全世界のハイエンドとみろや君ファンの皆さんごめんなさい。
「食ってくれ親父からの九州土産だ」
ヒーロービルボードチャートが発表されてから数日たったある日、轟君がこんなに食いきれねえよと呟きながら実家から送られてきた大量のお土産をクラスの皆に配っていた。
「エンデヴァーが遠征でもしたのか?」
かっちゃんの疑問も当然のこと。
機動力と戦闘力を合わせ持つヒーローなど業界全体でも極稀な例。確かにオールマイト、ミルコ、ホークスという例外はあるが通常ヒーローは自分の事務所から離れた場所まで仕事をしに行くことは様々な面でコストがかかるため滅多にない。
それは事件解決数が最多であるエンデヴァーとて同じこと、事務所の規模とサイドキックの数から大抵のヒーローとは比べ物にならないくらいの行動範囲を誇るが、九州ともなるとそれこそ国からの要請かヒーロー殺しステインやヴィラン連合などのネームドヴィランの捕縛という目的がなければ行わないだろう。
「なんでもホークスとチームアップするんだと。その話し合いのために行ったそうだ」
「新ナンバー2ヒーローのっ?!」
「あの速すぎる男とっ?!」
「トップヒーローワン・ツーがチーム組むとかまじかよ」
「オールマイトの時にはありえなかった話だな」
そらだってナンバー2(エンデヴァー)がナンバー1(オールマイト)を毛嫌いしてたから。
ヒーロービルボードチャート早々の大ニュースに談話室は沸き立つ。チームアップは以前からあったけどあくまで事件の時にその都度合流する程度、けどトップヒーロー達が率先して行うことで全国規模で広めようとしているのだろうか。
「しかしなんでだろうね?」
「ぶっちゃけ必要ないだろ。新ナンバーワン・ツーヒーローでなんて戦力が過剰過ぎねえか」
「うむ、エンデヴァーとホークスに勝てる存在など先日のオールフォーワンくらいしか想像できんが」
「オイオイ、エルフを忘れんなよ」
「それは加えちゃ駄目なヤツでしょ。百歩譲ってそこは異世界おじさんの方だって」
「あの人がヒーローと戦うなんてないから」
「だね」
いくらあのエルフだってこっちのトップヒーロー達とやりあったらそう簡単に勝てないと思うけど。負ける姿も想像できないけどね。
おじさんはホラ、最強のセガユーザーだから(セガゲームの腕前が一番上手いではなく、セガユーザーの中で戦闘能力が一番高いという意味で)。
「チームアップ推奨のため以外だとすれば、脳無対策とかか?バカみてえな身体能力とアホみてえな火力ないと厳しいからな」
「なるほどつまりミルコカップルなら余裕と」
「バカみてえな身体能力のミルコとアホみてえな火力の爆豪なら勝てるわな」
「それを一人でこなす緑谷は?」
「バカでアホで鈍感」
「なんで僕に飛び火するの」
そして僕のどこが鈍感だ。
「何体かとっ捕まえたが、雄英襲撃の個体レベルのはいなかったって話だ」
「だが人造物である以上一体だけとは思えない。より強化されるか同レベルのヤツを量産されることを視野にいれてのことかもな」
「あの時は緑谷が瞬殺してたけど、実際どれくらい強かったんだアレ?」
「事前情報が無いと、よほど相性が良くないと勝てないレベルだよ」
そう、あの個体はオールマイトに勝てると豪語するだけの存在ではあったのだ。
オールマイト並のパワーに再生能力、ましてや初見だと再生能力があるなんて分からないから仕留めたと思ったその時に手痛い奇襲を食らうことになる。
僕が勝てたのはワンフォーオールによる身体能力と粉々になろうと再生する敵にグランバハマルで慣れていたからに過ぎないのだ。
「だからこそ脳無に勝てるように組むのか」
「それでエンデヴァーの火力とホークスの速さのコンボか。エゲツないが参考になるな」
「ウチのクラスでコンボとなると、硬化した切島を瀬呂がテープに付けて振り回すとか?」
「それは瓦礫で良いだろ」
「私と青山君ならお互いの個性を活かせるね」
「ウィ☆」
「なら魔炎竜に変身した僕を口田君が操るコンボもありだね。完全に人としての意識が無い状態だと出来ると思う」
「口田すげー」
「最強じゃん」
「(照れ)」
「おい待て馬鹿、完全に人としての意識が無くなると元に戻れなくなるんだよな?やるなよ絶対、フリじゃねえからな」
「(汗)」
そこに気づくとは流石かっちゃん。危うく試すところだったよ。
「話は変わるけどよ、夏兄が言うには、九州に行った親父だが帰ってきた時に悩んでたらしいんだ」
エンデヴァーの悩みか。
