これって転生に入りますか?   作:非単一三角形

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 てんぷれ……?
 てんぷれとは……??



C4-3 ご相談

 

「―――本日はようこそおいでくださいました、『狐鼠姫』様」

 

「本来ならばもう少し早くこの場を用意するべきでしたが……こちらの不手際が続きましたこと、謝罪させていただきますわね」

 

「……あら、何故かと問われますの? 決まっているではありませんか」

 

 

 

 

「私の軽慮浅謀なる『元』婚約者様と、無知蒙昧なる『小娘』の暴走を一挙に引き受け、あたかも何事も無かったかのように制圧してくださっていたのでしょう?」

 

 

 

 

「…………ふふ、そうですわね。貴女様は何も、と」

 

公爵家(ウチ)の者も感服しておりましたのよ? 曰く、()()が企みを妨害していることは疑い無いにも関わらず、その()()()()()()()()()()()()、と」

 

「これ程の手腕を持つ者であれば、是非とも我が家に引き入れたいとも考えて───そうですか。いえ、ご存じないということであれば仕方ありませんわね」

 

 

「それでは話を戻させていただきますが……ご足労頂いた要件は他でもありません。かねてより、淑女にあるまじき行いに精を出しておられる、件の『小娘』についてになりますわ」

 

「昨今は()()()()を標的にした()()()に熱を上げられては、ご親切な()()()の手により()()()()()いただいているようですが…………ふふ、誰とも知れませんが、お優しいことですわよね?」

 

「では本日は心優しい『何者か』様に伝わる事を願った、『世間話』の場といたしましょう」

 

 

「さて……かの令嬢が現在のような振る舞いを始めたのは、いつの頃からでしたか」

 

「以前から己が家格を弁えず、あちらこちらの令息に近付いては目に余る行為に勤しんでおられた方でしたが……益にはならずとも害にも成り得ぬと、目溢しを差し上げていたのですけれど」

 

「…………いえ、元婚約者(エモン様)の本性を暴いてくださったことにだけは、感謝せねばなりませんね」

 

 

「けれどいよいよ学園の和を乱し始めたとなれば、このまま放任は許されませんわ」

 

「未遂に終わっているとはいえ、その手中には不愉快な計画が幾つも存在していましたもの」

 

「彼女にはその不遜な思惑を抱いた罰を与えると共に、自らの立場を改めて分からせて差し上げる必要がありますわ。……そこで私、丁度良い方法を考えましたの」

 

 

 

 

「───今度、学園の階段から突き落として差し上げませんこと?」

 

 

 

 

(…………なんで?)

《…………そのテンプレは要らんと思うの》

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 公爵令嬢様からサラ様を介してわたしに届いた、お茶会への招待、という名の()()()()()

 以前と同様に、女王様モードのレインに対応してもらった後ろで聞いていたやり取りは、けれどどうにも首を捻らざるを得ない方向へと進んでいった。

 

 

 話の始めはわたしが───本当はレインが、だけど───対処していた『嫌がらせ』について。

 多分妨害に悲鳴を上げていた犯人を調べることで、標的が誰だったかを突き止めたんだろう。

 それからギルドに問い合わせて得られる情報や状況証拠を合わせることで、それがわたしによる『反撃』だと判断したらしかった。

 

 

 ……でも痕跡を残さない手腕と言われても……その、大体はレインが起こした心霊現象だから、跡が残るわけないというか……。

 お抱えの申し出もちょっと……少なくともわたし、この国に永住するつもりはありませんし……なんだか、もう、本当にすいません、公爵家の皆様。

 

 

 そこからはあくまで世間話として、ここ数日の『嫌がらせ』の発起人について聞く事になった。

 ……いえ、まあ、例の騒ぎの直後にレインから計画者として名前を聞いてはいたんですけど。

 

 

 ───ファルファ=ティーグ子爵令嬢。

 

 どうやらこの人物が、現在学園で起きている一連の騒動の元凶である……らしい。

 公爵令嬢様とレイン、両方からそうだと指定されている以上、疑いの余地は無いかなあ。

 

 

 先日の『舞台』で声高に宣言されていた、『真実の愛』の対象となる女性だ、とか。

 子爵家の出身、という身分にも拘わらずより高位の家の令息に無遠慮に近付いている、だとか。

 『嫌がらせ』の事を除いても、御令嬢として宜しくない事を色々やらかしている……だそうで。

 

 正直わたしにはどこまでが問題なのかよく分からないんですけどね。……嫌がらせは別として。

 異性でも学友とちょっと話をするぐらい別に良いんじゃ…………そっかぁ。

 

 

 ……と、とにかくその人の振る舞いが放置できなくなった、というのは分かります。

 レインが全て未遂に終わらせていると言っても、わたし個人への嫌がらせの域を超えて学園中に迷惑を掛けかねないものになってましたし。

 

 そこでロクシーヌ様は彼女をかなり強引な手段で排斥する方向で計画を始めているのだそうで。

 ……公爵令嬢という方が計画だなんて、それってもう『決定事項』と言って良いですよね?

