謎の数字が見える男が非日常へ捲き込まれていく話   作:kosutoko

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相談

「……えー、すまん。もっかいってくれ」

 

 目の前に座る同級生こと金髪の男──八戸康介に向かい、俺は2度目の説明を始めた。勿論数字云々は抜きにして、だ。

 

「なんか知らんお姉さんに恫喝された。助けてくれ」

 

「聞き間違いじゃなかったか……」

 

 構外のカフェはまだ朝早いというのに騒がしく、俺達の頭をガンガンと打ち付けていた。だが、そんなことより俺の発言の方が康介にとっては問題だったようだ。コーヒー片手に頭を抑えた姿が目に映る。

 行き交う人々をぼんやりと見ていると、突然後ろから声が掛かった。

 

「──久しぶりだな、こんなところで待ち合わせなんて」

 

「げっ」

 

「げっ、とはなんだ『げっ』とは。なんならお前が呼んだんだろう、当夜」

 

「い、いや、すまん」

 

 謝っていると、一拍遅れて康介はそれに反応した。

 

「……ん? あー、確かにスターナックスで会うのは久しぶりだな。十間。どうだ? 調子は」

 

 眼鏡をかけたきちっとした服を着た男。彼こそは俺の大学で意識高い系として名を馳せている異端児、草野十間である。

 

「よくぞ聞いてくれた、康介! 最近はシンギュラリティが来たと言われているだろう? 僕はそれに目を付けてね」

 

 朗々と喋りながら十間は椅子を引っ張ってきて座る。よく見ると手にはコーヒーが握ってあった。

 それを机に置くと、手持ち鞄をごそごそとあさり、やがて取り出されたのはパソコンだった。

 そのまま、チカチカと輝く画面を見せつけるように開いた。

 

「見てくれ。この多様なソリューションを提供するユーズフルなAIを! 実は僕は他大学の団体にも所属していてね、そこの方々と話し合った結果、こういう一段とバリューの高いシステムを提供するビジネスを考えたんだ! 勿論会社として立ち上げる際はコンサルとしても機能させるつもりさ!」

 

「はー、やっぱり凄いなお前」

 

「だろうだろう?」

 

 康介の反応にふふんと鼻を鳴らす十間。別に嫌なヤツではないのだが、横文字並べの喋り方は相変わらず俺には受け付けないらしい。聞いているだけで頭が爆発しそうだった。

 

「あ、そうだ。ところで本題なんだが、最近当夜が悩みがあるらしくてな……だけどそれがコイツの妄想なのか事実なのか分からなくて……助けてくんね?」

 

「そっからだったのか、俺の話で悩む場所……」

 

 てっきりどうやって解決したもんかを悩んでいるのかと思ったら、そもそも事実だと思っていなかったららしい。

 パソコンをいそいそといじっていた十間は、それを聞くとピタリと止まり、真面目な顔になる。そして静かにパソコンを閉じると、ゆっくりとこちらを向いた。

 

「ふむ? 詳しく聞こうか。一体どんな話なんだ、当夜?」

 

「……実は、というかどうやら康介には真実だと思われてないんだが──」

 

 

◆◇

 

 

「ふむ」

 

 一頻り話すと、一段と気が楽になったように感じる。こういうときに悩みを話せる友人というのはやはり大きい。

 

「……なるほど。つまり流れとしてはこうだな? 荷物を届けに来た女が、荷物を受け取った瞬間豹変した。そして慌てて部屋に入って鍵を閉めたが、ノックを続けて恫喝をしてきた。

 いつの間にかいなくなっていたが、また来そうなのでどうにかしたい、と?」

 

 どこか含むところがあるようにこちらを見てくるが、いつものことなのでそこはスルー。頷いた。

 

「ああ。結構……いやマジで怖かったからどうにかしたいんだよな」

 

「だけどどうにかっていってもなぁ……」

 

 康介が首を傾げる。それを横目に十間は足を組んだ。

 

「まあ、どこまでそれに重きを置くかだが、本気で逃げ出したいなら住居を変えるべきだろうな」

 

「だよなぁ……」

 

 うーんと頭を抱え悩んでいると、康介がふと思い出したように時計を見た。

 

「……あ、やべぇ。そろそろ2限の時間だ」

 

「お、そうか。了解、すまんな突然呼び出して」

 

「ではさらばだ康介。また会おう」

 

 『おーよ!』と言い、そのまま康介は席を立つと出口に向かって歩き出した。それを見届けると、さて、といったように十間が振り返る。

 

「気になったことがあるんだが聞いても大丈夫か?」

 

「ん、ああ。大丈夫だ」

 

 ギラリと眼鏡を光らせ、そして十間は人差し指でトントンと机を叩きながらこちらを向いた。

 

 

「──先ほどの話……なにか隠している内容があるな、当夜?」

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