これって転生に入りますか?   作:非単一三角形

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 現地人との本格的交流回。11話にもなってようやくですぜ。



C1-11 ワット アム アイ……?

 

 …………えーと、ね。

 確信はあったんだよ? 割と早い段階で。

 

 冒険者兼お祓い屋な彼女―――ユズちゃんには、私の姿が見えているって。

 

 

 具体的には、領主さんの手に渡った御札で実験した時だね。

 あの瞬間「!?」な顔で私を凝視してたからね、この子。何とか取り繕ってたけど。

 

 その時点で彼女が霊能力者……もしくはそれに準じる何某かであることは分かっていた。

 そんでもってそういう人間が、大体向こうの世界のそれと同じような扱いという事も、その後の冒険者達とのやりとりで確認しました。

 不思議ちゃん扱いってなんかリアルで辛いなー。あの人達はフレンドリーだったけど。

 

 

 まあ、それはそれとして……何故にこの子は私を神 オア(or) 神の眷属扱いしてるんですかね。

 とんでもねえ、わたしゃ幽霊だよ。と、冗談はさておき、この子の中でいったい何があったし。

 

 

《私のどこらへんを見て神様系列の何かだと思ったの?》

「え……違うんですか……?」

 

 違うよ? 全然違うよ? 何でそんなショック受けてるの?

 

「だ、だって……わたしにしか見えてないし()()()()()()()()()()ますし……つい先日、女神様が奇跡を起こした街だって聞いてましたから……」

 

 オウ(Oh)ウェイト(wait)っ!? 何で? 幽霊と明らかに違うナンデ!?

 

 ―――あ、でも足あるな私。肌も青白くない、そして白無垢でもない。

 そう考えると定番設定からは割と外れてる? いや、それでも神様よりかは幽霊寄りじゃね?

 

「御札を平気で触ってましたし、霊障も、血色も……神様じゃないなら、何なんですか?」

《何なんですかと聞かれても……幽霊のつもりなんだけど……?》

 

 何か自信なくなってきたでござる。

 

「…………その、死んでからどのぐらい経ってますか?」

《ひと月……あれ、もうふた月ぐらい経ったかな?》

 

「普通の幽霊は死んでから一週間も経つと形が無くなっちゃいますよ?」

 

 うん。それは知ってる。

 ……というか、やっぱそれが幽霊の標準なのか。

 

「それにたとえ死んだ直後だったとしても、そこまでハッキリ姿が残ってる幽霊なんて、わたしは今まで見たことも無いです」

 

 

 …………そっかあ。

 

 あれぇ、私ひょっとして幽霊じゃないのか?

 まあ、よくよく考えると色々と怪しいところがあるにはあるんよね。

 

 

 今世の『私』こと、ヤーネ=スペクハイド嬢は死んで、その場に私が残った。

 転生の形式がいわゆる『憑依転生』だったとしたら、その構図にも頷けなくはないんだけど……そんなリクエストをした覚えは無いのよ、私。

 

 ―――今の年齢近くで前世の記憶覚醒、って感じで。

 

 これが転生したあの時、私が神様に伝えた内容だ。

 即ち今世の『(ヤーネ)』=前世の(雨巫)。同一の魂だとか、そんな感じの何某だった筈なんよ。

 ……さてそうなると、無視出来ない疑問が生まれてくる。

 

 

 果たして本当に私は幽霊なのだろうか?

 そして幽霊だとしたなら―――いったい()()幽霊なのだろうか、と。

 

 

《……死んだ人間って、みんな必ず幽霊になるの?》

「え……? いえ、多分死ぬ前に強い未練があった人だけだと……思います」

 

 察するに、死んだけど幽霊にならなかった人を見たことがあると。

 そしてその境界線となるのが、死の直前に未練……強い感情を抱いたか否か。

 

 ……ヤーネ嬢の死に際に関しては、幽霊になるだけの未練があったとしても不思議ではない。

 しかし実際には、私に記憶だけを残して彼女は逝ったらしいわけで。

 そしてその瞬間の私はといえば、未だ記憶覚醒前……前世の享年が十六ですけん、十二歳だった『私』が『思い出す』までには後四年の歳月が必要だったことになりますな。

 

 さてさてそうなると……私が幽霊になったのはいったい()()未練によるものなんだろうなー? これまた疑問が増えちゃったぞー?

