異世界イズク   作:規律式足

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43話 期末テストまであと少し。

 

 時は流れ、6月最終週。

 期末テストまであと一週間を切っていた。 

 

「全く勉強してねー!!

 体育祭やら職場体験やら行事いっぱいで全く勉強してねー!!」

 

「あっはっはっは」

 

「確かに」

 

 うーん、あれだけ言われたけどやっぱりか。でも上鳴君は休日にナンパしに出かけてたよね?

 なんか皆に成績のクラス順位が表示されているけど、どうやら精霊の仕業らしい。遊び心かな?

 峰田君の順位の高さに芦戸さんと上鳴君がキャラじゃねえよとツッコむけど、峰田君無駄にハイスペックなんだよね。それを覗きやらセクハラに用いるからたち悪いけど。

 

「普通に授業受けてりゃ赤点はでねえだろ?」

 

「学年トップ狙ってねえのにわざわざ勉強する必要あるか?」

 

 轟君とかっちゃんは厳しいね。

 かっちゃんは1位目指しているから座学にも力を入れている。だから赤点にならないくらい出来て当たり前なんだよね。

 

「お二人とも座学なら、私お力添え出来るかもしれません。演習はまだまだ緑谷さんに学ぶべきことがありますが」

 

 八百万さんが何気に一番やる気あるからなあ。最近なぜか塩崎さんと麗日さんの目が怖いけど。

 

「お二人じゃないけどウチもいいかな?」

 

「わりィ俺も!」

 

「良いデストモ!!(わーい)」

 

 瀬呂君はギリギリで耳郎さんと尾白君は向上心あるなあ。しかし、

 

「八百万さんの、ああいう頼られて喜ぶトコとかカワイイよね」

 

「なんでこの状況で素でそういうこと言えんだ緑谷、命惜しくねえのか」

 

 君こそ僕の何気ない呟きになんで驚愕の表情なの峰田君、もの凄い何言ってんだコイツ顔だよ。

 なぜか八百万さんも耳が赤くなっているような。

 

 

 

 場所は変わって食堂。

 

「普通科目は授業範囲内からでまだなんとかなるけど、演習試験が内容不透明で怖いね」

 

「突飛なことはしないと思うがなぁ」

 

「普通科目はまだなんとかなるんやな」

 

「流石勇者様です」

 

 勇者関係ないよね?

 演習試験は相澤先生も一学期でやった総合的内容とぐらいしか教えてくれないからなあ。

 身体を動かすなら徹夜勉強とか避けて体力も万全にしとかないとね。

 

「久しぶりだね、緑谷君」

 

 試験について話しながら昼食(塩崎さん弁当)を食べていると、B組の物間君に話しかけられた。

 体育祭以降関わることなかったから確かに久しぶりだよね。

 

「うん久しぶり」

 

 というか彼は昼に何を食べているんだ。ステーキにワインだけ?パンかライス、あとサラダも食べなさい。

 

「少し、いいかな?」

 

 他の皆は警戒しだして、それを察したのか窺うように聞いてきた。

 

「別に良いけど、食堂だよ」

 

 注目されるけど良いのかな。

 

「いいんだ、僕の都合であまり君の時間を取らせたくないからね」

 

 それに注目には慣れたよと物間君は笑う。

 

「体育祭では悪かった、アレは明らかに言い過ぎだった。すぐに謝罪するには合わす顔も無かったし、きっちり反省したかったんだ」

 

 まだ気にしてたのかが僕の本音。

 だけどあれから一月少し、彼が自分を責めていたとは塩崎さん以外のB組の子達からも聞いてたからね。

 

「気にしてないから良いと言いたいけど、それでは君が前に進めないよね?

 許すよ君を。

 どうでも良いからじゃない、君が真剣に悩んで後悔していると分かったから、赦したいと思う」

 

 言葉にして伝えることも大事。

 多分これはそういうことなんだろう。

 

「ありがとう緑谷君」

 

 そう言う物間君の表情はさっきまでより晴れやかに見えた。

 また先日の記憶再生から僕の騎馬戦での発言がグランバハマルの影響だと気づいたクラスメート達は気の毒そうに物間君を見ていた。

 

「うん、きちんと謝れたみたいだね。よかった、いつまでもクラスでウジウジされて皆困ってたからね」

 

「拳藤」

 

「拳藤さん」

 

 はっきり言うなあ、良いことだけど。

 

「ま、これで蟠りなく付き合ってくれると嬉しいよ。おなじ雄英生だしね」

 

「塩崎さんが入り浸っとる時点で誰も気にしてへんよ」

 

 と麗日さんはジト目で塩崎さんを向き、塩崎さんはフフンと胸をはって頷いた。なぜ自慢げ?

