これって転生に入りますか?   作:非単一三角形

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 ちょいと短いですが本章はここまで。
 また前話から作中時間が結構飛んでます。



C2-10 古よりの宝物

 

 ───軽く息を吸い込む音と、次いで一瞬の風切り音。

 キィ、とも、キュ、ともつかない鳴き声と共に、足元へポタリと落ちてくる二つの物体。

 『ルーモスバット』とか呼ばれる、蝙蝠型のモンスター……らしい。

 

 モンスターとしての番付は堂々の最下級。理由はまあ、弱いからだ。

 一応吸血用の牙はあるが、素肌にでも食いつかれない限りは怪我をすることもなく、そして仮に噛み付かれたとしても吸われる量は高が知れている。

 

 更にその体は余程非力な人間でもなければ一撃で倒せるというほどに脆弱。

 しかしここまでの低スペックモンスターでありながら、冒険者を含む一部の人種から憎まれる、というほどではないものの、苦々しく思われているというのが面白いところ。

 

 

 その理由はこのモンスターの習性にある。

 暗い場所、とりわけ洞窟や遺跡というやつにはほぼほぼ確実に生息し、そういう場所を進むのに必須となるだろう光源に対し殺到してくるのだ。

 

 すると大体は松明か何かで塞がっている方の手に向かってくるわけで、残る片手で叩き落そうとすると、その小さな体がなかなかに厄介となる。

 それなりの心得を持ち、落ち着いて迎撃すればどうということもないわけだが、狭く暗い場所を探索している時にひっきりなしに襲ってくるとなれば、その評価もさもありなんといったところ。

 

 

 さて、そんな『面倒なやつ』を苦も無く切り落としたるは我らがユズちゃん。

 細剣の一振りで、壁に止まっているところを狙いすまして一閃です。

 ……襲ってくるんじゃ無いのかって? ()()()()()()()()ね。

 

《いやぁ、こういう場所の探検は他の冒険者が居ない方が楽で良いよねえ》

「……それもどうかと思うんですけどね」

 

 ()()()()で照らされた横顔に、いつも通り悩まし気な表情を浮かべるユズちゃん。

 悩みの多い子だなあ、と呟きつつ【鬼火】を浮かばせながら()()()いきますは私。

 

 彼女にのみ見える光源となることを利用した『無灯火行軍(無灯火とは言ってない)』。

 先日は御札を燃やすことで、演出としての火にもなれると見せつけてくれた【鬼火】氏ですが、先に思い付いたのはこちらの用途となっております。

 

 暗所の探索をする場合、これが意外と便利なんよ。少なくとも夜目がきく相手に手にした光源を一方的に発見される心配が無い。

 勿論、私達だけで行動しているとき、という制限が付いちゃうけどね。

 

 

《それにしても蝙蝠の癖に光に頼るなよ。音使えよ、音》

「音……?」

 

 おや、反響定位(エコロケーション)は、この世界では一般的な知識ではない模様。

 まあ、元々集光性をもっていた、もしくはそうして探索する人間が立ち入ることで、光の近くに獲物がいる、という擦り込みが行なわれたかのどっちかだろうけどね。

 

 

 ―――さて、そんな蝙蝠モンスターに襲われる此処はどこなのか?

 お前らいったい何処でなにしてるのかって?

 

 

 現在地を一言で表すならば、遺跡です。

 二言にすれば、()()()()()、が枕についた遺跡でございます。

 

 時は盗賊退治の依頼を終えて街に戻ってから更に数日というところ。

 さてさて、何故に私達はそんな場所をほっつき歩いているのでしょうか。

 

 当然何の当てもなく突然発見したわけではありません。出来るわけもありません。

 ……あ、いや私があっちこっち飛び回れば不可能ではない? いや、やらんけど。

 

 

《…………あ、そこ落とし穴があるみたい。あとその右の壁に触ると槍出てくるってさ》

「うわあ……相変わらず容赦の無い」

 

 鬼火の明かりを頼りに、じっくりと石床、石壁を眺め眇めて罠を回避していくユズちゃん。

 たまに壁の中へ顔突っ込んで罠チェックしつつ、『記憶』を基にナビゲートするは私。

 

