これって転生に入りますか?   作:非単一三角形

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Q. 随分時間空いたけど?
A. 前回更新ちょい前辺りでリアルにクソ忙しくなる予兆が見えてた。クソ忙しかった(怒)。

 その辺りの事情が漸く山場を越えた報告がてらの一話更新。
 とはいえ書き溜めもプロットも綺麗に払底しとりますので、次回はまた当分先の予定なのです。



C6-7 ハズレ?

 

 

「───本当にありがとうございました。お世話をおかけしまして……ほら、あなたも」

「……うん。おねーちゃん、ありがとう!」

 

「ふふ、どういたしまして。今度は一人で歩き回っちゃダメですよ?」

 

 

 ぺこぺこと頭を下げる女性に、その手をしっかり握ってにっこり笑顔を咲かせた女の子。

 やや舌足らずながらも微笑ましい感謝を受け取るは、このたび新能力に目覚めし我が相棒。

 

 何があったと問われれば何ということもない。

 都市としては特筆するでもない喧騒の中、途方にくれていた二人分の『助けて』を通りすがりの霊感少女および幽霊()が聞き届けただけの話だ。

 

 母娘を無常にも切り離した人混みとて、我らの前では何するものぞ。

 彼岸の淵から手を引かば、此岸に花にぞ咲きにけれときたもんだ。

 

 

《何時の時代、何処の世界でも、子供の泣き声は耳と心に響きおる。それだけに笑顔と感謝はまたひとしおってね。いやはや、実に便利な身体になったもんだぜ。はっはっはー》

「(…………これだからなあ)」

 

《ん? どうかした?》

「(いえいえ何も。……便利な力。うん。それでいいや)」

 

 

 雑踏の中へと消えていく親子の背を見送ること暫し、横から何か聞こえた気がして振り向けば、何やら久方振りに見る気がする吹っ切れた様子のお顔。

 はて、なにが琴線に触れたかは分からんが……ここ最近の心労が晴れたのならええことですよ。

 

 

 

 

《さて、そろそろ()()は一通り終わったかな?》

「(そんなつもりがあったわけではないですけどね。でも確かに、概ね掴めてはきましたか)」

 

 所を変えて、とある酒場の一席。

 ほどほどに賑わう店内に腰を落ち着けたところで、ひっそり【念話】し合う我々なのです。

 

 いつの間にやらユズちゃんの身に生えていた空前絶後の(語感を誇る)新スキル『救世者』。

 発覚の際には悶着(主に精神的な)もあったわけだが、生えてしまったからにはそこはそれ。

 効能に関する様々な検証(ほぼ普段通り)を経た今、その仕様の凡そは明らかとなった。

 

 

 まず一番は主となる挙動。何処からか『助けを求める声(?)が聞こえる』。

 ……必ずしも声である必要は無いようだ。明確な言葉にならない叫びや無言の慄きでもどうやら『聞こえた』らしいので。

 

 しかして真っ先に意外な点として挙がったのは、その『聞こえる』精度の()()である。

 ヒーローイヤー(ear)は地獄耳……なんて一節はともかく、どんな小さな困窮の声でも見逃さないのが『救世者(ヒーロー)』じゃないんかいと、突っ込みを入れたのが事の始めだった。

 

 

「(……蓋を開けてみれば、()()で良かったと言わざるを得ないんですけどね)」

《さもありなん。……仕様次第ではエライ事になってたよね》

 

 

 されどもそんな肩透かし評価も何と言うべきか。都市規模の街に寄った瞬間、変転を遂げる。

 ……何があったかって? そりゃおめえさん、千だか二千だかの集団が暮らす中で大小問わずに『助けて』なんて集めちまった日にゃ、どんな数になるやらってな話よ。

 

 より具体的には冒険者ギルドに貼り出された求人(?)依頼書を見上げたときだね。

 当然、今までも当たり前に目にはしてたわけだが、その総数になんて意識を向けたことは無く、もしコレ全部『聞こえる』ようになってたら……と考え始めてゾッとしたそうな。

 言われて私も思わず硬直したよ。常人なら鬱まっしぐらだ。やっぱりヒーローってしゅごい。

 

 

 さて、そうなると次に気になる点がコレ、どんな『助けて』に反応してるのか。

 パッと思い付くのは切羽詰まった、あるいは真摯な願い辺りが浮かぶわけだが……

 

 

 

 今回の、人混みの中ではぐれちゃった女の子、およびそのお母さん。

 うむ、緊急性でも想いの強さで考えても納得しかない。

 

