異世界イズク   作:規律式足

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 途中視点が切り替わります。
 独自解釈ありです。
 閲覧注意。



27話 高く熱く大きな壁。

 

「負けてしまった」

 

 強がってパアアンと笑う麗日さん。

 辛い時にこそ笑える人が一番強いのだと僕は知っている。その笑みが誰かのために向けられることを。

 頼ってほしい、そう思うのは傲慢かな。

 泣き言を吐いても構わないよ、と言い出せないのは僕が臆病だからか。

 目の前にいるのに越えられない、まるで境界線があるかのようだ。

 放送に流れる切島君の勝利。二回戦目進出者はこれで決まり、僕の出番はもうすぐだ。

 

 

「言えんかったなあ」

 

 自分のせいでロクに準備もできずに会場に向かう緑谷君。名残りおしそうに何か言いたいようにその背中から見て取れた。

 完全な敗北に打ちのめされる自分を慰めようとしてくれる彼。

 あの入試の時に助けてくれた男の子。

 その姿が私には勇者に見えた。

 なんでも出来て誰よりも強い。そんな彼がそれだけでは無いと知ったのはいつだったか。むしろ変人奇人の類だと気づいたのはいつだったか。

 そして、誰よりも重たい闇を背負って苦しんでいると知ったのはいつだったか。

 私の目的はブレない、ヒーローになって家族に楽をさせてあげたい。

 でもね、苦しみながらも誰かを助けようとする君を支えたい、そう思っているの。

 到底足りない実力のくせに不相応に。

 生き急いでいると父ちゃんに言われて納得してしまう、そう私は生き急いでいる。そうじゃないと追いつけないから、ただでさえあの娘に先を行かれているのに。

 

「貴方の抱えてるモノを教えて」

 

 いつ言えるのかな。

 溢れる涙をぬぐって諦めないとだけ心に誓った。

 

 

 

 駄目だなあ僕は。

 おじさんだったらあっけらかんと聞けるだろうに、僕は何も言えず見送られるだけだ。

 見とるね頑張って、その言葉を言うのがどれだけ辛かったか。

 いや、今は切り替えよう。

 何せ僕のこれからやらかすことは気を抜いたらとんでもないことになるからだ。

 そんな風に考えて歩いていたら出口間近で思わぬ人物と遭遇した。

 

「おォいたいた」

  

「エンデヴァーさんですよね、なんでこんな所に」

 

 探していたのか?何のために。

 

「君の活躍見せてもらった、特にあの火の鳳など炎を扱う俺からしても見事なものだ」

 

 いやこっちとしては殺傷力の高い炎で相手を殺さない貴方の方が凄いと思いますが、特にアレは町中で放てば進行方向に空き地が出来ますし。

 

「勇者だったか、オールマイトの正体不明な個性に劣らぬ素晴らしい個性だ」

 

 すいません、そんな個性ないんです。

 

「次の君の対戦相手であるウチの焦凍には、オールマイトを超える義務がある。君との試合はテストベッドとしてとても有益なものとなる。くれぐれもみっともない試合はしないでくれたまえ」

 

 オールマイトを超える、か。

 あの人なら誰だってできるよと笑いながら言うだろうに。いやそんな性格で普通に言っちゃうから周りが拗れるのか?ありえそう、結構やらかしあるよなあの朗らか無自覚天才マン。

 とはいえせっかくのエンデヴァーからの言葉だけどさ、

 

「すいませんが、その言葉には応えられません」

 

 やるべきことは決めている。

 

「なんだと?」

 

「僕は貴方の息子を完膚なきまでに打倒します。彼に越えられない壁を見せます」

 

 いずれ来るだろう悲劇を起こさないために。彼が全力を出さないことで後悔しないように。

 

「轟焦凍は敗北を知るべきだ」

 

「舐めるなよ小僧っ!!焦凍は俺の最高傑作だっ!!あの子の無念を果たす存在だっ!!貴様ごときに負けるものかっ!!」

 

 激昂するナンバー2ヒーロー。

 あの子の無念、なるほどこの人は自身の欲だけで周りを利用していたわけではないか。

 自分の内心を語れない不器用な親父なわけだ(DVはアウトだけど)。

 

「勝てませんよ、貴方の息子は今から壁を知る。

 貴方以上の存在を知るんだ」

 

「その大言で無様を晒せば許さんぞ」

 

 向けられる敵意と怒気にエンデヴァーが強者であると理解させられる。

 このビリビリした気配はまさしくオールマイトに匹敵していた。

 不機嫌そうに去っていく強者を見ながら僕は気合を入れ直した。

 

『今回の体育祭、両者トップクラスの成績!!

 まさしく両雄並び立ち今!!