 『私』が死んだあの瞬間まで意識も無かったのに、未練なんて抱けるわけが───

 

 

 ……ん? あれ? ちょっと待てよ?

 

 

《ねえ、幽霊って……他の幽霊の記憶を貰えるものなの?》

「…………ハイ?」

 

 え、何言ってるんですか? ってな反応だね。

 少なくとも彼女はそんな能力を持った幽霊なんて、見たことも聞いたことも無い、と。

 

 

 ―――記憶を貰って、幽霊を成仏させるのが私固有の力だと仮定したならば。

 

 死んでから時間が経つほど記憶が消える幽霊。

 ヤーネ嬢は死んだ瞬間私に触れ、全ての記憶を遺して逝った、ということで説明がつくか?

 ……どっちにしても、私が幽霊か否かとは別問題だが。

 

 幽霊っぽい能力は色々と持っている。

 特に私自身には効かなかった御札だが、私が作った壁鬼にはしっかり効いた。

 つまり私の能力が幽霊的なものであるということは確実というわけで―――

 

 

「え……? あの顔も貴方が作ったものだったんですかっ!?」

 

 

 オウ(Oh)、そもそもそこが繋がってなかったのね。

 

 

 

 

 ―――何を話すにも互いに認識の齟齬が多過ぎる。

 

 彼女が知る一般(?)幽霊と、幽霊(?)な私の違いを把握せんと話が進みやしねえ。

 そんなわけで、まずは私の方から質問させてくれ、という頼みを彼女は了承してくれた。

 

 

 Q. 軽い物なら動かしたり持ち運べたりするよ。

 A. まあ、よくあることですね。

 

 Q. 水面に、人に見える顔を作ったことあるよ。

 A. あー……何かしらが映る物に、というのは見たことがありますね。

 

 Q. 壁や床に黒い染みを作れます。顔の形にしたら動き出しました。壁鬼はそれです。

 A. そうだったんですね。あの表情もあなたが?

 Q. いえ、勝手に動いてました。突然動き出したときはめっちゃビビリました。

 A. えぇ……。

 

 

 Q. 他の幽霊や人間に触ると記憶や感情が入ってくるんだけど。

 A. なにそれこわい。……憑依とは違うんですよね?

 Q. 憑依?

 A. 昔、悪霊に憑依されかけたことが……そのときは頑張って抵抗しましたけど。

 Q. 抵抗できるもんなんだ。試して良い?

 A. 抗える気がしないので止めてください。あの恐怖は二度と味わいたくないです。

 

 Q. そんなに怖がらなくても……。

 A. 今まで見てきた幽霊とは比べ物にならない強さを感じるんです。輪郭にぶれが無いどころか足まであって、殆ど透けてすらいないなんて……。

 Q. 幽霊の強さはそのあたりで判断出来るってこと?

 A. 大体は。形がどの程度残っているか、どのぐらいはっきり見えるかが判断材料になります。

 

 

 A. ……それにしても、領主さん達に憑依してたわけでは無いんですね。

 Q. そうだけど、何で?

 A. 死んでから時間が経っても形を残していた霊は、いずれも何かに憑依していたんです。私が過去に見たものだと、ネズミとかですね。

 

 Q. あー……そういう感じで空腹を乗り切ってたんかな?

 A. …………空腹?

 Q. 空腹感っぽいからそう呼んでるんだけどね。力を使ってるとだんだん感じるようになって、次第に力も使えなくなっていく。まあ、私はそんなに放置したことないから、そこから『型崩れ』起こしていくのかどうかは分からんけど。

 A:型崩れ……。

 

 

 Q. 驚かせたり怒らせたりして、私……の起こした現象、かな? に感情を向けさせると、その空腹感(仮)が解消されるんで、私はそうやって現状維持してました。

 A. ……以前、愉快犯のようなことをしている幽霊を見たことがあります。そのときはいったい何の為にと不思議に思ってましたが……。

 Q. さもありなん。気付けたなら憑依よりはずっとハードル低そうよね。

 

 

 Q. 他の幽霊ってどんな能力持ってた? 私にも出来るか試してみたいんだけど。

 A. 何が出来るか分からないものなんですか?

 Q. ……逆に聞くけど、人間って自分が持つ能力というのが分かるもんだったかい?

 A. え……大きな街の『鑑定石』を使えば、所持『スキル』の形で……。

 Q. おぉう、テンプレェ……で、それは幽霊にも使えるものなのかね。

 A. あっ。

 