 

 ……デート前夜の青少年。

 いやまあ、必死さで言えば案外上位に来とった説は無きにしもあらずだが。

 

 

 …………そのお相手疑惑のあった、言い寄られて迷惑してるという少女。

 まあ、その……本人的には真に迫るアレだったのかもしれんね。雰囲気ダルダルだったけども。

 

 

 

「(依頼者を目の前にしても聞こえたり聞こえなかったりですし、挙動が安定しないというよりは初めから無作為なのではという印象ですね)」

《そんで次々聞こえてくるわけでもないんでしょ? 遅延時間(クールタイム)でも設けてあるんかねえ》

 

 なんかもう、一定時間ごとに範囲内にある『声』をランダム抽選、ぐらいの感覚まである。

 ……そういうデジタルっぽい処理のが逆に有り得そうだしなあ、この世界。前提知識マジ大事。

 

 

 そして三つ目となるのが……大体の位置や距離が分かるだけ、という点である。

 どんな『助け』が求められてるか分からん、という部分については私が確認に飛んでいけば割となんとかなるんだが、問題はそれだけには留まらぬ。

 

 先程のように、恙無い人の流れの中にほんの数人、まごついている母親や蹲っている子供の姿があったなら一目瞭然。なるほど『出元』はあれなのかと判断がつくわけだが───

 

 

 

 

 

「───ワット。お前を、このパーティから追放する」

 

「…………え?」

 

 

 

 

 

 ……賑わい止まぬ店内、すぐ隣の四人席。

 とりわけ大声でも無かった為か、()()に気付いた人間は未だ僅かばかりで。

 

 

「ちょ……ちょっと待ってよ、トーマス! ……冗談、だよね?」

 

「……悪いがこれは決定事項だ。俺達三人で話し合った末のな」

「ああ……これまでずっと不安に思いつつも抑えてきたが……そろそろ限界だ」

「ええ……もう、これ以上は背中を預けていられないの。分かってちょうだい」

 

 

 ここから見えるはテーブルを囲んだ、冒険者らしき四人の姿。

 聞こえてくる声からも沈痛さが窺える三つの背に、焦りを滲ませる青い顔一つ。

 

 

「う、ウルザ……ヴァネッサも……なんだって急に、そんな……」

「……『急に』、だと? 俺達は何度も言ってきただろう……お前は、いい加減に───」

 

 

 

 

 

 

「依頼達成の翌日には素寒貧で帰ってくるのを止めてくれ! もう何度目だと思ってるんだ!?」

 

「……自分の取り分からしか使ってないだろ! 好きにさせろよ!!」

 

「用途次第ではそれでもいいが、お前は毎回賭場でスッてるだけだろうが!?」

 

「いつかパーティ名義の借金でも作ってくるんじゃないかって気が気じゃないのよ!?」

 

 

 

 

 

 

《ああいうパターンだと、果たして誰の『助けて』が聞こえてきたやら分からんのだよね》

「(そして助けを求められても困るんですよ。自分達でどうにかしてくださいとしか)」

 

 

 言い方を選べば愁嘆場。とある界隈の言葉を使えば導入規則(テンプレート)

 『声』に引かれて何が始まるやらと構えていた視線の先にて巻き起こった『風物詩』に、思わず白けた眼差しを向けます我々です。……マジであるんだね、ああいうの。

 

 まあ考えてみればアレだ。どんな理由で始まったにせよ、集団で行動を続ける内に不和が生じるなんぞ珍しい話でもなんでもない。

 でもって学校行事で作らされた班じゃないんだ。原因がハッキリしてるなら尚更、なるべく早い是正に動くのは当然とすら言えるか。

 

 

 ……というか、そういう話ならもっと早くから追い出せんかったんかね。

 全員から再三咎められてるのに反省の色すら見えないレベルのギャンブルキチとか絶対一緒にはやってけないヤツじゃん。音楽性の違いどころじゃないもんよ。

 

 

「ぼ……僕を抜いて、この先やっていけるの? 今まで僕が担当してた役割は───」

 

「安心しろ。お前が抜ける穴を埋める人材については、ギルドで募集を掛けて話はまとまってる」

「これまで溜めてきた共有資金から、斡旋にかかる手数料諸々を捻出してな」

「私達には計画性ってものがあるのよ。あなたと違ってね」

 

「っ、う……」

 

 

 縋るような言い分をバッサリと切り捨てられ、萎れた様子で視線を落とすギャンブルキチ男。

 ……しかし成程、人材斡旋かー。ギルドもそういうのやるんだね。まあ有料みたいだけど。

 

 散財癖だか依存症だかは知らんが、抜ける穴を気にしなきゃならんかった辺り、冒険者としての実力はしっかりあったんだろうね、彼。

 ただ追い出すだけじゃ、後に不安があったから資金が溜まるまでは我慢せざるを得なかったと。

 うん。それはそれでストレス溜まってそうやなー。

 

 

 

「…………ねえ、その人材募集に掛けた費用って……この前、僕が『宝探し』スキルで()()()()()()()から出てるんじゃないの?」

「「「っ……!」」」

 

 

 ……ん?

