異世界イズク   作:規律式足

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 なお藤宮千秋君は雄英高校関連の動画投稿者として有名になってしまったのでエクトプラズム先生に付き添われながら文化祭を回っています。ファーストコンタクト時に二人とも顔怖い(エクトプラズムも素顔)と思ったそうです。お客からはスタッフか生徒だと勘違いされてます。



109話 想い

 

『ねえ緑谷。雄英に入ること、ヒーローを目指すことを悩んだりした?』

 

 なんでだろうね。

 この会話を思い出すのは。

 トラブル無く雄英高校文化祭が開始して少々時間がたち、いよいよ僕達一年A組の出し物の時間。

 今回の出し物の中心人物であった耳郎響香さんとの文化祭準備期間中の一幕。普段はあまり話さない、というか無自覚女たらし(?)と普段は敬遠している彼女とクラス委員長であったからか、演出班のまとめ役だったからか、文化祭準備期間中に会話する機会が多かったのだ。

 確か僕はあの時になんて答えたかな?

 照明の置き場である観客も皆も良く見える場所で、観客よりも良く見えるこの場所でなぜかそんなことを思い出していた。

 あ、おじさんがエリちゃんとミッドナイト先生を連れて来ている。

 おじさんはエリちゃんがよく見えるようにと抱っこしていて、ミッドナイト先生はそんなおじさんを支えるように寄り添っていた。まるで夫婦みたいに見えるから早くくっつけば良いのにと思う。まあでもグランバハマルであのアリシアさんですら堕とせなかったおじさんは女ヒーローの中でもトップクラスの美人であるミッドナイト先生でもそう簡単には堕とせないのだろう、おじさんの鈍感さは普通ではないからね。

 最初の頃はミッドナイト先生をエルフ再びだと心配してたけどプライベート時の姿を知った今ではお似合いの二人だと思っている。

 あ、敬文さんと藤宮さんの姿は見えない、おそらく藤宮さんにとっては妹分認識の茨さんが所属するB組の出し物に行ったのだろう。まあどちらかが見ていれば後で記憶再生の魔法で見れるからね、僕も興味あるから後で見せてもらおう。

 ちなみに担任として見に来た相澤先生も見つけた、その横でパトロールの時間である筈なのに何故か居てさらにOTLとなっているプレゼント・マイク先生も。

 まあプレゼント・マイクは置いといて、辛い経験をしたおじさんとエリちゃんにはその記憶を吹き飛ばすくらい楽しんで貰いたいなと思う。 

 

 そして始まる舞台。

 かっちゃんの爆破による音から奏でられる演奏とダンス班の揃った動き。合わせて僕は煙で形作った竜を飛び立たせる。同時にメインである耳郎さんが叫ぶ。

 

 

『ウチさ、文化祭とはいえ諦めた方の夢をこうして活かせるなんて思いもしなかった』

 

 演出の役割をこなしながらも脳裏をよぎり続ける耳郎さんとの会話。

 彼女は耳郎さんは進路で悩んで迷ったそうだ、なにせ彼女の好きなモノはヒーローだけではなかったから。ご両親が教えてくれた音楽も好きで、人の為に体を張って戦うヒーローがかっこよくて憧れていても、それでも迷っていたそうだ。

 僕は、どうだったかな。

 始まりは、なんだったかな。

 今は、どうなんだろ。

 僕は無個性だった。だからこそ皆とは違い屈折した形で夢を見ていた、歪でズレた視点で将来を考えていたんだ。

 進路希望からのかっちゃんのワンチャンダイブ発言、ヘドロヴィランの遭遇からのオールマイトとの出会い、そして交通事故からのグランバハマル行き。

 何もかもおかしくなったあの日。

 僕は何を思ったのかな。

 

『だから今この時が楽しくて嬉しい』

 

 楽しい、か。

 皆の楽しいという想いが、舞台で弾ける。

 弾けて広がって、来てくれた人達にも伝わる。

 少し前まで羨んで焦れていた個性が輝きを生み出している。

 一体となる体育館でエリちゃんもおじさん(ちょっとアレな感じに)もミッドナイト先生も衝動のままに叫んでいる。

 そんな中で僕は。

 この学校に入学できて良かった、と思ったんだ。

 

 無個性であることから夢は叶わないと知った。

 衝動のまま飛び出したことで救えた命があった。

 グランバハマルでの生活で、生きることの厳しさと襲いかかってくる理不尽の存在を実感した。

 グランバハマルで出会ったおじさんに揺らぐことの無い人としての在り方を学んだ。

 戻ってきたニホンバハマルでグランバハマルとは異なる人というモノの醜さを見た。

 そして、オールマイトが僕の進むべき道を導いて指し示してくれた。

 

