前回のあらすじ(?):
レインさん「ばぁか かぁば ぶたのけ───」
ユズちゃん「人の口で何を言おうとしてるんですかぁ!?」
※作品あらすじをちょっと変更しました。(2023/04/12 8:10 同内容を前話前書きに追記)
このままだと微妙にタイトルと食い違ってるなぁ、と思ったもので。
「───それは、本当のことですか?」
《流石にこんなことで嘘はつかないよ、私は》
「そんな……でも確かに思い返せば、我ながらおかしな返答をしていたような……」
《……その返答とやら自体を私は聞いてないし見てないんよ。突然二人して……店主合わせて三人揃って黙り込んだようにしか、ね》
「…………その原因が、今サラ様の手の中にある指輪、ということですか?」
《店主か指輪、はたまたその両方か……だったんだけどね。さっき見に行ったら首傾げてたんよ。何で露店なんてやってんだ俺……ってな感じでさ》
「ああ、それで……でもどうするんですか? 幻覚を見せられるんじゃどうしようも……」
《何を仰る。相手の力が通じないと保証された私という存在がいるではないかね?》
「……通じないというより認識されてないのでは? いえ、出来るわけないんですけど……」
《効かないって意味じゃ同じことよ。そんで身体の自由を奪う力なんてモノ持ってる相手ならさぁ……上手くすれば確実に隙を狙えると思わない?》
「…………」
《……駄目かな? なら盗み聞いたあちらさんの目的考えるに、このまま気付かない振りしてればこっちには何もしてこない可能性もあるにはあるけど───》
「いえ、やりましょう、レイン」
《……!》
「わたしは───『友達』を見捨てたくはありませんから」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「───なんで……なんで私の術が効かない!? なんで動けて……!?」
サラ嬢の身体で地面に這いつくばり、恨みタラタラ
嵌めた人間の身体を現在進行形で奪っていたり、なにやら魂を縛る云々と御自分の能力を丁寧に解説してくれたけれども、やはりそれも私には通じぬようだねぇ?
「《だーから親切に説明するわけ無いってのよ。誰かさんとは違ってね?》」
「ぐ……お、おまえぇ……ッ!?」
おや、どうやら気付いたかな? そうそう、動く気なら初めっからいつでも動けたんでねぇ? 良い気になって色々解説してくれるのをこれ幸いと聞いていたわけですよ?
───先日シワヒの街の蚤の市にて、唐突に起きた(私目線で)謎の現象。
後からユズちゃんに確認してみれば、彼女の主観では特筆するようなことは無い客引きのもとに指輪を購入したと言うんだから驚き桃の木山椒の木。
慌ててサラ嬢の様子を覗けばこれまたビックリ、まるで物珍しいモノでも愛でるように
この時点で予想出来た、お相手さんの能力は二つ。
一つは周囲の人間の意識を一時的に奪い、また都合の良い記憶を植え付ける能力。
もう一つは何らかの条件の下、他人の身体を操る能力。
……無制限ならあの場で二人とも操れば良いからね。片方だけってことはそういうことでしょ。
だがしかし、その能力が私に通じないということは既に実証済み。
そしてそして、そんなご都合主義な力を持った輩なら尚更、予定外の行動を起こされれば下手に足掻くより先に
それが街中ならば通行人なり宿の人間なり、無関係な第三者を巻き込んだ凶行を憂慮する必要が出てしまうが、お生憎様にもここは街道からちょいと離れた林の中。
関係の無い誰かが偶然に通りかかる可能性など、まさしく皆無。
すなわち君の行動は、何もかも私の予想以上に予想通りだったというわけだよ、HAHAHA!
(まあ、それは、良いんですけど…………あの、レイン?)
はっはっは、何だね、ユズちゃんや?
すっかり慣れちゃった【念話】の声音が何だか困惑に染まってますぜ?
(いや、その…………
…………。
……いやー。
それは、その…………予想GUYです☆
何でユズちゃんが【
……いやマジで何故だよ。何でだよ。今までの憑依じゃこんなこと無かったやん!?
相手の幻術(?)から守るというか、匿うイメージぐらいはあったけどさぁ!?
まさかアレか? 検証の時に「誰に見せるでもない」とかフラグ立てたせいか!?
