新章開始。
そろそろ使いやすいストーリーの縦糸が欲しい……。
でも主人公達のモチベふわふわなのが、この作品の持ち味()だからなあ。
……なお本章、開始から数話は少々シリアス気味の予定となっております。ご注意を。
C6-1 出逢い多き新天地
───へえ、そんなに遠くから遥々この国へ? まだ若いのにすごいねえ。
冒険者? 本当に? ……あらまあ凄い。うちの息子達にも見習わせたいよ。どいつもこいつも図体ばかり大きくなっちまった甲斐性無しばっかりで……
ふむふむ……なるほど良いともさ、おばちゃんに任せときな。
この町の良い所、いっぱい教えてあげるからね。
───どうだい、立派なモンだろう?
この町に観光目的で訪れる人間への目玉になってるのが、この噴水広場さ。
中に立ってる石像が、この国を建国なされた初代国王様に聖女様。
そして、お二人が討伐したっていう、この地を支配していた悪魔の大将だよ。
王様と聖女様の像はどこにでもあるんだけど、悪魔の像まで作られてるのはここだけらしいね。
……噴水の前に居るあの連中かい? ありゃ『願掛け』をしてるとこだね。
硬めに焼いた黒パンを砕いて水に撒くんだ。なるべく小さく砕けばそれだけ運気が上がるのさ。
その昔、聖女様が悪魔を倒した後、そいつが蘇らないように身体を砕いて湖に撒いた……ってな逸話が元になって……ん? 破壊神? ああ、そうだね、その
あらま、一つ持ってたのかい? そうだよそれそれ、私は『悪魔の欠片』って教えられたよ。
なんならそいつも撒いとくかい? パンより運が付くかもしれないよ。……物好きだねえ。
───あ、そうそう、この町の神殿も中々のもんなんだよ?
流石に王都の神殿と比べると二回りは小さいらしいけど、この町は歴代の聖女様が避暑地としてよくご利用されていらっしゃるからね。
その間、寝泊りされることになるここの神殿は特別豪勢に作ってるとかなんとか……あははっ、確かに神殿が見るからにお金掛かってるってのはどうなんだろうね!
ま、私ら下々のもんにしてみりゃ、生まれ育った町に立派な建物があるのは誇らしいもんさ。
……聖女様かい? 何年か前に御年を理由に隠居なされたのが、十……何代目だったかね?
ああ、『破邪の聖女』と呼ばれた初代様から数えて、さ。……世襲制、と言えばそうかねえ。
なんでも当代の聖女がこの世を去ると、初代様から続く王家の血筋に聖女の証たる『スキル』を発現させる女性が現れるんだそうだよ。
それが確認され次第、新しい聖女様の誕生を大々的に公布するんだとか……私は直接見たことはないんだけどね。……何でってそりゃ、今の聖女様の方が私より年上だからねえ。
───こっちの道の先が冒険者ギルド。向こうの道をずぅっと進んでけば市場だよ。
丁度、船が来たところだし、それはもう賑わってるだろうねえ。
……ああ、この齢になると、あそこまでの人混みに入ってくのはちょいと辛くってね。
明日辺りになれば、もうちょっと落ち着く筈さ。見て回るのはそれからでも遅くないと思うよ。
……先に宿を取るのかい? そんなら反対側の……突き当たりにあるとこがオススメだよ。
あそこはねえ……息子夫婦がやってんだよ。ドラ息子が出来た嫁さん捕まえちまって、わたしゃあちらのご家族に申し訳なく思っちまったもんさ。
「───ありがとうございます。とても助かりました。……それで、その……つかぬことをお聞きするようですが……」
「わたし達の手で…………
《…………そうだねえ、そろそろ……それじゃお願いできるかい、
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
《……想像してたよりは少なかったね、幽霊》
「良いこと、と言えば良いことなんでしょうけど、ますます謎が深まりますね……」
海と見紛う大河を越えて、辿り着いたは新たなる国、その名も『マルミシア』。
遡ること数百年前、建国の旗頭でもあった『破邪の聖女』の名前から……この辺の
新しい町に足を踏み入れ、まずはどこに何があるやらの確認を……という矢先に出会ったのが、先ほどの年季の入ったおばちゃん霊。
……普っ通ーに話しかけてきたね。ある意味じゃ想定通りではあるんだけど……なんだかなあ。
《あー……あれだ。この辺の幽霊は、ひとつ前の船が出港したときに積んであった『御欠片』に引っ張られて一旦掃けたとかじゃない? さっきのおばちゃんはその後で幽霊になったんでしょ》
「……成程。
お勧めに従い向かった宿、見返り美人な女将さんに案内された一室。
腰を下ろしたユズちゃんが取り出すは、銀色……に今は彼女にも見えている小石もとい宝石だ。
霊を発生させ、霊を保ち、霊を活性化させる物品、『御欠片』あるいは『破壊神の欠片』。
この国にしかない品であり、余人に顧みられる代物でもないということだが……おばちゃん霊の様子からして、この近くにも一つか二つは転がってるんだろう、おそらくは。
今から凡そ一ヶ月前、コレを手元に集めて船に乗った連中が居て、その結果が例の幽霊()船。
そう考えれば色々と説明が───
……いや待てよ?
