重めの愛でも支えられれば大丈夫   作:泰然

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明けましておめでとうございます。

新年あけてから、アーマードコアにハマりました。


17話 ずっと、逢いたかった……♡

???side

 

 私は幼い頃、先天性心疾患。それが原因で心臓が上手く機能しない、幼少期にかかるにはあまりにも稀有なケース。

 

 だから、生まれて間もなく病院の窓で空と雲を眺める生活。若しくはテレビにかじりつき、死んだ目のように横たわる事しか出来なかった。

 

 テレビで普通に歩く姿の人間を見ると、必ず涙が溢れる。何故、私の体はこんなにも脆いのか。

 

 だから、健康体で生まれてきた子供たちが羨ましくてしょうがなかった。私だって、健康だったら歩けるのに、走れるのに、遊べるのに……みんなと一緒に。

 

 

 毎日そんな事を考えながら生きてるのが辛く、死にたいと思い始めていた。こんなに自由じゃない体に、何の意味があるのか。

 

 悲観的に捉えていた頃、私が十歳の夏を迎えた日。私はいつものように、鬱陶しい日差しに照らされていた。

 

 すると、私の隣の病室が慌ただしくなり始める。

 

 それは新しい患者が来る音。私は横になりながら興味は示さず、外を眺めていた。

 

 突然、私の居る病室の扉が開く音がする。一人部屋の為、入ってくる人は限られる。

 

 私の母だけ。このお昼の時間帯に、訪れる事は先ず無い。

 

 顔を横に振り、音のする方に向けると私と同じくらいの少年が立っていた。無表情のままその子は立ち尽くし、私と目線が合う。

 

 

 

「何してるの?」

 

「外を眺めてるの……」

 

 

 

 正直、心臓が痛いと喋る事すらも億劫だった私は、兎に角適当に答えていた。少年は私が答えた事に、疑問だったのか、また質問してくる。

 

 

 

「お外で遊ばないの?」

 

 

 

「遊べないの……」

 

 

 

「何で?」

 

 

 

 

 

 

 

 子供特有の何で何でに、私はそれに腹を立てた。初対面でもあるこの少年に、私が幼少期の頃から病気で寝込んで、どれだけ外で遊びたいか。

 

 何故と問われても、私が知りたい。なりたくてなった訳じゃない、私だって同じ事がしたい、健康な体が欲しい。

 

 

 

「何でアンタみたいなガキに、答えなきゃいけないのっ……!」

 

「――――――っ」

 

もう、何も喋るなっ!……ゲホッ、ゲホッ……!?」

 

 

 

 その旨を少年にぶちまけ、突然の怒号に少年は驚く。私も久しぶりに出した声に拒否反応が出たのか、激しく咳き込む。

 

 

 

「死んじゃうの?」

 

「…………」

 

 

 

 助からない訳では無い。その後のリハビリによる高額な自己負担に問題があるのと同時に、手術にも高額な料金を支払わらなければいけない。

 

 これは母子家庭である我が家では、かなり負担が大きい。

 

 それでも母は、私を投げ出す事なく育ててくれた。そんな姿を私は見てきたから、これ以上負担になりたくないと考える事が多い。

 

 

 これを初対面の少年に話したところで、現状が変わる訳でもない。

 

 そしてその少年は暫く喋らず、そのまま部屋から出て行った。

 

 私は何も分からない少年を怒鳴り散らした事に、少し情けなさを感じる。冷静に考えれば、大人げないとも取れる。

 

 ただ、自分の体の事で手一杯で考える余裕が無い。

 

 そしていつもように病室内は静寂に包まれ、また空を眺める時間が流れる。病気を発症した当初、親戚に嫌味を言われた事がある。

 

 何もしなくてご飯が食べれていいわね。

 

 冗談じゃない。何もしない事が、どれほどの苦痛か理解しない親戚のババアに言われた時、心底理解力の無い発言だと思った。

 

 体を動かそうとする度に心拍数が急激に上がり、身体に制限が掛かる。運動以前に、歩く事すらままならない。

 

 

