いですよっ。ここに居るみんなで飲みましょうっ!」

 

「え……ちょ、ちょっとユズ?」

「マジでっ!? 良いのか!?」

 

 

 その宣言にざわざわっと反応したのは、併設された酒場にたむろしていた多数の冒険者達。

 彼女がこんな事を言い出すのは相当珍しいのだろう。先の女性が困惑気味に問いを重ねた。

 

「……本当に良いのかい? Eランクのあんたがそんなに稼げることなんて滅多にないだろ?」

「い、いえその、本当に偶然というか……泡銭みたいなものですし、この方が良いかなと……」

 

 小さく潜めて「変な嫉妬を買うよりは」と呟いた少女に、女性が額に手を当て溜息を吐く。

 手にした金袋が殆どそのまま酒場の店員の手に渡った瞬間、周囲から盛大な歓声が上がった。

 

「……あんたら、ちょっとは加減してやんなよっ!」

「「「おうっ!!」」」

 

 口々に酒の追加を注文し始める冒険者達に、半ば諦め混じりに一喝する女性。

 当の少女はと言えば、そんな彼らに笑顔で迎えられながらもどこか緊張に染まった表情で、その盛り上がりの中に身を投じるのだった。

 

 

 

 

「―――周りといざこざを作らないように立ち回るってのも悪くはないよ。特にあんたは特定のパーティを組んでるわけじゃないもんねえ」

 

 宴もたけなわ。ようやく何人かが酔いつぶれて静かになってきた頃。

 いつしか隅でゆっくりと杯を傾けていた少女の隣に、大杯を抱えた先の女性が腰を下ろす。

 

 そういえばこの世界、未成年者の飲酒に関する法律は……ああ、やっぱり無いのか、『私』。

 道理で明らかに未成年───この世界基準だと十五歳未満───な彼女でも、しっかり酒に口を付けてるわけだよ。流石に度数は低いみたいだけど。

 

「その……わたしは元々そこまでお金が欲しくて冒険者をしているわけでもないですから」

「ああ、前に昇級の方が重要って言ってたっけね。……師匠からの言いつけなんだって?」

 

「はい。少なくともCランク以上にならないと会うのは難しい、と」

「厳しい師匠だねえ。まあユズには魔法があるし、まったく無茶ってこともないか」

 

 ……ふむ? 魔法の才能の有無が冒険者のランクに影響あるのか。

 まあそうでもなきゃこんな何処にでも居そうな女の子、な彼女が周りで酔い潰れてる筋骨隆々の冒険者達に混じっていられるわけもないし、そりゃそうか。

 

「すると今回は領主様が依頼主だったし、一気に昇級が見えてきたんじゃないかい?」

「はい……あ、で、でも達成できたのは本当に偶然でしたから……っ」

 

 ……謙遜なのか、本当に自信があって受注したわけじゃなかったのか。

 実際に壁鬼に通用する御札を持ってたわけだし、全く偶然ってこともなかろうに。

 

 しかし、さっき話題に出てきた師匠ってのは魔法の師匠なのか、はたまた───

 

 

「偶然ったって……いったい何をしたんだい?」

「え、ええっと……その、確かに幽霊さんは居たんですけど……お、お願いしたらすぐに何処かに行ってくれたので……」

 

 んー…………これも嘘は言ってないな。実際私こっちに来てるし。

 私がもう何もしてないのに勝手に悪夢を見てた領主さんも、御札を握って「これで大丈夫」と思ってれば多分大丈夫だろう。プラシーボ効果ってやつだ。

 

「噂になってた鬼の顔ってやつは?」

「え、あ……ぬ、布で擦ったらすぐ消えました。やっぱりただの染みでしたよっ」

 

 布(御札)で擦ったらすぐ消えたね、うん。

 もっとテキトーに誤魔化したって良いだろうに、正直な子だなーほんと。

 

「そっか……噂なんて当てになんないもんだねえ」

「そ、そうですね……」

 

 

 

 

 その後、酔い潰れた人間をその友人が背負い、酒場の前で解散する冒険者達。

 少女もそんな一団の中に混じり、取り留めもない話をしながら宿に向かっていく。

 

 街に滞在する冒険者御用達の宿だそうで、入っていく冒険者の数はかなり多い。

 特に割と最近まで街全体が、来る者拒まず去る者許さねぇ、な状況だったこともあり、街の宿は現在何処も満席な模様。

 

 

 そのまま彼女は宿の自室に入り、しっかりと扉を閉める。

 すう、はあと深呼吸をして、ぐっと顔を上げて。

 

 

 そうして意を決したように―――()()()()()()()()()()()口を開いた。

 

 

 

 

「あ、貴方は……女神様の眷属ですか? それとも……め、女神様ご本人ですかっ!?」

 

 

 

 

 …………ウェイト(wait)ホワイ(why)

 





 【テンプレ】冒険者ランク制【バンザイ】

 土台の上に藁が建つか、レンガが建つかは書き手次第。
 せめて狼のひと吹きで飛ばされないモノを拵えたいところです。
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