あんまり物語に動きはない相談回。
退屈に思わせてしまったら申し訳ありませぬ。
《───結局、彼らは近くで起きた事故等々の犠牲者なりや?》
「……どうも違う感じですよね。誰の記憶にも、それらしい情報は無さそうですし」
ちょっぴりの悶着の後、気を取り直し続くは聞き取り情報の精査。
返す返すも挙げるは最初の懸念、「今あの船乗ったらヤバイんじゃね」疑惑の追及だ。
ところが話を聞いてみれば皆さん、どうも画一的な経緯で霊になったわけではなさげである。
あれだけ大量の幽霊が発生した要因がすぐ傍にあるなら、何かしら対処なり回避なり考えなきゃならなかったわけだが、該当しそうな大事件の気配は影すら無し。
死の直前の記憶が多少曖昧になる事例を踏まえても、この可能性は無しとするしかあるまい。
《では、そもさん。あの船に幽霊が集まっていたのは偶然か》
「……せっぱ、でしたっけ? 理由は分からないながらも、それぞれの意思で船に乗る選択をした様子が伺えますね」
そしてコレが湧き出した第二の謎ポイント。
集まっていた幽霊達は大体が、他所から『なんとなく』あの船に集まってきていた。
ではそれ以前は? と問えば「人の流れに同行していたらこうなった」的な証言に終始した。
……転生(?)直後の私も、通りがかった商人さん一行に取り敢えずの同行から、大きな人里に着くまでは『なんとなく』憑いて行ってたっけ。
そう考えれば彼らの証言に取り立てて違和感は無い。無いんだけども……
《即ち、あの船は……幽霊を引き寄せ、その状態を保ち、さらには未練なく死んだ人間をも幽霊化させてしまう力を持った船だったんだよ!》
「…………な、なんだってー。……何なんですか、この流れ……」
おおう、乗ってくれた。半分冗談だったんだけど……ごめんごめん。
まあほら、真面目な空気で真面目に話し続けるのも疲れるやん? 適度に力抜いてかないとね。
さて、ここからは真面目な話───あの船に乗っていた幽霊は、誰も彼もが
私もユズちゃんに指摘されて気付いたわけだが、これは何よりも
未練を抱いて死ぬ、ないし様々な要因により
さらに特別な理由が無ければ、一週間と保たずに原型を無くす……それが、この世界の幽霊。
ところが今回『聞き取り』を行った彼らの中には、大した恨みつらみを抱く者など殆どおらず、そうした危機感を抱いていた者すらほぼほぼゼロ。
なーんとなく人の傍を漂って、なーんとなく船に行き着いて。
そして同じ境遇の霊達とも、なーんとなく雑談なんかしながらそこに居たらしい。
……そこはかとなく羨ましいな、オイ。
危機を感じていなければ畢竟、変に
生きた人間に気付いてもらおうと何かする、『延命』目的に驚かす、なんてことも必要だとすら考えなかったようだ。……考えてみれば、これもこれでちょっとばかし異常だな。
「……あ、いえ、ちょっと待ってください」
《お、異議あり? 異議ありな感じ?》
「…………やらなきゃダメですか?」
《やってくれないと私がさみしい》
「…………異議あり!」
《そこはこう、もっと指を伸ば「原因が船とは限りませんね! 彼らの話を思い出してください、レイン!」……ふぁい》
ちょいと調子に乗り過ぎたぜHAHAHA。
……で、船とは限らない? どういうことかね、ユズちゃんや。
「彼らは皆、
《……おお、確かに?》
「それでいて霊の発生源……出自についてはバラバラとくれば、考えられるのは───」
……なるほど。そこまでくれば私にも分かる。
二国間を往復する定期便。幽霊だって何もないとこから湧いてくるモノじゃない、となればだ。
《「───積荷」の方だね、怪しいのは》
揃った声に、にこりと微笑んだ彼女と頷き合う。
さてさて……
《……んでは再び、そもさん! はたしてそれは能力持つ一個人、ないし唯一つの物品なるや?》
「せっぱ。それなら集まった幽霊達が全員ひと所から、一斉に船に行き着いてないといけません」
《ほいではユズさんや。それはどちらの国にも当たり前にある物だと思うかえ?》
「……やれやれレインさんや。それならこれまでの旅路でもあちこち幽霊大行列の筈でしょう?」
《なれば青き真実にて、その品は万人が買い求める代物であり、多くの者の手に広く渡っている》
「え~……赤き真実。不特定多数の手に渡る扱いはされていない。理由はさっきと同じですね」
捜査(?)に浮かび上がってきた推定『霊寄せ品』について、お互い認識を確認し合う。
……「そろそろめんどくさくなってきた」? あいよ、ネタ振りはこのぐらいにしますかね。
おそらくは、あちらの国にしか存在しない、あるいはこちらの国では希少な『特産品』。
