これって転生に入りますか?   作:非単一三角形

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 何だ神杖(アレ)(?)は?

 また精神操作(マイコン)なのか!?



C5-7 破壊の神、降臨……?

 

 

「…………もう一度、言ってくれぬか?」

 

 

 かつては士気高揚を目的として集会等に使われていたのだろう、大広間。

 石造りの砦に備えられたその場所で、一人の教団員から報告を受けた教祖は、呆然と溢した。

 

 眼前には動揺を見せる多くの信者達を、背後には虚ろな目で佇む三人の少女を控えさせて。

 つい先程まで大願成就を前に高揚させていた顔を、抜け落ちたような無表情へと変じながら。

 

 

「多くの、冒険者達が……我らを、誅罰せんと、この砦に向かっておる、だと……?」

「は、はい。……事を知り次第、可能な限り早くお知らせすべく駆けて参りましたが……おそらく既に、この近辺にまで迫ってきているかと……」

 

「……分かった。それは、良い。いや良くは無いが……事を急いたのは事実。いずれ不信心者共に嗅ぎ付けられるは時間の問題でもあったのだからな」

 

 凶報に顔を覆いながら、しかし浮足立つ教団員達を宥めるように、教祖は言葉を絞り出す。

 それにより場に漂っていた空気が多少和らぐも、その覆った手の下からは苦悶の呟きが続く。

 

 

「だが…………『巫女』の確保に向かった者達が、誰一人として戻らぬ、だと……?」

「……はい。どうやら後詰めの者達まで皆、町の警備隊に捕縛されたようで、連絡すら……」

 

「なんということだ……あと一歩で我らの宿願に手が届くというのに……!」

 

 

 教団が掲げる至上目的、主と崇める神の降臨。

 古より伝わる教典から、それを果たすに必要とされた品は三つあった。

 

 

 一つは、他ならぬ破壊神の砕けた御体───という『事実』が歴史の闇に葬られ、今の隣国では特別な価値は無い、という筆舌に尽くし難い扱いを受けている石、『御欠片』。

 

 二つ目は、その作成法について経典と同時代の文献に僅かな記述を残すに限られた『祭壇』。

 

 そして三つ目は、『魂を捧げる意志を持つ清らかな巫女』を、()()

 

 

「……いかがなさいますか、教祖様」

「…………ここまできて放棄など、できん。彼奴らがここまで来る前に儀を完遂する他あるまい」

 

 教祖の背に控える()()に、固い視線が誰からともなく注がれた。

 集まる眼にも嘆く面々にも動じる様子なく直立する少女達に、彼らの表情は不安に歪む。

 

 

「っ、しかし……あと一人『巫女』が足りないのでは……?」

「分かっておる。こうなってしまっては致し方ない───」

 

 

 

 

 

「儂が、四人目の『巫女』を務めよう」

 

 

 

 

 

 ───なに言ってんだコイツ?

 

 

 信者達の心内で声が揃った。

 

 目を向ければ、苦渋の決断、という風情を醸し出す教祖───髭面のオッサン(五十代)の妙に自信満々な立ち姿。

 暫し、互いの顔を見合った後、先の報告の為に先頭にいた団員が同僚の視線に負けて口を開く。

 

 

「…………あの、教祖様? 貴方様が『巫女』になるとは、どういう……?」

 

「うむ、そなたらの気持ちは分かっておる……しかし、しかしだ! 『魂を捧げる意志』、そして何より『魂の清らかさ』において、『巫女』の代わりを務められる者など儂以外におるまい!」

 

 

 

 ───どゆこと?

 

 

 再び揃う心の声。

 

 呆ける信者達が視界に入っているのか否か。教祖の独演は続く。

 

 

「儂としても大変に大変に心苦しく思うておるが、状況が状況だ。ここで惑って大義を見失っては元も子もない───」

「いえ、ですから教祖様。『巫女』というからには女性、それも少女とされる年頃の者でなければならないのではと……」

 

「む? 何を言うておるのだ? 我らの神が御所望されるは『魂』、即ち清らかなる信仰心こそが降臨の贄足り得るモノ。なれば誰より信仰滾る我が身が『巫女』の代わりと成るは道理であろう」

 

 

 

 ───そうかな? ……そうかも?

