異世界イズク   作:規律式足

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5話 その手を引く者(オールマイト)。

 

 ナンバー1ヒーロー オールマイト。

 年齢不詳 個性不明!

 ヒーロー界に颯爽と現れ、その実力で不動の人気を得る。彼の登場以降深刻だった敵発生率は年々低下し、存在そのものが抑止力とされ、名実共に平和の象徴となった男。

 そしてその男が僕に言った。僕はもうヒーローなんだと。

 そうだ何で忘れていた。

 トラックから助けた少年、洸太君だって言ってくれてたじゃないか。兄ちゃんは俺のヒーローだって。

 異世界で得た力にばかり目がいって、それ以前にできたことを忘れていたんだ。

 僕は救えたんだという事実を。

 

 まあトラックに轢かれたと思ったら見知らぬ森の中で、出会った言葉の通じない人達に木魔獣(トレント)の幼生体扱いされて殺されそうになったら大概のことは忘れて当たり前だけどね。

 

「あの緑谷少年、目が死んでいるけどどうしたんだい?やっぱり夢を否定した偽筋野郎の言葉は聞きたくないのかな?」

 

 憧れのヒーローに涙流して震える程に嬉しい言葉を貰っても、ついでに思い出してしまう異世界生活(トラウマ)。半年間で刻みこまれた心の傷はあまりにも深い(なお3割くらいおじさん関連)。

 

「いやちょっと異世界ってクソだなって」

 

「唐突ぅっ!!何で異世界っ?!」

 

「オールマイトからの言葉は嬉しいです、雄英高校をやっぱり受けようと思うくらい」

 

「もしかして私ってかなりタイミングぎりぎりだったのかな?」

 

 血反吐で口周りを汚し冷や汗をかきながらオールマイトは言う。正直ヒーローを目指すことを辞めるつもりではあったのだから。

 

「もういっそ異世界系動画投稿者になろうか真剣に考えてましたよ」

 

「冷静になって緑谷少年」

 

 魔法を使えばイケるかなって。 

 なんかおじさんの生活ヤバくなりそうな予感するけど気の所為だよね。

 オールマイトに勇気をもらったから動画投稿者デビューは諦めますけど。

 

「ところで提案とは?」

 

 言葉を訂正して、礼も言われた。

 けどオールマイトからの提案が分からない。

 指導してくれる、とかかな。

 ちなみにおじさんは、死んで覚える方針だったから傷の治療をしてくれるぐらいでした。魔法も自力で見て覚えた。

 

「そうだ、そうだったね、色々衝撃的で流れてたよ。ではあらためて、君なら私の力を受け継ぐに値する。

 君に私の個性を託したいんだ」

 

 個性って渡せるものなんだ(遠い目)

 まあ個性って十人十色どころじゃないし、そんな個性もあるか。

 

「私の個性は聖火の如く、引き継がれてきたものなんだ。そして次は君の番ということさ」

 

 オールマイトの肉体損傷を考えれば、いやヒーロー歴からしても誰かに託す時期なんだろう。

 むしろ遅すぎる、オールマイトが背負い過ぎなくらいだけど。

 

「個性を譲渡する個性、それが私の受け継いだ個性!冠された名は、ワン・フォー・オール」

 

 一人はみんなのために、みんなは一人のために、という風に訳されてたかな。その力を振るう意味なのか、その力に複数の人が宿っているからなのか。

 

「救いを求める声と義勇の心が紡いできた力の結晶、あの日誰よりもヒーローだった君に渡しても良いと思ったのさ!!」

 

 半年遅れだけどね、と血を吐きながらオールマイトは言う。

 ならばもう、答えは決まっている。 

 後継が必要ならば、それがオールマイトを救うことになるのならば、断る理由なんて無い。

 

「お願いします!!」

 

 こうして僕はオールマイトの後継となり、彼の個性であるワンフォーオールを託されることになった。

 それが僕のヒーローとしての第一歩だ。

 

 

「ところでさっきの光る剣って何なの?あと身体付きも大分変わったよね?」

 

「大したものじゃないですよ、単なる魔法」

 

「そっか魔法って実在したんだね」

 

「しますよ。精霊も普通にいるからやり方知れば誰でも出来ます(多分)」

 

「「アッハッハッハ」」

 

「ねえ緑谷少年?なんか魔王っぽい怪しいおじさんと出会わなかった?」

 

「セ○ユーザーの怪しいおじさんには会いました」

 

「個性貰ったりしてない?」

 

「それだとオールマイトが怪しいおじさんに成りますよ」

 

 魔王っぽくないけど。

 

「頻繁に様子見に行ってたけど、この半年間何があったんだい?昏睡状態だったよね」

 

 む、心配に僅かな疑惑の感情。個性を与える存在に心当たりがあり、それが因縁ある相手なのかな。

 

「異世界に行ってましたよ、恐らく意識だけ。この力はそこで得たものです」

 

「異世界ってあるのかい?いや個性にもぶっ飛んでるのあるから(新秩序とか)完全に否定できないけど。無いって証明も不可能だしね」

 

「ありますというか、行ってきましたというか。もう一度行くのは死んでも嫌ですけど」

 

「そういえばさっきもクソとか言ってたような?」

 

「とりあえず百聞は一見に如かずなんで、見せますね。記憶再生 イキュラス・エルラン」

 

 ブン、と現れたモニター状の映像。最新技術なら立体映像でイケるかな?

 

「うわ~~、何これ何これっ!!もしかして本当に魔法なのっ!!」

 

(オールマイトがお目々キラキラに輝かせてめっちゃはしゃいでる)

 

『醜きオークに裁きをっ!!』

 

『裁きをっ!!』

 

『邪悪なるトレントに浄化をっ!!』

 

『浄化をっ!!』

 

 ヤベ。

 

「ねえ緑谷少年?」

 

 一瞬でスンとした表情になったオールマイトがこちらに尋ねてくる。

 

「なんか焼かれてない?」

 

「そういうトコですから」

 

 映像の中で広場の中央で磔にされて火を焚かれるおじさんと僕。

 人里って入るなり一度制圧しないとこんな扱いだったからな。

 これ以上はオールマイトがキレそうだから魔法を消して説明する。

 マッスルとガイコツを行ったり来たりしながらオールマイトはじっとその説明を聞いてくれた。

 話が終わった後、オールマイトが優しく慈しむように僕を抱き締めてから今日は解散となった。

 ちなみにワンフォーオールは譲渡された、毛を飲むのはしんどいから収納魔法で器を取り出して血を飲ませて貰った。

 身体に宿った膨大な力の塊。

 きちんと扱えるようにならなくちゃ。

 

 さあこれから受験日まで、この場所でオールマイトと特訓だ。

 





 ちなみに洸太君のご両親は死亡してません、
 自分を助けたお兄さんが昏睡状態になっていることで洸太君が塞ぎ込んでしまったので、ヒーロー業を休んで側にいてあげてました。
 その結果マスキュラーとの遭遇がありませんでした。
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