三人称です。
そして今話でかなり問題発言をさせますが、こんな目で見ている人もいる感じです。
閲覧注意。
開始される雄英体育祭第二種目。
1000万ポイントの争奪戦だとばかりに襲いかかる二組。だが、
「この地侵すこと許さず」
展開される塩崎茨の個性にしてイバラ、それは騎馬を組んだ彼らを中心に絶対不可侵の聖域となる。
(というか神聖な気配するから神とか力を貸してるのかな?ある種の神聖魔法だよ)
この世界唯一の神聖魔法の使い手である緑谷出久は張り巡らされたイバラに帯びる神性に気がついた。
神聖魔法とは自らの魔力で上位存在である神から力の一部を借りる魔法。だが精霊同様に正式な手順を踏まなくとも力を貸し与える場合もある。信仰心に応えたのか神が適当なのかは判断に困るところであるが、その効果は充分のようだ。
突っ込んできた2チームはまるで壁に当たったような音をだし、それ以上踏み込むことが出来なかった。
鉄哲チームに加わったサポート科の発目によるサポートアイテム、葉隠チームの先頭である耳郎のイヤホンジャックも弾かれるばかりで意味をなさない。
このまま守り続けても勝ち確定な勇者御一行だが、それに納得しない戦士が宙へと飛び出した。
両掌の爆破による空中機動、麗日お茶子の個性により重量を無くした爆豪勝己はいつもより機敏に宙を舞う。
「よこせコラァー!!」
主審の判定もテクニカルでオッケーなため、気兼ねすることなく猛襲する。
爆豪勝己の目的は皆殺し。
第三種目がタイマンなら、他チームを狩り尽くせば余計な戦いをする必要がなくなると判断したのだ。
鉄哲チームの発目とて宙へと飛ぶサポートアイテムを用意していたが、四人で組んだ騎馬を全員浮かし機動させるほどの出力はない。
もはや唯一となった空中機動のアドバンテージを活かし、爆豪勝己は鉄哲チームからのハチマキ奪取に成功した。彼に気を取られていた葉隠チームは物間チームに漁夫の利をとられたが。
そしてもう一方の峰田チームも順調に逃げ延びていた、障子の巨体を利用した峰田と蛙吹を担いだ一人騎馬。蛙吹の舌による牽制、峰田のモギモギによる妨害、障子の複製腕によるガードが他者を寄せ付けない。
個性によっては道具が必須、騎馬を組むことで発動できないモノがあるため、それらが問題にならない者と組むことが優位に繋がる。
それが如実に結果として出ていた。
「思ってたより上手くいかないね、ならそろそろ攻めるか」
温存してからの立ち回りで崩せないA組上位陣。騎馬戦で誰一人問題無く個性を発動できる轟チームと、守護領域と空中機動の爆豪チーム(一人B組)、人間戦車な峰田チーム。
狩れる相手がB組では不本意な物間寧人は攻め方を変えることにした。
「聞きたいんだけどさ爆豪君?自分のせいで自殺させかけた幼馴染とどんな気持ちで一緒にいるんだい?」
即ち口撃。
精神面から相手をエグり、崩す。
その言葉に爆豪勝己のみならず、その場の全生徒が足を止める。
そう最早一年近く前になるその事件、各方面に多大な影響を与えた出来事を知らぬ者など誰もいない。
だがそれが同じ学年の緑谷出久と爆豪勝己本人のことなどと、弱みにつけ込もうと調べない限りは知ることはできない。
上鳴による無差別放電から優位にたっていた轟チームですら思わず聞き入ってしまっていた。
上手くいったことにほくそ笑む物間寧人は言葉を続ける。今度は相手を変え、傷口を抉るため、かつ自身と多くの人間の思う不満をのせて、
「それにしても羨ましいよねぇ緑谷君!無個性だったくせにヒーローらしさをアピールするためかトラックに飛び込んで、勇者なんて強力な個性を得られたんだからさあ!!」
それが世間の大多数の人間の本音。
さながら事件被害者が賠償金を受け取った事に妬むかのような身勝手かつ汚い、人間という生物の本性。
連中はそんなものでは晴れない被害者の心など一切気にも止めない。
ただ羨ましく、ただ妬ましいのだ。
物間寧人という主役になれない個性を持つ者、心操人使のようなヴィラン扱いされる個性を持つ者、他にも多くの不満を抱え生きる者達がぶつけてきた悪感情。
けれどソレは、その言葉は、
緑谷出久の人柄をよく知り、己の所業に自責の念を抱える爆豪勝己。
緑谷出久の立ち振る舞いに憧れ、異世界での彼の出来事を知る塩崎茨。
緑谷出久にヴィラン襲撃事件で助けられ、同じクラスで友人として親しくしている者達。
その全員を激昂させるには充分であった。
「潰す」
爆豪勝己は一度戻った騎馬にて両掌を爆ぜさせる。
「処します」
