「なあ鉄哲?」
「どうした切島」
「最近芦戸からよく見られてんだけどよ、これってもしかして」
「アン?俺も見られてるぜ。残念だったな」
「いや俺の方だから中学からの知り合いだし」
「むしろそれが悪印象だろ、高校デビューマン」
「「ヤンのかコラァ!!」」
「太くて硬くて熱い漢達の火花散らすぶつかりあい(ジュルリ)」
「なんだこの勘違い三角関係」
ということがあったとか無かったとか。
麗日さんがいい匂いで柔らかくてドキドキしてる中でも状況は動く。
愛する男の危機を救いにきた女性・元ラブラバさんは縛られたままの元ジェントルをあらゆる角度から激写してから解放した。
その行動がどこぞのエルフ(ヤンデレストーカー)を思い出させるので僕は彼女のことが早くも苦手になりそうだった。
「けどどうしてジェントルの場所が分かったんだろうな?」
すると尾白君が僕と同じ疑問を口にする。
「簀巻きにした大人を担いできたんだから目立ってたんだろ?」
だがそれを轟君が見た人に聞けば分かるだろうと考えを述べた。
確かにそうだろうけど、納得するがなぜかしっくりこないというか腑に落ちない気持ちになる。
「寝袋に入って廊下で寝てる教師、突然壁から現れる黒豆目の筋肉全裸、窓から飛び降りる勇者、なんてのが溢れる雄英で簀巻きにされた大人を担いで運ぶくらいのことが目立つ訳ねーだろ」
今更だけどもしかして雄英高校って変人の坩堝だったのかな?すっかり慣れてしまったけど。
「それもそーか」
「文化祭準備中だから余計に目立たねーよな」
「気絶して運ばれるのはB組の物間がしょっちゅうやられているしな」
「アイツも懲りねえよな」
「物間君ってドMなのかも」
「拳藤に構って欲しいとかじゃね」
「「気持ちは分かる」」
「だからモテないのよ峰田ちゃん上鳴ちゃん」
話が脱線しているよ皆。
相場さんが元ジェントルを見つけた方法が物間君がドMかどうかになってるよ。
「全く、居場所なんて愛の力で分かるに決まっているじゃない」
そんな僕達に相場さんはやれやれと呆れながら言った、エルフみたいで怖いなと僕は思った。
「そう、文明の利器という愛の力よ」
彼女が懐からだした機械、そこにはピコンピコンと丸い点が表示されていた。
「フ、軽蔑の眼差しが哀れな者を見る眼差しに変わったのだよ。加害者から被害者だと子供達に認識を改められた気がするのだよ」
いやだってGPSで監視されてる人はねえ、いや今時のスマホにもついてるけど。異世界帰りのおじさんは未来の機械じゃんっ!!て驚いてたなあ。
「って貴方は緑谷出久君じゃない」
すると相場さんは今度は僕を見てきた。まあ元ジェントルがおじさんを知っているなら知っていてもおかしくないか。
「メリッサちゃんが貴方の話ばかりするから覚えちゃったわよ。将来のパートナーなのよね?」
ゾクゥッ。
あ、足の上の麗日さんの気配が何やらヤバめに変化した。このままだと殺られる。
「発目ちゃんも未来の義息子をどう改造するか今から楽しみにしてたわよ」
「それは意味が分かりません」
発目さんがメリッサの父であるデヴィット・シールド博士の後妻の座を狙っているのは知っているけどそれがなんで僕が義息子になる話になるんだろ。
「相場君は現在デヴィット博士の助手をしているのだよ。ハッキングとプログラム構築の技能を買われてね」
「あーそれがアンタらの保釈された理由か?」
「陽介君経由で知り合ってね。起こした事件もほぼ全部が示談で済んだのだよ。店に至っては集客効果もあったようでね」
犯罪・火災現場に人が集まる理屈かな。
人死でてないし、元ジェントルの個性でオブジェみたいになった建物もあるから人目を引くんだろうね。
「そう、今の私は天才デヴィット・シールド博士の助手として七瀬楓を完全再現したアンドロイドの制作ってこれ言っちゃ駄目なヤツだったわ。未だヒーロー業界で弱い分野であるネット回線の防衛プログラム開発を行ってジェントルを養っているのよっ!!」
「再び子供達から軽蔑の眼差しがぁっ!!いや私も用務員として働きつつヒーロー資格取得のため勉強しているからぁっ!!ヒモでは、年下女性に養われるヒモではないのだよっ!!」
なお給料額の差はエゲツないので秘密らしい、デヴィット博士の個人的な研究の報酬があるのと、相場さんの仕事の規模が半端ないからだとか。
「なるほどきちんと更生はしているのか」
「ヒーロー志望としては恥ずかしい話だけど更生したヴィランを見るのは初めてだ」
「あー言われて見ればそうだよな。ヒーローって警察に引き渡して終わりみたいな認識だけど捕まえたヴィランにもその後の人生があるんだよな」
「名探偵だって捕まえた犯人と面会するヤツなんてほとんどいねえだろ」
「純粋に危ないから推奨されてないみたいだぞ。未成年のヴィランを気にかけるヒーローは少なくねえらしいがな」
「大半のヴィランが、個性で暴れたいヤツと金目当てらしいからわざわざ会うヒーローも居ないんだろう」
「人を救うじゃなくて、襲いかかる理不尽を倒すのがヒーローの役目なのかな」
「ただでさえヒーローって兼任し過ぎとか言われてる職業だから規制されてるだけじゃない?」
ヒーローってどこまでやって良いかが曖昧な仕事だからなあ。現職のヒーロー達も得意分野で売り出すために他の職業と被る業務に手を出したりしてるし。○○ヒーローなんて名称もそれがきっかけだったとか。オールマイトが最強過ぎたから、戦闘以外の分野で活躍しようとしたんだよね確か。
「ヒーローか。
私からすれば異世界おじさんであるヨウスケ君こそヒーローなんだろうね」
僕達の話に元ジェントルは感慨深そうに呟いた。
「まあ気に入らないトコ(ジェントルとセガで語り合うトコ)もあるけど私達の恩人なのよね」
相場さんは少々不満気だが。
「思い出すよ彼との出会いを。私達の運命が変わった日の出来事を」
「私とジェントルとの運命の出会いの足元にも及ばない出来事だけど、人生の転機にはなったのよね」
「愛美君は動画投稿元をハッキングして住所を割り出して訪ねてきたんじゃないかい。最初は恐れすぎて粗相した程だったよ。今じゃ良い思い出だけどね」
ストーカー被害者なのか変態紳士なのか、判断できない人だなあ。
「聞いてくれるかい子供達。編集されてない私達と異世界おじさんの話を」
そうして元ジェントルは椅子に座り幻の紅茶ゴールドティップスインペリアル(八百万さんの私物)の注がれたカップを掲げた。
あの運命の日を語るために。
だから僕は、
「記憶再生(イキュラス・エルラン)」
「「「「いや、ちょっとおおお!!」」」」
「この方がわかりやすいじゃん」
元ジェントルの額に手を乗せて魔法を発動するのであった。
「語らせてください(涙目)」
「意気消沈してるジェントルも素敵!!」
次回、あの日の真実。