異世界イズク   作:規律式足

35 / 117

 アンチあり閲覧注意。



35話 ヒーロー殺しを捕縛せよ。

 

「さて今回の作戦を確認する。

 標的はヒーロー殺しステイン。

 目的は秘密裏な捕縛。

 現在大まかな位置の特定を急いでいるため、確定次第トレンドールが詳細位置を捜査だ」

 

 サー・ナイトアイによる最終確認。

 ヒーロー犇めく保須にて行われる秘密作戦。

 表沙汰にはできないこの仕事に僕だって緊張を隠せない。

 バブルガールとセンチピーダーは待機とサポート。強襲はルミリオン、僕、サー・ナイトアイ、グラントリノで行う。

 個人には過剰戦力だが、それをせねばならない相手なんだ。

 

「急ぐぞ、嫌な予感がする」

 

 確かにこの首の裏がチリチリする感覚には覚えがあった、まるでおじさんの過失で伝説の百頭竜が復活する前触れの時のような張り詰めた空気。

 ステイン捕縛のために集まったヒーロー達の意思だけではない、凶悪な意思を感じる。

 

「サー、グラントリノには待機してもらった方が良いかと思います」

 

 その予感に従ってサーに進言する。

 

「うむ、確かにグラントリノにはトドメをお願いしているがステイン相手ならば直接の打撃は避けるべきだな。嫌な予感は私もしている。分かったそうしよう」

 

 首に手を当てて思考したサー・ナイトアイだが、僕の提案に頷いてくれた。

 グラントリノも同じなのか反論することなく、乗ってきたサー・ナイトアイ事務所用カスタムワゴン車にて待機してくれるようだ。

 

『見つけましたよ』

 

 あらかじめ公安から渡された通信機から連絡が入る、ステインは裏路地にてパトロール時のヒーローを強襲する気のようだ。

 市民安全のためのパトロール。

 これは実績あるヒーローが役所から任命される仕事で定収入が確定するおいしい仕事だ。

 だが反面、調べればヒーローのスケジュールが簡単に把握されてしまう。

 ステインが狙ったのも大半がこのパターンで、ヤツとしては拝金主義のような仕事なのだろう。

 そのヒーローが見て回るから犯罪を侵さない、その意識を持たせる大事な役割にも関わらずにだ。

 

『それともう一つ、雄英高校を襲撃したヴィランに酷似した連中も暴れまわってます。突然現れたことから例の黒モヤで転移するヴィランの仕業かと』

 

 ヴィラン連合。

 あの手男も絡んでいるのか。

 

「すいません、手だらけの男がいたら決して手に触れてはならないと伝えてください。あと脳みそ剥き出しはまず身体能力が桁違いです」

 

『了解、直接は動けないけど伝える。エンデヴァーさんがいるからそちらになるべく情報を流すよ』

 

 公安からの協力者はかなり有能なようだ。

 音声こそ分かりやすいボイスチェンジャー声だがアテにはできそうだ。

 

「千載一遇の機だな。

 私達はヒーロー殺しに集中する。

 グラントリノにはそちらをお願いします。バブルガールとセンチピーダーはサポートに回れ」

 

「おう!」

 

「「了解!」」

 

「いくぞ、これ以上ユーモアある社会を台無しにされないためにな」

 

 宙に舞う一枚の羽に誘導され、僕とサー・ナイトアイとルミリオンはヒーロー殺しへと向かった。

 

 

 

「ハア、このルートだな」

 

 ヒーロー殺しステインは獲物を待ち構える。

 奇襲による一手から裁定。

 彼の基準からしたらここを通るヒーローは失格だが、自らの攻撃を凌げるなら生かしてやっても良い、

 オールマイトに頼り切り、作業のようなルーチンワークに甘んじて収入を得る輩は粛清対象なのだ。

 正しき社会、正しき英雄。

 その定義に気づき、その在り方の満ちた社会にならない限り、彼が血に染まる日々は終わらない。

 そう、今日までは。

 一瞬大地を魔法が走る、それがヒーロー殺しの位置を確定させる。

 その予兆に気づかなかった時点で彼の行末は確定したのだった。

 

「必殺、ファントム・メナス!!」

 

 ルミリオンによる透過を駆使した強襲、屋内、路地、遮蔽物の有る場は彼の狩場。透過という複数の手順のいる難解極まる個性を彼は使いこなし必殺の一手へと為す。だがそこは近接戦闘を極めたヒーロー殺しステイン、不意の一撃に反応し、一撃もらうも迎撃に刃こぼれ激しい凶刃を振るう。しかし、その一手を引き出すことこそサー・ナイトアイの狙いだ。

 

「縛動拘鎖ー(レグスウルド スタッガ)」

 

 ルミリオンの強襲にて吹き飛ばされ右手を振りかぶった所で魔法の鎖がその身を拘束する。常態であれば回避できたであろう捕縛も強襲と迎撃時には不可能。

 

「なに、が」

 

 ズドンッとサー・ナイトアイの戦闘用サポートアイテム超質量押印がステインの身体にのめり込む。

 正確に打ち出す投擲技術にパワー、非戦闘向き個性にも関わらず、否だからこそサー・ナイトアイの戦闘技術はヒーロー屈指、彼はイレイザーヘッド、ミッドナイトに並ぶ近接戦闘最強格の実力者なのだ。

 

「語りあう言葉などない。それを拒んだのは他ならぬ貴様だ」

 

 ヒーロー殺しステイン、彼が娑婆にて最後に見た光景は、オールマイトの後継者たる異世界帰りの勇者の振り下ろす光剣と、プロを含めてナンバー1にもっとも近いと謳われた若き俊英の固く握られた右拳だった。

 

 ここに長く続いたヒーロー殺しステイン 赤黒血染による凶行は途絶えることとなる。

 秘密裏に公安に引き渡された彼はそのまま裁判もされることなくタルタロスへの収監が確定した。

 彼の罪状に関してはトレンドールによる記憶再生の映像を記録しそれを元に調査することとなる。

 だがこの後すぐ、サー・ナイトアイによるステインの予知にて最悪の未来を公安、ヒーロー達は知ることになった。

 即ち、鉄壁の監獄タルタロス崩壊、受刑者の脱獄という未来を。

 一段落ついたと思った彼らはその対策に忙殺されることとなる。

 

 しかし、

 

「アーッハハッハハハ!」

 

 一方で楽しくて仕方ないと笑い転げるヴィランが一人。この保須における脳無の大暴れ振り、新聞での取り上げぶり、何より自分に刃を向けた大先輩の無様ぶりに死柄木弔は大満足だった。

 エンデヴァー、グラントリノの尽力にて人命に被害はなくとも街は壊れ、対応に当ったヒーロー達は重傷者ばかり。

 ヴィラン連合の恐ろしさは世に喧伝された。

 

「アンタは静かに表舞台から消えちまったよなあ先輩。

ブハハハハっ!!草の根運動台無しかよっ!!」

 

 とあるバー、ヴィラン連合の隠れ家にて彼だけは楽しそうに笑い転げていた。

 もっとも、宣伝効果を期待していた黒幕はこの結果に潰された顔をさらに歪めることになるが。

 

「厄介だな、ヒーロー共」

 

 この事件の顛末。

 それが未来にいかなる影響を及ぼすのか、それはまだ誰もしらない。

 

 

 





 全世界のステインファンの皆さんすいませんでした(土下座)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。