ええい、毎度毎度何かしら不測の事態を起こさんと気が済まんのか、私のボディは!?
《え、っと……ユズちゃん? 一応聞くんだけど、そこから身体、動かせる?》
(え、あ……な、なんとか? 視界が二つ重なるので混乱しますけど……)
あー……だよねえ。すっごい変な感じだよねえ、その視界。
でも頑張ってくれとしか言えん。なんせ私に戦闘技能なんか皆無なんだ。
あちらの使う能力、『認識改変』(推定)を私が防ぐ、ないし動けなくなった身体を私が使ってどうにかするというのが第一案。
相手がサラ嬢の身体を使っているのが私の【憑依】と似た条件だとすれば、戦闘能力は操る身体依存のはず。となればこの時点でも勝算は十分に見込めてはいた。
荒事向きじゃない、というあちらさんの発言をどこまで信じるかというのもあったわけだが……ユズちゃんが彼女の意思で自身の身体を動かせるというならそれに任せるのが一番だ。
学校で六年、実地で二年。立ち位置は後衛といえど彼女が磨いてきた戦闘技術は伊達じゃない。
……私がこれまで集めて(?)きた記憶の持ち主の中に、そっち方面に精通した人間でも居たら条件は変わったんだけどね。お茶会の時の『私』+女王様みたいに。
伯爵令嬢、村生まれの幼女、一般女性に女王様。見事に荒事担当が皆無なんだこれが。
いや、そもそも意図して集めてきたわけでもないんだけどね?
(……とにかくさっきの話で本体があの指輪だというのはよく分かりました。時間があれば嵌めた人間以外にも影響を及ぼせるみたいですけど……少なくとも手から外して引き離せばサラ様を解放出来る可能性は高そうですね)
《だね。……いける?》
(……相手を傷付けずに抑え込んで、というのはあまり慣れてませんけど、やってみますよ!)
「ぐ……く、来るなぁ!?」
痛むんだろう身体でどうにかこうにか立ち上がった相手さん───『指輪霊』とでも呼ぼうか。
そのまま逃げ出そうとする指輪霊を、無手のまま追いかけるユズちゃん。……友達の身体に傷を付けたくないもんね。仕方ないよね。
……ただどうにも足取りが……突然の
(……でもコレ、慣れたら自分の動きを省みるのに凄く便利なような……)
《なんか有用性見出しちゃってる!? そ、そういうのは後にしようよ、ね?》
(わ、分かってます! 言ってみただけですよ!?)
ゆ、ユズちゃんもだいぶ私のアレな能力に慣れてきちゃったよねえ……。
あたしゃ慣れさせちゃったこと自体に罪悪感がじわじわ来とりますよ、あははー……。
…………アレ? ちょっと待て、
私の場合、見えるのは部屋の中と外の私が見てる景色であって、私自身の身体は見えぬぞ?
その口振りからして君には君自身の身体が見えてるんよね? じゃあソレ私と仕様が違───
「く、そ……っ! 近付くなぁ!?」
(……っ!?)
「《うおっとぉ!?》」
サラ嬢の指から何か出た!? いや、正確には指輪からか、多分!
この前のショッピング中の発言からして、サラ嬢に魔法系スキルは無いはずだ。今の魔力弾的な攻撃が彼女に出来るはずが無い。
……というか今考え事してたんだよ! いきなり予想外の攻撃してきて邪魔すんじゃねぇ!
(わたしの口で急に叫ばないでください、レイン! 呼吸が乱れますから!)
ごめんッ!
「こ、こんなことならそっちの身体を選んどけば……なけなしの魔力が───こうなったら!」
(……っ!)
《あ、あれ? どうしたの、ユズちゃん!?》
そんな突然の攻撃すら見事な反応で回避してみせたユズちゃんだったが、指輪霊の次なる行動が見えた途端に足を止めてしまった。
内心で首を傾げた私に、微かな焦り混じりの【念話】が届く。
(わたしの後ろにフォークさんが……避けると彼女に当たります!)