 幼少期から大病を患っている私に対しての発言として、『頭がお花畑状態』としか言いようがない。何もせずに専業主婦をやってきた事が分かる。

 

 色々嫌な事を思い出しつつ、休日の朝を迎えてお母さんがお見舞いに来てくれていた。

 

 

 

「―――体調はどう?」

 

「いつもと同じ、悪くないよ」

 

「よかった……」

 

 

 

 これが我が家での始めの会話、『いつもと同じ』。

 

 病状の悪化をして、いないという報告。まぁ、これ以上悪化すればどうなるか分からないけど。

 

 いつもの挨拶をしながら、最近あった出来事をお母さんは楽しく話してくれる。その話の中で、ある子どもの話題になった。

 

 

 

「そう言えば最近、ここの病院の玄関でボランティアしてる子供がいるの」

 

「へぇ。何かの募金?」

 

「ううん。自作の段ボールで、募金お願いしますって書いてあるの。誰に対してかは分からないけど……」

 

「ふ~ん……」

 

 

 

 最初に聞いた私は、あまり興味など無かった。子供の考える事だから、何かに触発されて体が勝手に動いたのだろうと推測する。

 

 そしてまた一週間が流れ、雨が降る中、お母さんが病室を訪れた。

 

 病室に入るや否や、以前話した少年の話を再び語り出した。

 

 

 

「―――募金してる少年の話を前にしたでしょ?」

 

「うん……」

 

「その子、今日も玄関先に立ってたわよ」

 

「懲りないね」

 

「お母さんが思うに、アナタの隣の病室に新しい子が入ってきたのは分かるわよね? その妹さんが少し病弱らしくて、それで募金してるんじゃないかと思ってるのよ」

 

「……」

 

 

 

 妹の為か……。

 

 兄妹の為とは言え、総合病院の玄関でされるのは職員の人の迷惑にもなるし、そんな募金に労力を割く程、みんな精神的に豊かではない。

 

 家族を救いたいのは分かるが、所詮他人は他人。

 

 その財力があるのならば、自分の為にお金を使うのが利口だろう。私はそんな捻くれた考えで達観して見ていた。

 

 ましてや今の自分には、関係の無い話。

 

 ただ、微塵も彼に興味が無いという訳では無い。

 

 暫くして私は、看護師さんに車椅子で院内を回りたいと申し出た。いつもお世話してくれる女性の看護師さんは、快く承諾してくれた。

 

 

 

「珍しいね、―――ちゃんが回りたいだなんて」

 

「違う景色も見ておきたくて」

 

 

 

 建前を言いつつ、私は彼女に一階の受付を回りたいと頼んだ。

 

 エレベーターで一階に降り院内独特の匂いを嗅ぎながら、私は玄関先の方を見た。

 

 あの時の子供がいた。

 

 必死に呼び掛け、大人たちに訴えている。ガラス越しの為、声までは聞き取れないが、集金は芳しくない事だけは分かる。

 

 素通りをする度に彼は落ち込み、次に来る人達に語り掛けていた。

 

 

 

「最近、入院してきた妹さんのお兄ちゃんなんだけど、お見舞いに来る日はずっと外で募金活動してるの。丁度―――ちゃんの隣の子よ」

 

「私の隣の……」

 

「そうそう。ウチの医院長も、許容範囲であれば許可は取ってるみたいだけど、患者さんからは少しクレームがくるのよね……」

 

「そう、でしょうね……」

 

「恐らく、妹さんの為に募金してるんだろうけど……。チラッと聞いた時は、そんな感じの呼び掛けじゃなかったのよね……。何なのかしら?」

 

「……」

 

 

 

 止められるのも時間の問題だろうと思った私は、見ただけで満足し、自分の病室に戻るようにお願いした。

 

 そして少年が募金を始めて一か月が経ち、その事を忘れかけていたある日。いつものように青空を眺め、一人で一日を過ごしていた。

 

 すると突然、私がいる病室のドアが開き、大きなカメラを持った人とマイクを握っている男性が近づいてくる。

 

