これって転生に入りますか?   作:非単一三角形

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 前作が大体毎日更新で本編が計72話。
 今作が二日に一度更新で今回36話目。

 だからどうというわけでもないんですが、ちょっと感慨深かったりする今日この頃。


 テンプレパターン第n項、学園編スタートの回。なお



Chapter-4
C4-1 学び舎


 

 ―――こうして此処にいると、学校という場所で過ごした記憶を思い起こすことが度々ある。

 

 隣の友人と他愛の無い話をするひと、課題の多さに嘆きを漏らすひと、先の授業について周囲と議論を交わすひと―――生徒がみんな貴族という事や、その最低年齢が十二歳といった違いから、それぞれの光景は構図が似た物ではあっても雰囲気は結構な違いが見えるけれど。

 

 しかし今のわたしの立場は生徒ではなく、その護衛の一人です。

 

 護衛対象たるサラ様が授業を受けている間、その教室から壁一枚隔てた控室で他の生徒の護衛(同業者)の方々と共に待機しておくのが、今この時間における役割。

 勿論、何かあればすぐに動けるように……というのは今回に限った話ではないですね。

 

 軽く見渡す限り、ここに同じ職業(冒険者)という意味での『同業者』の姿はありません。……同じ業務の最中だといえばそうなんだけど。

 ……令息令嬢の護衛に好き好んで無位無官の冒険者は選びませんよね、普通は。

 あったとしても相応の実力……というよりは実績を持った、いわゆる『雲の上』の方々の筈で。

 

 

 そんな中に一人混じった『無位無官の冒険者』であるわたし───ですけど、思ったほど注目を浴びる羽目にはなっていない。

 荒事など専門外な側仕えでありながら「護衛を()()しております」という態度―――ハリボテを駆使してきたというフォークさんから受けた事前指導……に加えて誰かさんに身に付けさせられた『黙っていれば良家の子女に見える所作』のお陰なんでしょう。……多分。きっと。

 

 実際に周りを見ても荒事など専門外です、という身体付きなのに眼光は異様に鋭い女性だとか、おっとりと微笑んでいるようなのに、視線を向けるだけで寒気が止まらない御婦人とか居ますし。

 むしろ筋骨隆々の男性とか、一目で強そうだと分かる人の方が安心出来るまであるというか……やっぱり貴族の世界ってコワイです。

 

 ……わたしもどちらかと言えばそういう分かりにくい側の一人だと思われてるのでしょうけど。

 まあ、その……トラブルを未然に避けられるのは良い事ですね。ハイ。

 

 

 それにしてもこの時間……馬車の護衛等と違って周囲の人達との雑談も出来ないですし、無暗に立ち歩いたりも憚られますし……ハッキリ言ってしまうと暇ですね、すごく。

 外から暴漢でも飛び込んでこない限り出番も無い……その場合も動くのは警備の方ですか。

 

 

 …………うん、本当にやれる事が何も無い。

 そろそろ一回()()()()()くれませんかね? けっこう本気で退屈で───

 

 

《―――たらぁいまぁー》

(あっ、おかえりなさい、レイン)

 

 ああ、噂をすれば……とはちょっと違いますかね?

 わたし以上に退屈を堪えきれなかった幽霊さんが、散歩(?)から戻ってきました。

 

(今日はどちらまでお出かけで?)

《んー、食堂裏とー、屋上とー、校舎裏とー……あとトイレ》

 

(……何その並び)

 

 誰にも見えない聞こえない、壁も扉もなんのその。

 そんな身体を活かして、今日も彼女は思いのままに学園内を飛び回る。

 レインですもんね。仕方ありません……けど、今はちょっとだけ羨ましいかな?

 

《そっちはどーお? 元気してるー?》

(退屈してるー)

 

《だよねー、知ってるー》

 

 最近はレインの口調(ノリ)にも慣れてきたので、時々わたしも同じ調子で返すようになりました。

 思えばこうして念話の為に憑依してもらうのにも抵抗無くなってきたなぁ。便利だからなぁ。

 

 

(それで、今日は何か面白いものでもあった?)