だとすると、この前の古砦の状態ですら、
だって建国時の逸話が史実だとすれば、コレ何百年前から……ダメだ。やっぱまだ謎が多いわ。
「……今ある情報で、これ以上は考えても仕方なさそうですね。わたし達に出来るのは、この国で活動する間に見掛けた幽霊を成仏させていくくらいでしょうか」
《だねえ。……私を見て『成仏できる』と悟る部分は変わらんみたいだし望まれるなら……あ》
「っ、どうかしましたか?」
《いや、そういえば聞き忘れてたなと。船の中で読んでた例の教典からは何か分かった?》
先日の邪教団討伐案件にて、報酬の一端として受け取っておいた教典、の写本。
船の中では特にすることも無かったユズちゃんは静かに船室でコレを読み進めていた───私は適当に乗員乗客の様子を覗き見して楽しんでいた───わけだが、何か新しい情報はあったかね?
……見かけた面白イベントは後でちゃんと共有したやん。そんな恨めしそうに見なさんなって。
「相変わらず暇とも退屈とも無縁で…………ええと、彼の神が何を以て『破壊神』なのか、どんな力を持って何を行う存在なのか、といった
《ほむほむ。まずは神的存在の言行が載ってなきゃ始まらんもんね。で、具体的には?》
「そうですね……文章だと変な装飾や美化も多くて分かり難いんですけど、まとめると───」
「ひとたびその腕が振るわれれば、忽ち天は裂かれ、地は割れ、海は干上がり、森は枯れ果てる。その瞳は只人の魂を侵し、喰らい、臓腑より繋がる永劫の闇へと堕とす……という感じでしたよ」
《……とりあえず聞いて良い?》
「……大体予想できますけど、なんでしょう?」
《前半と後半が繋がってなくね? 恐ろしさの方向性が全く違う件について》
「知りませんよ。わたしに言われても」
《あと全体的にめっちゃふわふわしてない? そこはかとなく取って付けた悪神感というか》
「だから知りませんって。……読みながら同じこと思いましたけど」
《そして何であいつらソレを信仰してたの?》
「知らんがな」
えー、なんていうか……えぇ~……?
私も宗教何某に詳しいとは言わんけどさぁ……もうちょっとこう……具体性のあるエピソードや教訓的な話が載ってるもんなんじゃないの? 知らんけど。知ーらんけども。
「あー……ありますよ、具体的なエピソード」
《あるんかい! ……内容は?》
「破壊神の瞳に映った人間の末路……と言うべきか悩むところなんですけど───」
「傍からはその人のままに見えていたが、あるとき突然の豹変。その実態は、かの方の瞳に映った時点で魂を喰われ、以降の彼女は破壊神が動かす人形に過ぎなかった…………みたいな?」
《……『破壊』に掠ってもなくね、って言う気だったけど待って何かちょっと既視感ある……?》
頭に浮かんだツッコミを口に出す直前、何やら記憶の片隅に触れるものを感じて首を捻った。
……破壊って言うか、乗っ取り系? なんかそんなヤツが前にも居たような……?
