異世界イズク   作:規律式足

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 爆豪勝己君サイドです。



10話 爆豪は逃げ出した、だが逃げれない。

 

 雄英高校一般入試実技試験から一週間。

 小型投影機なんて贅沢な代物で伝えられた結果は次席合格。推薦入試組はカウントされてねえだろうから、首席は間違いなく出久だろう。

 ヘドロヴィラン事件から誰にも負けねえよう鍛えてきたのにこの結果。納得できずに個性も合わせて爆発しそうなもんだが、そんな気分にはならなかった。

 

(あのクソチート相手なら仕方ねえか)

 

 不正やらズルして強くなったわけではないからチートは正しい呼び名ではないだろうが、実力的にはクソチートとしか言いようが無い。

 異世界グランバハマルとやらで体得した魔法に技術、そして闘う者としての心構え。

 特に心構えに関しては素直に見習うべきだとすら思っている。

 敵はボコってから調べるなんて正にヒーローらしくて良いじゃねえか。 

 オールマイトもまず殴り倒してからだしな。

 

 こんな風にアイツを認められるようになるなんて思いもしなかった。

 昏睡状態から起きてしばらくの間は罪悪感から付き合っていた。異世界がどうとか魔法がどうとかトチ狂ったようにしか見えなかった、それがより俺のせいだと心に重く伸し掛かってきたんだ。

 見方が変わったのは雄英高校に受験するとあらためて宣言してきた時、アイツはもう覚悟を決めて揺らいでなかった。

 だが無個性で大丈夫かと心配になった。また昏睡状態になったらどうしようと思ったんだ。

 だから試すつもりで戦いを挑み、あっさり負けた。

 心配が杞憂だったとアイツは自身の実力で証明したんだ。

 いっちゃんすごい俺が、いっちゃん凄くないあいつを守る、その理屈はもういらなくなった。

 んでその時に記憶再生なんてとんでも魔法で半年間の異世界生活を見せられて気絶したわけだ。

 流石に俺が原因で、幼馴染が火炙りやらドラゴンとの死闘を繰り返すなんて罪悪感で意識が落ちたわ。

 異世界は本気であった、緑谷出久は強くなった、おじさん見たら敵対せずに逃げろ、これはきちんと頭に叩き込んでおくべき情報だ。

 

(体を動かしてくるか)

 

 今まで家にいたのも雄英高校からの通知を待ってたからだ。来た以上あとはあいつを超えてトップに君臨するためにトレーニングだ。

 

 市内を一定のペースで走り回る。本来なら運動場やら公園など障害物がなく人のいない、足に負担のかからない場所で走るべきだが、ヒーローの活動場所は基本的に街中だ。運動しやすさよりも場所に慣れておくべきだろう。

 そうして走っていると、幼馴染である緑谷出久を発見した。親に買い物でも頼まれたのかエコバッグをぶら下げてメモを見ていた。ついでにわかりきった受験結果でも(ここにいる時点で明白だが)聞こうかと声をかけようとして、ピタリと止めた。

 どうしてか。

 それは良く知る幼馴染の横に見慣れぬ少女が付き従うように寄り添っていたからだ。

 緑谷出久に女子との付き合いは皆無。事故に遭うまでのあいつは、その挙動不審な態度やブツブツと語りだす行動から大層気味悪がられて女子から敬遠されていた。

 そんなあいつが女連れとは、これも異世界生活の効果の一つなのだろう。

 あいつはもう(両手を地面につける)

 心配が必要な実力ではないが(腰を上げる)

 念の為見守っておくべきだな(スタート)

 

「縛動拘鎖ー(レグスウルド スタッガ)

 ならなんで逆方向にクラウチングスタートからの全力ダッシュなのかな?かっちゃん」

 

「離しやがれっ!!巻き込むなクソ野郎っ!!」

 

 畜生バレてたか。

 トラブルの臭いしかしねえから逃げようとしたら、魔法の鎖で拘束しやがった。

 

「勇者様、この捕らえた者はもしや魔王の手先なのでしょうか」

 

 なるほどヤバい女なのは分かった。

 

「そうじゃないよ彼は幼馴染、というか親友、どころかもう一人の自分レベル、だからかっちゃんに憑いてくれないかな?塩崎さん」

 

「ワンチャンダイブとまで言った、最悪レベルのいじめっ子だろうがっ!!」

 

「それ自分で言う?」

 

 とりあえずストーカーで押しつけようとしているのは伝わった。

 

「私の場所は勇者様の元です」

 

「それを止めて欲しいかな」

 

「なんだこの天パな電波」

 

 とりあえず近くの公園に移動して説明するそうだ。んなこといいから離しやがれ。

 

 ざっくり説明。

 実技試験受けたら、勇者認定で従者ゲット。

 なるほど意味わからん。

 

「むしろ助けられた奴の立ち位置じゃねえか?」

 

 コイツは見てただけだろ。

 

「あの出会いこそ運命による必然」

 

「らしいぞ諦めろ」

 

 駄目だ通じねえ。

 

「ヒーロー志望でしょ助けてよ」

 

「ヒーローは現行犯が基本で民事不介入。つーかヒーロー志望はお前もだろうが」

 

「そうだった。あと雄英高校受かったよ」

 

「今のお前ならそうだろうよ」

 

「ああ勇者様との素晴らしき研鑽の日々」

 

「コイツもみたいだな」

 

「せめてクラスは違ってくれるといいけど」

 

 こんな風にガヤガヤと気兼ねなく言葉を交わせるのが今の緑谷出久との関係。

 罪悪感は完全に拭えてはいないが前よりは健全な間柄だろう。

 今の緑谷出久の実力に正直どれだけ張り合えるかは分からない。だが気概だけは劣るつもりはねえ。

 俺はオールマイトを超えるナンバー1ヒーローになるのだから。

 

 

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