 

 A. ……え、ええと、わたしにだけ見える、青い火の玉を出していた幽霊がいましたっ。

 Q. 人魂か鬼火ってとこか……こうかな?

 

 

 

 

「―――確かに、何に一番近いかと言われたら……幽霊、ですね」

 

 いまひとつ、いまひと~つ納得出来てない、という表情を浮かべる彼女。

 彼女の中での幽霊の定義から、未だ私はだいぶ遠いらしい。そんなこと言われてもなー。

 

 

 例によって例の如く、やってみたら出せちゃった熱の無い青白い炎―――命名【鬼火】―――を傍らにふわふわと浮かべつつ、今しがた貰った情報について考える。

 心躍るのは『鑑定石』とか『スキル』って単語だね。スキル制だったんだね、この世界。

 

 いや、『私』の知識にもその辺の情報はあったんだけど、冒険者志望でもない限りは子供の頃に調べてそれっきりらしいんだよね。

 魔法とかの特別な才能(スキル)があったら、それを基に人生設計することもあるけど、そうでもなければ特に気にすることなく生きていくんだとか。

 鑑定するにも一回いくらの形で都度お金取られるらしいし。

 

 

 憑依? については被験者は断られたけど、彼女の知る限りは幽霊に触られたら即発動って感じではなく、また気をしっかり持ってれば防げるらしい。

 ……となると、記憶を貰うあの現象が憑依に分類されるのかは現状不明だな。

 

 そして話の途中で思いついたんだけども、あの空腹感(仮)の先にあるのが型崩れ、というのは割と有力説なのではなかろうか。

 さらに言えば、何かしらに憑依することでも防げるっぽい気配。

 

 ……ただ、ハードル高いよね。死んだばかりなら倫理観も残ってるだろうし、他人に憑依しようとはなかなか思わないだろう。私にもその発想は無かった。

 彼女が会った先輩幽霊氏も、そうして追い詰められた末のネズミ憑依だったんじゃなかろうか。

 

 

 それから心霊スポット作って自堕落生活してた先達が居たらしいね。

 これまでに判明した延命(?)手段の中では、気付きさえすれば一番楽だからなー。

 

 ただ、続けて聞くと、この先達氏は既に祓われてるそうだ。目の前の彼女に。

 今回のような依頼を受けて向かった廃屋でのことらしく、更に私のような会話の通じる相手ではなかったどころか、人の形が残った霊でもなかったらしい。

 

 多分、驚かせて空腹解消にまで気付いたは良いが、それに固執し過ぎて人が寄り付かなくなり、やがてそれに関する部分以外の記憶が欠落していったのではなかろうか。

 だとしたら祓ってもらえてむしろ良かったんじゃないかな。私が判断することでもないけども。

 

 

「……えっと、今度はわたしから質問して良いですか?」

《ん? ああ、そりゃもちろん》

 

 こっちからは散々聞いたわけだし、ばっち来いですよ。

 

「貴方は……その、どのような御身分の方だったんでしょうか?」

《どのような、って―――》

 

 見ての通りの学生です―――と答えようとして、はたと気付いた。

 そういや私、向こうの世界の制服(冬服)姿だったではないか。

 

 すなわち彼女にとっては全く世界観を異にする恰好。職業も何もサッパリ推測不能。

 しかしだからといって、あなたの知らない世界で学生してました、とは言えないし―――

 

《ご、ごく普通の一般人でしたよ?》

「えぇ…………?」

 

 ……やっべぇ、自分には散々答えさせといて、いざこっちから質問したらはぐらかされた、的な顔していらっしゃる。

 こっちとしては嘘は全くついてないんだけども、心が痛いよお。

 

「……え、えっと、じゃあ……どうしてあの屋敷からわたしについてきていたんですか?」

《あー……出来ればこの先あなたに同行させてもらえないかなー……なんて》

 

「…………えっ」

 

 聞かれて、私の口からポロリとこぼれたその言葉に、彼女は目を見開いた。

 ……いやいやそう驚かんでくれ。こう見えて私も割と切実なんよ?

