異世界イズク   作:規律式足

22 / 117

 今回は三人称です。
 あと物間君のアンチ要素あります、閲覧注意。



22話 勇者決死行と黒幕。

 

(上手くいったようだね)

 

 混乱極まる雄英体育祭。 

 その中で潜むように狙いどおりとニヤリと笑う一人の少年の姿があった。

 彼の名は、物間寧人。

 一年B組の中心人物が一人にして性格も口も態度も悪い問題児である。

 

(どいつもこいつも単純なことで)

 

 そもそもがおかしな話なのだ、いかに襲撃事件があって注目されようと日本最高学府とも言えるモラル高し雄英高校で、A組の生徒の心配より興味本位の野次馬が集まるなどと。

 そう誰かが裏でA組が驕り高ぶり偉そうにしている、などと生徒達の反感を煽り興味を持つように誘導しない限りは。

 それを為したのがこの少年である。

 元より物間寧人はコンプレックスの権化。

 自らの個性が他人ありきで一人での活躍が不可能、ゆえに一人でなんでもこなす存在に嫌悪を抱いている。そしてA組、そこに選ばれた者達はそれを為せる強個性ならぬ超個性ばかり(B組にも吹出君という最強バグ個性持ちが存在するが見た目から強者扱いしていない)、挙げ句に襲撃事件での活躍で彼のコンプレックスは頂点まで達していた。

 

(丸裸にしてやるよおA組ぃ) 

 

 他科より反感を買い、その手札を曝け出さざるを得ないA組。その晒された相手の手札を自らの力に変えて打ちのめす、それが物間寧人のやり方なのだから。

 

(他科の連中も使える個性なら使ってあげようかな)

 

 半数以上のB組の同意を得た、第一種目は様子見で温存し、第二種目で決める戦略。

 

(注目されるべき存在を教えてやるよ)

 

 ここまでは想定通りとばかりに余裕のある物間寧人。だが彼にとって計算違いが二つある。

 一つは、爆豪勝己によって峰田実に反感が集中し他科が奮起していること。人間、出来そうな目標なら無理してでも頑張れるのだ。

 そしてもう一つそれは、

 

『さあいきなり障害物だ!!まずは手始め第一関門 ロボインフェル「炎鳳殲滅ー(バライブート フォルグバストールゥゥゥ!!)」ノ、っ壊滅!!』

 

 一年代表緑谷出久は存外ピンチにテンパりやすく、その実力も過剰といえるほどに高いという点だ。

 腰から伸びた鎖で峰田実を引っ張りながら凄まじい速度で駆け抜ける彼、その眼前に現れたロボの群れを巨大な魔法陣から呼び出した炎の鳳にて焼き払う。

 

「邪魔だああっ!!」

 

「随分必死だなあ緑谷」

 

「大勢に恐ろしい形相で追いかけられるのが昔を思い出して冷静になれないんだよ、というか余裕あるね峰田君」

 

 鎖を掴み長さを調整する峰田実。

 そこに先程までの恐慌はない。

 

「一周回って冷静になった。楽チンだしな」

 

 モギモギの反発を利用しての高速移動すら出来る峰田実のバランス感覚は凄まじい。この状況に慣れるなど容易いことなのだろう。

 巨大なロボ群をまとめて焼き払う(残ったのは僅かな脚部パーツだけ)魔法を放ってこの余裕ある会話。

 自身の必殺技すら超える火力にナンバー2ヒーローエンデヴァーが、

 父と同じ莫大な炎にA組轟焦凍が、

 その実力にB組物間寧人が、

 そしてロボ達の再利用すら不可能にされたことに雄英高校教師パワーローダーが、

 自身の内側から溢れる激情にギチリと歯を噛み締めた。

 

「なんか牛にしがみついた鼠の気分だな」

 

「それって1位を掠め取る気満々ってこと?」

 

 十二支の悲劇を想起させる峰田の発言。

 ワンフォーオールにて加速し、他科を引き離したので放り捨てようかなと緑谷出久は思いはじめていた。

 

「「「「峰田ァァァァっ!!」」」」

 

 いやまだ峰田君死ぬか。

 怒れるモンスターの群れより必死な人間の群れの方が怖かったなと、緑谷出久は身を震わせていた。

 

「というか何したの峰田君。告白の最中にヴィランが来たとか叫んで台無しにしたの?」

 

「それは中学時代やったが、手を取り合って逃げたからか翌日熱愛カップルが誕生してた、ど畜生が」

 

「畜生は君だよね」

 

 どんだけ余罪あるのやらと思いながら緑谷出久はトップで断崖絶壁のロープ渡りザ・フォールを突破した。高低差に臆さぬ胆力と、如何なる足場も渡れるバランス感覚はヒーローの必須能力なのだ。

 

『そして早くも最終関門!!

 かくしてその実態は、一面地雷原!!怒りのアフガンだ!!ってすいすい進むなあ緑谷!!分かりやすくしすぎたかあ?!』

 

「なんで地雷の位置が分かるんだ?魔法でも使ったのか?」

 

「いやこれは経験。探索魔法を使えない罠だらけのダンジョン攻略を何度もしたから、これぐらいなら見なくても分かるよ」

 

「なんか緑谷ってガチで異世界行ってたみたく語るよな」

 

「まあ事実だしね」

 

 というかもう魔法を使う余裕が無い程に消耗していると緑谷出久は言わなかった。

 おじさんがいない状況での集団に追っかけられることにペース配分を忘れる程に焦ってしまったのだ。

 

「これ、次の種目ヤバいかな?」

 

 冷や汗をかきながら呟く中、

 

「「「「峰田ァァァ(カチッ)」」」」

 

 ちゅどーん。

 軽い擬音で表現したくなるほどに追い縋ってきた他科連合は一斉に地雷を踏み、雄英高校の大地に散っていった。

 

「「コントかよ」」

 

 先頭集団に次いだ順位だった集団だったが、ここで一気に減ったようだ。このままだと大半のヒーロー科は予選落ちしただろうから結果オーライだが。

 そして必死な轟、爆豪の猛追もものともせず緑谷出久は第一種目を1位で突破した。棚ぼたで峰田実は2位。

 

 なお余談だが、今回の普通科を含んだ彼らの活躍は評価(目的はともかく)され希望者は放課後にヒーロー科の講義を受けることが可能となる。無論ヒーロー科ほど充実しているわけではないが、地力をつけ一般人も参加するヒーロー免許試験を受けることはできる。

 また、あれだけの生徒達が必死に潰そうとするヒーロー科A組生徒峰田実にも世間は注目することになる。

   

 そして緑谷出久。

 第一種目 障害物競走を突破した自身を除いた猛者四十一名を相手に魔法を使えぬ状態で挑むことになる。

 

(数時間は休まないと魔法は使えない)

 

 個性は使えるから動けるだろうが、個性を用いた戦闘において魔法剣は有用である。

 

 第二種目 騎馬戦。

 ポイント奪取下剋上サバイバルに1000万ポイントという爆弾を抱え、彼はどう立ち向かうのか。 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。