異世界イズク   作:規律式足

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 全世界五百兆万人居るねじれちゃんファンの皆さん、ごめんなさい。



110話 ミスコン

 

 さてミスコン。

 ヒーロー科一年の綺麗所がB組の拳藤一佳さん以外参加せず、さらにサポート科のメリッサと発目さんが参加しないので、いかにねじれ先輩と拳藤さんが参加しても正直物足りないなと思ってしまう(さらに参加しない三年の巨神兵先輩もガワは美人)。

 だが雄英高校文化祭でのミスコンは女ヒーローにとって将来に大きな影響をもたらすイベント。上位陣ともなればデビューしたてであってもヒーローランキングにすら影響をもたらすらしい。あとミッドナイト先生も在学中三年連続女王の座に君臨していたとか。

 そして今年度であるが、なんと一名のみだが一般参加も可能になったとか。本日来場された希望者から主催メンバーが選考するそうだ。峰田君情報ではプロヒーローであるマウントレディやピクシーボブも立候補したらしい。

 

「これは荒れるね」

 

 個人的にはこの面子なら付き合いのあるねじれ先輩推しだ。だが一般参加枠の存在によってこの伝統あるミスコンでかつて母校でリンゴを連続百個握り潰した記録を持つマウントレディが暴れまわるのかもしれない。

 しかしなんでだろう、さっきからワン・フォー・オールのフォースの個性がずっと警鐘を鳴らしている。なんかひたすらヤバいヤバいって。まあおじさんも来るっていってたから巨大隕石落下かグランバハマルからエルフ襲来でもない限り大丈夫の筈なんだけど。

 選ばれた一般参加枠の?のパネルに何故か不穏な気配を感じながらテンションがヒートアップし過ぎてヤバい峰田君とミスコンの開始を待っていた。

 

 

『シュッシュッと一吹きケンドー!!』

 

「ハッ!!」

 

『華麗なドレスを裂いての演舞!!

 強さと美しさの共存、素晴らしいパフォーマンスです!!』

 

 これは中々、彼女らしさを引き出したアピールだね。しかしあんな板を叩き割る手刀を何度もくらっている物間君はよく平気だなあ。

 

『3年サポート科ミスコン女王!!高い技術力で顔面力をアピール!圧巻のパフォーマンス!』

 

 顔面を全面に押し出した舞台のような変形する戦車に乗って現れる絢爛崎美々美先輩。

 これはミスコンのパフォーマンスなのかな?確かに盛り上がっているけどジャンル違いな気がするよ。でもごめんなさい、こんなの出てたら綺麗とか可愛いだけでは投票しないかな。僕もインパクトであの人に投票しちゃうと思うなあ。

 ミスコンの趣旨から外れている気がするけど。

 そしていよいよ昨年準グランプリである波動ねじれ先輩の出番。ミリオ先輩によると去年はアノ絢爛崎先輩に派手さで挑んでしまったらしい。だから今年のコンセプトは彼女の、ねじれ先輩の良さを引き出したパフォーマンス。

 どこか子供らしい彼女が個性を用いて空を舞う、その様は純真無垢な妖精のようだ。

 妖精、という言葉はグランバハマル帰りの僕には胃が疼いてしまうけどそれでも思わず目を奪われてしまった。

 

『幻想的な宙の舞!引き込まれました!』

 

 これはねじれ先輩の優勝かな?

 僕はそう思っていたんだ。

 次の言葉を聞くまでは、

 

『そしてーっ!!今年度から初の試み!!一般参加枠の番だぁっ!!プロヒーローや現役アイドルすら立候補した中、我々ミスコン実行委員達が選んだのはこの御方!!』

 

 アレ?てっきりマウントレディかピクシーボブ、或いはおじさんにアピールするためにミッドナイト先生がでると思ったのに。

 

『ス・ザ・イルギラーゼ・ガ・ルネルブ・ゼ・ギルレア・グラン・ゼ・ルガ=エルガさんだぁーーっ!!』

 

「はいっ?」

 

