異世界イズク   作:規律式足

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 今回は三人称です。


15話 激戦、これ初戦なのに。

 

 屋内対人戦闘訓練開始。 

 両チーム共、僅かな時間でそれぞれの方針を決めたようだ。

 ビルに潜入するヒーローチーム、先を行くのは爆豪勝己である。

 

「飯田、お前は麗日お茶子には勝てるよな」

 

「ああ彼女の無重力は厄介だが、天井のある屋内ならそこまで脅威ではない」

 

「俺の爆破ならほぼ無意味だしな、なら麗日お茶子撃退のちに核兵器を目指してくれ」

 

「そして君は緑谷君の足止めに専念か、確かに緑谷君は強いが二人がかりなら勝てるのではないか?」

 

「連携訓練もしてねえのにぶっつけ本番でやれるかよ。お互いスピードタイプだからぶつかるのが関の山だ」

 

「むう、確かに」

 

「イズクが能力縛ってて持って3分だがな」

 

「縛り?彼は手を抜く性格じゃないだろ?」

 

「出合い頭に魔法の鎖で拘束されたら終わりだろうが、だからやらねえと思うが」

 

「君が昼に縛られてたアレか」

 

 緑谷出久からしたら勝ち筋などいくらでもある。だからこそ授業として意味が成さなくなる勝ち方は選ばないだろう。

 

「能率優先なやり方だと評判悪くなるのがヒーローだしな」

 

 ゲームで例えるなら緑谷出久のやり方はハメ技に近い勝ち方だ。

 だがハメ技ウラ技は使うことが楽しい反面、見てる側は面白くない。そんな風に勝って楽しいかとすら言われる事だろう。

 勝手な観衆は正攻法による圧倒的な勝利か、苦労した上での勝利を望む。

 魅せる勝ち方、そんな戦い方もヒーローには必要なのだ。強さを至上とする爆豪勝己からしたら劇団に行けと思わなくはないが。

 

「ただ結果より、その先を見据えての行動か。先を行かれてる感じだな」

 

「戦闘能力が過剰だからな、と居たか」

 

 声を潜めながらの雑談は、巡回中の緑谷出久との遭遇により打ち切られる。

 

「ヒーローか。ここに来るとは無謀だな。

 光剣顕現ー(キライドルギド リオルラン)」

 

 右手に光剣を創り出し構える緑谷出久。

 爆豪勝己は自身の爆破液を球形にし人差し指から弾丸のように撃ち出す。

 

「行けっ!!」

 

 緑谷出久が爆風を切り裂く間に爆豪勝己の怒声に押され飯田天哉はエンジンを吹かせ最高速で駆け抜けた。させまいと左手を向け拘束魔法を発動しようとする緑谷出久だが、それは爆ぜる掌が邪魔をする。

 

「お前の魔法はきちんと呪文を唱えねえと使えないんだろ」

 

 緑谷出久が使う魔法、精霊魔法はいわば精霊との契約。無詠唱など礼節をかけば精霊から不興を買い、ささいなことからとんでもないことが起きる(異世界おじさんの甥の敬文氏がやらかし済み)。ゆえに戦いは魔法発動まで距離を取ることがベストなのだが。

 

「させねえよ」

 

 相手は天才爆豪勝己。

 本拠地ビルの通路という過度な破壊もできない、距離を取りにくいこの場所はあまりにも不利が過ぎた。

 

「(ワンフォーオール フルカウル発動)」

 

 もっともそれは、精霊魔法ありきの戦いなればこそだが。個性の発動にはそんな制約がありはしない。

 

「チッ」

 

 稲光する肉体に右手の光剣。

 振るわれる容赦の無い太刀筋はバトルセンスの塊である爆豪勝己をして回避に専念しなければ即座にやられるだろう。

 手甲のギミックを使用して勝負を賭ける誘惑にもかられるが、モニター室で観戦しているオールマイトに止められる可能性があり、また使用するだけの隙は緑谷出久に魔法を使わせる時間を与えてしまう。

 

(飯田を当てにして時間稼ぎに専念が最善か)

 

 悔しさに歯を食いしばる爆豪勝己だが、制限あっての緑谷出久にこの様であるという自覚もある。

 

(強くなってやる)

 

 今は勝てずともいずれは。

 誓いを新たに、頬をかすめる光剣を捌いた。

 

 

 場所は変わって麗日お茶子と飯田天哉。

 最高速で駆ける飯田天哉は核兵器の安置されてない開けた場所にて麗日お茶子による足止めを受けていた。

 麗日お茶子と飯田天哉、共に雄英高校入学者でありながら、事戦闘においては飯田天哉に分がある。

 それは麗日お茶子が一般家庭(経営者ではあるが)出身に対し、飯田天哉が代々ヒーローを輩出してきた一族出身であることが要因の一つである。

 個性は千差万別、その活用方法は自力で生み出すしかないことが前提。だがヒーロー一家であり数少ない個性活用のノウハウを有する飯田家は個性においての理解が頭一つ抜けている。

