これって転生に入りますか?   作:非単一三角形

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 (シナリオフックのつもりで書いてたけど、ゆるコメ路線で深堀は無理じゃないかコレ……?)

 (しかしここにきて放置するわけにも……これまでがっつり描写しちゃってるし……)

 (…………これ以上ドロドロし始める前に消費しとこ)


 というわけで今回はかなりシリアス寄りです。コメディとは(沈痛)。



C6-3 銀の輝き

 

 

 ───その日、一人の最下級(Gランク)冒険者が、昼下がりのギルドへと駆け込んだ。

 

 

 それが今朝方、薬草採取に出掛けた筈の少年だと気付いた者は極数人。

 自他共に認めるだろう無名の若人が勢いのまま向かったのは、採取物の買い取り窓口である。

 

 途中で出会したモンスターでも運良く狩れたか、はたまた何か珍しい物でも拾ったのか。

 傍目にも興奮している様子からして後者だろう───そんな視線を浴びているとも知らず、彼は懐から『それ』を取り出し、年季の入った木目の机へと転がしたのだ。

 

 

 

 泥に汚れた細腕には不相応極まる、()()()()()()()を。

 

 

 

 沈黙は一瞬、俄かに飛び交ったは悲喜交々の囃し声。

 喧噪の中で『幸運』の出所を聞かれた彼は、採取の途中で拾ったのだと淀みなく返答する。

 

 欲を掻き、秘匿を選んでいたなら要らぬ妬心も買っただろうがそこはそれ。勢いそのまま快活に経緯を語る彼に、ある者は毒気を抜かれ、またある者は二番煎じを夢見て傾聴の姿勢を見せて。

 

 

 

 そんな幕の一方で、窓口を担当していた職員は頭を悩ませた。

 

 

 冒険者が出先で見付けた貴金属を換金目的に持ち込むこと自体は珍しい事ではない。

 本来なら、そうした品を専門で取り扱う商店に買い取りを頼むのが筋であろうが、此処に集うは大多数が一山幾らの冒険者。そうそう大した伝手を持つ者など居る筈もないのだから。

 

 故に、仲介としての役割をギルドに求めた少年のそれもまた、多分に漏れない要求が一つ。

 されども彼の判断を鈍らせていた要因は、持ち込まれた宝石の()()()()()()()にあった。

 

 この場で買い取れないような値の付く品であれば、一度預かった上でめぼしい商家に声を掛け、現金化の目処を付ける必要が出てくる。

 でなければこの場で相応の金額に換えれば良いわけだが……果たして()()はどちらだろうかと。

 

 

 大粒、とはいえ法外な額が付くような代物ではない……ように思えた。

 だが希少性を理由に、指先程の一欠でも度肝を抜く値を誇ってくる宝石も少なからず存在する。

 勿論、この場(買取窓口)を担当する者として相応の知識は蓄えていたわけだが、それでも買い取り額の概算提示にすら至れずにいたのだ。

 

 

 何となれば───どこか神聖な気配漂う()()()()()など、聞いたためしすら無かったが為に。

 

 

 困った末に少年に断りを入れた職員が、奥に控える上司を呼び。

 部下に請われた彼もまた、己の知識に掠りもしない品に驚愕、更なる上役に声を掛け。

 結果として、一つの窓口に次々と集まった者が各々の見解を述べていく場が俄かに形成され。

 

 

 

「───『銀の宝石』?」

 

 

 そして、沸き起こったその喧騒から壁一つを隔てた場所に、もう一人。

 

 

 ()()()()()()を思わせる出で立ちに、武に生きた人間の立ち姿を兼ね備え。

 一瞬前まで存在していた温度の一切を、その怜悧な瞳から排して。

 

 耳に拾った言葉にはたと足を止め、鋭い眼光をギルドへと向ける女性の姿がそこにあった。

 

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 ───『建国の聖女』、『初代聖女』、『破邪の聖女』。

 何れも、ここ『マルミシア』という国に於いては唯一人を指す呼び名の一つである。

 

 後の初代国王となる勇者と共に、この地を支配していた大悪魔を討伐す───

 異口同音に現代へと伝えられた建国記には、僅かな人間にのみ知らされた『続き』が存在した。

 

 

 晩年の聖女に曰く、大悪魔を完全に滅ぼすには至れなかった。

 この手で千々に砕いたその魂は、今なお地の底で再生を続けている、と。

 

 

 思わぬ凶報に慄く若人達に、されど、と。

 伝記の上で『聖女マルム』は、重ねてこう語っている。

 

 恙なく再生などさせはしない。

 その魂に叩き込んだ術は癒える端から彼の者を刻み続けている。

 この地に我が力を継ぎし者ある限り、それは()()()()()となりて地に湧き続けるだろう、と。

 

 