 その姿、緑の衣纏いし麗しきエルフの姫君。

 容姿でいえば美形しかいないグランバハマルでも文句なしでトップの長命種。

 おじさんを追い続けたツンデレストーカー。

 古代魔導具を振りかざす、僕にとって異世界最大のトラウマ。

 

「(何やってんのおじさーん!!)」

 

 に変身した異世界おじさんがミスコンに参加していた。というかヒーローやアイドル押しのけて本戦に出ていた。

 叫びというかツッコミが声にならなかったのはビチャビチャと口から血が溢れて止まらなかったからだったりする。

 

「た、敬文さん」

 

 先程見かけた異世界おじさんの甥っ子である敬文さんに口元を血に染めたまま問い詰める。

 

「あ、ああ緑谷君。これには深い訳が」

 

「また動画再生数を稼ぐためにやらせているんじゃないんですかっ?」

 

 ぶっちゃけエルフに変身と言ったら大体敬文さんが元凶なのだ。

 

「今回は違うんだよ。今回は」

 

 気まずそうに顔を逸らしながら敬文さんが言う、自分がやらかす側であるという自覚はあるようだ。

 

「というか三十過ぎたおじさんが高校の文化祭のミスコンに変身して参加するなんてどんな深い訳があれば」

 

「ーーーエリちゃんが見たいって、そう言ったんだ。お母さんが舞台に上がる姿が見たいって」

 

 あ、あーーー。

 

「なら仕方ないですね」

 

 エリちゃんが望むことは出来る限りしてあげたくなる。その気持ちは僕だって理解できるのだ。

 藤宮さんに抱っこされ舞台上のエルフ(おじさん)をキラキラした眼差しで見つめるエリちゃん。あんな姿を見たら仕方ないね。

 

「(あの人また血を吐いてる)」

 

 なおエリちゃんから僕はこんな目を向けられていたとか。

 

「どうした緑谷?」

 

「つーか、色々大丈夫?」

 

 皆のところに戻ったらかなり心配されてしまった(注、口元が血塗れ)、なんか申し訳ない気分だね。

 

「いやちょっとエルフがおじさんでお母さんでミスコンだから、うん」

 

「「「やっぱりか」」」

 

 なんか舞台上でガヤガヤしててエルフ(おじさん)の出番がまだみたいだ。

 

「どうしたんだろ?」

 

「アレだ、マウントレディとアイドルが自分が落ちたことに納得しなくて抗議してるらしい」

 

 極めて正当な抗議だ頑張れ。

 

「しかしスゲー長い名前なんだなエルフ。なんか意味あんのか?」

 

「王族だからね、勿論あるよえっと、

 ス=讃えよ

 ザ=奉れ

 イルギラーゼ=恐ろしいほど強靭に民衆を従える

 ガ=敵対者の

 ルネルブ=村を焼く

 ゼ=極めて

 ギルレア=祝福されしもの

 グラン=万象に

 ゼ=ことさら

 ルガ=雷に

 エル=細切れにする

 ガ=敵対者を と、こんな感じ」

 

「「蛮族かよ」」

 

「やっぱり長い名前だな」

 

「画家のピカソの方が長いけどね」

 

 気になった人は調べてみよう。なお世界一長い名前のギネス記録はアルファベットで1000字を超えるよ。

 

「あと個性の煙幕を応用して宙に字を書くとか応用力が凄まじいな緑谷」

 

 要は使い方次第だからね。

 言葉だと分かりにくいので皆に見やすくやってみました。

 

『さあ少々トラブルがありましたが、パフォーマンス開始ですっ!!』

 

 あ、結局抗議は無駄だったのか正直残念だ。

 エルフ(おじさん)は昔エルフから貰いいつだか藤宮さんが着たというドレスを身に纏いゆっくりと歩き出す。ヤバいこの時点でねじれ先輩の妖精らしさを超えてやがる流石本家本元、オノレ見た目だけは良いエルフが(いや僕に当たりが厳しいだけで良い人なのは知っているけどね)。

 そこへ用意されたお邪魔ギミックのロボット達が一斉にエルフ(おじさん)に襲いかかる。だが収納魔法を開き取り出した剣の古代魔導具(エルフ未回収品)を振るい、剣舞が如き動きで斬り捨てる。