 緑谷 対 轟!! スタート!!』

 

「おい、お前は俺に壁を見せるって言ったな、見せてみろよ勇者の力をな」

 

 うん、不機嫌だなあ。自身の拠り所を否定されたから当たり前だけどね。

 

「見せるよ壁を。けど君に見せるのは勇者の力なんかじゃない」

 

「何?」

 

 万が一の時はお願いします、おじさん。

 

「竜だ」

 

『形貌変躯ー(ザックトーラ キャトルフ)』

 

 何重もの魔法陣に包まれたと思ったら、そこにはもう緑谷出久の姿は無かった。

 そこに存在したものは強大なる邪竜。

 あらゆる攻撃を無効にする魔炎の鱗をもつ災厄の一匹。

 魔炎竜 ブレイズドラゴン。

 竜でありながら魔炎が本体であり、退治しても魔炎が残っていれば復活できる不死鳥が如き竜だ。

 

 かつて異世界でおじさんが魅せるプレイの為だけに変身して正気に戻すため戦う破目になった、異世界ライフ屈指のトラウマ(結局敵わず殺されかけたところでエルフが秒殺した。最初から見てたろあのストーカー)で正直思い出したくない存在だ。

 

「「「「「「「『ドラゴ○ムだあああ!!』」」」」」」」

 

 うん、観客とプレゼント・マイクが凄く興奮しているね。気持ちは分かるよ、僕も初めて見たときそうだったし(次の瞬間襲いかかられて絶望したけど)。

 

「コレが壁だってのかっ!」

 

「ソウダ、全力デ抗エ」

 

 あー正気を保つのしんどい。変身魔法は完全にその存在に成るから自意識を保つのがきつい。 

 人間ならともかく、動物とか魔物はそっちの方が思考パターンが楽だからか引っ張られる。

 とにかく動かないでなるべくじっとしてないと、飛んだりしたら完全に呑まれる(おじさんもそうだった)。これ徹夜明けで眠い所に退屈な話を聞かされながらひたすらノートを写している感覚なんだよ。

 

「畜生がああっ!!」

 

 瀬呂君にぶつけた規模の冷気でも意味はない。魔炎竜はマグマを飲み干す存在だから当たる側から蒸発する。

 

『おおーっと、あのバカでかい氷塊も当たる側から掻き消えてまるで効果がない!!』

 

(何が知るべきだ!!何が勝てない存在だ!!)

 

 必死だよね轟君。

 今までの自分を否定されたくないよね。

 けど、

 

(こんなに強いお前が、なんで人間扱いだけで喜んでいたんだ。お前に何があったんだ)

 

 失ったと思う絶望はこんなものじゃないから。君は全力を出して強くなるべきなんだ。

 

(俺に何か伝えたがってるお前だって、救われるべき側のヤツだろうが)

 

 あ、もう限界。

 

「よく耐えたね轟君。理解したでしょ勝てない存在」

 

「ああ、強制的に理解させられたよ」

 

 魔炎竜に呑まれる前に元に戻れて良かった。いざという時のためにおじさんにお願いしておいたけど。

 冷気と熱気を感じる、轟君は個性をフルに使っているんだ。

 

「緑谷、お前はあんな絶望を感じてきたのか?あんな存在に向き合ってきたのか?」

 

「うん、結局勝てなかったけどね」

 

「ならなんでヒーローなんて目指せるんだよ、怖くないのかよっ!!」

 

 なんで、か。だってねえ?

 

「僕が立ち向かうことで、ソレが皆に届かないならその方が良いでしょ?」

 

 誰かにこんな思い、してほしくないんだよ。

 

「お前、やっぱり勇者だ」

 

 なんでかそう言われるよね。

 

「けどな、俺もそう成りたい。お前やオールマイトみたいに、ヒーローに成りたい。誰かのために絶望に立ち向かえる存在に成りたい!!」

 

「成れるよ」

 

 その言葉がヒーローの始まり。

 

 その言葉と共に放たれた冷気と熱気を合わせた全力の爆風、それを光剣を顕現しワンフォーオールで強化した身体能力で断ち切る!!

 

「だって此処はヒーローアカデミア。ヒーローを志す仲間達が集う場所」

 

 両断された空気の先、全力を出して崩れ落ちる轟君を支えてそう告げる。

 同じ夢を見る誰かがいることが救いになると、僕はここに来て知ったのだから。

 

「ありがとな」

 

 余計なお節介に過ぎた報酬を貰い、第二回戦は終了した。

 僕としては轟君が勝てない存在を知って全力を出せるようになれればと思っただけなんだけどね。

 まあ結果オーライだ。

 

 





 なんかとっちらかった内容になったような。
 もう少し言いようが。
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