塩崎茨はさらにイバラを伸ばし編み込み竜を形作りその顎を物間寧人に向ける。
「許さねえ」
峰田を筆頭としたA組生徒達が憤る。
最早体育祭など知るかとばかりに熱を帯びた敵意が物間寧人に集中していた。
味方であるB組生徒ですら、言い過ぎだと呆れる者、その発言を軽蔑する者、気まずそうに目を逸らす者と反応が別れていた。物間寧人の発言に同意しそうになる自分は確かに存在する、手段を選べない時があることも知っている、だが言っていいことと悪いことはあるのだ。
「落ちつけ」
しかし、第二種目を投げ出してまで物間寧人に襲いかかろうとする者達を緑谷出久は頭から抑えつけるような気迫を放って鎮めた。
「体育祭を忘れる程に怒ることじゃないだろうに」
緑谷出久にとってはその程度のこと。
目を覚ましてからの騒動も不快でこそあれ、理屈として納得できたことだからだ。
「今、何をしている最中か思い出せ。
相手の口撃に我を忘れるな」
戦闘において冷静さを保てるかは重要だ。
怒りなどの感情は力が増す利点もあるが、動きが単調になると言う欠点もあるからだ。
「かっちゃん、負い目で友人やられるのはしんどい。だからもう気にするな。
塩崎さん、君は僕を神聖視しすぎ。
みんな、僕は気にしてないから」
緑谷出久は物間寧人の冷静さを奪う策を看破し、対応する。打ち倒すのではなくハチマキを奪うだけならそれで充分だからだ。
しかし、その冷静なままの緑谷出久の態度が物間寧人の癇に障る。
「なんで怒らない!なんで冷静だ!
それだけのことを言われたんだぞ!
それとも図星をつかれて開き直っているのかなあっ!!」
言われたから何?と言わんばかりの緑谷出久にリスクを背負ってまで挑発した物間寧人は納得がいかない。誰よりも緑谷出久を崩せないことには挑発行為に意味は無く、批判覚悟のやらかしが無為に終わるからだ。
「だって君、僕を人間扱いしてるでしょ?」
あっけらかんと答える緑谷出久に、再び世界は凍りつく。自分が当たり前のように言った言葉がどんな意味となるか、この世界で緑谷出久と異世界おじさんだけは理解できない。
「だから許せるよ」
そのあまりに自然な笑みを向けられた物間寧人は生涯初めて罪悪感という言葉を実感することとなったのだ。
場所は変わって観客席。
緑谷出久の言葉に熱狂にブリザードをぶつけたように静まり返る中、一人のおじさんがしきりに頷いていた。
「分かる分かる、そうだよねえ、人間扱いされてるなら許せる許せる。エルフなんか、人を豚だのオークだのとロクに人扱いしないしさあ。ってどうしたの敬文、藤宮さん?」
(出久君やらかしやがったあーー)
(どうすんだよこの空気)
(異世界で人間扱いされなかったから、人間扱いされることで許せるのは、事情知る僕達は分かるけど)
(大半の人達は、無個性は人間として扱われるだけで充分に思える環境だと誤解するだろ!いやまあそんな扱いがあるっちゃあるけど)
(ああ、あのプレゼント・マイクですらこの場を盛り上げられてない)
(また騒動が再燃するだろ)
恐らくこの二人と同じように事情を知る者達は残らず頭を抱えていることだろう。
おじさんは全く分かっていないが。
世界が凍りつこうとも時は進む。
先程よりぎこちなくはあるが、生徒達は動きハチマキを奪いあった。
皮肉なことに心操人使の個性により、状況に左右されず普段どおりの動きができてしまう者達が活躍しその順位を押し上げた。
十五分の騎馬戦その結果は、
1位、緑谷チーム。
2位、心操チーム。
3位、轟チーム。
4位、常闇チーム。
となった。
轟チームの氷結と無差別放電に対応できたかどうかが結果を左右する形となった。
心操人使に至ってはヒーロー科生徒ではないことから心理的動揺が少なく、的確に対処できたからこその結果だろう。
峰田チームは気が逸らずに守りを固めればまだ勝ち残れたかも知れない。
どこかスッキリしない決着ながら、第二種目騎馬戦は終了した。
なお余談ではあるが、体育祭終了後その発言から物間寧人は外部から招かれた講師による指導がされることとなる。
外部から呼ばれた講師の名は田淵。
論理破壊者、言語粉砕、の異名を持つ教員組合最強決戦兵器である。
外部の緑谷君の印象はこんな感じです。
普通は言わないくらいのモラルはありますがネット上だと酷いことになってます。
基本的な流れは原作通りですが、個人的にこの騎馬戦は個性を使える者と組めるかどうかが重要だと思いました。というか発動できない人ばかり、A組なら口田君と砂藤君とか、B組なら小大さんやら泡瀬君とか。