前回のあらすじ()
間違った信仰によって破壊の神にされた上に生贄用意してきた無法者に天罰落とすべく一般通過幽霊()の力を借りたらメ〇ガキ属性生やされた破壊神(他称)様の明日はどっちだ。
レインさん「……はい」
ユズちゃん「はいじゃないです」
レインさん「……
ユズちゃん「ろーでもない」
───その後の展開は早かった。
意気消沈という言葉を絵にしたような有様の教祖および信者達、そしてわりかし元気だった誘拐被害者女性達を引き連れて町へと戻った冒険者達を迎えたのは、大仕事の達成を称える賛美の声とたっぷりの報酬である。
事前の取り決めに従って頭割り───貢献度に甚大な差があるとして
《う~ん、素晴らしい人気だったねえ、麗しき
「…………助けてくれても、良かったんですよ?」
《おやおや、こんなしがない幽霊に宴の主役をどうにかできたと思うのかね?》
「……くっそイイ笑顔しやがって、このやろお」
とまあ、いつものじゃれ合いはさておき「レイン?」……ギルド併設の酒場を貸し切った一晩の宴会を経て翌日。下にも置かない扱いを受け続ける日々から漸く抜け出せたユズちゃんなのです。
そろそろ少しぐらい増長というヤツを覚えても、キミならバチは当たらんと思うのだがねえ。
「……まあ、いいんですけどね? 今回の事で次の昇級にも大きく近付いたそうですし、そもそもいつかはこういう機会もあると思ってましたから。ただ……」
《ああ、
話しながらユズちゃんが取り出したのは、彼ら教団員が持っていた『例の杖』、の一本。
この手の依頼において捕縛された賊から押収された品の所有権については、ある程度冒険者側も主張出来るということで、杖・教典・『御欠片』の三点セットを一つずつ受け取っておいたのだ。
また町への道中でもこれらの品について尋問……とまではいかないまでも比較的話の通じそうな信者を選んで質問してみたわけだが、そうして得られた情報も大して有用と言えるものではなく。
「……今ではもう、単なる短杖でしかないですね。彼らは、その……『破壊神』様? の力を杖に移していたという認識だったようですけど」
《この『御欠片』から『霊力』を移していたのは間違いないっぽいけどね。……ギリ霊能力者ではあったんだよなあ、あの教祖氏》
彼らが答えて曰く、杖の作成者は教祖様であるとのこと。
『御欠片』から『神杖』へ『神力』を充填……私らに言わせりゃ『霊力』を移してたという事になるわけだが、それにより握った者の意思に応じて『霊力』を発射する杖が出来ていた、らしい。
彼らからすれば、他人に向けるだけで従順な信徒が誕生するという、正しく『神なる杖』だったというわけだ。……巫女の『誘致』にしか使っていなかったのは主に教義的な問題だった模様。
「……生贄に御立腹されていた神様ということですし、御自身の力をそんな目的に使われていたとなれば怒りますよね、それは」
《だろうねえ。むしろ、力を『感じる』、『移す』って部分だけ出来ちゃったのが、誰にとっても不幸だったというか何というか……》
どうやら教祖氏、『見る』及び『聞く』能力はほん~の僅かにしかなかったものの、『霊力』を扱う力は本物だったようである。……だからこそ教祖なんてモノになれちゃったんだろうね。
尤も、見聞き出来ない以上、それが霊関連の何某だなんて夢にも思ってなかったんだろうけど。
言うなれば霊能力者Lv1ってとこだろうか。ユズちゃんをLv4辺りと仮置きすると。
思い違いで突っ走った挙句、当の信仰対象から
まさしく誰も幸せになれない不幸な擦れ違いというやつである。惜しい人を失くした……
「いえ、死んでませんでしたからね? あの人。……心は確かに瀕死でしたけど」
《少なくとも先日までの『破壊の神』に魅入られた彼は死んだのだ。これから心機一転、憚りなく陽光の下を歩ける人生を取り戻せる日が来ることをお祈りさせていただく所存でございます》
「…………まともに聞こえるからこそ質が悪い。心をヘシ折ったのは誰だと思ってるのやら」
HAHAHA───さて、そうして残された杖に『御欠片』なのだが、どうやら帰り際に『霊力』を回収していったみたいなのですよ、彼の御方。
それが証拠に、今になってどちらに触れてみても例の方と繋がる気配は全く感じませぬ。これはユズちゃんも同様だそうで。これ以上、悪用されないようにってことだろうね。
《……それにしても教典まで貰う意味あった? 読むの、それ?》
「まあ、一応……これは写本ですけど、教祖さんの持っていた原本は非常に古い本らしいですし、何かの手掛かりにはなるかなと」
《……はて、手掛かり?》
「ええ。……レインは気になりませんか? あの人達が破壊の神、だとしてたのが本来はどういう神様だったのか」
二品目、分厚い黒の教典……の内容を教団員一人ひとりが正確に書き写したという写本の一つ。
原本に比べ余計な装飾が無いぶん軽そうな見た目になっているが、それでも結構な厚さである。
しかし成程、あの
いやあ、ホント……何であんな発想出てきたかなあ、あの時の私!? 勢いって怖いよね!
