お久し振りです。
またゆる~く書きたくなって戻ってまいりました。
本日より満を持しての第二部スタート……というよりは復帰予定の報告となるでしょうか。
ひとまず新章のさわりだけ上げておくとしまして、本格再開は暫し先となる予定でございます。
……ほぼ一年振りの更新で読者にどのぐらい戻ってきて貰えるのか傾向を確かめt(ry
これまで通り(作者が他に書いている連載作が嘘に思えるような)のんびりコメディでゆるゆる続けていく所存でございますので、以前より本作をご存じの方も初見の方も、温い目でお付き合いいただけましたら幸いです。
C5-1 大河は運ぶ
───どうして、こんな事になった?
絶え間なく悲鳴を上げる身体、鉛のように重くなっていく頭。
今すぐ全てを投げ出したい、そんな内なる声に抗いつつ、尚も暗闇に目を凝らして。
今宵一晩の塒にと選んだ小屋の中。
うらぶれた室内を暗所に慣れた瞳が映すも尚、
───ここまでの悪果に見舞われる由が、あっただろうか?
思考に疲れた脳が浮かべた逃避混じりの声に、一瞬遅れて「馬鹿なことを」と自嘲が漏れた。
己を顧みれば畢竟、悪因悪果の一説に文句より納得が来るような生き方だっただろうにと。
自他の手元も見えないような人混みこそ、好んで選んできた『仕事場』。
周囲に気を散らした様子の、大した力も無さそうな女性や優男こそ、狙い目の『獲物』。
万が一、
今日もまた、ささやかな『成果』を手に握り、人の大波を抜けんとした、その瞬間。
剣呑な響きを込めて背中に掛かった誰何の声に、一も二もなく駆け出したのも常の延長。
そのまま細い路地へと飛び込み幾つもの角を経て、予め見繕っておいた小屋の中へと身を潜め。
追手らしき声も足音も既に遠く、それでも外の気配に気を立てつつ数時間を過ごし。
やがて、喧噪遠いまま迎えた日没に漸くの息を吐き、粗末な床に寝転んで。
そのまま微睡に落ちようとしていた矢先───『かの者』の接近に気付けたのは幸か不幸か。
───何処だ……? 何処から来る? ……何処に、居る?
今も身を包む闇の中に潜んでいるだろう『敵』へと、ふらつく身体で出来損ないの構えをとる。
とうの昔に精も魂も尽き果てて、されど諦念を払うは『接敵』の度に
この四肢を振り回したところで『あちら』からすれば柳に風……それは既に身に染みた事実。
それでも、ただ座して時が過ぎるを待つには、あまりにも……あまりにも。
───何が、悪かった?
異様さを覚えるまでに
逃げ場の無い小屋の中に、黙して籠らねばならない由を作った己の行い?
───ああ、それでも、願わくば。
今は、ただ、眠らせて欲しい。
明日からは、清い生き方を模索いたしますので、どうか。
この、迫りくる『かの者』を退ける術を、どうか……どうか。
……次が来る。
なんとなく、分かってしまう。……分かってしまった。
防いでいないどこかから、防ぎきれないどこかから、『それ』が迫ってくる気配が。
右の耳? それとも左の耳?
前から? あるいは後ろから?
