これって転生に入りますか?   作:非単一三角形

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 そろそろ別視点も最後。

 もうちょっと遠回しな展開も考えてましたが、思ったより間延びしそうな気配が漂ってきたのでここらで『巻き』を入れることにしました。
 そのため普段より割と長い+説明台詞多めとなっています。どうかご了承のほどを。



C6-5 継がれた想い

 

 

「───では、あの三人の何れも未だ『聖女のスキル』を発現させてはいないのだな?」

 

 

 とある場所、とある一室。

 人目を避けるようにと誂えられたような小部屋に、訝しむような男の声が響いた。

 

 当代聖女の死去が、()()()()()の間に明らかとされてから数日。

 比率としては未だ少数に属する彼の前で、跪いた老人が胸に手を当てた姿勢で首肯を示す。

 

「はい、御三方とも『鑑定石』にて確認を行われたようです。……それぞれ自分以外のどちらかが発現させたのではないかと、城内で言い争っている様が目撃されておりますので、間違いなく」

「…………成程な」

 

 笑っていいのか、それとも呆れるべきなのか。

 発露させる感情に迷ったように虚空を見遣る主に、老人もまた曖昧に唇を緩めた。

 

 されど、辟易混じりの顔は即座に一転。

 どこか張り詰めた表情へと切り替えた男は、確信を乗せた声で腹心へと問いかける。

 

 

 

「つまり、あの()()は未だ三人揃って……()()()()()ということか」

 

「……ええ、皆様()()()()()()()()()()でございました」

 

 

 

 言外に含んだそれが何を意味するか、名言しないままに主従は視線を交わし合う。

 互いの瞳の奥に思考が巡る様を見遣ること十数秒。沈黙を破ったのは男の呟きだった。

 

 

「……『奴』の欲は深いようで単純だ。名声、注目……いつの世でも、自身が慕われているという実感を求めていたように見える」

 

「それでいて、『聖女像』に拘りでもあるのか、無暗に奢侈に流れることもなければ、徒に浮名を流すような真似もしない……毎度毎度、()()()()()()()()()品行方正になったらしいな」

 

「まあ、生涯禁欲に及べるほど殊勝ではなかったようだが……こちらが据えた椅子に満足して腰を下ろしていたことは明らかだった。……故にこそ、考えねばならん」

 

 

「───果たして『奴』は、何処へ行った? ……何か指針は得られたか?」

「恐れながら、推測の一助となるだろう報を掴みましてございます」

 

 

 主の呟きに答えるように、老人が懐から一枚の書類を取り出す。

 何処かへの報告書らしきそれを差し出し、姿勢を正した彼は重々しく口を開いた。

 

「こちらにあります通り、『奴』から今際の際に『私物』を託されたという聖騎士がおりました。聖女たっての願いで市場に流したと続いているのですが───」

「っ、……まさか、それが?」

 

「分かりませぬ。……『移る』際に必要な条件は、今に至るも絞り切れてはおりませぬゆえ」

「……こちらの疑心を悟らせるわけにはいかぬからな。……未だ推測だらけの伝書を見るたびに、先祖達が重ねてきた苦労が忍ばれて堪らんよ」

 

 

 余人の手へと渡った『私物』───()()()()()があしらわれた指輪───の行方を辿った結果を加えた報告書を受け取り、男は硬い表情で流し読む。

 物理的にも相当な距離を保ちつつ行われた追跡調査において、()()()()()()()を受けた者の姿は確認されず、との結論にまで目を通した彼は、今一度深い溜息を吐いた。

 

 

「……状況は分かった。引き続き慎重に調査せよ」

「ええ、心得ております。それでは御前失礼を───」

 

「ああ……あっ、待て、済まぬ。一つ確かめたい事があるのだ」

「……何でございましょう?」

 

 報告を終え、部屋を辞そうとしたとした老人を、やや焦りを含んだ声が引き留める。

 顔色一つ変えずに応えた従者に少しばかりバツの悪そうな表情を見せつつ、男は懐から小さな、しかし見た目に堅牢な作りが窺える箱を取り出した。

 

 

