Q. またまたまた随分と時間空きましたね?
A. 最近なんか文章書けなくなってました。今話もちょっと出来が荒め。
もう片方の連載作も章終わりまで構想としては既にあるんですが……儘ならんものです。
それと先日、上司から「この職場、近い内になくなるかも」という話をされました。やべぇ。
…………やべぇ。
───時は少しばかり遡る。
「時には非情な判断も必要となります。此度は殿下にとって良い『教材』になりましたな!」
かつて彷徨った場所から更に数階、奥へと潜ったダンジョン内。
俗に『中層』とも呼ばれる階域を進む道程には、当たり前ながら上階程の勢いは無く。
自分達も含め、集った
それでも同道する騎士達の力や、常にはない頭数を頼りに突き進むこと更に小一時間。
「な……何言ってんだ、騎士さん達よお?」
「冗談言ってないで早く薬を……おい? おいっ!」
「「「…………」」」
やがて辿り着いた『魔物部屋』───休息地点の開拓を適えた、その直後。
その道中で出てしまった少なくない負傷者を抱え、あるいは身を引きずり辛うじて帯同していた彼らへと、向けられる騎士達の目は、ひたすらに暗く、昏い。
事ここに至って漸く。察し悪く『厄札』を掴んでしまった彼らすら理解に至らせる『豹変』。
より言葉を選ぶなら『痺れを切らして』、『潮時』、あるいは───『予定調和』。
(…………然に在らじ也)
故にこそ、
とりわけ特産と呼べる物もなければ観光地もない、小さな田舎町。
彼女が生を受けたのは、これまた特別に力を持つわけでもない一家庭。
それぞれの親、祖父母の代から平凡な暮らしを送ってきた、平凡な両親。
そんな彼女もまた、平々凡々な幸せの下に生まれ育つ、筈だったのだろう。
『我が眼に封じられしは……穿獄の底に誕せし災厄なりや?』
───うちの子、気味が悪い。
そう思ってしまった両親を、誰が責められるだろうか。
二人は最初、奇妙な言葉を繰り返す我が子を家の奥へと押し込めることを選ぶ。
しかしどこまでも平凡の域を出なかった彼らに『それ以上』が浮かぶことはなく。
多大な後ろめたさを感じながらも、娘を近隣住民の目から隠して育てること暫し。
やがて独特な言葉遣いを除けば、やや内向的なだけの普通の娘と認識するに至って。
それでも、一度。
僅かの間とはいえ、我が子を腫物のように扱ってしまった期間は平凡な心根に色濃く残り。
それは結果として、娘の言動を改めさせるという選択肢を彼らから奪い取ったまま、彼女の身を閉じ込めていた
『紛て顕然或りと智えば……我が奮心匿されざる也……』
───何この子、気持ち悪い。
そう思ってしまった町の子供達を、誰が責められるだろうか。
彼女の発する奇妙な言葉を、子供達は聞き慣れない『難しい言葉』と受け止めた。
身体を動かすことを是とする自分達とは話の合わない、頭でっかちな『はみ出し者』として。
子供の態度というのは往々にして、大人のそれよりも遥かに残酷になるもの。
その無邪気な残酷さは存分に発揮され、当然の帰結として彼女に近付く者はいなくなったのだ。
『シフルちゃんむずかしい言葉をいっぱい知っててすごい! ボクぜんぜん分かんないよ!』
たった一人の
だからこそ。
『───これから街に行って冒険者になって名を上げる! それでいつか素敵な王子様に出会って玉の輿に乗るんだ!! だからボクと一緒に冒険者になってよ、シフル!!!』
馬鹿げた夢をきらきらと掲げる、お馬鹿で大事な
「……我が眼に封じられし穿獄の災厄よ。今こそ其の姿を顕現せし……!」
(これで良いんだよね───
『koかrosuぃkoroげsuしeeぁaaaッ……』
「…………さあ、あいつらがアレに驚いてる内に逃げるよ、皆!!」
「え……」
「し……」
突如として視界の大半を埋めるように現れた、異形の怪物。
怯え惑いて散っていく騎士達を端に、決然と檄を飛ばす彼女。
そんな小さくも揺るがぬ背中を眼前にした、凡百の
「「「シフルちゃんが普通に喋ってる!!?」」」
「何の話!?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「王子様はボクが守る! ……そしてあわよくば玉の輿に! 玉の輿に!!」
『kierぐokiぇerokierごqyueeぬaaaッ……!』
「……アルマーーっ!? それじゃ意味が無いんだけどぉ!? アルマぁーーっ!!?」
「……やばみさわ~」
そして、時の刻みは今に戻る。
かつて小さな町に蔓延った、無邪気で残酷な排斥の意思を元気良く蹴飛ばした
「どうするのビライザどうするの!?
