異世界イズク   作:規律式足

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17話 委員長決めと修羅場とマスコミ乱入。

 

 早朝。

 オールマイト目当てで雄英高校前に張り付くマスコミ達を撒いて塩崎さんと登校する。

 人混みはグランバハマルでのアレコレで苦手になったし、ニホンバハマルに戻ってからの騒動でマスコミにも苦手意識はある。

 人の良い生徒や生真面目な生徒は応対してるようだが、一言でもコメントを求めるのは普通に邪魔だからやめてほしい。

 ヒーローにとってヴィラン以上に厄介な存在と称される彼らは今日も無駄に元気だ。

 

 朝のホームルーム。

 相澤先生が戦闘訓練結果を見事だったと褒めてくれてから本題に入った。

 まだ数日の付き合いなのだが、相澤先生が何か言い出そうとすると不安になってしまう。

 

「学級委員長を決めてもらう」

 

「学校っぽいの来たー!!(ホッ)」

 

 この反応が相澤先生の印象そのものかもしれないなと思う。

 クラスメートの皆が我こそはと手を挙げる中、僕と轟君は手を挙げていない。

 基本雑務扱いの学級委員長だがヒーロー科では集団を導くというトップヒーローの素地を鍛えられる役職ともいえる。

 実際現トップヒーロー、エンデヴァー、ベストジーニスト、などは単独での実力も然ることながら指揮官としても評価が高い。

 僕は正直やる気がない。

 そもそも指導者であるオールマイトが単独行動の代名詞であるし、おじさんがソロプレイ(基本的に僕はデバフ装備扱い)の専門家だったからだ。

 

「多を牽引する責任重大な仕事だぞ。やりたい者がやれるモノではないだろう」

 

 まあ確かにA組の顔、代表になるね。

 腕をまっすぐにそびえ立たせつつも投票で決めることを飯田君が提案。

 中学校生活三年までいじめられっ子だった僕としては、民主主義も投票も良い印象は全くないのだけど妥当な提案ではあると思う。

 蛙吹さんと切島君が誰かを推すほどの付き合いはまだ無いと伝えるけど、だからこそと飯田君は言う。

 そして相澤先生もその提案に(どうでも良さ気に)頷いたため、投票で決めることになった。

 結果、僕と八百万さんが同着二票となった。

 なんで自薦してない僕が二票なんですかね?

 間違いなく投票者は0票の麗日さんと僕が投票して一票な飯田君だね。

 となると八百万さんは轟君か。

 

「んじゃ俺は緑谷に一票で緑谷委員長な、八百万は副委員長だ」

 

 同票でどう決めるかと決めあぐねていたら相澤先生の一言で決着。

 恐らくだが異世界やオールマイトのアレコレ関係で呼び出しやすいようにしたかったのだろう。

 気が進まないがやるしかないだろうね。

 

 そんなこんなで昼ご飯。

 今日はお弁当だが飯田君達と食べるため食堂へとお供した。既に定位置な僕の横には塩崎さんが座っている。

 

「なるほど勇者様が学級委員長とは、納得の結果ですね」

 

「塩崎君もそう思うかい?入試の件といい実技演習での実力もあったから彼が相応しいと思ってね」

 

 飯田君、やはり君かい。

 

「B組は拳藤さんという方で、姉のように引っ張ってくれる気質の方です」

 

 いわゆる姉御肌か、元ヤンかな?

 そんな風に僕がその拳藤さんに(勝手な)想像をしていると、

 

「ところで気になったんやけど」

 

 麗日さんが麗らかではない表情で僕と塩崎さんのお弁当を見る。

 

「なんで同じお弁当なん?」

 

 なんか空気張り詰めてません?周囲からも視線を感じるし。

 

「? 私が作ったのだから当たり前ですが。無論今後は勇者様の好みに合わせるつもりですが」

 

 大体味付けが塩のみの異世界にいたからか、こっちの料理はなんでも美味しく感じるけどね。

 

「どういうことなん?緑谷君」

 

 なんか浮気を問い詰められた色男みたい☆

 僕はモテる筈ないから公序良俗の観点からだろうけどね。

 

「塩崎さんがウチの近所で一人暮らししてるから心配した母が食事によく誘うんだ。お弁当はそのお礼」

 

 自宅通いが無理な人は雄英高校進学を機に一人暮らしを始めるから。

 

「そうなん?」

 

「父が単身赴任で食卓が寂しいって母がよくボヤいてたからね」

 

 四人がけテーブルの空いた席って寂しい空気出すよね。特に半年間は僕も居なかったし、母はどれだけ寂しかったんだろうか。塩崎さんを招くのはその反動があるかもしれない。

 

「なるほど、ウチも多忙で家族の揃わない食卓はかなりあったからその気持ちがわかるな」

 

 ウンウンと頷く飯田君。

 代々ヒーロー一家ならそうなってもおかしくないだろうね。特にお兄さんであるターボヒーロー インゲニウムは大勢の相棒を雇う大人気ヒーローだし。

 

「そっか」

 

 そう呟く麗日さんが酷く寂しそうに見えた、確か彼女も親元を離れて一人暮らしだったよね。

 

「麗日さんもウチで夕食をどうかな?一人分も二人分も変わらないし」

 

 異世界生活で焼き魚とか焼肉は得意だから僕も手伝えるしね。

 その僕の発言で周囲で窺ってた人達がなぜか「こいつマジか」って顔をしているけど。

 

「それならたまにはお言葉に甘えようかなー(ウチは押しかけやなく誘われたで)」

 

「それは素晴らしい提案ですね勇者様(善意からでしょう、いい気にならないでください)」

 

「兄もサイドキックの皆と大規模な食事会をよく開くんだよ、僕も参加するが楽しいぞ!」

 

 なんか麗日さんと塩崎さんが空気を張り詰めさせて目で会話してるような?

 あと飯田君は一切気づいてないね。

 そんな食事をしていると突然学校中に警報が鳴り響いた。同時にアナウンスが流れ屋外へと避難を呼びかけられる。

 セキュリティ3の突破、少なくとも三年間は無かった校舎内への侵入者。

 とりあえず指示に従うと思うけど、このままだと人混みが混雑して危ないね。

 全く、いくら滅多にないからといって「おはし」は緊急時の基本だろうに。

 仕方ない、やるか。

 

「神よ! この惑える者らの心の波濤、我と一つに!」

 

 

 神聖魔法の催眠解除魔法だけど、術者と精神を同調して正気に戻すから効果あるでしょ。

 広範囲にできるのは修行の成果。

 できないとダンジョン攻略しんどかったし。

 

「あれ?俺達」

 

「今、光が奔ったような?」

 

 効果ありだね。

 一度落ち着けば後は大丈夫。

 流石は雄英生らしくきちんと避難に専念していた。最初のパニックをどう鎮めるかがやはり大切だな。

 そんな平然としている僕を、塩崎さんは崇めるように麗日さん飯田君は尊敬するように見ていた。

 

 

 後になって敷地内に侵入してきたのはマスコミだと分かった。僕のアレコレでもそうだったけどやはり碌でもない。

 雄英高校の堅固な防壁はどうやら破壊されて突破したらしい。

 まあ驚くことじゃないかな?

 おじさんも結界やら聖域とか頑丈そうなのあったらとりあえず壊してたし。

 

 

 僕のこの認識ズレ。

 異世界生活で身についてしまった常識は、この数日後に起こる事件にて牙を剥くことになる。

 そのことをまだ僕は知らない。

 迫りくる悪意の存在すらも。

 

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