これって転生に入りますか?   作:非単一三角形

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 今章の三人娘なんですが、実は作者が以前途中まで書いて諸事情から没にした二次創作作品にて設定していたオリキャラの流用だったりします。
 またその中でも当時と殆ど設定に変化が無いのが、フィジカル強者系不思議ボクっ娘ちゃんことA子ちゃん。そんなわけで、ちょっぴり思い入れがあったりなかったりするのです。

 なおBとCは凄く普通な騎士見習いと魔女っ子ちゃんでした。どうしてこうなった。



C7-4 露天地雷

 

 

「―――我らが栄光の元に馳せ参じる名誉をくれてやろうと言うのだぞ? 其方ら揃いも揃って、これがどれほどの幸運かも理解できない阿呆しかおらぬというのか!?」

 

 

 

 

《…………あれはナ〇シーですか? いいえ、あれは下駄箱です》

「(じゃあ、ここにある下駄箱は……じゃなくて。……いえ、しかし、何でしょうかね、アレ)」

 

 

 場所はギルドのど真ん中。無数の視線を総身に浴びるは、騎士……っぽい銀色鎧兜に身を固めたおヒゲのりっぱなおっさん、約一名。

 集う観衆は我々に加え、日々ダンジョンへと挑みて糧を得ている地元の、あるいは周辺地域から来訪している冒険者の方々に、毎日お忙しく働かれるギルド員の皆々様。

 

 威勢の良い声で『奇っ怪な鳴き声』を放つ生命体を彼らと共に生暖かく……暖かさはいらんか。生冷たく(?)見守る我々でありましたとさ。はあ、めでたしめでたし───

 

 

 

 

「―――貴様らゴロツキ崩れ共には望外の僥倖にあろうが!? さあ、この言を耳に入れたなら、直ちに旗下に加わらんと参集せぬか、この薄鈍どもめが!!」

 

 

 

《…………山向こうの国の騎士団、らしいね。周りのヒソヒソ声から察するに》

「(ああ、道理で見覚えのない意匠だと……山の、ということは『ソルカデル王国』ですね)」

 

 とまあ、現実逃避しているわけにもいきませじ。

 今日も今日とて情報収集を担います真面目な幽霊()レインちゃんなのですよっと。

 

 周囲に囁かれる噂話を聴取()してみりゃ曰く、騎士っぽい出で立ちは見せかけではない模様。

 言動以前に違和感があったのは、所属国の違いからくるそれであったか。……いやいやしかし。

 

《そこな方々の職務にゃ『冒険者に喧嘩を売ること』が含まれてたりするんかねー?》

「(そんなばかな、ですよ。それこそ)」

 

 憤慨全開ながら元気に喋り続ける口髭のおっさん。その背後には整列した同色鎧兜が三、四十。

 それなりに統率のとれた一小隊……で良いんかね? 異国の騎士小隊の御来訪に沸いてたらしい迎えた面々へと初手でぶっかけられたは冷や水超えて氷水。マジ何しに来たんや、こいつらは。

 

 

 ……そういえば『王国』なの? 『帝国』とか『皇国』じゃなく?

 いやほら、界隈だと大体こういうのって後者のどっちかが一般てkげふんげふん。

 

「(何処の界隈の一般ですか何処の。……にしても色々あり得ないですね。場所も勿論ですけど、自国の名を背負った騎士が、ああも声高に冒険者を馬鹿にするだなんて……)」

《ばんなそかな、よね。それこそ》

 

 憤り、というよりは戸惑いを多く含んだユズちゃんの呟きに、深く頷きを返す。

 というのも、この世界で『冒険者』という職を正面から蔑むような台詞を聞いたのは私としても初だったりするのだ。実のところ。

 

 

 街や村においての労働力、あるいは平時の防衛力として最も安易安価な人員。

 種々の理由から、手に職付けるに至れなかった人々の受け皿。

 食い詰め者やらゴロツキ紛いも居ないとは言わないが、そこはそれ。下手に悪い風聞がついて、その道を選ぶ人間が居なくなりでもしたら、国単位で見ても結構な一大事。

 