 おじさんめ、明らかに魅せるプレイを意識しての立ち振る舞いだぞ。

 そして今回のミスコンで評価の高かった人達を上回ろうと対策している。

 状況に合わせてすぐさま攻略法を見つける、これがセガで培われた力だというのか。

 だが、まだ甘い。

 それでは派手さという点で絢爛崎美々美先輩を超えてないよ。

 

「なあ緑谷、なんでお前が審査員みたいに採点してんだ?」

 

「あ、口に出てた?」

 

「うん」

 

『氷嵐創映ー(レイベリオ ユールエルラン)』

 

 だがそんな僕の想定を異世界おじさんは容易く超えていく。さっき僕がやったように魔法で巨大な魔炎竜の幻像を雄英高校上空に生み出し、

 

『雷鎚殲滅ー(ルガルドス ゴレット バストール)』

 

 一度放てば都市に甚大な被害を齎す雷鎚、それを古代魔導具のエネルギーとする。そして、

 

『超長星破断』

 

 展開した鞘から天まで届きそうな程に伸びたエネルギーブレードが上空の魔炎竜の幻像を両断した。

 ヤベえよあの人ガチでグランプリ狙ってるよ、こんな光景見たら誰もが投票するじゃん。

 なおこの時の光景は外部からも見えていて後日ニュースになったりする。

 

「なあ緑谷、アレって実は威力の無い見た目だけの必殺技だよな?」

 

 その場の全員が呆気に取られる中、峰田君が僕にそう尋ねてきた。

 

「いんや、魔炎竜に変身した僕も同じように両断できるガチ必殺技」

 

「なんでんなもん撃つんだよあの人」

 

「勢いの人だし、エリちゃんを喜ばせようとしたんじゃない?」

 

 エリちゃんがいる場所を見たらキャッキャッとはしゃいでいるから大成功だね。

 

「ところで峰田君」

 

「どうした?」

 

「もう、限界」

 

 エルフを見てるだけでもしんどいのに必殺技を放つトコまで見たらトラウマがね、ヤバいのよ。

 精神的な限界の来た僕は自らが吐き出した血潮の中にドチャリと倒れ伏したのだった。

 

『投票はコチラへ!!結果発表は夕方5時!!シメのイベントです!』

 

「B組拳藤!拳藤B組に清き複数票を!!」

 

「誰に入れようかな」

 

「とりあえず緑谷はねじれ先輩で、と。ほれ他にもニャンニャンダンスなんて素敵な名前の出し物があるからサッサと行くぞ」

 

 峰田君は以前渡した治癒の呪符を僕の身体へとペタペタと張りつけ、ズリズリと引きずっていった。

 

「緑谷の対処に慣れたな峰田のヤツ」

 

 誰にも誘われなかったら一緒に見て回る約束だったからね。友人と回る文化祭も人生初の経験で楽しいものだね。

 

 

 ちなみにニャンニャンダンスという出し物は相澤先生によるモノで、体育館の舞台の上で人間サイズで二足歩行の猫三匹が尻尾振りながら踊るというものだった。

 踊りの最後でバッとけだもののローブを脱ぎ放ち、そこから相澤先生と根津校長それに心操人使君が現れた時、踊っていた人物のあまりのギャップに世界が凍りついたように感じたよ。あと綺麗な女の子によるダンスを期待していた峰田君がブチ切れていた。

 その後は野球部主催のストラックアウトを峰田君がノーミスでクリアして男子野球部員にキャーキャー言われたり、かっちゃんとアスレチックに参加してタイムを競ったり、軽食を食べたりしてるうちにミスコン結果発表の夕方5時になってしまった。

 

 けれどそこで一つの出来事が。

 予想通り優勝したのはエルフ(おじさん)だけどエルフ(おじさん)はその王冠を準グランプリだったねじれ先輩に被せた。

 自分は娘に良いトコ見せたかっただけだから、パフォーマンスも後出しジャンケンで有利だったのもあるしね、と屈託のない笑顔でねじれ先輩こそが真の優勝者だと言ったんだ。

 人の流した汗を否定したくない、そんなおじさんらしい言葉だった。

 最初は拒もうとしたねじれ先輩も本気で引かないおじさん(見た目エルフ)に顔を真っ赤にして恥ずかしそうに受け入れたんだ。

 万雷の拍手に包まれたミスコン会場。参加者も観客も投票者も誰もが涙を流しその感動的な一幕を祝福した。

 