 私は突然の出来事に驚き、咳き込みながら訪ねた相手に聞いた。

 

 

 

「何ですか、貴方達は……?」

 

「アナタを支援させてくださいっ!」

 

「は?」

 

 

 

 何を言っているか分からない為、もう一度詳しく説明してくれと申し出た。

 

 

 

「闘病で苦しんでいる子供たちの支援の為に、貴方を取材したいのです!」

 

「何で、私なんですか……?」

 

 

 

 選ばれた理由、それは玄関先に居た少年。偶々テレビ取材の一環で、この病院の外観を撮っている最中に取材陣の目に留まり、少年の訴えを聞いたとの事。

 

 

 

 『301号室のお姉ちゃんを救ってください』

 

 

 

 301号室、つまり私の事。

 

 私はそれまで、妹の為に募金していたのだと思っていた。

 

 だが、違う。

 

 彼はずっと、私の為に訴え続けていた。夏の暑い日、雨が強くガラスを叩き付ける豪雨の日でも、私の為に集めていた。

 

 私はそれで、自分が恥ずかしく思えてならない。

 

 少し年上だからだと、達観した態度を取り、子供のやる事だからだと呆れた態度を取っていた。私が思う以上に、彼は大人だった。

 

 私は彼の努力を汲むべく取材に応じ、番組として取り上げられる事となり、『隣の救済』という会が立ち上がった事で徐々に資金が増えていった。

 

 そのお陰で費用に余裕が生まれ、アメリカで心臓の移植手術をする事が決定。渡米した私達は、不安もありながら手術は無事成功。

 

 その後は容態が安定するまでアメリカで入院し、その後は母国へと帰国。リハビリもスムーズに事が運び、歩けるところまで回復した。

 

 歩くだけで、これ程涙が出るのかと自分でも疑った。でも、毎日が楽しくて仕方がない。

 

 ここまで回復出来たのは、彼のお陰。

 

 冬真っ最中の頃ふと、彼の事を思い出して御礼にと思い、売店で売っている『シュシュ』をプレゼントしようと思い立った。

 

 男性がシュシュを付ける事は無いが、食器洗いで腕捲りをした際にズレ落ちてくる。その時に身に着けても使えると思い、これを選ぶ。

 

 まぁ、一番の目的は私の贈り物を身に着けて欲しいだけ。

 

 そんな私の恋心のような気持ちを抱きながら、彼が来る日の病室を訪れた。

 

 しかし、そこには誰かが寝ていた形跡もない、ただの骨組みのベッドのみ。私は慌てて仲のいい看護師さんに事情を聞く。

 

 

 

「あぁ、そこの妹さんね。―――ちゃんが帰って来て、リハビリ初日で退院したわよ」

 

「嘘……」

 

「でも、あの子のお陰で他の闘病中の子供達も、助かって本当によかったわ。―――ちゃんも退院できるし、元気になって本当に―――」

 

「名前、名前は何て言うんですかっ!?」

 

「お、落ち着いて……。でもそれは、守秘義務として教えられないわ……。ごめんなさいね」

 

 

 

 逢えない……。あの人に、私の光だったあの人に……。

 

 酷く落胆した私を見兼ねて、看護師さんは特別に彼の名前を教えてくれた。

 

 百目鬼 春臣。

 

 優しい名前……私の救世主。

 

 私は即座に名前を刻み込み、忘れないよう心の中で復唱した。何度も何度も何度も……。

 

 それから私は、憑りつかれたように健康な体への執着が増していった。綺麗な体を保ちながら、女性としての美を追求するようになる。

 

 だって、あの人から貰った体だから。

 

 

 

 それから数十年が経ち、彼の名前だけを頼りに探し、見つけた。出会えた運命を頼りに、今度は自分で掴み取る。

 

 運命とは身を任せる事ではなく、自らしがみ付くもの。だから今度は、私が迎えに行きます。

 

 

 

 そして私は、待ちに待った日が訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春臣side

 

 今年も終わりに近づく年末。滅多に大掃除をしない部屋を何とかしようと、積み上げられたマンガや菓子類などを片付けていた。

 

