ステイン編はかなり原作改変します。
閲覧注意。
職場体験当日。
僕はコスチュームをもって電車で一時間のサー・ナイトアイ事務所まで来ていた。
去年、オールマイトの育成プランを台無し(炎鳳殲滅)にしてからの付き合いであるオールマイトの元(本人はいつでも復帰する気満々)サイドキックであるサー・ナイトアイ。
出会った当初はかなり嫌われていたけど僕の実力と記憶再生もあって、今では良好な関係だ(オールマイトの教師姿画像を要求されるのは辟易しているが)。
それもあって雄英高校卒業後にはサイドキックとして働く予定だし、時折遊びに来たりもする。
とりあえず事務所に入る前にネタを仕込む。見た目に反してユーモアを尊重するサー・ナイトアイ、彼を笑わせるために事前準備は必須なのだから。
「アヒャヒャヒャヒャ」
いつものようにユーモアの足りなかったバブルガールがお仕置きを受けている。学習能力が無いのかマゾなのか判断に困るけど、飛び込みのお客様が来たらどうする気なんだろうか。
ギロリと目力の凄い、銀縁眼鏡に七三分けのスーツ姿の男性。日本人のサラリーマンらしい彼こそが、ストイックな仕事ぶりで有名なサー・ナイトアイだ。
「職場体験に参りました、雄英高校一年の緑谷出久です。よろしくおねがいします!!」
頭を下げてまずは挨拶。
「元気とユーモアのない社会に未来はないと私は思っている。元気は伝わった、ならば後は分かるな?」
ギロリと睨みつけならがら言うセリフじゃないですよねソレ。外見と言動の合わない感こそが、サー・ナイトアイだ。
ミリオ先輩ことルミリオンもいる中で(バブルガールはお仕置き中)、僕は困ったように右手で頭をかきながら、
「そんなお笑い芸人じゃないんだから、いきなり笑わせるなんて」
そのまま髪を掴んで引っ剥がした。
「できないです(キリッ)」
カツラの下からでてきた輝く頭頂部にファサリと艷やかな髪が波のように真横に乗る。そうそれは見るも鮮やかなバーコード禿だった。
「「「ブフウッ」」」
お笑いの秘訣はこちらの表情。
行動と表情の不一致、ギャップ、ボケる側が真顔だからこそ笑いを誘うのだ。
「ふ、流石はオールマイトの認めた後継者。ナイスユーモア」
「いやソレ基準おかしくないですか、サー」
オールマイトはお笑いも極めているのかとミリオ先輩が突っ込む。
「良い事務所だけどこれだけは馴染めませんよ」
バーコード禿カツラを取りながら僕も呟く。その時カツラの下からピョコンとちょんまげが飛び出して、再びバブルガールが吹き出した。
「と言いつつしっかり順応してるよねっ?!バーコード禿カツラの下にちょんまげカツラ仕込むくらい馴染んでるよねっ?!」
二段仕込みは全ての基本ですから。
「よろしい歓迎しよう緑谷出久、いやトレンドール。ヒーロー名はブラックユーモアだがね」
ほっといてください。
イソイソとちょんまげカツラも取りながら(きちんと髪はあります)僕はそう思った。
するとサー・ナイトアイは一連の流れからあっさりと切り替えて、雄英高校みたく突然本題を告げてきた。
「至急対処しなければならない問題がある。詳細は会議室にて説明しよう。サー・ナイトアイ事務所総員でユーモア無き未来を打倒するぞ」
サー・ナイトアイは踵を返し会議室へと向かう、その足取りは強く、その背中は頼りがいのあるヒーローそのものだった。
「緑谷君ごめん、治癒魔法お願いできる?」
「?」
「バブルガールが笑い過ぎて意識がない」
そういえばさっきから静かでしたね。
「ちょんまげがトドメだったみたい」
美人台無しだなあ。
バブルガール(21)は白目を剝いて大きく口を開け顔中からあらゆる汁を出しながら意識を失っていた。
場所は変わり会議室。
蘇生魔法でギリ復活(笑い死にしてた?)したバブルガールを連れて席につく。
そこには、もう一人のサイドキックであるセンチピーダーと相談役であるグラントリノがいた。
「久しぶりだな小僧、俊典はきちんと教師をやっているか?」
「お久しぶりですグラントリノ、オールマイトはまだ新任だからかカンペを手放せませんね」
「よし説教」
「そこも良い」
僕の暴露にグラントリノは叱ることを決め、ナイトアイは萌えていた。
「では全員揃ったところで、これから我が事務所で即刻解決しなければならない問題を説明する」
モニターに映された文字は、ヒーロー殺し。
先日飯田君の兄であるインゲニウムを襲撃した、ヒーローを標的としたヴィラン。
「知っての通り、有名かつ危険なヴィランであるヒーロー殺しステイン。コイツを捕らえることが今回の目的だ」
「まぁた大物だな」