 また類似した個性による戦闘技術すら伝授されているため、飯田天哉が一年A組において五指に入る実力者であることも納得である。

 そのスピードに長けた個性も相まって本来なら瞬殺できてもおかしくない筈なのだが、彼は思わぬ苦戦を強いられていた。

 

「攻撃が当たらないっ!!」

 

 飯田天哉のエンジンによって加速した襲撃は尽く当たらない。

 否、当てられる位置に麗日お茶子の体はある。だが足が当たる瞬間に先にフワリと吹き飛んでしまうのだ。

 

(緑谷君の言ったとおりや)

 

 麗日お茶子は目論見が上手くいったことに笑みを浮かべる。

 開始までの五分の間、今回の方針を決めた後に緑谷出久が麗日お茶子にした入れ知恵ともいえる助言。

 それは打撃主体な現ヒーロー達相手に彼女が優位に立てるアイデアだった。

 やることは簡単、相手の攻撃モーションに合わせて自分に個性を発動する、ただそれだけのことだ。

 だが重力の重しの無くなった彼女の肉体は相手の攻撃、致命打になる一撃が当たるより先に相手が起こす風圧により吹き飛ぶ。さながら風に舞う木の葉のように。

 自身の肉体に個性発動は負担が大きく、発動し続けることは困難。

 だがエンジンという分かりやすい予兆のある飯田天哉相手なら、その攻撃に合わせて個性を発動できる。

 彼女自身に攻撃力が無いという欠点があるため、戦闘による勝ちは無い。だが制限時間のあるこの訓練であれば麗日お茶子は飯田天哉に勝利できる。

 

(クソ、こんなやり方があるなんて)

 

 だがそれは飯田天哉という少年の性格を考慮していない場合の勝ち筋である。

 

(けど頼まれたんだ、託されたんだ。あのプライド高い爆豪君に足止めまでさせて)

 

 飯田天哉は責任感の塊。

 人の思いは無理をしてでも無下にしない。

 

「トルクオーバー レシプロバーストっ!!」

 

 エンジンのトルクと回転数を無理矢理上げ爆発力を生む加速技。 

 それは本来生まれる風圧も起こさない超加速を生み出す。

 反動でしばらくするとエンストをおこす誤った使用法ではあるが、この場の打開のために彼は使用する。

 その速度は今まで対処できていたがゆえに、麗日お茶子には反応できない。

 

(勝った)

 

 自身の足が麗日お茶子に命中することを確信する飯田天哉。

 核兵器は階段の先だろう、ならばエンストしてもなんとかなると脳内で目算を立てたところで、

 

「捕縛拘鎖ー(レグスウルド スタッガ)」

 

 その声は響いた。

 命中する瞬間、足が麗日お茶子の肉体に当たる寸前で空間に縫い止められるように固定される。

 ズリズリと気絶した爆豪勝己を引きずる音を立てながら現れた緑谷出久は、空間に現れた魔法陣から伸びる鎖で飯田天哉を拘束した。

 

「危うく負けそうだったな。だがこの戦い、こちらの勝ちだ」

 

 同時に鳴るタイムアップの音に今回の訓練は終了した。

 

(結局間に合わなかったのか)

 

 飯田天哉は敗北を噛み締めた。

 

 

 そしてモニター室。

 訓練講評の時間。

 初戦から高水準の激戦にクラスメート達は興奮していた。

 勝ったのは敵チームだが全員がベストを尽くした戦いだった。

 敵チームは巡回と警備の役割を分けきっちり敵になりきり、ヒーローチームは足止めと突破と対応した。どちらが勝ってもおかしくない戦いだった。

 無用な破壊をしなかったのも高評価。いかに敵退治のためとはいえ建物を破壊したら、某巨大化ヒーローのように借金だらけになってしまう。

 ベストが選べない訓練だったよとオールマイトは言った。

 

(強いて言うなら瞬殺できた緑谷少年が皆に合わせて訓練してくれた事を褒めたいけど、傍から見たら接戦だったし舐めプに感じちゃうから言えないね!!)

 

 ただ爆豪勝己はより強くなると誓い、麗日お茶子は今後の課題を見つけ、飯田天哉は敗北を得たので得るものが多い訓練だったと言えよう。

 

 その後気合の入ったクラスメート達により苛烈となったヒーロー基礎学の戦闘訓練は終了した。

 

 放課後、彼らは教室にてクラスメート達とあらためて自己紹介をし訓練の反省会をした。

 緑谷出久は魔法をせがまれ、爆豪勝己は敗北を慰められブチギレ、和気あいあいと楽しい時間を過ごした。

 

 

 そしてその数日後彼らヒーローの卵達は知ることになる!

 オールマイトの言っていた、真に賢しい敵の恐怖を。

 

 もっともその賢しい敵とやらは知らない、この場には異世界から帰還したワンフォーオール継承者というイレギュラー過ぎる存在がいることを。

 

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