「し、シーたんおちけつ~……あげぽよ水さ───」
「てめぇ大概にしろよソレ実は普通に喋れんだろ知ってんだぞ!?」
「…………大丈夫です。王子を置いて逃げた騎士はともかく、他は予定通りですから」
これまでの鬱憤も籠ってか、牙を剥く勢いで言い募るシフル。
どこか後ろめたさを滲ませ、微妙に目を反らしつつ宥めにかかるビライザ。
そんな二人の後ろで「えぇ……?」「お互い様じゃ……?」と困惑を漏らす冒険者達。
王子や騎士側とはまた別種の混乱渦巻いていた彼らの前で、やがて事態は動き出す。
『kierぐokiぇeroなaaaッ……!』
「ふんぬっ!! ……へへっ、王子様には指一本触れさせないって言ってるだろー!」
『オッ……』
「……戦えて、る……?」
「見ての通り、アルマなら大丈夫です。あの『厄除のお守り』がある限り」
異形の怪物から伸びた触手(?)の一撃を、アルマの剣(?)が弾き、逸らす。
その一合を視界に捉えたシフルが、目と鼻の先で見届けた王子が、それぞれ目を見開いて。
『shぎineshをineぁkoがaaaッ……!』
「ふ、はは……成程、見掛け倒しということですか! ならば私が───」
「あっ」
『ァ……』
「あ、王子様の剣が……」
「……『厄除のお守り』がある限りは、大丈夫なんですよ」
意気揚々と、前に立つアルマに肩を並べようとした王子の剣が、
弾かれ漂う異形の触手に切りつけたその瞬間、触れた剣先からボロ屑のように。
彼の手に残ったのはおそらく名剣・宝剣の類いだったのだろう、黒く染まった豪華な柄。
上がっていた肩をぺしょんと落とした王子は、とぼとぼとアルマの背中に帰っていった。
「……頼みましたよ」
「っ、はい! 勿論です!! ボクに任せてください、王子様!!!」
『koroまsuぃkoroがsuなぁaaaッ……!』
「でいやぁ!! ……そ、それでですけど報酬は是非、玉の輿……っ! あぁ、いえっ、個人的に交友を持つことができたらなー、なんて!!」
「……いや、あれだけ大声で叫んでおいて、今になって取り繕っても手遅れじゃないかな」
「というか日和るとかいう感性あったんですね、彼女」
泰然と構えていたビライザもまた、アルマの発言に半ば以上本気の声色で驚きを示して。
『……カァ』
「っ!! ……そう、ですね。玉の輿……検討は、しておきましょうか……」
「え、今……あの王子様、本当に……?」
「……いや、たぶんアレ『吊り橋効果』と『パブロフの犬』の悪魔合体……」
他方、少女の背にひしと隠れたままの王子の返答は、どこかまんざらでもない温度のそれ。
まさかの発言に対し、されど二人は極限状態における錯覚錯乱の一種と断じて。
「……うひゃらひゃほーい!! さあ、さっさとボクに倒されろー!!」
『koぎra……!? shiなぁaaaッ……!』
「……アルマには効いたね。覿面に」
「みたいですね……」
水を得た魚。ネギを背負った鴨が持参した鍋と炭。
解体作業の如く異形の怪物を切り刻み始めたアルマに、黄昏を背負うシフルを横目に見ながら。
ビライザは、深く。
秘めた言葉を喉奥に、しみじみと呟いた。
(……これで私の使命も終わり。ありがとうございます───
>「我が眼に封じられし災厄を解放するも已む無し也……」(C7-1話 シフル台詞)
>「RINSにマジあざま~」(C7-5話 ビライザ台詞)
次回、厄除人形は如何にしてビライザの手に渡ったのか(予定)。
でもつぎはいつこうしんできるかわかりませんのです(前書き話)。
……年内更新は多分これが最後です。それでは皆さま良いお年を~……