ああ、もうやめてくれ。
もういやだ、もう二度と、いや一度たりとも、聞きたくない。
それでもまた、耳が、拾う。
耳朶を、叩く。
囁くような……否、神経を削り、嘲るような───
《プ~~……ン》
───あ゛あ゛あ゛あ゛ぁッ!?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
《───名付けて
「なんて むごい ことを」
一晩に及ぶ激闘を越え、
さて彼の身に何が起きたのか、ずっと聞きたかったのだろう疑問に待ってましたと答えるは私。いつも通りの遠い目で空を仰ぐは我が相棒。
《や、ほら常習っぽいとはいえスリを相手に後に残るようなお仕置きは流石にやり過ぎかなあと》
「…………たしかにいつもの『起きたら頭頂部ツルツル』よりは穏当、なの、かなあ……?」
虚空を見遣ったまま、「穏当……穏当ってなんだっけ……?」と唸る彼女を肴に、もう一献。
うーん、ここの食事処も実にハイレベルなお点前で。流石は
「むぐ……まあ、どうやら近辺で軽犯罪を繰り返していた人物のようでしたし、多少お灸を据えるぐらいは良いかなとは思いましたけど……んぐ。それにしたって何でそんなに陰湿な───ちょ、ちょっとレイン? ペースが速いですよ!?」
《うおっと、ごめん! ……うーん、調整利くようになったとはいえ、やっぱり難しいねえ》
むぐむぐ頬を動かして苦笑してくれる彼女に今一度感謝しつつ、種々の調整に取り掛かった。
───諸々の処置を終え、『私』の故郷だった国の首都を発った日から既に数ヶ月。
今日も今日とて、品行方正謹厳実直な相棒兼親友と共に、
……まあ、結局『私』が私かどうかは微妙だったわけだが……もう『私』で良いだろ面倒臭い。
少なくとも私の主観じゃ『私』は私だ。私は『私』であるが故に私なのである。やかましいわ。
『私』云々より私にとって重要だったのは、我が
何が出来るか、何が飛び出すか長らく不明だった身体(?)の実態は、平たく言えば『出来ると思えば出来る。ただし制限あり。主に幽霊っぽいアレコレ限定』という代物だったことが判明。
そうと分かればと、色々『それっぽい』能力を作った後で、ふと閃いたのだ。
扱いの難しかった
《……ユズちゃんの意思に反するなら即止まる、ぐらいに調整できればと思ったんだけど、これがなかなか……うむぅ、ごめんねぇ》
「ふふ、気にしないで、レイン。お互い気兼ねなく食卓を囲めるなら、それが一番ですから」
なんだ、ただの天使か。……女神公認のプログラムと考えると私の方が『天使』? えぇ……。
まあ余計な思考はさておいて、引き続き【憑依】の調整だ。私は出来る。私にはー出来るっ。
……どこの自己啓発セミナーだよ。でも何も間違ってないから困る(困らない)。
これまでも緊急時の対応には割と活躍してきた能力、【憑依】。
その欠点、というか懸念点だったのは、私側が憑依した身体を動かす権利が強過ぎる事だった。
過去に質の悪い霊に身体を乗っ取られかけたユズちゃんにとっては恐らくトラウマど真ん中。
有用性は認めつつも、身体の操作については互いにおっかなびっくり利用していたのが実情だ。
逆にその辺りさえ何とかなれば、【念話】しかり利点は色々あるし普段遣いでも……というか、その話をした途端、むしろユズちゃんの方が乗り気になったんよね。何があったんや、しかし。
《うーむぅ…………私の中に終始する事なら、出来ると思えば出来るハズなんだけどねぇ》
「女神様にそう言われたんでしたね。……もう本当に、色々とレインらしいと言いますか……」
《……今更だけど、よく信じてくれたね? 我ながらトンデモなこと言ったと思うんだけども》
「え? それはまあ、だって…………レインですし」
なんなのだ、その信頼。どう受け止めれば良いのだ、私は。
……どうも『鑑定石』の一件が思いのほか響いていたらしく、『神様案件』でもしょうがなし、みたいな認識だったそうだが……これ私は喜んで良いやつなのかい、ユズちゃんや。
些かおイタをしていた『
すなわち私の正体(?)───『女神様にも想定外な幽霊っぽい挙動の……
ちなみにそれを聞いた直後には「……ほぇ?」と宇宙を背負った猫のような顔を披露してくれたユズちゃんでした。そらそーなる。私も逆の立場なら絶対そーなってた。
まあ『何か』とは言っても神様にすら不明、という意味ではなく、コレと言い表せる名前が無いという方向なんだけどもね。
加えて女神様から、私の状態についてなんとかしようかとも聞かれたが、現状に不満があるでもないので丁重に遠慮させていただいた、とも言ってある。……嘘は言ってない。