 この前、メリーさんに教えてもらった衣類の洗濯は処理できたが、台所の汚れが見せられない程の始末。

 

 取り敢えず、専用洗剤で洗おうと容器を確認したが、中身は空。丁度切らしている事に気付き、買いに行くのも人混みで埋もれるのも嫌、寒くて出歩きたくない心の叫びをあげていた。

 

 

 そこに家のチャイムが鳴り、玄関へと急ぐ。宅配は頼んでいないと思いつつ、鍵を開けて扉を開くと、そこにはメリーさんが私服姿で出迎えた。

 

 

 

「ヤッホー、春臣君」

 

「えぇと……誰ですか?」

 

「私、メリーだよ」

 

「メリーさん!? どうして俺の家に?!」

 

「君の元カノから、少し聞いてたの。春臣君の住所」

 

「はぁ……。それは分かりましたけど、どうしたんですか?」

 

「何か困ってる事ないかなぁと思って、来ちゃった♪」

 

 

 

 いつもウイッグを付けている為、今の姿が本当かは分からないが、茶髪でサイドテール、おまけにマスクも付けている。化粧もいつもと違う為、誰か分からなかった。

 

 彼女はビニール袋を携え、徐に見せてきた。そこには、丁度切らしていた洗剤と部屋の掃除用具が入れられている。

 

 

 

「何で分かったんですか?!」

 

「お姉さん、何でも分かっちゃうんだよね~」

 

 

 

 袋の中には他にも、家に不足品の物ばかり。俺が買わなければいけないと思っていた品物だらけだった。

 

 こんな事もあるのかと思い、そのままの流れで部屋の掃除を手伝ってもらう事に。

 

 

 

 

 

 

 俺の部屋は動ける範囲が狭くなっている状態で、物をしまう所から始まった。メリーさんはテキパキ片付け、本棚にも綺麗に隙間なくマンガを収めていく。

 

 普段から掃除をしていることが窺えるその手際から、俺の成すすべなく掃除は進む。最後に窓拭きだけは自分でやろうと、使い捨てタオルで磨く。

 

 すると俺の背中にピッタリと張り付き、拭き方をレクチャーされる。指導される最中、彼女の息遣いと柑橘系の香りで何も入ってこない。

 

 

 

「その拭き方だと汚れが残っちゃうから、空拭きとこのクリーナーを使って―――」

 

「は、はい……///」

 

 

 

 そして掃除は完了し、その場で寝転がれるほど綺麗になった。

 

 その後はメリーさんに料理を振る舞ってもらい、二人で炬燵に入りながらポテトサラダと筑前煮を食べていた。

 

 

 

「メリーさんのポテトサラダ、美味しいですね」

 

「隠し味に和がらしを入れてるの。でもよく混ざらなかったから、からしが偏ってるかもしれないけど……」

 

 

 

 メリーさんはそう言うが、全然味に偏りはなく、筑前煮も丁度いい味付けで俺好みの味だった。飲食店で働いている事だけはある。食事を終え、食器は俺が片付けを済ませて再び炬燵の中に吸い寄られる。

 

 

 それから俺達は、ダラダラとテレビを眺めながら一年の振り返りをしていた。色んな驚きと、様々な再会が多かった年。

 

 そんなこと思いながら俺は、メリーさんに今日の御礼をと思い、何かして欲しい事は無いかと尋ねた。

 

 

 

「う~ん……そうだね~。電話番号、交換しようよ。お互い持ってなかったし」

 

「そんなんでいいんですか?」

 

「いいのいいの。ほら、携帯出して」

 

 

 

 メリーさんの電話番号を教えてもらい、名前を打ち込もうとした時、彼女から『本名』の方がやり取りしやすいと言われた為、聞き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 阿霄月 彩冷(あよいづき あやひ)

 

 

 

「え…………」

 

「探したよ、春臣君♡」

 

 

 

 

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  • 雅楽川 茅花
  • 弓納持 氷鞠
  • 七夜 優雨(檜 百合)
  • 百目鬼 美春
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