異世界イズク   作:規律式足

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 その頃のホークス。

 ヴィラン連合と親睦を深めるため、現在マグ姉とポッキーゲーム中。
 とりあえずマグ姉とトガちゃん以外には別の理由で感謝されて親しくなってます。



115話 A組(+心操)対B組、という名の蹂躙。

 

 クジにより五チームに分かれ、それぞれ気合を入れて対峙するヒーロー科生徒達。

 そんな勇ましくカッコいい勢揃いシーン中で、一つだけ足りないモノがあります。

 

「答え、僕」

 

 チーム決めのクジを引くことを許されず、『救護室』と書かれた看板の横に置いてある椅子に座らされた僕こと異世界帰りの緑谷出久。ふふふ、なんとなく予想できていたけど辛いぜ。

 

「せんせー、緑谷出久君が仲間にいれてほしそうにこちらを見つめています」

 

「きちんと『いいえ』を選択しろ」

 

 なんか倒されてから立ち上がったモンスターみたいな扱いされてますけど!?グランバハマルを思い出すぜ。

 

「せんせー、なんで緑谷出久君は授業に参加出来ずにハブかれているんですか?」

 

「雄英高校教師達と集団戦で勝てるヤツを参加させられるわけがないだろ。あと治療係として参加はしてる」

 

 期末試験のアレか、懐かしい。

 その結果を踏まえたら参加できないよなあ。競い合うことが目的な授業に一方的な展開は望ましくないから。

 

「5試合中何試合かは人数に偏りがある。ってのはこういうことか」

 

 色々察したかっちゃんが呟く。

 心操君がクジを引き、加わることになったのはA組は1チーム、B組は5チームだ。

 結果クラス対抗戦は、1試合目は五対四、5試合目では三対五という人数の偏りができたわけだ。

 心操君のクジの結果次第だから何試合か断言できないわけだよ。僕が抜けたチームとB組の心操君が加わったチームが別だったらもう一試合偏りがあったわけだからね。

 しかし、三対五の人数的に不利なチームは峰田君・麗日さん・芦戸さんか。

 約二倍の人数差だけど峰田君がいるから大丈夫だろうな(彼が途中でセクハラやらかして退場をくらわなければ)。

 

「さあ存分に戦うが良い生徒達よ!!緑谷が治してくれるから死ぬ寸前でも大丈夫だぞ!!」

 

「首だけでも治せるよー、意思亡き肉人形になるけどねー」

 

「「「そこまでできるとたとえ治るとしても色々と怖えよっっ!!」」」

 

 かつてグランバハマルで教会のお偉いさんがアリシアさん達勇者一行にやろうとしてたなあ。組織の為なら悪事もやむ無し姿勢の代行もドン引きするような所業だった。

 

「スタートは自陣からだ。制限時間は二十分。時間内に決着のつかない場合は残りの人数が少ない方が勝ち」

 

 移動時間を考えると戦闘時間は短めになりそうかな?個性的に上鳴君とか決まれば一瞬だし。

 最初のチームがそれぞれの開始場所に移動している間、(僕以外の)試合待ちの生徒達はオザシキと書かれた待機場所で試合観戦をする。

 ただ移動する瞬間、一人隔離された僕に対して塩崎さんが決意を込めた表情を向けた気がした。

 どうしたんだろ?

 

「オールマイトとミッドナイトが来たー!もしや熱愛!?」

 

「やめて、陽介さんに勘違いされたら私死んじゃうから」

 

「死ぬのっ!?」

 

 芦戸さんが試合観戦に来た先生二人に反応する。そしてミッドナイト先生の想いがガチ過ぎて笑えない。

 

「どっちが勝つと思います?」

 

「どうだろうねえ、多くのピンチを乗り越えてきたA組は確かに強い。しかし成績を見ると実はB組の方が伸びてるんだ。トラブルがない分着実に地力を上げている」

 

 ミッドナイト先生の問いかけにオールマイトがそう答えた。

 その考えには一理ある。

 トラブルって終わった後の後片付けも含めて無駄に時間を使うし、精神的に立ち直る時間もいるからね。

 

「ピンチに力を発揮するA組か、堅実に全体を底上げしているB組か。楽しみだ」

 

「緑谷君はどう思う?」

 

 オールマイトの意見を聞いた後にこちらにも声をかけられてきた。

 僕も生徒なんですけど意見を求められる側。いやまあ実戦経験豊富で塩崎さんのこともよく知っているからだろうね。

 他の生徒達も何故か興味津々でこちらを見てくるのだから僕は感じたままの印象を言う。

 

「なんか塩崎さんがやらかす気がします」

 