それを実家で表に出せるくらい家族仲が落ち着いたみたいでなんかホッとするよ。トウヤさんの時にかなり強引にやったからなあ。
「悩んでるのに家族に九州土産を爆買いしたのか新ナンバー1ヒーロー」
「ネットでも話題になってるよー。ナンバー1らしい豪快な家族サービスって」
芦戸さんのスマホに映る大量の箱を抱えたエンデヴァーの姿。目立つからコスチュームは脱ごうよ。
「そんなことする人だったんだな意外だぜ」
「いや今回がはじめてだ」
「「「はじめてって、ソレはソレでどうなんだ一家の大黒柱」」」
「ケロ、家庭は人それぞれなのね」
現在轟家では家族関係のやり直し中だから仕方ないって。
「それで悩みってのは?」
「なんでも街中でホークスと歩いてた時に人集りが出来たそうでな」
「ホークスは飛んでないとすぐにファンに囲まれるからな」
ホークスの所で職場体験をした常闇君の言葉には実感がこもっているね。
「友人と一緒だった子供にファンサービスしようとしたら、その子が血涙流すくらいショックを受けたらしい」
「なんで?」
「血涙て」
「ファンサービスをしない媚びない姿勢がカッコイイのに変わってしまった、って叫ばれたそうだ」
「「ガチファン怖え」」
「士傑の夜嵐君はファンサービスをしない姿に悪印象を抱いてたって言ってたよね?」
「大衆ってのは勝手なもんだ」
今までのエンデヴァーにも根強いファンがいたのは事実。エンデヴァー本人が変えようとしている姿も人によっては受け付けないのか、難しい問題だ。
「そういえば今じゃ考えられないけど、オールマイトの笑顔も悪く言われてた時もあったみたいだね」
オールマイトがアメリカから帰国して日本で活動しだしたばかりの頃らしいけど。
「緊急時にヘラヘラ笑っていて真剣味にかけるとか、緊張感が無いとか、そんな感じに言われたんだって」
「俺達にとっては安心できる笑顔なのにな」
「難しい問題だよなヒーローとしてのイメージってヤツは」
ただ救えばいいわけではない。人々を守る象徴として人目を意識しなければならない。
轟君から聞いたエンデヴァーの悩みはこれからのヒーローである僕達にも深く考えさせられるものだった。
時はしばし遡る。
人通りのない裏路地の廃墟、そこに新ナンバー2ヒーローである速すぎる男ホークスは居た。
決して表沙汰に出来ない、名誉名声に頓着しない長期目標を見据えて動く彼にしかできない役割。
「ようこそホークスきゅん」
今度こそ完全に闇組織を根絶する為、より多くの情報を得るために敵連合に取り入る。
そのためにヴィラン連合構成員の一人であるヴィラン名マグネこと引石健磁に接触したのだが。
「私のハーレム♡もとい敵連合へ」
彼は現在、敵連合との顔合わせの場で肉体は男性で心は女性なヴィランにねちっこく絡みつかれていた。
「まあアレだ。しばらくはマグ姐と(俺達の為に)行動してくれ」
「悪いな、金欠で歓迎会すら開いてやれない。簡単なショーならやってやろうか?」
「代わりにマグ姐がサービスしてくれるってよ!!頑張れ!!」
「ヒーローならイズク君のこと知ってます?あと私はマグ姐と恋バナ友達です、「ねーー」」
ヴィランらしからぬ和気あいあいとしたユルイ空気。後ろ盾であるオールフォーワンが逮捕されてからどうしていたのかと疑問だったが、裏社会の仲介屋とネームドヴィランであるコンプレス、マグネが先導して表にでないヴィラン集団を潰して資金調達と腕を磨いているようだ。
(オールフォーワンの部下からの接触はないのか?今の時点でそうなら動くとしたら、現在グラントリノが追っている黒霧が捕縛された時になるか)
ホークスはそう思考をまとめ、ケツに触れようとしているマグネの手をさり気なく遠ざけた。
(そうだヒーローが暇を持て余す社会、必ず手に入れてやる俺の出せる最高速度で)
自身の抱く夢のため、速すぎる男は今日も闇の中すらも全速で駆け抜ける。
セクハラに耐えながら。
補足。
荼毘が敵連合未加入のためエンデヴァーとホークスのハイエンド戦はありませんでした。
代わりにホークスが接触した相手はマグネです。
マグネのキャラが解釈違いの方はすいませんでした(土下座)。
マグネは極道との接触が無く生存してますが、本作ではこんなキャラクターです。
ホークスの受け入れに関しては戦力不足とマグネ生存のためアッサリでした。決して死柄木弔がセクハラ被害を押し付けたかったからではありません、多分。
なお下手したらギガントマキア及び異能解放軍との戦いにもホークスは参戦せざる得ないかもしれません、マグネにセクハラされながら。
ホークスよ強く生きて(合掌)。