……おっふ、ジト目で睨むのはやめようぜ、ユズちゃん?
ね、狙い通り厄介狂信者は消火出来たんだからええやないの! 当の神様も感謝してくれたし!
宗教関連、神様関連については参加した冒険者達全員が見たままを報告したわけだが、その場に居なかった人間に想像しろと言っても土台無理な話な訳で。
そもそも現場で見聞きした人間にとっても、彼ら邪教団が何をするところだったのか、いまいち理解が及ばないというのもまた事実であり。
一応の共通見解としては「愉快犯的な悪魔(?)が召喚され、喚んだ人間を散々おちょくったら満足して帰ってった」……といった感じの結論に落ち着いたようである。かろうじて。
しかし実被害は何も出てないわ、彼らが実行したという儀式(?)も一般的(?)な悪魔関係のソレとは似ても似つかないわと、これでもかなり無理がある帰結らしいが……真実は誰にも予想も説明もできないアレだし仕方ない。……仕方ないんですよ。ええ。
そんなわけで彼らが犯した罪として形になるのは、女性三名の誘拐、という点に限られる模様。
勿論、これだけでも与えられる罰は決して軽いモノでは無いわけだが、一般的(?)な賊の行う人身売買やら暴行殺人といった行いに比べれば軽犯罪に位置するには違いなく。
確認出来る限りでの十数日、誘拐監禁されていた女性達に暴行等の跡が全く無かった事もあり、彼ら信者達が再び娑婆を拝む日もそこまで遠くは無い……という域の刑罰に収まりそうなのだ。
───つまり、すなわち、それゆえに!
私が咄嗟に思い付いた
未来の犯罪を未然に防いでみせた私の慧眼と言っても過言では無いとおmジト目やめてぇ!?
「……ええ、まあ、そうですね。教祖さんは元より、比較的軽度の罰となりそうな信者の方々も、あの様子なら再犯の可能性は無いでしょうし……当の『被害者』が納得していたのなら、これ以上言っても仕方ありませんか」
《被害者て……いえハイ何も否定出来ないです、スミマセン》
残った三品目、拳半分程の『御欠片』を日に透かすように眺め、溜息を吐くユズちゃんです。
……実際、あのとき聞こえた感謝の声にも、破壊の神扱いよりはマシかなあ、って感じの空気が混じってた気もするし、また変に信仰歪めちゃったなら申し訳なくはある……のは確かだ、うん。
《……だけどもさあ、ユズちゃんや。ソレが『破壊神の欠片』って認識は、
「……そう、なんですよね。わたしは知らなかったですけど……警備兵の方々や、河向こうの国について詳しい方々にとっては
古砦から押収した品々の引き渡しの段にて私達を驚かせたのが、その一幕だった。
曰く、どこにでもとまでは言わないが探すつもりで野山を歩けば、そのうち拾える変わった石。
あの国以外で見られることはなく、さりとて特別な性質があるでもないので話のネタに拾う者が偶に居る、程度に扱われる代物。
そこで誰が言い出したのか、あちらの有名な逸話(?)とやらに準えて『破壊神の欠片』だの『悪魔の欠片』だのといった俗称が付いているのだそうで。
叩けば普通に砕ける石が大層な名を名乗ったもんだ、と話をしてくれた警備兵は笑っていた。
「レインに聞いた話の限り、そうした悪評とは対極にある神様のように思えるんですが……」
《……呪いの類を荒魂として祀り上げて鎮めた、みたいな例もあるし一概には言えんけどねえ》
勿論、本気で信じている人間なんか居やしない───あ、こいつらがそうだったのか。
……そんな寸劇を目の当たりにした私達が思わず渋面を作ったのは言うまでもない。
何せ真に迫ったものではないにせよ、彼の御方=破壊神が国単位の認識だという証左なわけだ。
破壊の神=邪神となるかはともかく、実際に言葉を交わした身として思うところは大いにある。
何がどうなってそんな信仰が固定されてしまったのやら……教典から何か分かるだろうか?