 多分先生方の狙いどおりにならないんじゃないかな?そしてせっかく加わった心操君が可哀想なことになりそうな予感が。

 

「あのイバラ女がか?」

 

 不思議そうな表情でかっちゃんが聞いてくる。

 

「なんとなくなんだけどね」

 

 一人隔離された僕を見たあの眼差し。

 そこに込められた彼女の想いとはどんなものなのか。

 

「A組には梅雨ちゃんがいるから充分に勝ち目があるけどさ」

 

 脳筋だらけのA組において梅雨ちゃんは指揮官をこなせる希少な逸材。こういった演習ならば適切な戦略を練り指示を出すことが可能だろう。また同じチームの男子達も素直に言われたことに従うタイプ、反発により足の引っ張り合いもおきない。

 またクジで決めたにしては前衛、決め役、索敵、指揮官兼斥候の揃った理想的なチームといえる。

 だがなんだろう。

 すごく嫌な予感がする。

 

『START!!』

 

「死者とか、出ないよね?」

 

 そういうのは本来、この試合ならば危険度の高い上鳴君の個性と知能的なアレから心配されるものだが今回ばかりはそうではない。

 自陣で一心不乱に祈る塩崎さんの姿に、僕と僕につられた皆が注目していた。

 

 

 

「なぜ私はあの方の隣に居ることができないのでしょう?」

 

「塩崎氏?」

 

「なぜ私は仕えし勇者様を孤独にしてしまうのでしょう?」

 

「あの塩崎さん?」

 

「わかっています、それは私が弱いから。あの御方と並び立つ存在だと周囲に認められていないからなのです」

 

「塩崎?ねえ何を言ってんだ君?」

 

「ならば私がすべきことは決まっています。相対する者達の血肉を捧げ、私は、私の力を知らしめるのです」

 

「「「血肉を捧げる?」」」

 

 宣誓するような塩崎さんの言葉。

 すると自陣を埋め尽くすように展開されたツルが寄り集まり、織り込まれ、彼女を核とした一つの存在が現れた。

 

「茨棘の聖騎士」

 

 ワイヤーアート、が表現としては近いだろうか?塩崎さんの頭髪であるツル(棘があるから茨?)によって構成された個性発現時の宍田君の倍程の大きさの騎士のような人型。

 手足は筋肉のようなツルの束で、それを西洋甲冑のように編まれた外装が覆っていた。

 右手には螺旋状のドリルのような突撃槍、左手には薄く広げられた円形の盾が装備されている。

 いくら個性が本人の想像力次第とはいえ、専門の芸術家でもないと創り出せないような造形。

 それはツルの集合体でありながらも、まさに聖騎士と呼べる存在であった。

 

「なあ出久?」

 

「どうしたのかっちゃん?」

 

 それを見た瞬間から僕は冷や汗が止まらない。アレを思うがままに操れるならばどれほどのモノなのか、似たような魔獣と殺り合ったことのある僕には分かる。

 

「強くないかアレ?」

 

 適切な実力判断ですね。

 爆破という強個性を持ち、かつ多方面で天才で、ラビットヒーローミルコと熱愛中なかっちゃんから見てもアレはヤバいよね。

 とりあえず僕のできることは、

 

「A組チームの皆逃げてーー!!」

 

 全力で止めるために叫ぶ、それだけだ。

 

 

「我が力、勇者様の為に」

 

 だが時、既に遅く。

 その巨体と機動力、さらには進路状の建造物を破壊する突破力にて、口田君の生き物ボイスによる索敵が終わるよりも先に塩崎さん(ヒーロー名ヴァイン)はA組チームへと辿り着く。

 

「はぁ!?なんだこりゃ!?」

 

「え?」

 

 破壊音と共に現れた存在に、切島君と口田君は反応できずに呆気にとられてしまった。

 突撃槍による横一閃。

 無論その隙を見逃す塩崎さんではなく、その一振りで口田君は薙ぎ払われた。

 異形系であるがゆえに純粋な身体能力はA組上位である口田君が何も出来ずに倒されてしまった。

 

「次は貴女です」

 

 頭部に当たる部分、今は兜のような部分がグリンと個性で保護色を発動しながら壁に張り付く梅雨ちゃんを捉える。

 ツルによる索敵が可能なことから全身が覆われていようと知覚はできるようだ。

 

「あっぶねえ!?フロッピー!!」

 

 それに反応できたのは切島君の漢気あってのことだろう。彼女を守る為にすぐさま進路上へと割り込んだ、そして振り下ろされる攻撃に耐えようと歯を食いしばり全力で硬化する。だが、

