謎の数字が見える男が非日常へ捲き込まれていく話 作:kosutoko
俺には幼少期からの不思議がある。
それは、『数字』だ。
いや、別に数学が苦手とかそういうことを言っているんじゃない。まあ理系の大学1年になのに、未だに数学が苦手なのは事実だが。
ため息をつき、勉強机から離れて窓から下を覗く。
──数学が見える。
人ひとりにつき、5つから8つ。窓や机なんかの物には、基本1つ。
大体1から100の間なのだが、一度8桁を見たことあるから別に100が最大というわけでもないらしい。そして、これが何か、と言われれば首を傾げるしかない。
いや、幼少期から見えてたらなら1つくらいで分かるだろう、という主張も分からなくはないんだが、マジで無理なのだ。
普通に見てるだけでも稀に数値が変動しているし、唯一見た大きな変動は人が死ぬ瞬間。しかも、減るのではなく数値が
要するに、俺は変な数字が見えるだけの普通の大学生。
そう納得すると、俺は再び机に戻ろうとし──止まった。甲高くなったのはチャイムの音。対応するための画面がある場所へ向かうと、一瞬躊躇ってから通話のボタンを押した。
映るのはいつもの緑の服に身を包んだ女の人。帽子が上手い具合に隠していて顔は見えない。
『──すいませーん! 矢川宅急便でーす!』
「あー、今行きます」
画面越しだと数字は見えない。理由は不明だ。
だから、俺は何も警戒しなかった。
印鑑を取り、カツカツと音をたてて扉へ向かう。
さて。ここで1つ訂正を入れなければならないだろう。
俺は1つも分からない、と言ったが、傾向として予想できることはある。その1つすら、何か意味を持っているのでは? と思っているだけだが、この数字がなんの意味も無い俺の妄想ということは否定されたのでそこだけは喜んで良いだろう。
それは、動物と人が入り交じる動物園で気が付いた。
人は顔に当たる部分。動物や虫もそこにあたる部分に存在する数字があった。
そしてぼーっと見ていて気が付いたその事実。
これを覚えておいて欲しい。
そしてそのとき俺はなんの躊躇いもなく扉を開いた。そして笑顔で宅配業者を出迎えたのだ。
働いている人にはなるべくいい気持ちで仕事をして貰いたいからなるべくそうしている。そうしているのだが、今回ばかりはそれが凍り付いた。
「はい、ありがとうございます! あ、置いておきますね! では、印鑑をお願いします!」
あんまりにも綺麗な顔だった。いつもなら女慣れしていない俺は顔を赤くしながらテンパっていただろう。
だが、今回は青くなっていたと思う。だって、女の顔に浮かんでいた数字は──
「……え?」
──5桁というものだったのだから。