異世界イズク   作:規律式足

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21話 勇者決死行。

 

 雄英体育祭本番当日。

 余っていた身内用チケットをおじさん達に送ったら大変喜ばれて必ず行くと約束してくれた。

 日本どころか全世界が注目するこのイベント、ましてや今回は事前情報として、雄英高校襲撃事件やナンバー2ヒーローエンデヴァーの息子の存在、オールマイトの教師就任もあり、チケットの入手は困難だったらしい。 

 これでグランバハマルからエルフさん襲来でもない限り安全だなと胸を撫で下ろし控え室で開始を待っていると、普段付き合いの無い轟君に声をかけられた。

 

「客観的に見て、お前の実力は頭抜けてると思う。それにおまえオールマイトに目ぇかけられているよな。別にそこに詮索するつもりはねえが、おまえには勝つぞ」

 

 轟君もオールマイトファンなのかな?

 オールマイトは世界の6割の人が好きなヒーローとして名を挙げる人だから、そんな彼に目をかけられてるヤツいたら対抗心もでるかな?

 いや、あの仄暗い目はそれだけが理由じゃないか。

 上鳴君がクラス最強に宣戦布告と呟き、クラスの和に気を配る切島君が諌めようとするけど、轟君は取り合わない。

 

「何か勝ちたい理由が君にあるのは分かった。

 けどそれは全ての生徒にも、僕自身にも勝ちたい理由がある。だからこう言わせてもらう」

 

 思い返すのはオールマイトの言葉。

 継いで欲しいと言われたのは、個性ではなくオールマイトという彼の在り方。

 託された平和の象徴というバトンを握り締め宣言する。

 

「かかってこい、受けて立つ」

 

 僕が来た、と世界に示す。

 誰かに託すその日まで、僕は負けるわけにはいかないのだ。

 

「おお」

 

 返された轟君だけではなく、A組皆に気合が入った所で入場の時間がきた。

 暗い廊下の先の輝く出口、魅せつけよう世界に。

 

 ああ注目されてるよ。

 慣れてない視線の波に皆が圧倒されているけど(かっちゃんはアガってた)、僕はグランバハマルでの磔の時に比べたら殺意がないから気にならない。

 ヴィラン襲撃もあってかプレゼント・マイク先生の司会でも持ち上げられてるけど、チンピラレベルとはいえヴィランを撃退したのは事実だしね。実戦経験の有無は行動に差がでるものだし。

 続いてB組、普通科、サポート科、経営科、と凄い人数の生徒がでてくるけど、

 

「ねえ、かっちゃん?」

 

「どうした出久?」

 

 一つ気になることがあったので、頭がよいというより賢いというほうが相応しい幼馴染に尋ねる。

 

「他の生徒から注目されてないこっち?」

 

「襲撃事件で持ち上げられてるからな」

 

「いやクラス単位じゃなくて、峰田君が他科の生徒達に」

 

 そう、ただでさえメイン扱いされてるヒーロー科が睨まれるのは分かる、けど彼らの視線は明らかに一人の生徒に向けられていた。

 いっそ殺意すら感じるレベルの、グランバハマルだとしょっちゅう感じた、こいつが存在したら生きていけないという切実で必死なそんな視線。

 

「モテ期だろ」

 

「ああ、あの緑茶に含まれる」

 

「それはカテキンだ。響きは似てるが字数くらいは揃えろ」

 

 モテ期。まさかあの伝説のモテ期か。

 

「まさか実在したんだ」

 

「そうだ人生に一度あるかないか、いやよく見たら残像だったあのモテ期だ」

 

「残像じゃん」

 

 そのネタ、本当に幽遊○書にドハマリしてるねかっちゃん。

 それにしては殺意マシマシな感じだけど、僕はかっちゃんと違ってモテ期が来たことないし。小中とモテ期を経験してるかっちゃんが言うならそのとおりなんだろうな。

 モテ期には視線に殺意が混じる。覚えておこう、僕には縁が無いだろうけど。

 

『選手宣誓』

 

 おっと出番だ。

 一年主審であるミッドナイト先生に呼ばれている。今年は僕が生徒代表なんだ。

 

「選手宣誓!

 僕達雄英高校一年全生徒は、巣立ち活躍される先達方に誇られるよう、精一杯力の限り戦い抜くことを誓います。

 雄英高校一年代表 緑谷出久」

 

 まあ無難だよね。

 けど目標であっても優勝宣言とか柄じゃないし。

 

『さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう。

 いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ!!

 さて運命の第一種目!!今年は、』

 

 ねえ峰田君、バトロワは嫌だバトロワは嫌だバトロワは嫌だ、って呟いてどうしたの君?

 

『コレ!! 障害物競走!!』

 

 計11クラスによる4キロの総当りレース。ヒーロー科が20名ずつだから不参加の生徒を考えても100〜220名という大人数。これだけの人数からどれだけ予選通過できるか分からないと、焦らせられるね。

 そしてコースさえ守れば何をしたって構わないという言葉で、なんか生徒達が一斉に目がギラリと輝いたように見えたけど。

 

『さあ位置について、スタート!!』

 

 感じたのは寒気、迫りくる殺意の波っ?!

 

「光剣顕現ー(キライドルギド リオルラン)

 闇剣顕現ー(クローシェルギド リオルラン)」

 

「「「「落ちろ峰田ァーっ!!!」」」」

 

「ぎゃあああっ!!」

 

 開始同時に峰田君からA組メンバーが一斉に飛び離れそこにあらゆる個性による攻撃が叩き込まれた。

 逃げそこねた僕は峰田君を庇うように二本の魔法剣を振るい厄災の雨を斬り伏せる。

 

「そこどけ生徒代表。そいつ○せない」

 

「認められない、認められないの」

 

「ごめんなさい、本当にごめんなさい」

 

「ああ八つ当たりさ、わかってるよそれぐらい」

 

「「「「けどっ!!」」」」

 

「「「「そいつ以下なんて受け入れられるかあああっ!!」」」」

 

 雄英高校一年の大集団。彼らから向けられるその嵐のような激情を前にして僕は、

 

「何したの峰田君?」

 

「何もかもお前の幼馴染のせいだよ」

 

 後ろの峰田君に問いかけることしかできなかった。ねえコレどんな状況?というか皆知っているなら教えてよ!!

 あっさりと峰田君を見捨てて逃げた(女子は仕方ない)薄情なクラスメートに僕は叫びを上げた。

 

「ちぃ、縛動拘鎖ー(レグスウルド スタッガ)とりあえず切り抜けるっ!!」

 

 理由は不明だが峰田君が狙われている。

 かといって見捨てる訳にはいかない以上、連れて走り抜けるしかない。

 腰の辺りから魔法の鎖を出して峰田君と結びつける、後は全力で駆ける!!

 

「ってコラっ!!緑谷や擦れる擦れる擦れる。地面に顔面擦れて紅葉おろしになるっ!!引っ張るならもっと鎖を短くしろよ?!」

 

 やかましい、モギモギがくっつくんだよ!!

 魔法の3重発動にワンフォーオールフルカウル。第一種目でかなり消耗しちゃうぞ。

 

「「「「待てぇ峰田ぁぁ!!」」」」

 

「ねえ、更衣室にルパンダイブでもしたの君?」

 

「お前はオイラをなんだと思ってやがる」

 

 

 雄英体育祭は、第一種目から波乱の展開で幕を開けたのだった。

 

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