異世界イズク   作:規律式足

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 すいませんシリアスです。
 これはこのタイミングでやらないと間に合わないので。
 原作改変、オリ設定あり、閲覧注意。



62話 燃え尽きた先。

 

「出久君っ!!直ぐに来てくれっ!!」

 

 その連絡は突然だった。

 夏休み中のある日、学校での自主練を終えて自室でのんびりしていたらおじさんが切羽詰まった声で電話してきたのだ。同時に送られた場所は敬文さんのアパートではない別の所で、その様子から緊急事態だと判断して認識阻害の魔法をかけて飛空魔法で現地まで向かった。

 辿り着いた目的地はどこにでもあるような寂れたアパートで、鍵の開いたままのドアから入れば畳のうちに布団が敷かれ、そこに見たことのない男性が寝かされていた。

 酷い火傷、それが第一印象だった。その男性は焼け爛れた皮膚をパッチワークのように縫い付けた外見をしており、本人の意識が無いようでグッタリと布団に寝ていた。

 

「こちらの方は?」

 

「買い物の帰り道に具合が悪そうに道端で俯いていたから声をかけたんだ」

 

 おじさんらしい行動ですね(納得)。

 

「それで何でもないと言われたけど、顔を見たら火傷が酷くて心配だから病院に行こうと手を引いたら、個性なのか青い炎をぶち当てられそうになって反射的に打ちのめしちゃったんだ」

 

 おじさんらしい行動ですね(白目)。

 

「なるほど、だから神聖魔法を使って欲しいと」

 

「うん、とりあえず自首させようと塚内君に連絡したら、この人身分証もサイフも持ってないしヴィランかも知れないから此処でとりあえず様子みててくれって」

 

 このアパートは警察というか塚内さんの所持するセーフハウスの一つらしい。毎回ヒーロー達が警察署に集まるとヴィランに調査していると教えるようなものだから、秘密裏な捜査にはこんな目立たない拠点が必須なんだとか。また青い炎という高火力に対応できる施設が周囲に無かったことも理由の一つだそうだ、おじさん居たら鎮圧は容易だしね。

 

「事情は理解しました。ならどこまで治せるか分かりませんがやりますね」

  

 気絶に関しては問題無いけどこの火傷は酷い。個性の反動かな?自分の生み出す炎の熱で身体が焼けている、轟君が言ってたエンデヴァーの限界状態みたいな感じだろうね。

 僕が到着する前に訪れた塚内さんは血液とか指紋やらを採取して署で調べているみたい。少なくともオールマイトのサポートとしてヴィランに詳しい塚内さんでも覚えのない人なんだって。初犯の可能性もあるかな?でも一般人だったら炎タイプ個性でもこんな身体が焼けるまで個性を使用したりはしない筈だけど(公共施設を利用したら職員が止める)。

 

「頼むよ、刑に服す覚悟はできてるから」

 

 と穏やかな顔でおじさんは笑った。

 いや普通に正当防衛では?

 というかヒーロー何してたんだか。おじさんより先に動くべきだろうに。

 神聖魔法を正体不明の男性に使いながら僕はそんな風に思うのだった。

 

 

「おお、来てくれていたのか緑谷君」

 

「お疲れ様です塚内さん」

 

 身体の火傷もほとんど治り、黒く染めてあった白く変色していた髪も生来の色に戻っていた。継ぎ接ぎのように移植されていた皮膚も神聖魔法の効果で継ぎ目なく身体に溶け込んだ。再び個性を使っても皮膚の違いで火傷が目立つことはもう無いだろう。

 調査を終えた塚内さんがセーフハウスに戻ってきたのはそんな時だった。

 

「ご家族に連絡はついたかい?」

 

 そうおじさんが聞けば、塚内さんは首を横に振った。誰か判明しなかったのかな?