《んむ。この前の修羅場の続きが観れたぞよ》

 

(修羅場……? あっ、本命の彼女さんに二号の存在がバレた男子とかいうアレですか?)

《そうだよそれそれ。いやー、これが見事な紅葉作って一旦収まったかなーと思ったら、どこから聞きつけたやら、なんと三号ちゃんの乱入に発展してねー》

 

(えぇ……有り得るの、そんなこと?)

《令息令嬢って言っても高位貴族の長子でもなきゃ割と自由恋愛許されるからね。……二股三股はそれはそれとして普通に処されるけども》

 

 レインが見付けてくるゴシップ情報―――ばかりでもないですけど―――の報告が、最近は割と本気で救いになってきているわたしが居ます。

 何というか……こういう所にいる令息令嬢も、普通に人間なんだなぁと益々実感するというか。

 ……生徒の平均年齢が高いからか、()()()()()も何だか生々しいものが多い気がしますけど。

 

 

《……ああ、あと幽霊(ご同輩)見付けた。ユズちゃん後で祓っといて》

(えっ? レインも出来るでしょ? 成仏促進)

 

《……何が悲しゅうて女子トイレに憑りついたおっさんの記憶を得にゃならん》

(分かりました。この後で祓いに行きましょう、迅速に)

 

 ()()()()の記憶が収められた()()()()にそんなのが並ぶなんて、こう……なんか嫌です。

 というか幽霊になってまで何してるんですかその人。どんな未練があったらそうなるんですか。

 ……気持ちは分からなくもない? 何言ってるんですか、レイン? わたしは許しませんよ!

 

 

 

 

 ───今までレインから話には聞いていた、【記憶の部屋】およびそれに付随する能力。

 

 彼女の中……としか形容しようが無い謎の空間と、そこに本棚という形をとって並ぶ記憶達。

 そこにわたしを招き入れることが出来ると知った時、彼女はとにかく仰天していた。

 

 異なるモノを映して重なる視界に混乱するわたしの傍で、彼女も頭を抱えたまま空中三軸回転を繰り返して……今更だけど、アレはどういう感情からくるリアクションだったの? いや、予想外かつ想定外だったのはこの上なく理解出来たけどね?

 

 一応、わたしにも彼女が過去に出会ったという幽霊の方々の記憶を見ることは出来たけれど……まさか他人の記憶というのがあそこまで鮮明というか、下手をすれば『自分』を失いかねない程に危険なモノだなんて思っていなかった。……あの時の様子からして多分、レインも含めて。

 

 途中で彼女に引き剥がしてもらわなかったらどうなっていたか……おかげで見たのはごく僅かな範囲だけなんですよね。彼女の場合はもう少し客観的な視点も選べるらしいのになぁ。

 ……まあ故人とは言え、あんまり他人の記憶を覗くのもどうかとは思いますけど。

 

 

《───しっかし半年も経ってると話題にも出ないなぁ……ううむ、あの屋敷の状態は……》

(……レイン? どうかした?)

 

《え? ああ、いや、何でもないよ?》

 

 あの一件で、彼女の歪に思えた知識の源泉にも多少は理解が及んだけど……

 彼女がいったい何者なのかという点については、余計に分からなくなってしまった。

 今までの発言が当人の記憶からなのか、はたまた別の方の記憶由来なのかが判別出来なく───

 

 

(…………)

《……どしたの? なんか、【念話】なのに刺さるような視線を感じるんだけど?》

 

(いえ……つくづくレインは魔訶不思議だなぁと思っただけで)

《突然の罵倒!? ……いやコレ罵倒か? い、いやともかく急に何なのん!?》

 

 

 …………その辺りの指針にもしたくて、『鑑定石』まで引っ張っていったんですよ?

 

 何しろあの石の『鑑定結果』というのは、神様が定めていると言われている代物です。

 本人にすら仔細不明なその身体(?)についても、何かしら情報は得られるんじゃないかって、少なからず期待してたんですよ? これでも。

 

 

 ……なんだったんですか? あの鑑定結果。数字を除けば一文字も読めなかったんですけど?

 「ああ、コレ私の母国語……じゃねーわ」って何ですか! じゃあどこの文字なんですか!?