 ……そうです。『記憶』によって見付けた遺跡なのですよ、此処は。

 

 

 

 

 ―――あの遺跡で私の中に入ってきた、古の女王様の記憶。

 

 そこには当時の建造物、現在でいう遺跡の所在地に関する記録も当然ながら含まれております。

 そこで街で仕入れられる情報とある程度突き合わせて、まだ発見されていない、かつあの墓所のように地下方向に伸びた建造物を当たってみたわけですよ。

 

 一件目は入り口ががっつり土砂の下。

 二件目は事前に情報が見つからなかったけど踏破済み。まあ、そんなこともあるよね。

 続く三件目で引き当てたのが此処だった。記憶に曰く、女王様当人のお墓らしいですよ。

 

 

 ……え、女王様の墓はあそこじゃないのかって?

 いや、あそこは『災い』を封じる為に選んだ場所だからね。

 一応、高貴な身分の人間が入れられる墓ではあったらしいけど、為政者が入る墓は基本別に作るものだったんだってさ。

 

 ……前回の遺跡をピラミッド的なアレだと思ってたが、むしろこっちこそが本物だったか。

 しかし、世界が違えど人間が作る文明ならそれなりに似通ってくるものなのかねえ?

 

 

《……あ、ストップ。開けた瞬間色々飛び出してくる扉みたい。ちょっと裏廻って動かないように細工してくるべ》

「……どうしてこう、やたらとお墓の防衛機能を充実させてるんでしょう?」

 

 そこはほら、そういう文化だからとしか言い様がない。

 あといわゆる盗掘狙いの賊が後を絶たなかったからとか。

 現代の感覚からしたら、そもそも墓に価値あるもの入れるのやめなよ、と言いたくなるけども。

 

 

「……ところで、目的は副葬品、なんですよね?」

《まあね。……女王様の記憶だけじゃ今に至るまでに盗掘されてないかどうかは分かんないけど、この具合だとそのまま残ってる可能性は高いと思うよ》

 

 壁抜けしてチェックしてきた罠の大部分が現役稼働してたし、ここまで誰かが入り込んだ形跡も見当たらないので、経年劣化を免れられるものならそのまま残ってるんじゃなかろうか。

 具体的には宝石、貴金属類に、当時の技術で作られた特別な武具あたり。

 中には考古学的見地から価値のある物もあるだろうけど、その辺はまあ私達には、ね。

 

「この遺跡については公開するんですか?」

《……ユズちゃんがそうしたいなら? でも公開するとなると色々面倒臭くない?》

 

「それは、まあ……」

《それにそうしちゃうと、ここで拾った物を独り占め出来なくなるだろうし》

 

「……っ」

 

 独り占め、という言い方が不味かったか、ちょっと眉を寄せるユズちゃん。

 まあ、この真面目っ子さんならそういう反応になるとは思ってたけど。

 いやいやしかし、今回の私には錦の旗があるのだよ。

 

《収められてるのは元々女王様の持ち物なわけで、その女王様の三千年越しの悲願を叶えてあげた私達こそが受け取るべきだと思わない?》

「そ、それは……」

 

 女王様の言葉を伝えることが出来たのは、偶々私達二人があの場に居合わせたからだ。

 他の人間では女王様の言葉は聞こえず、また仮に聞こえたとしても言語の壁に阻まれる。

 ……そうなれば、近日中に女王様の危惧した通りの惨劇が発生したことは想像に難くない。

 

 すなわち私達は今回さりげなくもこの辺り一帯の街々を、ひいてはそこに暮らす数万という命を救ったことになる。となれば、それなりの『旨味』を要求したところで、バチは当たるまいて。

 

《苦労した人間にはそれ相応の報酬が与えられるべき。でも称えてくれる相手がいないので報酬は自分達の手で貰っていきます。……何かおかしい?》

「…………むぅ。良い、のかなぁ……」

 

 私の物は結局ユズちゃんの物になるんだけどね。どんな物があったとしても持てないし、私。

 そのユズちゃんにしたって今回は本当に危ない橋をひーこら言いながら渡ったわけなんだから、堂々と受け取る権利を主張していいのだよ。

 