「先日、ある街のギルドにて、()()()()()()()()()()()の事を覚えているか?」

「……あの騒ぎですか。ええ、どうも酷い錯乱状態にあったらしいですな。事を聞いて駆けつけた同僚が場を収めたと聞いておりますが?」

 

「ああ、そこで情報は差し止めさせている。……もしやと、思うところがあってな」

 

 繋がりの見えない話題に無表情ながら困惑を滲ませる老人の前で、男は箱に備え付けられた鍵を確かな手付きで外していく。

 万が一にも、うっかり開くことがないようにとばかりの()()に、若干の苦闘具合を見せながら。

 

「……彼女の言は、己が魂は穢れに堕ちた、とのことだった。だが()()()()()()()()()()()()()()()()()を目の当たりにして、思い留まったのだそうだ。曰く───」

 

 

 

「『我々にも()()()()()()()()()()は真実、銀色の宝石に違いない』、とな」

 

「……っ、()()は、まさか……!」

 

 ここにきて、話の行き着く先を察した老人が、泰然としていた表情を驚愕に崩した。

 そんな彼の眼前で遂に小箱を開いた男は、どこか確信めいたものを込めて問いかける。

 

 

「さて、この『石』だが……其方には今、()()()()()()()()?」

「! ……『銀』、に。……では、これは……」

 

「ああ、そうだ。……私が()()()()()()()、『悪魔の欠片』だとも」

 

 

 目を見開き、思考を目まぐるしく弾かせている様子の老人に、男の口端が微かに上がる。

 その脳裏に浮かんでいるだろう推論に加えるが如く、「これもまた多大な推測に接がれた一説に過ぎんが」と呟いて。

 

 

「己が力に対抗し得る存在を炙り出すべく、()()の認識を阻害する術を国中に撒いている」

 

「湧き出る銀の宝石を、黒の石に。術の効かない者は即ち、背信の徒である……そんな『教育』を施すことによって、己を脅かす者の台頭を未然に防ぐ。……『奴』にしては頭を回したものだ」

 

「……『悪魔の欠片』そのものが、実際には何なのか。こればかりは全くの謎ではあるがな」

 

 

「…………ですが、今の状況から見るに……その術が解かれている?」

「可能性は高く思える。必要が無くなったということなのか、あるいは……」

 

 卒然と、紡がれた答えに老人の顔が一度気色ばみ、しかしすぐさま渋を含んだように歪む。

 窺える感情の動きに、男は深く同意を含めた表情で苦く頷いた。

 

 

「……我が国は今、『奴』の手から離れられ始めている、のかもしれん。その要因が定かではない以上、手放しに喜べることではないが……」

「…………」

 

「我らの国を、我らの手に取り戻す。今、我々は王族(我々)の悲願に、近付いている……と願うだけなら罪にはなるまいよ」

「殿下……」

 

 

「……とはいえ、楽観視するには遠い。引き続き調査にあたってくれ。くれぐれも慎重にな」

 

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「(───と、言った傍から何が起きたのだろうな、コレは……?)」

 

 

 報告を終えた腹心の老従者を見送り、自室へと戻った男。

 自身を除いた何者の入室も許していないその部屋で彼は今、呆然と立ち尽くしていた。

 

 

 ───幼少の頃より、予感はあった。

 

 何らかの意図、あるいは『懸念』から行われているのだろう、『銀』を『黒』に見せる術。

 対して、歴史上初めてだという、『黒』を『銀』と見ることができる王族の男児たる自身。

 

 

 ───何らかの『役割』が与えられているのだろう。

 そう考えたのは己に限った話ではなく。

 

 ───何かが起きるかもしれない。

 そんな願いから密かに集められていた『それ』は、この部屋に運び込まれていて。

 

 

「(だが…………()()は流石に予想外、だな)」

 

 

 膝丈まで積み上げられた、銀の宝石。

 彼の入室に反応するかのように、それらが光を放ったのが十数秒前。

 

 

 

『───見えテ……いまスか……? ……聞こえていマスか……わたシの、声が……』

 

 

 

「…………ええ、確かに」

 

 銀白の輝きの中に茫漠と浮かぶ、半透明の人影。

 ともすれば白昼夢とすら思える光景に、しかし男は奇妙な確信を胸に言葉を返した。

 