 唯一読めた年齢にしたって、156億歳ってなんなんですか!? 意味が分からないですよぉ!?

 

 

(…………若作りお婆ちゃん)

《え? …………イヤ違うよ!? アレ絶対なんか表示がおかしくなってて……というか全体的にバグってたんだってば、きっと!? 地球さん(46億歳)のトリプルスコアなババアじゃないから、私!?》

 

(……チキュウさん?)

《あ、やっべ通じるわけないやん!? と、とにかく違うから! ねっ!?》

 

 

 ……やっぱりまだまだ、わたしが知らない、聞かされていないことは多いらしい。

 でも、まあ、いいかな? これからは無理にレインから聞き出そうなんて思わなくても。

 

 だって、なんだか……当人にも説明出来ない事柄なんじゃないかなって気がするし。

 なんなら一番ワケ分からない、って思いをしているのがレインな気がしてきたし。

 

 

 …………実は神様もワケ分からな過ぎて匙投げた、とかだったり……ないですよね?

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「───ロクシーヌ=プルーヴァ公爵令嬢! 君との婚約を破棄させてもらう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………レイン?)

《待ってちょっと待って今私脳がバグってるからちょっと待って》

 

 授業を終えたサラ様と合流し、学園内にある食堂へと向かおうとしていたそのとき。

 唐突に聞こえてきたその男性の声に、足を止めたのはわたし達に限ったことではなく。

 

 

「……エモン様、それはどういう意味の発言でございましょう?」

「ふん、頭の回転の悪い女だな! 今日限りで君との縁を切らせてもらうと言っているんだ!」

 

 

(あの、これ……何が起きてるんですか?)

《そりゃ学園には来たけどさぁ、令息令嬢一杯だけどさぁ、それでもコレはどうかと思うなぁ》

 

 言い争っている(?)二人の男女の姿に、ポカンと立ち尽くす周囲の人々。

 傍らでブツブツ呟いているレインの声だけが、わたしの耳には嫌に響いていて。

 

 

「これで僕は晴れて自由の身となる! これからは『真実の愛』にこの身を捧げるのだ!」

「……真実の愛、でございますか」

 

 

 熱に浮かされたような発言を繰り返す男性に、唯々冷ややかに言葉を返す女性。

 視界の端では、彼らを囲む形になった人々の気まずそうな目配せが続いていて。

 

 

《…………やるならやるで卒業パーティでやるべきじゃね?》

(卒業パーティなら有り得るの!?)

 

 

 そんな中で聞こえた一言に、危うく叫びそうになるのを堪えながら声を送った。

 それ、いつものからかい……ですよね、レイン?

 なんか素で呟いてた気がしてちょっと聞くのが怖いんですけど?

 

 

《あっ…………ごめん適当言った。どのタイミングでも有り得んわ》

(だよね!? 有り得ないよね!? ……というかこれどうしたら良いの?)

 

《…………サラ嬢の意向を仰げば良いんじゃない?》

(…………ですね。貴族同士の揉め事について冒険者(わたし達)が考える必要はないですよね?)

 

 ようやく脳みそが再起動を始めたらしいレインと、心の中で話し合い。

 結果として出てきた、至極当たり前な結論に従ってサラ様の顔を仰ぎ見て。

 

 

 

 

「…………やるなら卒業パーティじゃありませんの?」

 

《「卒業パーティなら有り得るの!?」》

 

 

 

 

 溢された呟きに今度こそ堪らず叫んでしまい、渦中の二人に劣らない注目を浴びる羽目に。

 ……ああ、本当にわたし、知らないことばっかりだなぁ……。

 





 ( ゚∀゚)o彡° テンプレ! テンプレ!

 ロクシーヌ=プルーヴァ → rock people valley から命名。
 由来が気になる方は「岩」「民」「谷」に「怪談」を追加して検索を、どうぞ。


※前話の鑑定結果考察中の一コマ。

 ユズちゃん「……見た事も無い文字なんですけど、これはいったい……?」
 レインさん「ああ、コレ私の母国語……じゃねーわ」

 ユズちゃん「違うの!?」
 レインさん「(アルファベットは母国語とは言わんし……つーかコレ英語でもねぇな?)」
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