異世界イズク   作:規律式足

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 おじさんサイドです。



40話 語られる過去とおじさん。

 

 某市某アパート。

 そこには隣に越してきた現役ヒーローにして雄英高校教師である妙齢美女から毎日のように差し入れされる異世界帰りのおじさんと、幼馴染に誤解されて手酷く問い詰められたフリーターの青年が生息している。

 そんな彼らだがおじさんと縁ある現役雄英高校生である緑谷出久の登場する記憶が見てみたくなり、おじさんにお願いしたのだった。

 

「って感じだったんだよ、怖いよなエルフ。付き合いあるのに食料として見てたんだぜ」

 

「うん、そうだね(エルフさんの言葉通りに受け取ってるよおじさん)」

 

「確かに怖いですね(性的にだとしてもこれはねーだろエルフさん)」

 

 いつもの如く同じ部屋なのに別世界のように温度差のある彼ら、おじさんだけは軽く笑いながら過去を思い出していた。

 

「そういえばこの後からだよ、オーク喰いのエルフが居るとか、トレント連れたオークが居るって広まったの。襲撃増えて大変だったなあ」

 

「まああれだけ騒げばね」

 

「山なんて崩壊してるじゃないですか」

 

 丸太に手足を縛りつけられたおじさんを担いだ緑谷出久の逃亡劇、エルフが剣を展開し追いかけるものだから山の一部が見事に禿げてしまっていた。

 

「「ていうかおじさん役に立ってないし」」

 

「いやーあの時は痺れたからロクに動けなくてねえ。出久君が頑張ってくれなかったら食われてたよ」

 

(意味が違う)

 

(意味が違うって)

 

 既にツンデレどうこうではない程におじさんに誤解されているエルフだった。

 とエルフに関連してか藤宮さんが気になったことをおじさんに尋ねた。

 

「そういえばいつもみたく出久君にも指輪とか渡しているんですか?」

 

 おじさんはエルフ、メイベル、商会主と記念トロフィー扱いでもある指輪を換金アイテムとしてよく配っていた。

 

「いくらおじさんだって同郷の男の子にそんなことしないよ藤宮」

 

 流石にソレはないだろうと敬文が否定したが。

 

「渡したけど?呪い避け効果のあるやつ。死霊ばっかりでるダンジョン行った時危なくてね」

 

 ソレをやるのが異世界おじさんなのだ。

 

(マジか)

 

(え、マジで)

 

「指に付けた瞬間なぜか出久君が「お巡りさーんっ!!ヒーローっ!!」て悲鳴あげたけどね」

 

(多分事前に説明してないんだろうな)

 

(いつものようにおじさんに突然指輪を付けられたんだろうな)

 

 知り合ってから一週間足らずの時期、未だ信頼が充分ではない頃にダンジョンらしき洞窟に連れ込まれ突然手を掴まれて有無を言わさず指輪を付けられた。その瞬間の怖気と恐怖は中学三年生の少年である緑谷出久にとってどれほどのものだったか。あとになって誤解だとは知ったものの、この出来事は緑谷出久が異世界生活で唯一記憶を消した程のトラウマである。

 記憶再生の魔法で緑谷出久の一番の恐怖体験と指定すれば恐らくこのシーンが再生されるだろう。

 なお、その光景をエルフがストーキング中にガッツリと目撃していたことも彼女の緑谷出久への当たりの強さの理由の一つである。

 

「まあこっちだと死霊ってあんまり見ないけどね。出久君の中に似たようなのが何人かいるくらいだよ」

 

「へーそうなんだ」

 

「居るんですね死霊って」

 

 と普通に流してしまった二人だが、一拍おいて冷静になり気付く。

 

「「居るのかよ!!」」

 

 それがワンフォーオールという個性の特異性ゆえであることはまだ緑谷出久とて知らない事実である。またそれらは鏡に映らないため緑谷出久が気付くことも無かった。

 

「ま、害がないみたいだから平気だよ」

 

「心配だなあ」

 

「本人に伝えた方が良いかな?」

 

 実際は違うのであるが、前任者であるオールマイトすら知らないため憶測しかできないのであった。

 

「あ、おじさん。出久君にお願いしたいことあるんですけど大丈夫ですか?」

 

「藤宮さんが?珍しいね」

 

「弟が雄英高校を見学したいって煩いんですよ。多分動画投稿もしたがるだろうけど、どうですかね?」

 

 藤宮さんの弟である千秋君は外見がちょっとアレな動画投稿者志望の小学四年生である。

 

「うん、聞いてみるね。あっ、でも見学なら睡さんに聞いた方が良いかな?」

 

「(おい敬文?おじさんがナチュラルにミッドナイトを名前呼びしてんだけど)」

 

「(ミッドナイトから言い出してきて抵抗無く呼ぶんだよおじさん)」

 

 ミッドナイトという有名ヒーローを知るがゆえに本名で呼ぶことに抵抗ある二人。たとえスッピンであってもミッドナイトが先にでてしまうのだ。

 ちなみにだが、彼氏がオフ時にヒーロー名で呼んでしまったこと、が理由で別れる女ヒーローは結構いるらしい。コスチュームを着ているかどうかはヒーローにおいて重要な意味を持つのだ。

 

「すいませんお願いします。ただ無理にではないので、あまり煩いなら叱りますから」

 

「いいっていいって、こっちは聞くだけだから」

 

 頼みを断らないおじさんの人の良さである。

 

「雄英高校かあ、夏休みもそろそろだし合宿とかあるのかな?」

 

「入学式参加も担任が自由にできる学校が長期休暇を認めるとは思えないしな」

 

「皆で温泉に行きたいよねえ」

 

 今日もまたおじさん宅での一日は平穏に過ぎていくのであった。

 

「ただいまー!」

 

「「自宅は隣でしょ、ミッドナイト」」

 

「おかえり睡さん」

 

「「おじさんが返事するから繰り返すんだって」」

 

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