異世界イズク   作:規律式足

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 オリ設定及びキャラ改変あり、閲覧注意。



105話 あの日の真実

 

『私はジェントル・クリミナル。いわゆる犯罪行為と言われる動画をサイトにアップする男』

 

 記憶再生の画面に映る姿。

 異世界おじさんとの対決と同じシーンだからここは編集されてないのかな。

 

『だが待っていただきたい何も無作為に罪を犯すわけではない例えば前のコンビニ強盗Jスト「早送り早送りっと」

 

「ってオイッ!!緑谷さすがに本人が居るのに前みたく早送りはかわいそうだろうがっ!!」

 

「バカヤロウ上鳴っ!!余計なことを言うんじゃねえっ!!」

 

「ウェイ??」

 

「動画を視聴してくれてて嬉しいなと思ってたら早送りされていた件について(ズーン)」

 

「あーあへこんじゃったよ」

 

「かわいそう」

 

「上鳴が言わねば知らずに済んだというのに」

 

「俺が悪いのかっ?!」

 

「動画投稿者には一番つらい所業だろうしね」

 

「アンタ達、あまりジェントルをイジメるんじゃないわよっ!!ジェントルはいい歳のくせに打たれ弱いのよっ!!」

 

「お姉さんって本当にあの人を愛してるの?」

 

 かなり辛辣なことを言ってるよねこの人。

 

『本日の仕事をやり終えた私は充足感に包まれ帰路についていた。義賊たる私に休息は欠かせない、ホームで羽を休めるために自然と早足となる。仕事前の紅茶は良い、だが仕事後の紅茶もまた格別なのだ』

 

「もうちょっと先かな?」

 

「これ以上早送りするのはやめてやれ」

 

『だが、そう上手くいかないのが世の常。耳に入ったその音に私は足を止めるのであった』

 

「つーかこれ編集されてない思考だよな?」

 

「誰目線を意識してんだろこの人」

 

『いいトコロに連れていってあげるよー』

 

『どんなトコロなの?』

 

『甘いのがいっぱいあってー、弾けるようなのもあってー、色んなおもちゃがあってワクワクして楽しいトコロー』

 

『楽しみ、行ってみたい!!』

 

「ん?」

 

「あれ、この声」

 

「ケロ、聞き覚えがあるわね」

 

『それは青年と少女の声。内容からして甘い言葉で誘い連れ去る気なのだろう。だが義賊にして紳士たるこの私ジェントル・クリミナルはそのような悪行を許しはしない』

 

「合法ロリ巨乳なツインテール女性と熱烈な関係な人に言われてもなあ」

 

「鏡見ろや」

 

「おまいう案件」

 

「辛辣かね君達っ!!」

 

 成人してても年の差はあるよね。

 

『待ちたまえ、そこの者よ!!』

 

『ああん?』

 

 颯爽と飛び出すジェントル。

 そしてそこに映っていた者達は。

 

「千秋君にエリちゃんんんん?!」

 

「聞き覚えのあるわけや」

 

「千秋君だったのね」

 

 歳不相応な外見、ぶっちゃけDQNなチンピラにしか見えない小学四年生のピュアボーイである藤宮千秋君と、最近とある事件により異世界おじさんに引き取られ現在セガと動画投稿の英才教育を受けている幼女嶋嵜エリちゃんだった。

 

「こいつが例の異世界おじさんの甥っ子の元クラスメイトの眼鏡美人女子大生の弟で雄英高校紹介動画でブレイクしたってヤツか」

 

「個性の影響で大人びているとかってヤツだな」

 

「大人っつうか見た目完全にチンピラだろ」

 

「いや本当にそうか?会話内容を思い出してみなよ、おかしいだろ」

 

「多分だけど千秋君は近くにある昔ながらの駄菓子屋さんに案内しようとしているのだと思う」

 

「言い回しが紛らわしいわっ!!」

 

「つまり目の前の映像は小学四年生の少年がお世話になっているおじさんの娘さんに自分のお小遣いで楽しませようとする微笑ましい光景なのか」

 

「そんな風に見えないよ」

 

「かわいそうだけど見えないから」

 

「外見がなあ」

 

 ちなみに千秋君の動画投稿の収入はご両親が貯金しているらしいです。一切手を付けずに独立したらそのまま渡す方針なんだとか(税金とかの手続きはしてくれてるらしい)。

 

『なあに⤴おじさんだあれ?⤴』

 

 話しかけてきたジェントル・クリミナルに対して下から見上げるように顔をグイと上げながら問いかける千秋君。うん、ガンくれているようにしか見えないなあ。

 

「自然なこの仕草、その道のプロかコイツ」

 

「どの道だよ」

 

「決まってんだろ、チンピラのプロ」

 

「凄いのか凄くないのかわかんねえなソレ」

 