「そのエピソードに於いて事の切っ掛けとして出てきたのが……
《…………まさかの『指輪霊』!? え、待ってあいつコレ関係の何某だったの!?》
「……やっぱりレインもそう思います? 偶然、にしては気になる一節ですよね」
思わず素っ頓狂な声を上げた私を、頬に手を当てて見上げるユズちゃんです。
……いや、ホント……まさかの人物(?)が捜査線(?)に上がったなあ、オイ。
もう随分と昔の事に思える大事件、嵌めた人間の身体を乗っ取ろうとした『指輪霊』との遭遇。
結局アレが何者だったやら、今に至っても謎のままだったわけだが……こんなとこでその正体に繋がりそうな情報が出てくるとか予想外にも程があるべよ?
「ですが流石に本人(?)とは思えません。眷属か何か……さっき聞いた話では『悪魔の大将』と言われてましたし、手下の悪魔の一人だったとか……いえ、確証は何もありませんけど」
《いや……いや、有り得そうだよ、それ。たしかに想像でしかないけど、十三歳の女の子の身体を乗っ取って粋がってたヤツが、神関連やら悪魔大将やらだったって話よりはシックリくる》
ユズちゃんの推論を補足しつつ、重ねて私なりにも考える。
連中の教典では遥かな力持つ『破壊神』。もう一つの説が土地を支配していた『悪魔の大将』。
前者は単一の存在、後者は軍団の長。……ちぐはぐな能力描写はそこの差異のせいじゃないか?
なにせここは魔法があって、モンスターが居て、神様なんかも実在してるファンタジー世界だ。
建国に至った経緯が「ヤベエ奴を討伐した英雄英傑を旗頭に」とあっても何らおかしくはない。
するとその「ヤベエ奴」が、具体的にどうヤバかったかを後世に残そうとする動きは少なからずあっただろう。実際に英雄達を苦しめた能力とか、手下とか、そいつらとの戦いの様子だとか。
後の世で聖女だ勇者だと言われるような連中が戦えば、地が割れ云々といった被害が出ることもイメージできるし、悪魔というからには搦め手、精神攻撃に特化した手下だって居たかもしれん。
それらが何かの折に、単一存在の言行所業にまとめられちゃった結果として生まれたのが、妙にふわふわした悪神感漂う『破壊神』信仰……という説を考えたわけだが、どうだろうか?
「……なくはないと思いますけど……やっぱり、もう少し信頼できる一次資料が欲しいですね」
《だねぇ。結局今の時点じゃ、何処まで行っても羽ばたいた想像でしかない。でもそこはアレだ、悪魔との戦いの爪痕ー、とかなら観光名所として残ってたりするんじゃない?》
「あー……」
《そんでもってアレだ。その周辺に『欠片』が残ってたりとかすればさ。……居たりしないかな? 当時の事を見聞きした幽霊とか》
「……っ!」
普通なら有り得ん、だがしかし此処は、霊の存在を保つ物体が人知れずそこらに存在する国だ。
執念で数千という時を越えたいつかの女王様のように、誰かに事を伝えるべく魂を残した御仁とどこかで巡り合える可能性もゼロではない。……そう、私達ならね。
《まー、如何せん都合の良過ぎる想像だし、何も残ってない可能性の方が絶対高いと思うけどね》
「……良いんじゃないですか、それで。そのぐらいの調子でいるほうが、わたし達らしいですよ」
真面目な調子を明後日に放り投げて、二人でくすくすと笑い合う。
明日よりの旅路は果たして史跡の調査か、単なる観光か。ま、どっちでも同じこっちゃなー。
仮称『指輪霊』さん:出演時期 C3-9~C3-12
ここに来て遂に生えてきた設t明かされた(?)出自の背景。
レインさんを構成するプログラムに上書きされて消えた彼女(?)、皆さま覚えてますか?