 だからなのか、職自体を馬鹿にするような風潮は出てこないし、耳にした覚えもない。

 大体の国でイメージを下げない努力が陰に日向に行われとるということなのだろう知らんけど。

 上の人間からすれば相応の数が必要なのに民衆からは忌避されがちな職、なんてことになったらエライこっちゃだろうしなあ。

 

 

 …………教職、医療従事者、福祉職、介護人員───うっ、頭が。

 

 

 

 

「―――よもや轡を並べる栄誉に飽き足らず、金銭の褒賞まで求めんと宣うのではあるまいな? 笑止千万! 一切を擲ち貴人に尽くすことこそ、卑賤の身に許されし至高の誉と心得よ!」

 

 

 

《……しかしまあ、アレやね。未だに熱弁してられる根性だけは素直に尊敬に値するかもしれぬ。このツンドラ空気の中で喋れって言われたら、私ですら心がポッキリいく自信がありますわぞ?》

「(っ、ふ……確かにそこについては同感ですねー)」

 

 冷笑、憐憫、雨霰。ついには飽きて立ち去る足音も少し。

 ゲリラ豪雨も斯くやの冷視線に、おヒゲをぷるぷる不撓不屈。……すごい漢だ。ある意味で。

 

 次第に慣れてきたのか無視して日常に戻ろうとする冒険者なんかも現れる中、他国の騎士相手にぞんざいな応対するわけにもいかないギルド員さん達へと、心の中で敬礼を送る我々なのです。

 ……あ、『助けて』聞こえたの? まあ、頑張ってもらうしかないでしょ。職務だもの。

 

 

 一応、余計な装飾を除いて彼の主張をまとめれば『踏破目指します人員募集』の一文に尽きる。

 Q. ちなみに参加報酬は? A. 名誉払いです。

 ……よく聞いたらマジで無料奉仕しろっつってんな? 正気かよ(真顔)。

 

 

「(……わたし達の作った地図が、変な人達を呼び込んじゃった形になるんでしょうか……?)」

《いやいや、それは言っても仕方ないやつっしょ。良いものがあれば人は集まる。母数が増えれば変人も湧く。いちいち気にしてたらキリが無いし、そもそも今回の場合はタイミング的に……!》

 

「(……レイン? どうしました?)」

 

 ……何やら思い悩んでしまった相棒に、こればかりはと否定を示したところで、はたと気付く。

 考えてみれば、()()()()()()()なんだ、あのおっさん?

 

 

 私らの作った地図で、次の挑戦による『踏破』が現実的になった。これは確実。

 だがしかし、それが公然となったのはつい最近。……少なくとも『他国の騎士団』が聞きつけてやって来れる程の時間は経ってないはずだ。入国云々にだって手続き諸々必要だろうもん。

 

 となれば元々は踏破の一歩手前、『到達階層の更新』あたりを狙いにしてたんじゃなかろうか。それはそれで功績になるらしいし。……しかして現着して、話を聞いて、欲が出た。

 目標(ゴール)を動かせば当然、必要な備えも変わってくる……だからこその臨時人員募集(予算ゼロ)? まだ私の想像でしかないが、んな無茶な、の一言ですな。

 

 というか、その辺を差し引いても他国の騎士団がダンジョン踏破しようとしてるってどうなの? ちゃんと国同士で話通ってんの? あのおっさん見てるとそんな感じ全くせんのやが?

 流石に入国から活動まで、まるっと無断で、なんてことは無いだろうけど───

 

 

 

 

「―――そこまでにしなさい」

 

「っ! このような所にいらしてはなりません、殿()()!!」

 

 

 

 

「……えっ」

《おっ》

「ふわぁっ!!」

 

 演説を切り裂き、並ぶ鎧の向こうから響いた、涼し気な声一つ。

 たったそれだけで、極寒の視線も柳に風と流していたおっさんが即座に振り返り、腰を折る。

 

 波を割るように隊列が動き、現れたのは煌びやかな美青年……美少年? その中間ぐらいやな。

 絵に描いたような金髪碧眼イケメンの御登場に、すっかり白けていた冒険者&ギルド員側からも微かに黄色い吐息が上がった。

 

 …………あれ、なんか今、聞き覚えのある声が混じってなかった?