 あまりにもどうに入った千秋君の仕草にチンピラのプロ認定、ヒーロー資格仮免試験に雇われたHUCの皆さんという例があるから本当にいるかもしれないのがなあ。

 

『え、いや、誰と、ていうか、その、』

 

「「「どもってるーー!!」」」

 

「いやビビってねえかコレ」

 

「まさか、ジェントルはヒーローを返り討ちにしたこともあるヴィランだろ。こんな子供(見えないけど)にビビるかよ」

 

『そそそその子供を離してここここちらに渡たたたすんだ』

 

 画面の向こうのジェントル・クリミナルの顔が真っ青だよ。マッサージ機みたく震えているし、本当に怯えているみたい。

 

「ビビってるな」

 

「ビビってるね」

 

「そのだね、ヒーローやヴィランってコスチュームのせいか逆に怖くないのだよ。でも彼みたいなガチめなチンピラとか黒服スーツの人は普通に怖くて」

 

 弁明するかのように元ジェントルは言う。けどその理屈は分かるんだよなあ。

 

「ちょっと分かるかも」

 

「ケロ、覚えがあるわね」

 

「あー、コスチュームのせいで現実味が無くなってるってアレか」

 

「実用品なんだが物によっちゃデザインがコスプレ感あるからな」

 

「ヴィラン捕縛時に野次馬が絶えない原因の一つとも言われてますわね」

 

「ヒーローショーの認識があるんだよ危ねえのに」

 

「オイラも警官の格好した人とか超怖いし」

 

「「「それは別の原因だろ」」」

 

『ああん⤴エリちゃんを渡すわけないじゃあん⤴おじさんこそ回れ右して帰りなよお⤴』

 

 画面の向こうの千秋君はエリちゃんをギュっと抱きしめてからそんなジェントル・クリミナルに対して強気に言い返していた。でもこれって、

 

「マジでチンピラみてえだなコイツ。本当に小四かよ」

 

「君は人のことを言えないからね、当時の自分を思い出してかっちゃん。あと千秋君だけど知らない大人に話しかけられて自分だって怖いのに、エリちゃんを守るために必死に頑張って立ち向かっているだけだからね」

 

「マジ?」

 

「状況と聞いた性格からしたらそうであってもおかしくはないが」

 

「ホラ、ここ」

 

 画面を指差すと千秋君の目元は涙がこぼれそうだった。記憶の精霊がわざわざ拡大してくれてようやく分かることだけどね。

 

「うわあ」

 

「まあ怖いわな」

 

「横にラブラバもいるしな」

 

「ジェントル最低」

 

「否定は出来ないが、この時は本当に誤解していただけなのだよ」

 

 こんな外見の勘違いがあるから見た目十人十色な個性社会は怖いんだよ。それでもグランバハマルよりはマシだけど。

 

『ブブー!!ブブー!!』

 

「あ、これ」

 

「防犯ブザーか?」

 

『その音に気づいて私はホッとした。青年の外見に怯えて硬直していた私だが、少女は自らブザーを鳴らして助けを求めることができたのだ。ならば私がすべきことは一つ。ヒーローが来るまでなんとか足止めをしよう』

 

「逆だけどね」

 

「不審者はお前だ」

 

 その喜劇状態の画面の向こうでストンと軽い音がした。そう高い所から着地したようなそんな音が。

 

『その子達に、』

 

『ん?』

 

 そしてジェントル・クリミナルが振り返れば。

 

『うちの子達に何をしている!!』

 

 かつてないほどブチギレた異世界おじさんが光剣構えてそこにいた。

 

「「「「うわあ」」」」

 

 眼鏡が光に反射して輝いてるとこ怖いよね。

 僕には画面の向こうの千秋君とエリちゃんと同じく凄く頼もしく見えるけど。

 

 プツン。

 記憶再生はそのシーンを最後に消えるのだった。

 

「? 消えたけど」

 

「後で聞いた話によると瞬時に切り伏せられて気絶したらしい。驚いたよ目を覚ましたら知らない天井だったからね」

 

「自業自得だけど藤宮さんと敬文君が怒ってて凄く怖かったわ。そして警察官である塚内さんのお世話になったのよ」

 

 そしておじさん経由でシールド博士と知り合ってスカウトされたのかな?セガとかのこともあったのだろうし。

 

「結局、外見から勘違いしてガキ共に絡んだら現れた保護者に撃退されて改心したってことか」

 

「そのとおりだけど簡潔にまとめすぎだよかっちゃん」

 

 色々とあったじゃん。

 

「その後にヴィラン活動の一区切りとして動画の編集をしたね」

 

「前見たアレか」

 

「力作だったわ、セガの件とか私にはよく分からないトコロもあったけれど」

 

「分からない人には分からないなりに伝わるモノはありましたから」

 

 真剣だったんだ、という叫びが伝わってくる動画だったなあ。

 

「さて、長いこと過ごしてしまったが仕事に戻らねばいけない。失礼させてもらうよ子供達よ」

 