正直期待は出来んが他に手掛かりも無い。それに『御欠片』自体は本物だったんだし、何もかもデタラメが書いてあるわけでもあるまいて。
……ああ、それとそうだ。忘れちゃイカン。「霊が寄ってきてたのは彼の方の掌上外問題」……いや貴方が知らなかったら誰に聞きゃ良いんですか。梯子外すの止めてもろて……いや、こんなん言ったところで「知らんがな」案件でしょうけどね?
状況証拠から言って、『御欠片』が要因だったのは間違いない、とは思うんだ。たぶん。
信者達に河向こうの国で拾い集めさせてた事も分かったし、以前想定した『霊寄せ品(仮)』の条件にも凡そ合致する。
問題はそこに別の意思なり力なりが挟まってた可能性で……うむぅ、謎が謎を呼びおる……
「……どこまで参考にして良いのかも分かりませんけどね。まだ冒頭の部分を読んだだけですが、曰く『破邪の聖女』の力で砕かれた『破壊神』の肉体、だそうですよ。この───」
《えぇ、神の肉体て……いやいやフカすにも限度があるやろ、こんな───》
「黒い小石が」
《銀色の宝石が》
………………。
「……レイン、【憑依】を!!」
あらほらさっさァ!!
「───レインに憑依してもらっている間だけ銀色に見える……何なんですか、コレ……」
《解こうとする傍から、どんどん謎を追加していくスタイル勘弁してくれませんかねえ……》
What's this. ……Who are you. ───What does it mean?
Q. 要するに?
A. 与太話を真に受けて隣国の土産物でデタラメな儀式(笑)をした結果、面白がって寄ってきた木っ端悪魔(?)に鼻で笑われた連中、といった筋書きに。これはひどい。
Q. 現場の人間は神的存在認識してたのに悪魔扱いなの?
A. 神的空気を浴びた現場の人間はともかく、報告受けた方々には実感できません。
加えて狂信者は元より、現代日本人なレインさんは受け入れてますが、そもそも周辺国一帯は一神教が主流(C1-7より)のため、女神シャニムではない神を名乗る存在=悪魔です。無慈悲。
Q. これもしかしてレインさん達いなくても結果変わらなかったのでは?
A. ほとんど変わりませんでした。破壊神(他称)様による天罰ズドン√一直線。ただしこの場合、教祖以下信者達は全員、明日の朝日を拝めない身になっていました。再犯防止を重んじる御方。
二人の存在が果たして誰にとって幸運だったのか、見解が分かれるところですねー。
C5-6辺りからの『御欠片』に関する描写について。
地の文でも単に「黒い石」とは書かずに、その場の観測者にとって「瞳に黒く映る石」といった表現を逐一使っていたことに気付かれましたでしょうか。
その他にも今後使えそうな伏線を撒けるだけ撒くことに終始しました第五章なのでした。
さーて何からどうやって回収していったもんだろなあ(安定のノープラン)。
今更ですが、ユズちゃんの作者脳内ビジュアルはファン〇ム・ブレイブのマローネです。
幽霊と共に生きる女の子ということでイメージに据えていました。割と安直。
初登場時の外見描写でも結構意識していたり。……覚えている方いるんだろうか。
勿論クローネ√や、ディス〇イア出演時の清き心を落としちゃったver.は予定してません。
……してないよ? ホントだよ?
…………レインさん
これもアンケート取るべきか少しだけ悩んだんですが、作品コンセプト的に没としました。
またそれに伴い、頭だけ実体化させた「なんちゃって赤蛮鬼モード」で大暴れするレインさんも作者脳内にて敢え無く没案に。むべなるかな*よ。