 ―――という見解を伝えたところ、彼女はむしろ今までより難しい顔で頭を抱えてしまった。

 何故だ。解せぬ。

 

 

「本当にレインは……我が道突き進むというかなんというか……」

《幽霊が人の顔色を窺ってどーするよ》

 

「…………ええ、まあ、分かりました。わたしも今回は納得しておきます」

 

 そうして遠い目で「大変な目に遭ったのは事実ですし……」と彼女は呟いた。

 その調子で、貰える物は貰う、ぐらいの気概を持ってくれたらいいんだけどねえ。

 

 

「……ところで、また別の『災い』を見つけちゃったりしないですよね?」

《ないない。……あ、次、天井落ちてくるから、部屋入ったら一旦バックね》

 

「ひぃっ!? だからどうしてこう……」

《そんでその先の落とし穴、右から二番目が順路ね。他は全部剣山、一見順路に見える通路の先は致死性盛り盛りの混合毒ガス部屋だってさ》

 

「……こういう場所、建築途中にも山ほど死傷者出てそうですよね……」

《殺意高いよねー》

 

 

 そもそも下手に公開したらしたで死屍累々だと思うんだよね、この遺跡。

 私達以外の誰が宝に辿り着けるんだっていう。……いや、わりとマジで。

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「―――納得する、と言った心が挫けそうなんですが?」

 

 制作を指示した人間の記憶+幽霊ボディという二重チートを活用し、デストラップ塗れの(殺意しか感じられない)遺跡を突き進むこと数時間。

 目の前に積み上げられた財宝を前に、三度頭を抱えるユズちゃんの姿がありましたとさ。

 

《冒険者が宝を前にしたんだから、もっと喜びなよー。ほら、これとか凄くない?》

「すごいですよ。すごすぎるんですよ。……これなんか純金ですよね、きっと」

 

 煌びやかな首飾り(純金と宝石の塊)を摘み上げ、やけっぱちにそう呟くユズちゃん。

 ……うん、まあ、現実問題としてこんなんこっそり換金なんてまず無理だよね。

 どんだけ悪い人間に襲われるか分かったもんじゃないよね。寧ろ死ぬまで襲われるよね。

 

「首飾りの形した処刑器具だな、ハハッ」

《確かに首もげそうだけども。そしてキャラ変わってます戻ってきてくださいユズさん》

 

 明後日の方向に目を据わらせ、乾いた笑いを浮かべるやさぐれユズさん爆誕。

 ちょっとぐらい図太くなってほしいとは言ったけど、そっち行っちゃらめぇ。

 

《まあ、この辺の美術的な装飾品については後にするとして……思った通り当時のまま残されてることは確認出来たし、お目当ての実用的な副葬品の方を確認しましょうよ、ユズさんや》

「…………分かりました」

 

 若干やさぐれ感を背中に残したまま、彼女が向かっていくは傍らに佇む豪奢な棺。

 ……女王様が別の場所で潜んだ状態で死んじゃったから、副葬品だけが中に残ってるんだよね。

 

 そして、その品目についても頂いた記憶の中にバッチリ残ってます。

 女王様当人がそこまで? と思うかもしれませんが、当時の人々にとっての副葬品というのは、そこに葬られる人間が死後の世界に持っていく物、という扱いだったようなので。

 そりゃあ、未知の地へと旅立つ際の荷物を自分で確認しない人間はいませんわな。

 

 当の女王様は私に触れて成仏(?)しちゃったので、彼ら副葬品は持ち主を喪ったとも言える。

 それを私達が持っていく分には、女王様も気を悪くはなさらんでしょ。たぶん。

 

「……本当に大丈夫ですかね?」

《大丈夫だってば。それに、ほら…………必要だと思ったし、さ》

 

「……レイン?」

 

 あ、やっべ、ちょい本音漏れた?