 

 

「僕が僕のスキルで手に入れたんだ。本来なら僕一人の取り分になるところを、これはパーティで手に入れた物だから、なんて言って強引に頭割りさせて……その金で僕を追い出す気なのか?」

「「「…………」」」

 

 

 おっと、話がややこしくなってきたぞ?

 

 確かに追放用の資金の源が追放対象者ってのは実に聞こえが悪い。追放する側の三人にしても、後ろめたい事した自覚は大いに持っておられるご様子。

 ……いやまあ、だとしてもそもそもの追放理由が残当過ぎるんで形勢逆転とはならんがな。

 

 

「(……いえ? パーティとしての行動の中で手に入れた品であれば、普通はパーティの取得物と扱いますよ? じゃないと斥候役が宝物を独り占め、といった行為が横行してしまいますし)」

《あ、そういうもん? じゃあ糾弾される筋合ないやんけ》

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()が、パーティの取得物だって? こっちに負い目があると思って都合の良いこと言って……蓋を開けてみればコレなのか!?」

「う……うるせえな!? 今まで『悪魔の欠片(ゴミ)』にしか反応しなかったハズレ(ゴミ)スキルで、たまたま宝石拾ったからって良い気になってんじゃねえよ!?」

 

 

 

《……とのことですが、判定は?》

「(ん、んんーー……? それだと、いや、でも……うーん……?)」

 

 我らが常識&良心回路、困惑中。

 しっかしまー、ハズレ(ゴミ)スキルて。どこまでも『お約束』を踏襲してきますなあ、オイ。

 

 

 

「たまたま、か……じゃあ、()()()()()()()()は全部僕のモノで良いよね?」

「「「……なっ!?」」」

 

 

《おおっ?》

「(……えっ)」

 

 返す刃が如く、見せつけるようにテーブルに転がされたのは、()()()()()()()()()()が三つ。

 私達から見える三人の背中から、少なからず葛藤に揺らいでいる気配が滲み始める。

 

 ……イヤ、しっかり致せ、御三方ー。

 泡銭稼いでくる才能(スキル)はあるかしらんが、銭という銭を泡沫(あぶく)に換える輩やぞ、其奴。

 

 

「……なんだよ? 何か文句でもあるの? これから僕を追い出すお前らには関係無いだろ?」

「ぐ……」

 

「でもまあ、それなりの誠意を見せてくれるなら、僕だって考えなくも───」

「……バカ言わないで! たとえ千金積まれたって、あんたなんかお断りよ!!」

 

「な……!? ……分かったよ。後からお金に困って謝ってきたって、もう遅いんだからな!?」

「余計なお世話だ!! その宝石(カネ)だって、どうせ明日にはギャンブルに消えてんだろうが!?」

 

 

「馬鹿にするなよ! 今日こそは勝ってやるんだからな!!」

「「「《いやギャンブルを否定しろよ》!?」」」

 

 

 

「(……宿に戻りましょう、レイン)」

 

 せやねえ、もうどーでも良くなってきたし。傍から見る分には楽しめなくもないけど。

 ……え、違う? 急いで確認したい事ができた? そりゃまたなんじゃらホイ。

 

 

 

 

「(今回、『()()()()()()()()のは、()()()()でした。……彼らの内の誰でもなく)」

 

 

 

 

 …………。

 

 ……な、なんか最近多いね、こういうの。説明ぷりぃ~ず(Please)

 





・トーマス、ウルザ、ヴァネッサ、ワット

 頭文字 T,U,V,W から1分で考えた名前。主にノルマ消化の為に登場。
 しっかり四人全員に名前まで付けといてアレですが多分もう出番は無いです。たぶん。


 初代聖女ちゃんが二人の間に挟まってバリバリ喋る世界線も案としてはありました。
 皆様ご存知の通り『三人目』の追加は作者が解釈違いを起こして没となりました。ごぬんね。

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