 これが、眼前にあるこれこそが、己に与えられた『役割』である。

 あるいは、己に流れる血が()()()()()()()瞬間こそが、『今』であると。

 

 

『……驚かせテ……ごめんナサい……ワたしは……』

「いえ、謝らないでいただきたい。貴女が何者であるか、どうやら私は()()()()()ようですから」

 

『…………エっ……?』

 

 男の言葉が、ゆらめく人影が湛えた超然とした威風に、至極()()()()()戸惑いを混じらせる。

 驚き目を丸くする『少女』に頬を緩めた彼は、臣下の振る舞いを真似るが如く膝をついた。

 

 

「ずっと、我々を見守ってくださっていたのでしょう? ……()()()()()()()()()()()()()()()

 

『…………『建国の聖女』が……()()()()()()()()()ナのは……事実、ダよ……?』

 

 

 蜃気楼のように薄く揺らぐ立ち姿からも確かに見える、若草色の髪に瞳。

 何故、という疑問の滲む顔を隠さず、されど否定も口にはしなかった『少女』へと笑みを向け、彼は滔々と()()に応えた。

 

 それは王家の、とりわけ王位を継ぐ者にのみ口伝にて継がれてきた、建国の『真実』。

 初代の王となった勇者と共に大悪魔と戦った『聖女』の、歴史に埋もれてしまった御名。

 

 年老いた『勇者』が深い悔恨と消えぬ慕情を込めて遺したと言われる()()()を、身に流れる血が望むまま、己が口を衝くままに。

 

 

「───魂を侵す大悪魔の力、それを退ける聖女の力。その両方を手にした存在に争いを仕掛けて勝てる道理など絶無……と、受け止めるしかなかった」

 

「それでも大悪魔との大きな違いは、適当に煽てて言い包めるという手を選択肢に入れられたことである。……我らの祖先も()()()()だと思いませんか?」

 

「初代聖女が……いや、歴代聖女が……いえ、やはり初代聖女ですか。あの女が、まともに国政に関わった事例など、ただの一度も記録にはありませんよ」

 

 

『…………そっかア……』

 

 

 喜び、悲しみ、感慨深さ。

 様々な感情が混じっているらしい声色で、『少女』が長い息を吐く。

 

 

「……ところで、こうして御姿を現すことができたということは、やはり……?」

『……うん……おネーちゃんが、()()()。……もウどこにも居ナイ……こうシて話ができルのも、そノおかげ……』

 

「っ! そうでしたか……しかし、『奴』の身にいったい何が……?」

『…………ちょット、ネ? ()()()()()……ンーっと……倒しテくれた、人達ガ……』

 

「なっ……!? 『奴』を、倒した? 誰……いえ、どこにおられるのですか、その方々は!? すぐにお迎えを───」

 

 

 

『…………()()()()()()()()()。……でモ、そっとしておいテ……彼ラは、名声や見返りナんて求めてナイ……というか、そもそも……おねーちゃんの事に気付いてもイないシ……』

 

「…………はい?」

 

 

 ある方向には予想の範疇。しかしもう一方では明後日を斜め上に越えた遥か彼方。

 何故か『少女』から言い難そうに告げられた言葉に、男の思考が白く濁る。

 

 

『だかラ……何も、無かっタ事にして? ……それガ、誰にとっテも一番ダと……思うかラ……』

「…………しかし、それでは貴女は……」

 

 

『……()()()()()()()()()()……何モ、間違ってナイでしょウ……?』

「……っ」

 

 

 聖女を騙る『聖女』によって信じられてきた御題目。

 それを()()()()()()()()()と、言外に含ませた『少女』に、男は息を呑む。

 

 滅ぼされた『悪魔の長』あるいは『破壊の神』と、捻じ曲げられた認識を与えられて幾星霜。

 それでも『聖女』に代わり聖女たらんとする意志を正しく理解した彼は強く拳を握り、解いた。

 

 

「……分かり、ました。これからも、貴女様に恥じることの無い国を保つとお約束いたします」

『……うん……頑張っテ、ね……』

 

「はい……どうか聖女様も、心穏やかに過ごされますよう……」

 

 

 

 

 

 

 

