その日は激動の一日だった。
朝の通学途中に人気急上昇中の若手実力派ヒーロー シンリンカムイの活躍を本日デビューの新人ヒーローに奪われる光景を見て。
中学三年に上がり本格的に将来を考える時に担任から雄英高校志望を暴露され、目立ちたがりかつ実力もある幼馴染含むクラスメート達に無個性をネタで弄られ(というか止めない担任の存在意義)。
放課後にみみっちい箔をつけたがる幼馴染にノート爆破及び自殺教唆をされ。
帰り道にて無個性と診断された時のトラウマを思い出していた所をヘドロヴィランに取り憑かれかけ。
憧れのナンバー1ヒーロー 平和の象徴オールマイトに助けられサインを貰い家宝にしようとして。
どうしても聞きたいことがあったので強引にしがみつき、ビルの屋上にて個性のない自分がヒーローになれるか尋ね、オールマイトの秘密を知ってしまった。
そして思いしらされた現実。
命懸けのヒーローの重みは憧れだけでは到底たりないということ。夢の、否定。
現実に呑まれ、無力を嘆き、目を逸らし生きる。そんな思考を吹き飛ばす事件は自らが原因だった。
自分のせいだと分かっていても助けてくれる誰かを期待する浅ましさ。だからヒーローに成れないのだと本当の意味で理解したその時。
ヘドロヴィランに呑まれる彼の顔を見たんだ。
走り出した僕が何かできたとは言えない。
助けたのは限界を超えたオールマイトだ。
そして、
不仲な幼馴染を無個性なのに助けようとして、ヒーロー達からものすごく怒られた。
当然のことだと僕は納得した。
事件解決後に帰路に着いたらタフネス溢れる幼馴染が捨て台詞を叫んで、それを聞いてさあ身の丈に合った将来設計を描こうとしたところで、
その光景が目に入ってしまった。
風で飛んだ帽子を追いかけて道路に飛び出す少年と、少年に迫りくるトラック。
その時僕は再び、考えるより先に体が動いていた。
僕は走り出し、少年をトラックに当たらないように突き飛ばした。
その日僕がこの世界で最後に見たのは、呆気に取られた表情で口を開けた少年の顔だった。
続いてぶつかるトラック。
その衝撃は思いの外軽かったように感じた。
きっと痛みを通り越した衝撃が軽いと誤認させたのだろう。
コマ送りのように静かな世界が途切れ途切れに巡っていく。
ドシャリと軽く宙を舞った後に僕が道路に落ちた音を、本当に自分の耳がとらえたのかどうかは正確には分からない。
ここまできてようやく、まぶたを閉じるように薄れゆく意識。
その最後に誰かが僕を呼ぶ声が聞こえたような気がした。こちらに引き留めようと必死に伸ばした手のようなそんな声が。
そうして僕はこっちの世界ニホンバハマルで半年の眠りにつき(意識不明の重体)、異世界グランバハマルで半年間過ごすことになった。
ただそんな日々でセガを何よりも愛する異世界おじさんと出会わなければ、半年で帰還なんて絶対に無理だったんだろうなと思う。
おじさんは十七年間過ごしたって言ってたし。
帰還もおじさんに便乗したような形だったし。
「架空」は「現実」になる(異世界ファンタジーも)、これは僕が(異世界グランバハマルにて半年間過ごした後)最高のヒーローになるまでの物語だ。