摩訶不思議、だと思ってた私ボディに関しても、転生云々除いて……重ね重ね可能な限りね。
……プログラムがどーのこーのなんて上手く説明できるわけないだろ、いい加減にしろ。
それから、この世に留まってしまった幽霊なる存在、およびそれらを成仏させるという行為が、神様視点でどういう扱いになるのかという辺りも話題に加えている。
曰く然るべき処理……往くべき途から不運にも零れちゃった魂をあるべき場所へと戻すに適う。
故に女神様的にもイケイケ(死語?)な行いだと聞いて、彼女も少なからず安心していた。
ただ、その……ユズちゃんのような霊感体質が、バグ(推定)という話はできてない。流石に。
今は吹っ切れてる様子とはいえ、幼い頃は相当深刻な悩みだっただろうし……。
というか把握してて下さいよ、女神様。ご自分の管理する世界の事やろがい。
《それにしても……この町では船を待つ間だけのんびり滞在する予定だったのに、息をするように依頼を片付ける事になっちゃったねえ》
「次の定期便の着発まで日が無かったですからね。とはいえ見てしまったものは仕方ないですし」
さて、そんな私達の次なる目的地は、大陸を半ば縦断する大河を国境に据えた隣国。
地図の上でも結構な太さの青線で描かれる河、それを定期に往復している船に乗るべく、幾つか設けられた宿場町の一つにやってきたのであった。……位置としては少し下流側だね。
現在両国の関係は特に人々の口の端に上る状態には無いようだが、それはそれ。
入出国する人や物を、乗客という形で把握できるのはどちらの国にとっても都合が良いらしく、所謂『太い筋』の支援を受けた大型船が、各町ごとに十数日という間隔で発着しているそうな。
……うん、実に上手くできている(謎の上から目線)。
そりゃあ、スリに優しい人混みや物流なんかも生まれるわけですなぁ。
「イヤ、どこに感心してるんですか。分かりますけど……うん、そろそろ良い頃合いでしょうし、港に向かいましょうか。わたし達は大荷物もありませんし、乗船まで時間はとられない筈ですよ」
《ほいほい了解。さーて、どんな感じの船が拝めるやら楽しみだねい》
雑談を切り上げ、席を立つ彼女に続く……つもりで私も腰(?)を上げる。
今も憑依中の幽霊()だからね。気分よ気分。
……船を見たいなら飛んでいけば良い? こういうのは二人で一緒に見るから良いんじゃんよ。
私なら……以前にも増して理解の及んだこの身体なら尚更、どこにでも行くだけは行けるけど、一人じゃどこまで行ったってしょうがないんだってーの。
…………いつかは『ひとり』になる? 百も承知だ、そんなこと。
そんな『遠い未来』、今から考えてちゃ人生楽しめやしないってね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
───河、という事実を知らなければ、疑問も持たずに見ていただろう水平線。
陽の光を眩しく写す穏やかな水面を滑らかに進むは、見上げんばかりの大質量。
《…………○イタニックかな?》
「(…………なんですか、それ?)」
《あ、うん、私の知ってる……劇的に沈没した船の名前》
「(……なんで今言うんですか、それを)」
乗船の為、あるいは物見に訪れた人々の前に停まる、巨体に見合わない静かさを保った木造船。
頭の遥か上にある甲板から、ゆっくりと降りてくる
《……ユズちゃん》
「(……レイン)」
どちらともなく、顔を見合わせた私達は。
「(一旦、宿に帰りますね、わたし)」
《おけ把握。調査は任せろー、ばりばりー》
出した結論に従って、一も二も無く動き出したのであった。
…………いや、うん、なんでかって言われても……ねえ?
その……私達にしか、分からないことなんだろーけど、さあ。
《あの船、
「(…………
というしだいでありますわけですよいやーまいったまいったあっはっはー……
はぁ…………
おい待てや
なにがあったん
この船は
レイン
テンプレパターン第n項、『幽霊(が一杯乗ってる)船』推参。
やっぱりファンタジーで船と言えばコレですよね!
しかしレインさん。これだと季語が無いので俳句じゃなく川柳ですよ。
ここは下の句を付けて短歌にしましょう。
ならぶ御霊に
語る口無し
Q. サラ嬢は? クリィサム領編は?
A. 今後思いついたら過去回想的な感じで書くかも(相変わらずのノープラン)。
……いやあ、過去の自分が広げた風呂敷がね。どうしたもんかなコレってなもんでして。
変に根詰めて更新できなくなるのも寂しいので今再びの見切り発車。どうかご寛恕の程を。