「…………聖女様? どうかされましたか?」

『……チょっと、最後ニ……聞きタイことがアったのを……思い出シて……』

 

「は、はあ、何でございましょう?」

『…………えっと、ネ……?』

 

 

 

 

 

『───女の子に……イジメられて……喜ぶ男の人って……本当ニ、居るノ……?』

 

「…………は?」

 

 

 

『……なんでもなイ……忘レて……』

「いや無茶言わんでください。え、待っ……何て?」

 

 

 

『…………ちょっと、前に……ヘンタイサン? といウのを聞いテ……気にナって……』

「ヘンタ……変態、ですか。どこでそんな……いえ、何でまたそんなものを……」

 

『……居ない、ノ?』

「いや、まあ…………居ない、ことも、ないですが。そういう輩も、居るところには、ええ……」

 

『……居ルン、だ』

「……ちょっと嬉しそうに聞こえるの気のせいですよね? というか何の為にそんな……」

 

 

 

『……涙目で蹲るオジサン……カワイイなって……』

 

「………………は?」

 

 

 

『…………なんでもなイ……忘レて……』

「だから無茶言うなや。……ちょ、聖女様? さっきからあんた何言ってんですか?」

 

 

 

「……あ、あれ? 聖女様? 急に薄れて……」

 

「あの……ちょっと……」

 

「…………」

 

 

 

 

「……誰だ、あの方に余計な知識吹き込んだ奴はぁっ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《───んへぁ?》

「……レイン? 何の声ですか、今の」

 

 

《んやぁ、なんか……くしゃみが出そうで出ないアレを、くしゃみが要らない幽霊(笑)ボディで再現すべく、毎度お馴染みトンチキボディが何かしようとする気配だけ出した……的な?》

「逆によくそこまで言語化できましたね? どんな感覚なんですか、それ」

 

 

《まあまあ気にするでない。そんなことより、次の目的地は決まったかい?》

「んー……近いのは北の村か、西の街かなんですが……特に決め手が無いんですよねえ」

 

 

《ほう、ならば……敢えてこの南の都市とやらを推そうではないか。特に理由は無いけど!》

「……うん、もうそれでいいや」

 

 

《えっ、良いの? 半分以上冗談だったんだけど? ちょい遠くない?》

「大して変わりませんし大丈夫です。ほら、出発しますよー」

 





【速報】破壊神(仮)改め初代聖女(真)様、『扉』を開く【ハイクを詠め、レインさん】


聖女(偽)さん「毎回、同じようなジャリガキばっかなんだけど? マジうざい」
マルミシア王家「(お前の直系子孫なんだよなあ)」

 王家に生まれ、相応の教育を受けるハズの第三王女ちゃん(および姉二人)が()()で許されてた理由も、まあ……そういうことですね(香り立つ闇)(国の為には致し方なし)。

 建国の折より隣に潜む『バケモノ』と、何世代にも渡り戦い続けてきたマルミシア王族。
 その連綿と続いた決戦の幕引きは、通りすがりの幽霊(笑)との『接触事故』となりました。
 これには歴代王族の皆さんも草葉の陰で愉快喝采苦笑い。


 そんなわけで、ちょっと強引に巻きを入れて色々回収しました今話でした。
 試みとしては書いてて楽しかったんですが、なかなか加減が難しいなというところ。




 というわけでテンプレパターン第n項、

 ・特上の才を持つ妹(姉)に嫉妬する姉(妹)
 ・天然サイコパス or 性根悪魔系妹
 ・ドアマットヒロイン
 ・スキル強奪系スキル

 これらを(ちょいと強引に)まとめてノルマ消化致しました本章なのでした。
 あと使ってないテンプレネタって何があるかなあ。




 ちなみに、各キャラ名の由来は以下の通りです。

 ・マルム(古の大悪魔をドン引きさせる系裏ボスさん)
  malum:ラテン語で『悪』

 ・マリータ(天然サイコ? それとも自覚あり? 系第三王女)
  malitia:ラテン語で『悪意』

 ・ヴィクティーマ(無自覚だった(ヘキ)が目覚めちゃった? 系真・初代聖女)
  victima:ラテン語で『被害者』

 う~ん、ド直球。

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