 

 それ自体は貴族の方々の間での話ですし、結局害は無かったとはいえ散々標的にされた身として擁護する気には間違ってもならないですけど……

 その……それを止めるための手段というのが、どうして───

 

 

「嫌がらせに嫌がらせで返すって……なんでわざわざ相手と同じ土俵に……?」

《おかしいよなぁ……やっぱなんかおかしいよなぁ……?》

 

 

 ロクシーヌ様の『お誘い』に違和感を覚えたのはレインも同じだったらしい。

 先の勧誘も含めてお茶会の最中はひたすら言質を取らせない形で潜り抜けてくれた彼女は、今もわたしの傍でブツブツ呟きながら頭を捻っている。

 《言質を取らせない会話は貴族の嗜み》だそうだけど……やっぱりコワイ世界だなぁ……。

 

 

「……でもここで彼女を階段から突き落とすことに何の意味が?」

《……瑕疵を付けるため?》

 

「え? ……誰に付くの? この場合」

《そりゃまあ……計画した公爵令嬢さんに?》

 

「ですよね。…………なんで?」

《…………さぁー、なんでだろーなぁ……?》

 

 

 ……分からない。

 あの人達の行動理由が全然分かんない。

 そもそもレインにも分からないものが、わたしに分かるわけも……あれ? そういえば───

 

 

「あの場に居たサラ様も、場の雰囲気に慄きはしても疑問を持っていた風ではなかったよね?」

《……ああ、そういえば居たね、あの子。すっかり彫像になってたけど》

 

 

 いつかのわたしのように、カチンコチンに緊張したまま「主賓としてお招きいただいたからには腹を括りますわ!」の一言で、わたしと一緒にお茶会に参加されていたサラ様。

 けれどあちらの目的が実質わたしだけなことに気付いて、こっそり安堵の息を漏らしたところを《それでええんか男爵令嬢……》とレインには呆れられていた。

 

 ……レインが居なかったらわたしも確実に同じような状態になってただろうし、そこに関してはあんまり人の事は言えないけど……まあ、それはともかく。

 

 

「サラ様の反応からして、やっぱりこの国ではそこまでおかしなことでもないのかな?」

《え、いやぁ、そんなはずは……?》

 

 うんうん唸る彼女から、《そんな記憶は……あれぇ?》という呟きが聞こえてくる。

 ……前に口走っていたことも合わせて考えると、やっぱりレインってこの国出身の貴族───の幽霊さんの記憶も持ってるんですね。

 それが現状と食い違っていて困惑しているんだとしたら、この反応も頷ける。

 

 

《これじゃまるで…………いやいやしかしそんなわけ───》

「……レイン?」

 

《ああ、うん、ごめん。何でもない。……で、どうしよっか?》

「……どうしましょうね?」

 

 

 レインに聞かれて、改めてこれからの行動について考えてみる。

 

 件の子爵令嬢様の行動については、後は公爵令嬢様が手配した方々が対処するとの事ですし。

 嫌がらせ返し(?)への参加についても、レインが例の女王様モードで断ってくれたし。

 ……流石にその行動自体を咎めるような諫言は出来なかったと言ってましたけど。まあ雰囲気で誤魔化してるだけで、立場はずっとずっと下ですもんね。

 

 理解出来ない応酬がこれからも続くらしいことに首を傾げる想いはあるけど……だからといって特にこれ以上わたし達が何かする必要なんて無いよね? ……元々わたしは何もしてないけど。

 この前サラ様も言っていたように、貴族家同士の諍いなんて関わらずに済むならそれが一番だ。

 

 

 …………うん。決めた。

 

 この学園におけるわたしの雇い主はサラ様で、役目はその護衛なんだ。

 それに関係する事以外、特に気を揉む必要なんて無いはずだ。

 それじゃあまずは、気を取り直して───

 

 

「あの人を階段から突き落としに行こっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

《…………ユズちゃん?》

 

 

 あれ、どうしたんですか、レイン?

 そんな顔して……何かわたし、おかしな事でも言いました?

 

 

 え、いえ、ですから……ファルファ様、でしたよね?

 今からその人を探して、階段から突き落としに……そういう話をしてましたよね?

 

 

 え、え、だってそうしないといけなくて……

 

 ロクシーヌさまから、わたしはそうたのまれて……

 

 …………それは、ことわったじゃないか?

 

 

 

 

 え、え、え、だってこうしゃくれいじょうさまのおもうしつけですよ?

 

 いちぼうけんしゃのわたしが、ことわれるわけないじゃないですか。

 

 

 

 

 そうですよ

 

 そうするために

 

 そうすると

 

 そうだから

 

 それが、わたしの、やくわりで───

 

 

 

 

 ……え、ひょうい?

 まあいいですけど……

 

 

 

 

 …………

 

 

 ……………………

 

 

 え?

 

 

 

 

 

 

 

 

《───ああ、成程。やっと分かったわ…………クソッタレが》

 





おまけコーナー:作中に登場した固有名詞の由来紹介 ~街の名前編~

・マースル(C1-6~12)→ マウス + ル
           → 口 + ル = 四

・ムフトン(C2-1~3)→ ム + ふと + ン
           → ム + 太 + ン = 参

・ミイグル(C3-1~7)→ ミ + いぐる(み)
           → 三 + 弋 = 弐

・シワヒ(C3-9~10)→ シ + ワ + ヒ
           → 士 + ワ + ヒ = 壱

・レイオード(C4-1~)→ rain + order
           → 雨 + 令 = 零


 ね、適当でしょ?
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