《……あ、やっべ忘れてた! そういえばあの人も動けなくされてたっけ!?》
理由を言われて振り返って───ユズちゃんの身体は動かさずに───みれば、直立不動のままこちらに必死の視線を送るフォークさんの姿があった。
……そうなんだよねえ。流石にこの人だけは遠ざけられなかったんよ。
お嬢様の異常に関してユズちゃんの言葉を受け入れてくれはしたんだけど、化けの皮を剥がしにかかるその場に立ち会うことだけは譲ってくれなくってさ。
当人の職務を考えればしょうがないとはいえ、残さざるを得なかった
そこをしっかり狙ってくるとは……汚いなさすが悪霊きたない。
他人の身体乗っ取りにためらい無いだけはあるなぁ、ちくしょうめ!
《どうするの、ユズちゃん!?》
(……同じだけの魔力をぶつけて相殺します!)
私にそう伝えたが早いか、腰から手に取ったは我らが切り札【牡丹灯火】。
その姿に何かしら感じるものがあったか、ギリ、と歯を鳴らした指輪霊は咄嗟にサラ嬢の指先により一層の魔力を集めて弾丸の如く発射した。
当然、ユズちゃんはそれに即応、同量の魔力を集めていつかのような炎弾に───ん? 同量?
《ねえ、ユズちゃん? その杖の威力向上効果、忘れてないよね?》
(……あ)
え? イヤ、あ、じゃなくて。明らかにあっちの弾とサイズ違いますやん。
ソレそのまま撃ったら『こんがり男爵令嬢』出来上がり待ったなしですやん! 何してんの!?
……いやコレ私のせいだな? 急に
(調整……は、間に合いませんね。なるべく威力を抑えます!)
《だ、大丈夫なの、それ!?》
(少し火傷はするかもですけど……どのみち無傷で抑えるのは難しそうですから!)
《わりかし割り切ってらっしゃる!?》
驚く私を余所に、構えた杖先から急激にサイズを縮ませた炎弾が発射された。
……ま、まあ相手に十三歳の男爵令嬢相応の運動能力しかないならともかく、あんな抵抗手段をお持ちとなればある程度は仕方ないか。しかし鉄火場での判断は割とクレバーよね、君。
撃ち出された魔力弾に対して、縮めた炎弾はそれでも一回りは大きく。
ぶつかり合ったそれらが一瞬の拮抗の後で残したのは、薄く残った炎の壁。
その進行方向には渾身の力を振り絞った直後で動けない様子の指輪霊……の宿ったサラ嬢の姿。
「く……そがッ! こんなもので!」
悪態を吐きながらも、指輪を嵌めた側とは逆の腕をかざした指輪霊。
なるべく受ける炎を少なくする為か、壁を裂くように炎を振り払わんと―――
「……っ? ぎ、ぎぃやあぁぁァアアアアああああアアあああああああああああああああああああああああああああああああAAAAAAAAAアアaaaaaaaaaアアアアahhhーーーッ!??」
(えっ)
《えっ》
あ、あれれー、おっかしいぞー……?
あちらさん、向かってきた炎を苦々しげにも勇ましく振り払ってたと思うんですけど?
払われた炎が火の粉になって消えて、さあ仕切り直し……って空気だったと思うんですけども?
「あづッ……アア゛あァッ!?? げず、レ……うあ゛ああぁぁaahhhーーー……っ!!?」
なんか、その……現在進行形でものすごい勢いでのたうち回っていらっしゃるんですけども?
まるで、火達磨にされた人間が必死に地面に身体を擦りつけて消火しようとしてるとか、そんな感じの苦しみ具合なんですけどもぉ……?
(…………今度は何をしたんですか、レイィンッ!?)
《イヤ待って? 待ってって!? 何か起きたら即、私のせいという風潮には物申したい!!》
(他に珍事が起きる要因があるとでも!?)
《その評価は流石にひどくない!?》
(今までどれだけ実績を重ねてきたと思ってるんですかぁ!?)
《……ちくしょう! 心当たりしかねぇ!!》
そうだねえ! きっとコレも私のせいだねえ! 他に疑わしいモノ無いもんねえ!?
今度はいったい何さらしてけつかんねん、こんのパルプ○テボディは!?
……あ、指輪霊さん!? それともサラお嬢様!? と、とにかくお気を確かに!?
ちょ、そんな勢いで転がったら───うわっ、木に激突した!? え、衛生兵、衛生兵ー!?
こいつらいったい何と戦っているんだ。