「犠牲者も多いヴィランですよね」
「だが既に多くのヒーローが追跡しているのでは?噂では、かのナンバー2エンデヴァーすらも」
「今までウチは別件に当たってましたよね?違法薬物組織を中心に」
そう、ヒーロー殺しが対処すべき危険なヴィランであることは周知の事実。だがサー・ナイトアイ事務所が緊急であたる理由が分からない(というか職場体験なのにガッツリ頭数に入ってません?)。
「理由はある」
顔の前で両手を組みながらサー・ナイトアイは告げる。
「先日捕らえたヴィランの未来を見た時に視界に入った映像が問題だ。トレンドール記憶再生を頼む」
「はい、記憶再生ー(イキュラス エルラン)」
コマ送りされるヴィランの未来、ヴィラン視点の限られた情報の中でとある新聞が目についた。
「コレを拡大できるか?」
えっと拡大と、
「英雄回帰思想によりヴィラン活性化?」
新聞に大きく記載されていたのはそんな見出しだった。
「そうだ、先日捕らえたヴィランは初犯のひったくり。すぐに保釈されるだろう。ならばこれはすぐに起こり得る未来というわけだ。他にも何人かのヴィランで確認したから間違いないだろう」
しかも保須市にてか。
飯田君のお兄さんが襲われた場所も保須市。
「大物ヴィランの捕え方をしくじったわけだな」
現役ヒーローとしてはトップレベルのヒーロー歴を誇るグラントリノが苦々しい顔で呟いた。
「どういうことですか?」
「大物ヴィランや思想犯などは、捕らえられた事実や死亡の仕方により影響を増す場合がある。宗教などの神格化や革命などの象徴化だな」
「そうだ、ましてやステインならば後を継ぐなどと後継者気取りの模倣犯とて出るだろう。ヒーローを襲うという行動のみに偏ったな」
「だから大物ヴィランは大々的に捕らえては逆に不味いってことですか?」
「人々の安心のためには捕らえた事実の周知は必要だからヴィランにもよるかな?ムーンフィッシュなんかは模倣犯もそうでなかったし」
捕縛した事実を伏せることが必要なヴィランもいるのか。確かに奪還のために大規模に集結する例もあるし。
「少なくともヒーロー殺しステインは象徴化してしまうヴィランであったというわけだ」
記憶再生を消して、サー・ナイトアイの話を聞く。
「ゆえに我々はステインを秘密裏に捕らえ監獄へと叩き込む、それが大至急あたらねばならぬ仕事だ」
銀縁眼鏡を上げながら威圧を込めて宣言する。
「随分気合が入っているな」
「嫌いなんですよ、ステインが」
トンと印鑑が会議室の長机に置かれる。武器としても扱う超質量押印を。
「ヤツの事は調べました。その過去、思想もこの数日で把握した。その理念に共感がないとは言わない。だが、」
ドスンッとサー・ナイトアイの怒りを表すかのように印鑑は長机にめり込み亀裂を走らせる。
「ヤツは破壊した、オールマイトが築き上げた平和を。夜の闇を恐れて息を潜めなくてもいいような社会を、ヤツの血塗れの凶刃が汚したんだ」
真っ二つに長机を割りながら言う。
「ゆえに許さない、だから捕らえる。
ヤツに思想を撒き散らさせずに監獄に叩き込む」
「捕らえた後の引き渡しで警察に広まりませんか?」
「他にヒーローや周囲の目があるってのに、厳しい仕事になるぞ」
「誰かを予知しますか?捕縛ならルミリオンですか」
「ナイトアイの予知は確定してしまえば変えられないという問題もありますが」
「探査魔法は場所を限定すれば潜んでいても分かりますね」
会議室にて意見が飛び出る。
ステインの行動から保須市に現れることは確定している。ならばあとはどう詰めるかだ。
「一つずつ答えましょう。
捕縛後の取り扱いはヒーロー公安委員会が動いてくれる、ヒーローや周囲の目も公安子飼いのヒーローがやってくれるそうだ。予知はステインに使うつもりだ、監獄から先がどうなるか気になるからな。予知については変えられる、恐らくトレンドールの異世界や神の力という要因がきっかけだろう。探査魔法は現地で場所を絞ってからだな」
対策は完全でなくとも、万全。
それほどにサー・ナイトアイはこの状況を重く見ているんだ。
「諸君、此処が未来に大きく影響する分岐点だ。心して当たってくれ。行動は明日、準備し身体を休めておいてくれ」
「オウ!」
「「「「了解!!」」」」
未来において語られることのない戦い。
だが歴史において重要な戦いはこうして幕をあけたのだった。
ステインVSサー・ナイトアイ、ルミリオン、グラントリノ、センチピーダー、バブルガール、トレンドール、ホークス(秘密裏にサポート)
超容赦無い。
現場にはさらにエンデヴァーとかもいるし。