 ……ええい、そんな目で見ないでくれ。こういう空気は私にゃ似合わんのだよ。

 

 

 ―――女王様の記憶を頼りに役に立ちそうな……特に戦力面に寄与してくれそうなものを探す。

 そうすることで、可能な限りユズちゃんの生存率を上げたい―――彼女を納得させるべく色々と理屈を捏ね回したけど、私の本音はそこにある。

 

 既に彼女は冒険者としてそこそこ、それこそあっさりやられはしない程度の位置には居るけど、可能ならもっともっと強くなっていて欲しいんだ。……ひとえに、死んじゃわない為にさ。

 

 幽霊が何を、と思われるだろうけど……今の私には何人もの死んだ人間の記憶があるわけだよ。

 今世の『私』に、この世界で会った二人、今回の女王様―――彼女達が抱いた死ぬ寸前の記憶、死に至る瞬間の感情を、私は知ってしまったんだ。

 

 

 …………きついんだよ、あれ。

 

 

 少なくとも、見知った人間に同じ思いを味わって欲しくない、と思うぐらいには。

 絶望と諦念の中で死んだ『私』は勿論、女王様のような覚悟の上の()()であっても。

 

 だからこそ、私の全力全精力全霊能力をもってでも遠ざけてやる。そう決めたんだよ、私は。

 

 

「…………分かりました。そういうことなら、わたしも腹を括りますよ、レイン?」

《……むぅ》

 

 生暖かい視線に、堪らずそっぽを向いてしまった。

 ……だから言いたくなかったんよぉ。こんなの私のキャラじゃないんよぉ。

 

 

 …………もし、万が一、私達の努力の甲斐も無く『()()』なってしまったとしたら。

 そのときは、まあ……私が即座に彼女の苦しみを止めてあげることになるのだろう。

 幸か不幸か、それが出来る能力が私にはあるみたいだし。……考えたくもないけどさ。

 

 

 それはそれとして何に由来する力なんだか、未だにさっぱり分かんないんだけどもね。

 何で幽霊が幽霊成仏させてるんや。いや本当に。

 

 

 

 

「―――で、レインが言ってたのって……これ、ですよね……?」

 

 そう言ったユズちゃんが棺から取り上げたのは、その腕ぐらいの長さの金属製の短杖。

 杖全体は暮れの夕日を思わせる深い朱色の金属で形成され、先端には深緑に輝く大粒の宝石。

 ……おお、こうして見るとユズちゃんの瞳の色にそっくりやな。

 

 膂力は見た目相応な彼女が片手で軽く持っていることから、重さは言うに及ばず。

 全体にそれっぽい装飾―――私に魔法に関する知識がゼロなのでそう見えるが、女王様の記憶に曰く、持ち主を補助する魔法陣的な云々―――が精緻に彫り込まれ、素人目にも分かり易く高尚な魔法の品感を放っている。

 

 持ち手側にも漆黒の宝石―――先端の物よりやや小振り―――があしらわれ、この二つの宝石が杖の効果をより高めている……らしいですよ、はい。

 

 

《うん、見るからに凄い杖。記憶通りだけど。……で、どんな力を持ってるかは分かる?》

「……わたしに分かるのは、魔法を使う時に何らかの補助効果があるだろう、ぐらいですね」

 

 苦笑混じりの見解を聞くに、学校で習った程度の知識では高度過ぎてサッパリとのこと。

 そのかわりにと言うか、持ってるだけで身体の中の魔力の流れがより円滑になった感覚があり、魔法使いにとって相当に有用ということだけは感覚的に理解出来るんだそうな。

 

「しっかり調べようと思うと、大きな街で『鑑定石』を使わせてもらうしかないかと」

《前に言ってたスキル特定の? 物でもいけるんだ》

 

 物品鑑定にも使えるのか『鑑定石』。

 ……あくまで実用に関する情報が分かるだけで、宝物的価値とかは対象外? さいで。

 

「使用料を取られますけどね。それだけの価値はありそうですけど」

《ほほう……ま、今回に限っては性能の調査は必要無いけどね》

 

「えっ? ……レインには分かるんですか?」

《私にゃ分からぬ。しかし女王様の記憶からそれらの情報を探せばよいのだよ。使用感とか》

 

「……使用感」

 