 

「そういえばさっき、期末の演習試験不透明とか言ってたね?どうやら入試ん時みたいな対ロボットの演習らしいよ」

 

「それ個人試験だと僕が詰むのだけど」

 

「私も厳しーよー」

 

 物間君は他の人が居たら個性を借りれるけど、葉隠さんは大丈夫かな?入試だと救助ポイントがあったけど。

 

「ケロ、よく知ってるわね」

 

「私、先輩に知り合いいるからさ聞いた。少しズルだけど」

 

「それは羨ましいな、職場体験とか別のヒーローの話しも聞けそうだし」

 

「色んな事務所を知りたいよね」

 

 ズルと言うけど、チームアップを考えると人脈を作れる性格は誇るべき所だよ。

 

「最悪筆記でなんとか」

 

 と物間君が覚悟を決めた顔になるけど。

 

「いや物間はどっちみち一学期中は放課後補習と倫理指導だろ?」

 

「ビンタはもう嫌だー!!」

 

 ビンタ?

 そういえば顔に湿布つけてるし。

 ブラドキング先生って古いタイプの教師なのかな?

 そんな感じで物間君と拳藤さんも加えて食事の時間は過ぎていった。

 

「しかし緑谷君が大量破壊したのにロボットを使うかな?お金いくらあっても足りないだろうに」

 

 首を傾げながら悩む物間君の言葉に何やら嫌な予感がするのだった。

 

 

「んだよロボならラクチンだぜ!!」

 

 やったあと笑うA組ワーストペア。

 A組だと最下位だけど学年全体ならどれくらいなのかなこの二人?あ、精霊さん表示は結構です、うっすらと現れないで怖い順位。願いが通じたのかヤバい数字はそのまま消えていった。

 しかしラクチンねえ、そういった上を目指さない姿勢とか相澤先生嫌ってるけど大丈夫かな?

 

「あの緑谷さん、放課後の自主練の件なのですけど」

 

「うん、八百万さんの戦闘スタイルについてだったよね?」

 

 八百万さんの方向性。

 あらゆる武器を生み出して戦う戦士か。

 罠を生み出して相手を嵌める罠師か。

 遠距離武器、弓や銃などに絞った狙撃手か。

 前衛に必要な物を渡して指示する指揮官か。

 などいくつか考えられるからね。

 どれもある程度できるけど、だからこそ現場で悩んでしまうんだよね。それが一番やっちゃいけないことなのに。

 

「いっそ変身ヒーローみたいに今はこのモードと切り替えるとか?」

 

 コスチュームが変化しなくても、例えばカードとかで今の自分はこれだと決めるとか。

 行動を絞らないとなんでもできる八百万さんは混乱するしね。

 

「自分の切り替えですか」

 

「僕も色んな手札があるけど、結局使うのは一番見ていた光剣ばかりだしね」

 

 それが最適なのもあるけど、これが通じなかったり効きにくいなら別のにって決めてるんだよね。

 

「創造には正確なイメージが必要だからそのやり方は有効だと思いますわ!!」

 

 迷いが無ければ彼女はより強くなるからね。

 他にもアドバイスに乗っていると、

 

「なあ緑谷?」

 

「どうしたの轟君」

 

「メド○ーアが出来ない」

 

 君も最近毒されてるよね?

 

「アレは熱気と冷気じゃなくて、炎の魔法力と氷の魔法力でしょう」

 

 君の個性じゃ無理だって。

 

「緑谷よ」

 

「常闇君も?」

 

 今度は君かい。

 

「精霊魔法、闇の魔法が使いたい」

 

 おじさんなら精霊に頼めるけど僕には無理だから。

 

「どうにかできないか?」

 

「精霊に気に入られたら出来るらしいけど、どうすれば良いんだろ?」

 

 そういえばこないだ、おじさんと敬文さんが映画代をケチろうとして。

 

「女性に変身して鉄の自制心で胸を揉まなければ、精霊に気に入られるのか?」

 

「「「何言ってんだお前」」」

 

 いや事実なんだって。

 敬文さんそれで変身魔法を自由に使えるようになったから。

 

「そんなこと人類にできる訳ないだろぉ!!」

 

「峰田君の人類の定義って何なの?」 

 

 揉むか揉まないか?

 

「そうか残念だ」

 

 常闇君は一番魔法を使いたがっているからね。

 そもそもおじさんができるから、真似したら出来たのであって。僕のやり方も普通の魔法習得じゃないんだよね。属性とか血統とか必要らしいし。

 常闇君は黒影の制御以外に攻撃手段があればと思うよね。かといって魔剣は危ないし。

 

 試験まであと少し、それぞれの方針を決めながら僕達は最後の追い込みに入ったのだった。

 ちなみにかっちゃんは、切島君や障子君と砂藤君と飯田君とフルで戦ったり、塩崎さんの茨を回避する訓練をひたすら積んでいた。

 トップを目指しているのもあるだろうけど、すごく必死だよね。

 


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