 果たして残された御言葉の通り、今も国土内には奇妙な黒石がどこからともなく湧出している。

 聖女の血筋に継がれ、国を守り続ける御力により、容易に砕ける唯の石と化したそれが、だ。

 

 見付けた者がすぐさま砕くよう、逸話に準えた『願掛け』が生まれたのも同時代。

 なお、長い年月で少々の曲解が加わった愚にもつかぬ説も跋扈しているのだが、それらは何れも初代聖女の偉大さを何ら妨げるものではないため放置されているという。

 

 

「(嗚呼、偉大なる初代様。破邪の聖女マルム様よ。御身の加護篤き地に生を受けられたこの身の幸運に今一度の感謝を。そして───)」

 

 

 幼少より頭に刻んだ伝記を思い起こし、熱き信仰を口内に呟きながら女性は歩き出す。

 その胸に絶対の信心を抱き、()()()()()が待つかもしれぬギルドの扉へと。

 

 

「(その手が届かぬ者へと、貴女様に代わり神の慈悲を授けられる栄誉に感謝いたします!)」

 

 

 

 ───初代聖女の娘であり二代目となった聖女はある日、これらの秘を知る者を集めて告げた。

 母の力で()()()()()()()()()の存在を感じた、と。

 

 先天的、後天的を問わず、極稀ながら封じられし悪魔と『波長が合ってしまう』人間が居る。

 悪魔の力は抑えられているがしかし、その真髄は「()()()()()()()()()()()()()()()」こと。

 何かの拍子に、その邪なる手に堕とされ、世界に仇成す存在へと成り果てる可能性は否めない。

 

 

 故に───その兆候が見えた者に対しては、直ちに『救済』を行うべし。

 それこそが、母の守らんとしたこの地に生きる我々の義務である、と。

 

 

 

「(『銀の宝石』……あちらの集まり、でしょうか)」

 

 

 ギルド内部へと足を踏み入れた女性が、目に留まった人集りに当たりを付ける。

 つい先刻、そして今も中から漏れ聞こえてくる()()()()に従って。

 

 

 悪魔に魅入られ、その囁きが聞こえてしまうようになった者の特徴が一つ。

 それは、黒一色である彼の欠片が()()()()()()と主張することである。

 

 賢しくも悪魔は己が欠片を価値あるモノ、あるいは崇高なモノに見せるらしい。

 そうして見出した人間に欠片を集めさせることもまた、目的の一環と考えられていた。

 

 

「(しかし……これほどの人数が、一度に……?)」

 

 

 集団に近寄り、それぞれの顔を覗いたところで、女性は背を走る戦慄に目を見開く。

 これまで『救済』の対象となった者は極僅かな数に限られており、今回もまた例に漏れることはあるまいと考えていたからだ。

 

 『黒』の石を『銀』に見えると主張する者と、それを胡乱な眼差しで囲む大多数。

 そんな様を想定し、『救う』べき者を見極めようとしていた彼女は少なからず困惑を覚え───

 

 

 

「……ん? 何だお嬢さん、アンタも()()を見たいのか?」

 

 

 

 

 息を止めた。

 

 差し出された手に乗る、()()を目にして。

 

 

 

 何故ならそれは、紛れもなく───

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………神よ。汚穢に堕ちた()()()に───救済を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───え……? うわっ! 何やってんだアンタ!?

 

 ───自分の腹かっさば……っ! 錯乱してるぞ! 抑え込め!!

 

 ───な、なんだ!? 何の騒ぎだこりゃあ!?

 

 ───幻覚でも見てるのか!? 誰か急いで鎮静魔法使える奴呼んでこい!!

 

 ───くそっ、この出血量でどんだけ暴れ……! 仕方ねえ! ブン殴って気絶させろ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

《───とまあ、ギルド(あの中)は今そんな感じの騒ぎになってるようですたい》

「……ありがとう、レイン。……何がどうしてそんな……当分は入れそうにありませんね」

 

 

《だねえ。どうしよっか? いつもならついでに護衛依頼の一つも受けるとこだけど……》

「……史跡の情報は宿でも結構得られましたし、今回はこのまま街を離れちゃいましょうか」

 

 

《あいさ了解。訳の分からん騒ぎに巻き込まれちゃかなわんもんね。……で、最初はどこ行く?》

「そうですねえ……ここはやっぱり、悪魔と勇者達の最後の決戦場跡あたりが───」

 





【速報】救済聖職者、己を救済【しめやかにセプク】




 ……描いといてなんなのですが扱い難しいですね、こういうタイプの人物。
 悪人って言っちゃうと何か違うし……でも犠牲者は出ちゃってるわけで……

 …………とりあえずコメディを掲げて描いて良い展開ではなかったと反省中の作者です。
 悪いのは全て前話の裏ボスさんなのですよ。ええ。

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