 

 

 ここで終われば良かったのに。

 

 後日談というか本日のオチ。

 その後ねじれ先輩が「お姉様と知り合いになりたい」と言って周囲の反対を押し切って更衣室へと全力ダッシュ。一般参加枠であるエルフ(おじさん)は個人用の仮設更衣室でミスコン衣装着替えてから結果発表の舞台に上がった。だからねじれ先輩が向かったんだろうけど、

 

「いけないっ!!」

 

 同性でも問題になる着替えの場に乱入。その上で正体がおじさんだからヤバい問題になると僕はねじれ先輩を全力で追いかけた。

 だが結局間に合うことが出来ず、

 

「不思議、不思議、お姉様がおじさんで不思議、お姉様がおじさんに変身しだすなんて不思議、不思議」

 

「ああ緑谷君ちょうど良かった!着替えようとしていた俺を見たこの娘がなんかおかしくなっちゃって。悪いけど神聖魔法をお願い」

 

「いいからおじさんはまずドレスから着替て」

 

 そして必要なのは神聖魔法ではなく記憶消去魔法だから。

 乱入したねじれ先輩はエルフからおじさんへのトランスフォームを見てしまい、そのあまりにショッキングな光景による精神的ダメージで体育座りで不思議不思議とうわ言のように呟いていた。かつて藤宮さんも同じ経験して悲鳴を上げたとか。

 そしておじさんは、エルフから貰った透けるようなドレス姿のままねじれ先輩をなんとかしようとオロオロとしていた。エルフの姿ではなくおじさんの姿で。

 込み上げる血ではない吐き気を感じながら僕は場を収めるのであった。

 なおその場に居たミッドナイトはおじさん+ドレスの姿に興奮し鼻血を出してぶっ倒れていた。恋する乙女って美的感覚も狂うのだろうか。

 

 こうして締まらない終わり方で、あるいは異世界おじさんらしい終わり方で、雄英高校文化祭は幕を閉じるであった。

 





 補足説明。
 
 ミスコン。
 一般参加枠にて変身したおじさんが優勝(譲ったけど)するというトンデモ事態に、真実を知る者はその秘密を墓場まで持っていくことに。なおミスコンなのにおじさんの出番後半はアニメ異世界おじさんの最終話のシーンだったりする。
 
 ねじれ先輩。
 精神的ダメージを受けた天然で美人な先輩。後日記憶消去せずに持ち直し緑谷出久に異世界おじさんのことを尋ねて回るようになる。なおヤバい気配を感じたミッドナイトが全力ガード。

 異世界おじさん。
 愛娘のためなら変身してミスコンにすら参加する男の中の男にして父親の鏡。更衣室が個室仕様で無ければ参加しなかったそうです。

 ミッドナイト。
 一生の思い出が今日だけでたくさん出来て満足。エリちゃんを中央に三人で手を繋いだこと、たこ焼きをおじさん達と分け合ったことなど色々やれた。
 後日恋愛関連で取材されたとか(おじさんが一般人だから断った)。
 なおドレス姿のおじさんは色気がヤバかったらしい(恋する乙女フィルター)。

 相澤先生。
 教員による出し物でけだもののローブを着てニャンニャンダンスを踊った真の漢。猫になって踊ることに恥ずかしさなどない。

 根津校長。
 相澤先生に誘われて快諾。ネズミが猫になって踊る、これ即ち下剋上と謎なテンションだったとか。

 心操人使。
 文化祭の真の被害者。授業外で個別指導してくれる先生の要請を断ることが出来なかったらしい。弟子入りしたことをガチで後悔した。なお後日ニャンニャンダンスを見たプッシーキャッツに誘われてインターン活動に参加するもニャンニャンダンスもする羽目になる。
 
 プレゼント・マイク。
 ミッドナイトの恋する乙女な姿に撃沈。
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