 

 これは今言われて気付いたことだが、私ってばこの世界では相当珍しい恰好をしていたわけだ。

 そのことにずっと気付かなかった要因はといえば、これまで見咎められたことが無かったから。

 

 それなりに大きなこの街で盗み聞きに精を出している間、視線を感じたことが一度もない。

 それ即ち私が見える人間というのはこの世界でも凄まじく珍しいということになるわけで。

 

 

 折角の異世界ライフ。独りさびしく漂うよりは、超檄レアな『見える人』に同行したい。

 それが私の、茶化しも誤魔化しもできない本音。

 ……勿論、悪霊する気は無いんで、どうしても嫌と言われたら諦めるつもりだけど―――

 

 

《……ダメ? 私、役に立つよ? 自分で言うのもなんだけど、超便利だよ?》

「え、あ、あの―――」

 

《危険な場所の偵察とか、密談の盗聴とかやり放題よ?》

「あ……」

 

《宿代とか食事代もかからないし、報酬の山分けも不要よ?》

「……!」

 

 

 うむ、揺れておる。……始めは「えっ、憑いてくるの……?」って顔してたけど。

 いやいや私、お役に立ちまっせ。

 超の付く特殊技能てんこ盛りの、人件費の要らない新入社員という、超有望株でっせ。

 雇う側に『霊感体質』必須とかいうクッソ厳しい条件さえクリアできていればな!

 

 

「…………」

 

 

 彼女は暫し無言で、顔色をくるくると変えつつ思案に沈んだ。

 私は合格発表を待つ受験生の気持ちでそれを見守り結果を待つ。

 

「……一つ、聞かせてもらえますか?」

《おう、何でも聞いとくれい》

 

「その…………貴方の名前は?」

 

 うっぷす(Oops)、未記名だったわ。……受験だったら即落とされてたわ。危ねぇ。

 

 

 しかし…………名前か。

 

 前世の名前『糸々山(いとやま)雨巫(あまみ)』は……正直、転生した時におさらばしたつもりだった。

 心機一転、新しい私で生きていこうと思ってました。……生きられなかったけど。

 

 そして今世は『私』こと『ヤーネ=スペクハイド』なわけだが……私と『私』は別人だよなあ。

 在りし日の『私』を知ってる人間に彼女が遭遇したりとかで、面倒な事になる可能性も無いとは言い切れないし。

 

 

 それに何よりも―――前世の名前は今ひとつ世界観に合わん!

 

 ……いやいや全くのジョークってわけじゃないのよ? こう、異物感というか……これから先、目の前の彼女に呼んでもらう名前と考えると、ね?

 郷に入っては郷に従え精神というか……折角だからこの世界に馴染んでいきたいかなってさ。

 

 というわけでこっちの人達の名前と並べて違和感無さそうな名前を……んー……。

 

 

 ―――雨巫……雨……レイン(rain)

 

 

《レイン……って呼んでくれる?》

「レイン、ですか。……分かりました」

 

 その返答と共に彼女───ユズちゃんは若干寄せられていた眉を緩めて笑ってくれた。

 瞬間、詰まっていた息が喉から漏れて、私も実は緊張していたんだなと、笑いが込み上げる。

 

 

「それじゃ、これからよろしくお願いしますね、レイン」

《こちらこそよろしくね、ユズちゃん》

 

 

 祝、当選。……何か違う?

 何にせよ、これでようやく私にも旅の道連れが出来たというものだ。

 

 

 ―――私はレイン。

 

 出生出所、共に不明の幽霊(暫定)。

 そしてこれからは冒険者兼霊能力者ユズちゃんの相棒。それでいいじゃないか。

 

 

 とんでもないスタートを切った私の異世界ライフ……ライフ(life)

 まあとにかく、諦めなければなんとかなるもんだねぇ。

 

 

 

 

「……でも、幽霊に売り込みされる日が来るとは夢にも思ってませんでした」

 

 せやろな。

 





 What am I. …… Am I a Ghost? ─── I am a "Ghost(?)"!

 というわけで霊能力者ユズちゃんは本作のメインキャラその二です。
 前話にて突如外見に言及があったことから予想していた方もおられたのでは。

 これでようやく延々と独り言を垂れ流す系主人公を脱却出来ます。
 それを避けたいが為に生まれたのが前作の設定でしたからねえ。


 主人公の正体(?)についても一応の答えは用意してあります。
 作中で詳細が明かされるのがいつになるかは現状未定ですが。

 幽霊じゃないのかって? ……さてはて。




※本作のジャンルはコメディです。ご心配なく。
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