 

 

 三度、されど今度は微妙に揃わない無言の大合唱。

 各々の中に僅かな疑問は残るものの、こうも断言されてしまえば敢えて異を唱えるのも難しく。

 

 

「理解したならば儀の準備を進めるのだ! 急げ! 時は待ってはくれぬぞ!!」

「え、あ、はい、分かりました……え? しかし準備とは、これ以上何を……?」

 

 

 

 

「何を言うておる! 儂の『巫女装束』が無いではないか!!」

 

 

 

 

 ───マジかコイツ。

 

《───マジかコイツ》

 

 

 

「…………今、何か言うたか?」

 

「えっ、いえっ、何も!? ……なあ?」

「え、ええ……誰も何も言ってはおりませんが……」

 

 胡乱な眼差しを正面に受けた団員が、慌てて傍に居た同僚に確認しつつ首を振る。

 揃った意見に教祖は少しばかり首を傾げ、しかしそれ以上は言及することなく背を向けた。

 

 そうして彼が見遣るのは、三人の少女───『巫女』達の身を包む、見目にも麗しき装束。

 思考に沈み、時折頷く彼は果たして、その脳内に何を描いているのか。

 

 

「……仕立て直す時間は、無いであろうな。一番大きく仕立てた物で……ギリギリ、だろうか」

 

 

「「「…………」」」

 

 

 信者達が顔を見合わせる。

 

 途方に暮れたように。

 

 いや、ギリギリなわけないだろ。アウトだよ。……と書いてある互いの顔を眺めて。

 

 

 

 ───破壊神様の御降臨……

 

 俺達の宿願……宿願、なんだけど……

 

 

 

「……それでも可能な限り身は清めておくべきか? せめて、この脛毛だけでも……ぬぅん!!」

 

 

 

 ……()()で降臨されたら、なんか……ヤだなあ───

 

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「───見えたぞ! あれが儀式場になってるらしい広間の扉だ!」

 

 

 草木に浸食されたかつての街道を進み、古砦へと辿り着いた冒険者達。

 攫われた少女達を救うべく義憤に燃え、彼らは迷い無い足取りで古びた石床を駆け抜けていく。

 

 時期は町の閑散期。残っていた冒険者も他の時期に比べ、平均的な質は一段劣るが実情。

 それでも意気軒昂に、それでいて的確な進攻を選べる所以は何にかあらむ。

 

 

「……すげえな。マジで作戦前に()()()()()()()()の通りだ」

「砦の情報が古過ぎて、ギルドにも碌に資料が残ってなかったらしいのに……」

「ははっ! こんな先輩が、()()()()()()()()()()()なんて、俺達も運が良いぜ!」

 

 

「…………」

 

 事の立役者は、町に滞在していた冒険者の中でも唯一の『二つ名』持ち。

 偵察・探知に特化した『スキル』を所持する、押しも押されぬ中位冒険者(Dランク)

 

 鬱蒼と生い茂った林間の道も、歴史と闇に包まれた遺跡の中も、万里見透かす彼女の『耳目』にかかれば、さながら開けた平野を往くが如し───

 

 

 

「……過信はしないでくださいね? それと、接敵後は個々の判断で動くようにお願いします」

 

「「「ハイっ! 『狐鼠姫(こんちゅうき)』さん!!」」」

 

 

 

 異口同音に、溌剌と。

 年齢で言えば間違いなく目上の者達から、一斉に礼を示された少女の目が虚ろを宿す。

 

 

「(本当に、盲点でした。まさか、わたしの他にDランク以上の冒険者が居ないだなんて……)」

 

 

 冒険者として等級(ランク)を上げ続けていれば、そのうち、畢竟、行く行くは。

 そんな認識の上から突如降りかかった『統率者(リーダー)』の立場に気を遠くしたのも、今や数日前。

 

 誰の耳目にもかからないのを良いことに、笑い転げていた相棒の姿を瞼に浮かべ、首筋に浮かぶ青筋と反骨心を発条に気を取り直すこと幾許か。

 結果的には心の負担を削りに削ってもらっていた自覚もある手前、愚痴以上の苦情も出せず。

 

 

「(……まあ、いいです。今は速やかな邪教団の制圧と、被害者の救助だけを考えて……)」

 

 集団に紛れて走りながら、ちらりと。

 彼女の意識は、()()()()()()()()()()()()相棒の動向を掠めていく。

 

 どうせまた敵の頭目───今回は教祖か───の頭の裏にでも居るんだろう、等々と思いつつ。

 「頭より髭の方がフサフサしてたよ」という、「それを聞かされてどうしたら良いんだ」としか返せなかった情報が思い起こされ、思考の容量を無駄に使わされたりもしながら。

 

 

「(二度とこんなこと考えられないようなお仕置きを考えてる、とは言ってましたけど……今回はいったい何をするつもりなのやら……)」

 

 

 

「───全員、揃ってるな? そんじゃ……突入!!」

 

 適性から一番槍を任せられた者の合図に頷き、()()()()()()()儀式場へと雪崩れ込む冒険者達。

 半ば崩れるように開かれた両開きの扉の先、幾つもの人影が弾かれたように振り返り───

 