人工物か天然物かは不明。……後者だと思いたいが、霊関係の前者となると正に今ユズちゃんが持ってる御札も該当する。似た能力持ちが他に居ないとも限らんし可能性としては何とも言えん。
とはいえ霊達からは、あっちこっちで発生した彼らがあの船に集合した、という気配が伺えた。
霊的能力者、それも同じような効果を持つ品を作る者が、そう何人も現れるとは考えづらい。
やはりここはあちらで産出される鉱物か何かに偶々そんな性質がある、という方が自然だろう。
「……そんな品が存在するなんて聞いたこともありませんけど」
《そりゃまあ誰にも分からんだろうし。……特に実害も無さそうだからねえ》
集まった幽霊が何をすることもなければ、そもそも霊を集めている事に誰も気付きようが無く。
これまで私達が
あるいは何かの目的で密かに輸入してるとかも有り得るが……求めてるのが個人か組織なのかも私達には知りようもない。……何人か幽霊残しとけば行先を辿って特定できたか? でもなあ……
《さぁて、凡そ推測が出来たところで……どうしよっか?》
「…………どうしましょうね?」
概要を予想できたところで、じゃあ私達が何かするかって……何もないんだよね。
その『霊寄せ品』が非合法なブツとかならともかく国を挟んだ取引が問題無く行われてる時点でそんな心配の必要は皆無だ。……少なくとも、いち冒険者という立場からは。
大量の幽霊が……道から外れた魂が多量に出ちゃってる点については気になると言えばなるけど要因がソレなら昨日今日始まった事でもないだろうし。
あの船一隻分を成仏させたところで焼け石に水だった可能性が非常に高い。むしろ、これ以上の追及は考えるまで無駄まであるな。
「ところで一応ですけど、レイン自身は何かに引かれてる感覚とか無いんですか?」
《ん? うん。なんにもわがんにゃい》
「……ああ、流石は『幽霊(笑)』」
《『幽霊(笑)』!? 今となっては何も否定でけんけども!》
幽霊達の記憶からは、自分達が何に引かれていたのかは分かっておらず。
みーんな成仏させちゃった今、それがどんな物品なのやら特定する手段も無い。
……やっぱコレやらかしたか? いやいや、特定する必要があるのかって話よ。
もし本格的に、魂溜まり過ぎ転生できないヤバイ、とかなるなら
そこまでいくならそれはどう考えても、そっち案件な
世界がどうこう、魂がどうこうなんて、いち幽霊いち冒険者が背負うにゃ重過ぎますんでねー。
…………あれ、なんだこの既視感。なんか急に不安になってきたぞ?
またどっかから
「……念の為に【憑依】お願いできますか? ……あくまで念の為に」
あいさー。
「───しばらくは、この町で、いつも通り、活動しましょうか。いつもの事です……よね?」
うん、大丈夫大丈夫。いつものユズちゃんだよ、私から見ても。
聞き取りと情報精査に時間かかっちゃったし、今から船に乗ろうにも、おそらくもう席が無い。
……安全確認には幾らでも時間を使うべきだからね。仕方ないね。
だから次の船が来るまでの半月ちょっと、ここで冒険者稼業に勤しもうってのは、いつも通りの君ですよ、間違いなく。
元々いつまでにどこに向かうという明確な目標も期限も大して設けちゃいないのが私達だ。
ここで多少の『足踏み』があったところで何ということでもない。だよね?
……思えばホントとんでもねえ
女神様に『バランス調整』されて『三回目』に入った筈だけど、今頃どこでどうしてるかねー。
「……あ」
《おぅ、どしたの? このタイミングのソレは何かヤな予感するよ?》
「あ、いえ、大丈夫です。そういうのじゃなく……ええと、ちょっとした懸念なんですけどね?」
「もし、その『霊寄せ品』が、あちらではありふれた物だったりすると……河向こうは幽霊だらけなんじゃないかなって……わたし達から見ると」
…………わーお。
それなんて
Q. 「そもさん せっぱ」って使い方コレであってる?
A. レインさんのフィーリングです。
なんなら禅問答なんてミリしらで吹き込んだ疑惑。
Q. 「異議あり」って使い方コレ絶対違うよね?
A. レインさんのフィーリング。
こういうのは雰囲気が伝わればいいんだよ。などと当霊(笑)は供述しており……
Q. 「青き真実、赤き真実」って(ry
A. レインさんの(ry
これに至ってはネタ元すら(作者が)殆ど知らないまである。
当然、ユズちゃんは正しい元ネタを知らないのでツッコめません。相変わらず
でもやっぱり彼女も何だかんだ楽しんでるので誰も損はしてないのです。
ところで「そもさん」を変換したら一発で「作麼生」と出てきて割とビビリました。
コレいきなりお出しされて読める日本人、何人いるんだろう。