 その響きに、何だかなあ……という感じの表情を浮かべるユズちゃん。分からいでもない。

 いやでも大事だよ、使用感。某通販サイトとかだと「お前明らかに使ったことないだろ」なのが混じってたりで、あんまり当てにならなかったりするけども。

 

 そんなわけで、この杖に対する女王様の評価をどどどん。

 

 

・消費魔力量軽減 :通常時の半分ぐらい。 ……すごい。

・魔法威力向上  :同じ魔力で倍ぐらい。軽減合わせて四倍。 ……ヤバイ。

・魔力回復速度向上:握ってるだけで超回復する。 ……なにこれこわい。

・魔力蓄積機構搭載:溜めて、撃てば威力増加。 ……え、ちょ、どんだけ溜められるの、コレ?

・自動修復    :表面の魔法陣含め、擦れたり削れたりしても即再生。 ……えっ、マジで?

・高耐久     :大型モンスターに踏まれても折れません。 ……調べたの? えぇ……。

 

 

《―――以上、女王様の個人的感想含む。今の時代の杖としての番付はどんな感じ?》

「…………その、国宝級とか、そういう域じゃないかと」

 

《ほうほう国の宝かー。女王様の持ち物だもんね。さもありなん》

「いやいやいやいや、女王様も明らかにドン引きしてるじゃないですか!?」

 

 いやぁ、なんか国のお抱え職人()()が予算自由と告げられて大暴走した結果だそうですよ。

 出来上がった杖の性能、および使われた金額に女王様も総白目でお喜びあそばせたそうで。

 ……ちなみに生きてる間にこの杖を振るったのは性能チェックの一回こっきりだったとか。

 

 

《ただ、一つだけ問題があるんだよねー》

「一つどころじゃないです。……まあ、見た目に関しては先端を除いて布を巻けば、高価な短杖で誤魔化せるでしょうけど……で、レインの思う問題というのは?」

 

《よくぞ聞いてくれました! ……名前どうしよっか》

「……はい?」

 

 おう、鳩が豆鉄砲くらった顔ってこういうヤツなのかね。

 いや、名前だよ名前。ここまで特別感ある武器が『女王様の杖』じゃ格好付かないじゃん?

 

 勿論、杖が完成した際に付けられた名前はある。

 しかし今の言語には無い音がふんだんに使われてて、この世界の現代人には発音出来ないんよ。

 意味も私にしか分かんないし、折角の強力な武器がそれでは勿体無いと思わんかね。

 

 

「……いえ、その、そんなことより……」

《それにほら、今度からユズちゃんにも『()()()()()()って話になってたじゃん》

 

「あ……ええ、まあ」

 

 今回の盗賊退治依頼完了で、ユズちゃんはめでたくDランクへの昇格が決まり、それに合わせて『二つ名』の取得も決定したのである。

 ……誤解の無いように言っておくが、Dランクになると必ず二つ名を貰えるわけではない。

 冒険者の中でも突出した能力、スキルの持ち主をその地のギルド員が推薦、その周辺ギルド間の協議の上で、二つ名を与えることが決まるらしい。

 

 特異な『調教』スキル―――という事になっている―――によって目を付けられていたからこそ近々Dランク、というえらく早い段階からその可能性を示唆されていたわけだ。

 普通は早くてもBランクが見えてくる頃にならなければその兆しすら与えられないらしい。

 いやはや圧倒的じゃないか、我が相棒は。

 

 

《あ、折角だし決定した二つ名を聞いてから、それに合わせた名前を考えよっか》

「…………ええ、まあ、いいですよ、それで」

 

 ……最後に小さく「なんでも」と聞こえた様な気がするが、きっと気のせいだ。うん。

 それじゃ、無事に貰うものも貰ったし帰ろっか。

 

 

「……無事にここから帰れますかね、わたし」

 

 

 あー……帰るまでがデストラップダンジョンだからね。

 私が居るから大丈夫大丈夫。たぶん。

 





 振り回されているように見えて彼女も何だかんだ楽しんでます。多分に。概ね。大体は。


 次回から新章開始。またちょっと作中時間飛ぶかな?(ノープラン)
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