「もうジェントルをヴィラン扱いして捕まえたりしないようにね」

 

「すいませんでした」

 

「お仕事中にご迷惑をおかけしました」

 

「よいのだよ、君達も頑張ってくれたまえ」

 

「雄英高校職員の一人として楽しみにしているわ」

 

 僕の勘違いから始まった彼らとの対話はこうして終わった。ヴィランだからと警戒していた皆も彼らの人柄に触れて、もう大丈夫だと思ったようだ。ただ帰る時すれ違いざまに「後で少し話したいことがある」と元ジェントルから告げられた。

 まだ何かあるのだろうか。

 

 

 

 

「すまないね緑谷出久君。どうしても君と話したかったんだ」

 

 夕焼け映える雄英高校校舎の屋上、遮る建物がないせいかまるで夕焼けの中にいるかのようだ。

 

「話したいことって何ですか?」

 

 詫びを入れろとかそんなことでないのなら、僕だけと話したいことがなにか想像もできない。

 

「異世界おじさん、についてかな。先程はあまり彼には触れてなかったからね」

 

「それは、確かに」

 

 同好の士だから親しくなるのは理解できる、けど尊敬するには些か足りないように思える。

 

「私はね、後世に名を残すことを夢見ていた。教科書に載るくらい偉大な男になりたかった」

 

 夕焼けの光の中に表情を隠しながら今までの人生を彼は語る。

 

「けれど無理だった。遊び半分じゃなく真剣にやって私は何もかもが足りない落伍者だった」

 

 語る彼がどんな顔をしているのか。多分それは知っている顔だ、昔の僕と同じ顔。

 中学のあの事件まで、身の丈に合わない夢をみていただけの自分と同じ顔なんだ。

 

「そんなある日事件を犯した、できもしないことをやろうとして失敗したんだ」

 

 そこも同じ、結局僕はヘドロヴィランからかっちゃんを助けられたわけじゃない。助けたのはオールマイトだった。

 

「私は落ちる所まで堕ちて、名を残せれば良いとヴィランになった」

 

 そこからきっかけがありジェントル・クリミナルとなったのか。

 あるいは僕もそうなっていたのかも知れない。そんな風に思えてしまった。

 

「陽介君に打ち倒された後、私は反省などしていなかった。またあの無為な時間を過ごすだけの日々に戻るのかと絶望したんだ」

 

 倒されただけで改心するヴィランなど存在しない。なにせ彼らは救われてない、負けたとしてもより下に落ちるに過ぎないと理解しているのだ。

 

「けどね、私の過去を見た陽介君はね。

 怒ってくれたんだ、憤ってくれたんだ。罪は罪だから罰則は受けるべきだ、でも助けようとした私の想いの否定は間違っているとね。それを理由に迫害するなんて間違っていると」

 

 らしいな、全く。

 

「彼の価値観がズレていることは理解している、17年前のこちらの常識を今に当てはめているだけだとね。でもね、それでも」

 

 ジェントル・クリミナルは胸に右掌を当てながら言う。

 

「私は救われたんだ。あの日の愚行は過ちだった、けど人を救おうとした想いは尊いのだと、そう彼に肯定されてね」

 

 僕もそうだった。

 堕ちた想いは、その絶望は、たった一つの言葉で救われる。そのことを僕も事実として知っている。

 

「だから再び光の下で歩きたいと思った、それが私 飛田・弾柔郎の再起なんだ」

 

 彼はそう言って右手を差し出して。

 

「君も私も陽介君に救われた、だからこれから同じ人に救われた者同士、友として親しくして欲しい。よろしく緑谷出久君」

 

「こちらこそよろしくおねがいします、飛田弾柔郎さん」

 

 僕はその手を掴んだ。

 新しい友の手を。

 





 補足説明、設定。
 藤宮千秋君。
 ランドセルを背負うだけでギャグになる小学四年生。エリちゃんの事情を深くは知らないが、楽しいことを教えたくて駄菓子屋に誘う。末っ子だから兄みたいなことができて嬉しい。
 
 エリちゃん。
 巻き戻しというか逆行化というか、触れた相手を成長を戻すというチートレベルの個性待ち。
 さらに最近、怒れる異世界おじさんの召喚というバグレベルの個性も会得した。最近は駄菓子が大のお気に入り。
 
 防犯ブザー。
 紐を引っ張れば音で助けを呼べる。さらに精霊経由で異世界おじさんにも伝わる仕組み。

 飛田弾柔郎。
 ヒーロー落伍者にしてセガ挫折者であり迷走したフリーターにして傍迷惑な動画投稿者。
 あの日の肯定が救いとなった。

 相場愛美。
 ストーカー。

 異世界おじさん。
 基本やらかす人だが、意図せず誰かを救うことも多い。飛田家への落書きは普通に不快だった。

 
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