 

「それは悪手だよ」

 

「判断ミスだな」

 

 僕とかっちゃんのその言葉が届くわけもなく、切島君は突き出された盾にぶつかり、そのまま盾に取り込まれた。

 

「「「!?!?」」」

 

 硬そうに見えて、実際に硬いであろうその盾はツルを編まれたものでしかない。少しばかりほどけさせれば本来の使い方、捕縛することも可能だ。

 

「良い補強パーツだなー」

 

 峰田君が場を和ませようと言葉を紡ぐ。

 けれどとんでもない脅威的存在を見て凍りついたオザシキに寒々しく響くのみだった。

 しかし補強パーツとは言い得て妙。硬化できる切島君はそのまま防具として使用できるし、硬質化タイプでなくとも、敵の仲間を拘束して盾にする戦法はエグいが効果的だ。

 発想がグランバハマルで、塩崎さんなら性格上絶対にやらない戦法だけどね。

 その証拠に、取り込まれ捕らわれた切島君がグルグル巻にされてから背中に移動されている。

 

「さあ、贄達よ。

 勇者様へとその血肉を捧げるのです」

 

「み」

 

 必死になんとかしようと抵抗するA組チーム。けれども今の塩崎さんに対して、現状どうにかできる手段はなかった。

 多彩だが攻撃力に欠ける梅雨ちゃん。

 必殺の電撃がツルで流される上鳴君。

 ツルで本体が覆われている為、声が届かない心操君。

 塩崎さんの今の形態の前にはあまりにも無力。

 

「おのれ緑谷ーーっ!!」

 

 ごめんね。

 もはや叫ぶしかない上鳴君へ僕はオザシキの救護室からそっと謝るのであった。

 

 クジの結果とは思えない、前衛、決め役、索敵、指揮官兼斥候、と揃ったA組チーム(心操君も決め役に分類できる)。

 けれどそんなマトモにやりあえば苦戦必至なチームは、マトモではない超戦力に蹂躙された。

 

 

 試合後の反省点。

 担任教師二人が揃って「塩崎さんを参加させたこと」と述べた。

 トラブルなく堅実に全体を底上げしたがゆえにお披露目の機会がなく、その実力を見誤っていたのだ。

 実際に彼女の新技「茨棘の聖騎士」は極めて厄介だ。何重にも編まれたツルは大概の攻撃・衝撃は防ぎきり、苦手な炎や冷気も一瞬であれば耐え、内部から再構成するだろう。

 それこそ僕の光剣かエンデヴァーのヘルスパイダーでもないと断ち切ることすら容易ではない。

 当然打撃も通じない。よほどの一撃でないと内部の塩崎さんへは届かないし、下手に触れたらそこから捕らえられてしまう。

 

「どうやって勝つんだアレ」

 

 あのかっちゃんですらこのコメント。新技の爆破球体を内部に潜り込ませばなんとかといったところだろうね。

 轟君が「やるしかないか邪王炎殺剣」と呟いているけど、それも良い手段だと思う(色々影響を受けているけど)。

 

「とにかく後日塩崎を抜いて再試合だな。あの技は教師だって厳しいからな」

 

「うむ、せっかくの心操の参加機会が潰れるのは惜しいからな」

 

 この演習は彼の編入の為でもあるからね。結果はドンマイとしか言いようがないけど。

 いや僕が言うなって話だけどさ。

 

「勇者様」

 

「ハイ塩崎サン」

 

「私は貴方の隣に立てるでしょうか?」

 

 先生方からの注意後、塩崎さんが僕へと話しかけてきた。周囲からの視線がレーザーのように痛いです。

 

「あとは連携を意識すれば大丈夫だと思います」

 

 けど受け止めるには心の準備が足りないので、改善点をあげて先延ばしにしました。

 

「「「「逃げるな卑怯者ーー!!」」」」

 

 ごめんなさい。

 

 





 補足、説明。
 
 緑谷出久君、対抗戦不参加。
 だって加速して光剣を振り回したら勝てますし。
 
 塩崎さん覚醒。
 新技「茨棘(しきょく)の聖騎士」は普通に強いです。勇者様の側にいる為ひたすら鍛えております。
 ちなみにドリル状の突撃槍は回転も可能で、突いたら切島君や鉄哲君だろうと穴が空きます。
 突撃槍と盾の名前は未定、作者のその辺のセンスがないので。一応盾は「贄の盾」かな?
 
 心操人使君の扱い。
 意図的ではなく、なんとなくとしか。
 嫌いなキャラではないのですが、尽く活躍シーンが潰れています。5試合目もやばめな予定。



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