 具体的にはA,B,CのAくんちゃん的なサムシングの。

 

 

「下がりなさい」

「…………はっ」

 

 念押しのような一言に渋々という顔で頷き、金髪美丈夫の傍らに移動するおっさん。

 ……そんな不満げな顔して良いもんなの? 『殿下』呼びってことは自国の王子様やろに。

 いやまあ、それはそれで『このような所にいらしてはなりません』は本当にそうなんだけども。

 

 さっきまでのように、ヒソヒソ野次を飛ばすわけにもいかなくなった一同を見渡し、ふんわりと優しげな笑みを浮かべる推定王子。

 笑み一つで演説直前といった空気を作り出した彼は、吐息が聞こえる程ゆっくりと口を開いて。

 

 

「まずは我が部下の非礼を詫びましょう、冒険者の皆さん。ギルドの皆さん」

 

 

「「《えっ!?》」」」

 

 キラキラしい微笑みから繰り出されたのは、まさかの一言。

 あちらこちらから降り注いだ驚愕の声に、頷いた彼は言葉を続けた。

 

 

「その上で頼みます。どうか私に力を貸してもらえませんか。我々がダンジョン踏破を成し遂げた暁には、共に歴史に名を刻む栄誉……は勿論のこと、望む限りの褒賞を───私に動かせる限りの予算から支払うことを約束しましょう」

 

 

 ……途中、おっさんの言葉も引用して、おどけるような調子も入れながら。

 きっぱりと宣言された王子の言葉に、戸惑うようなざわめきがギルド内を包んだ。

 

 呆れや落胆しか無かった先の主張から比べれば、といった旨の声が幾つか。

 さっきまでの悪感情はどこへやら、感じ入ったように煌めかせた目で王子を追う視線も複数。

 要請に好意的な姿勢の冒険者が増えていく様が肌で感じられる。……いや、私に肌は無いが。

 

 

 さて、そんな空気の中で我々はと言えば。

 

「(……『()()()()()()()』って、あーいうのを言うんでしょうかねー)」

《いやー、どうかなー。冷静に考えたら、大して『上げて』ないですわぞ、アレ》

 

 冷めた眼差し継続で、ギルドの隅で壁の花してる我々なのである。

 だってやっぱり不自然なんだもの。み〇を

 

 

 ───凝り固まった偏見を振りかざして暴走する部下を諫め、冒険者側に歩み寄る王子。

 端から端まで「この王子になら」と思わせる為の寸劇にしか見えなかったのが正直なところよ。

 

 例えば、あれだけ騒いでた隣のおっさんが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、とか。

 観衆が思わず上げた驚愕の声に、騎士達(おっさん含む)の声が()()()()()()()()()とかね。

 ()()()()()なら、冒険者寄りの姿勢を見せる王子に諫言の一つも訴えなきゃ片手落ちでしょに。

 

「(あまり意見が食い違う様を見せてしまうと今度は、部下を御しきれない王子、みたいな評価が付きかねない、とかじゃないですかね? それを防ぐ為に冒険者の前で彼を罰する姿を見せてー、なんてやってたらキリがなくなるでしょうし)」

《だろねえ。……褒賞とやらも結局成功時のみの空手形だし、色々と杜撰の一言ですぞ》

 

 

 ……随分と悠長に見える? そら指摘するまでもないからですな。

 

 少しでも目端の利く冒険者なら忽ち私らと同じ結論に達し、気付いていない友人知人を見つけて見解を共有、無難な言葉で引き留めていく。

 引き留めてくれる相手が居ない、あるいはそれでも聞かずに彼らに応じる者はそれまで。

 

 そもそも冒険者なら自分の選択結果は自分の身一つで始末をつけるもの。

 よほど親しい仲なら別かもだが、誰かに対して横から口出しする方がよろしいとは言えぬ。

 

 つまるところ、たとえ『見えている地雷』を踏みに行く同輩を見掛けたところで、そこに口出ししてあげる義理も義務も私らにはありゃしないのだ。基本的には。…………うん、基本的には。

 

 

 

 

「───行くっ! 行きます! ボク達も同行させてください、王子様ぁっ!!」

 

 

 

 

 …………どうしよっかね。

 





 C2-5以来となる冒険者設定確認回。
 この辺も作品によって地味ーに差異がありますよね。

 テンプレ第N項、王子見参。
 界隈では当て馬やら暗愚やら即席ざまぁ要員にされてばかりのポジションですが、果たして。

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