 あの日までの僕はヒーローに成ると言ってはいても言っているだけの存在だった。夢を見てはいても、本心では身の丈にあった将来とやらになるんだろうなと冷めた目をして生きてきた。

 でも、身の丈にあった将来を選んでいたら今の、この光景を見ることは出来なかっただろうな。

 雄英高校に入学しなければ一年A組の皆と出会わなければ、こんなこの場の全ての人と一体となれる舞台を創りあげることが出来なかったんだろうな。

 ああこれはオールマイトのおかげなんだ。

 あの人が肯定してくれたから僕は此処にいる。

 あの人が僕に託してくれたから僕は皆と青春を過ごせるんだ。

 今しか無い、人生の輝かしい一時を。

 

『僕もさ、耳郎さんがヒーローの道を選んでくれて嬉しい。君(ヒーロー科の仲間達)とこうして出会えたことが何よりも嬉しいよ』

 

 そう笑いながら返したんだっけ。

 

『〜〜〜〜無自覚女誑しが。いつか刺されるよ、いや本当に』

 

『何故にっ?!』

 

『つーかウチが刺す』

 

『突然どうしたのさっ?!』

 

 その後に顔を真っ赤にした耳郎さんによくわからない反応をされたけどね。

 

「「「アンコール、アンコール!!」」」

 

 おっと予想通りの展開だね。

 観客からアンコールされることは織り込み済み、それを込みで時間と予定は組んである。

 

「氷嵐創映ー(レイベリオ ユールエルラン)」

 

 再び始まる二度目の舞台に合わせて氷の幻像を作り出す。グランバハマルでメイベルが得意としてロクに役に立たなかった魔法。同じ人物が二人に増えた舞台は先程よりも熱狂を増す。

 演出班として練習する皆をじっくりと観察したからこそ出来る荒業だね。

 しかしこんな使い方を出来るなんて思いもしなかったな。発案者の轟君にはプロデューサーの才能があるのかもしれない(実際は轟焦凍がメイベル見たさに緑谷出久に記憶再生を強請り続けた結果思いついたとか)。

 アンコールに応え、皆が再び力の限り盤上で飛び跳ねる。

 上からエリちゃんが両手を上げてはしゃぐ姿を見て胸に込み上げてくるものを感じ、抱っこしてるおじさんがテンション上がっていつものクリーチャーみたいな笑顔になっていたことから目を逸らし、そんなおじさんに目をハートにしながら見惚れてるミッドナイトにドン引きした。相澤先生はやるじゃねえかとニヒルに笑い、プレゼント・マイク先生はミッドナイト先生を見て絶望顔しながらもプロらしく場に合わせ、さらに見に来てくれた飛田さんが満足そうに笑っていて横にはストーカー疑惑の相場さんがカメラを激写中、家族で来てくれた洸汰君は僕を探しているのかキョロキョロしていて、プッシーキャッツの皆さんまで私服姿で参加していた。

 そして、僕に此処をくれたオールマイトが入口から僕を見つけてやったなと言わんばかりにグッと親指を突き上げてくれた。

 上がり下がりする感情がまるでジェットコースターみたいだ。

 でも、楽しくて嬉しいそんな時間だった。

 身の丈にあった将来ではあり得ない、ヒーローの道を選ばなかったら辿り着けなかった未来。

 そこに僕は居たんだ。

 

「やったね」

 

 終わった後に耳郎さんでパンと掌を叩き合わせる。

 これもまた青春らしい。

 後片付けをしながら僕は満足感に包まれていた。

 

 さて後は文化祭を回ろうか、男子達にクレープ屋は要注意と再度伝えて、峰田君に誘われたミスコンを見に行こう。

 

 

 しかし僕はこの判断を後悔することになる。

 僕は周囲をよく見ておくべきだった。

 そこにイソイソと走り去ったおじさんの姿があったことを。

 僕が自らの血反吐に沈むまで後○時間。

 




 
 あけましておめでとうございます。
 正月飾りもお節も餅も断固として用意しない作者でございます。
 現在原作では一話に満たないシーンで数話使っております。
 ライブシーンにイズク君のアレな内面と耳郎ちゃんとのシーンをぶちこみました。
 やはり文化祭の主役は彼女ですからね。
 ヒロアカ一話を見て思うのです、緑谷出久君は身の丈にあった将来を選んで幸せになれるのだろうかと(緑谷出久不在の雄英高校って犠牲が増えね?という点は置いとく)。雄英高校に入学できる学力のある無個性として悪目立ち(日頃のアレな姿も)して屈折した未来を歩むのだと予想してしまいました。
 だからこそ、この文化祭こそ学生らしい楽しい一時にして見ました。次話で地獄に突き落としますが(ボソリ)。
 雄英高校に通えてもっと良かったこと、クラスの皆と出会えたことをこれからも取り上げていきたいと思います。
 不定期ですが今年もよろしくおねがいします。
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