 

 

 

「来たかね。愚かなる不信心者達よ」

 

 

「「「…………は?」」」

 

 

 

 広間内部を目に映した冒険者達が、その意識を一様に空白に染めた。

 

 されど居並ぶ教団員達もまた、隙を晒す乱入者達に対し行動を取る者は居なかった。

 何故ならば彼らもまた、冒険者達に劣らぬ驚愕に思考を散らされていたからだ。

 

 

 

 ───彼らは、見上げた。

 

 古びた砦の、数十人を収容してなお余裕残す広間を()()()()()()()()()()()()()()()()を。

 

 

 

 ───彼らは、その身に受けた。

 

 黒い影、としか形容できない巨体から噴き出す魔力───ではない謎の力の奔流を。

 

 

 

 ───彼らは、理屈を超えて理解した。

 

 目の前にあるそれが、人知の外に属する存在───神と呼ぶべきナニカであることを。

 

 

 

 

 ───そして彼らは…………反応に困った。

 

 真正面に仁王立ちする、()()()()()()()()()()を着た髭面のオッサン(まだらな脛毛)に。

 

 

 

「……ふっ。流石に粗忽者共でも理解が及んだようだな。我らが神に拝謁を賜れた幸運に」

 

 

 

 ───そうじゃねえよ、オッサン。

 

 ───多分そうじゃないです、教祖様。

 

 

 雄大なモノを眼前に湧き上がる畏敬の念……を微妙に阻害する視覚の暴力(名状しがたきオッサン)

 色々な意味で動けずにいる彼らは、互いの心の声が案外近いことなど知る由も無く。

 

 そのどちらも見てるようで見ていない『巫女(髭面)』が、奇妙な静寂の中で一人喋り続ける。

 

 

 

「だが、些か頭が高いとは思わぬか? この威光を理解できたなら速やかに───ぬぐぉッ!?」

 

 

「「「あっ」」」

 

 

 教祖以外が動けずにいた理由の、もう一つ。

 それは、彼の背後でゆっくりと振り上げられている()()()()()の存在であった。

 

 一本が柱程もある指、と思しきものを二本立て、繰り出されたのは鞭をしならせるような一撃。

 当人としては全く予想外だったのだろう衝撃に、床に這い蹲った姿勢で呻きを漏らす教祖。

 

 

 

「なぁっ……何故、ですか我らが神よ……? この身に何か至らぬことが───おぶぅッ!?」

 

 

 

 ───ああ、やっぱりダメだったんだ?

 

 ───そらそうやろ、知らんけど。

 

 

 円を作るように曲げられた巨指が一拍の溜めを作り、やがて放たれるは第二撃。

 這う這うの体で身体を起こした教祖が球を弾いたが如く転がっていく様を前に、両陣営の思考は再々度の近似線を描く。

 

 

 

「わ、我らが神よ! どうか怒りをお鎮めくださ───げはぁッ!?」

 

 

 

「……どうする、アレ?」

「えっと……どうしましょうか、『狐鼠姫』さ───どうしたんです?」

 

「…………イエ、ナンデモ」

 

 今度は巨大な手が垂直に立てられ、尚も喚く教祖を叩き伏せるように三撃目。

 初めの衝撃と動揺はどこへやら、冒険者の中でも周囲に意識を向ける余裕を取り戻した数名が、この場における『統率者』に指示を請わんと振り返る。

 

 果たして彼らが振り返った先には、()()()()()()()()()()()()()()少女の姿があった。

 

 

「……そうですね。巻き込まれないように注意しつつ、敵の捕縛と被害者の救助に動きましょう」

 

「「「……は、はい!」」」

 

 

 ()()()()()()()()指示を出す彼女に、内心戸惑いつつも各々の行動を始める冒険者達。

 その様子を見守り、また自身も歩みを進めながら、少女は教祖の折檻(?)を続ける神(?)の姿に幾度となく物言いたげな視線を向ける。

 

 

 

 立てた二本の指から繰り出される鞭をしならせるような一撃───()()()

 

 円を作るように曲げた指から一拍の溜めを作り放たれる第二撃───()()()()

 

 垂直に立てられた手で叩き伏せるような三撃目───()()()()()()

 

 

 

「(…………わたし、コレ、どこからツッコめば良いの、レイン……?)」

 

 

 この場で恐らく唯一人。

 誰とも一致しない心の声を溢す彼女の耳に、教祖の呻き声だけが響き続けるのであった。

 





 ユズちゃん「抜く髪が無いからって何であんなところ(スネ毛)を……?」
 レインさん「いや、アレは知らん……」

 ツッコミどころは全てレインさんの所業だと思っているユズちゃん氏。まあまあ濡れ衣。

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