 

「誰だかはわかったよ、ヴィランでも無かった。けど詳しく調べてからでないと彼の存在はご家族に伝えられないな」

 

「家族まで分かったのにですか?」

 

 身分証まで持って無いなんて、ヴィランじゃないなら犯罪の被害者だと思ったのだけど。

 

「彼の名は、轟燈矢。数年前に山火事で焼死したナンバー2ヒーローエンデヴァーの長男さ」

 

 死んだ筈の人物がこうして生きている。その事実に僕とおじさんはある考えに行き着いた。

 

「「グランバハマルに行ってたのか?!」」

 

「なんでもグランバハマルのせいにしないの。普通にヴィラン犯罪に巻き込まれたと考えなよ」

 

 呆れた眼差しで言う塚内さんに、その可能性もありましたねと僕とおじさんは揃ってポンッと手を叩きました。

 

「ナンバー2ヒーローの身内絡みとなると社会に影響がでるからね。ヒーロー公安委員会が出張る前にある程度調べておかないと」

 

 もうエンデヴァーに連絡して丸く収まる問題じゃないのか。どんな経緯で数年間行方不明だったか知らないと後で問題が起こりそうだからか。

 塚内さんによるとヴィランの繋がりなどを内々に調べていたヒーローが不審死したり行方不明になる事例はかなりあるそうだ。警視庁としてはヒーロー公安委員会の関与を疑っているけど、政治家からの圧力で有耶無耶にされるとか。

 次期ナンバー1ヒーローの最有力候補であるエンデヴァーをどうこうしたりはしないだろうけど、この燈矢という人を秘密裏に処分とかはあり得るのか。

 案外真っ黒なんだなあヒーロー業界。オールマイトは突っぱねられる実力と外国との繋がりがあるから無縁らしいけど(塚内さんにはオールマイトを制御するよう指示はされるとか)。

 

「けど、調べるって身元は判明したんだよね?」

 

 これ以上何を調べるのかというおじさんの疑問に、今まで何をしていたのかを記憶再生して欲しいと伝えた。

 

「明らかに治療されたのに関わらずエンデヴァーに連絡がいってないのはおかしいからね」

 

 轟君から個性婚までしでかしたクズと言われたエンデヴァーだけど、山火事の時に息子を助けようとして燃え盛る山に飛び込もうとしたのは事実だ。

 身元不明な大火傷の人物がいるなんて情報を聞き逃したりはしないと思う。ただでさえ常日頃から炎の個性だからと皮膚関連の病院関係者とは懇意にしているのだから。

 

「しかし善意ではないなら、エンデヴァーの息子をヴィランが治療しますか?」

 

「やりそうな人物にアテがあってね」

 

 何か心当たりがあるのか、塚内さんは考え込みながらそう呟いた。

 

「よし、記憶再生ー(イキュラス エルラン)」

 

 

 そこから判明したのは、轟家の家庭のアレコレというかエンデヴァーヤベえとか家族のすれ違いとかのレベルじゃねえぞとかオールマイトが元凶じゃねとかそんな感じの轟燈矢さんの人生。とりあえず後で見た記憶は消そうと心に決めた。抱え込むにはあまりにも他所様のご家庭の事情過ぎる。

 自らが焼かれても父親に見て貰いたい息子、受け継がせてしまった個性で焼かれる息子にヒーローになって欲しくない父親、個性婚という弱みから息子に強く出れない母親、そんな彼らの思いが複雑に絡みあった悲劇だったということは理解できた。

 そして、彼の生存にオールフォーワンとその部下である医者らしき存在が絡んでいた事実も。

 

「エンデヴァーについては置いとくとして、オールフォーワンが医療関係者を抱き込んでいる情報はありがたいね、脳無を生み出すにしても医療関係者ならあらゆる手段がとれる」

 

「エンデヴァーについては置いといて、大規模な病院そのものが研究施設の隠れ蓑になってそうですね。なら調べる手段はありそうです」

 

「とりあえず、燈矢君はご家族と再会だね。目が覚めてから施設を焼いた以外の犯罪もしてないみたいだし」

 

 塚内さんと僕が置いといたエンデヴァーの件をおじさんはあっさりと言う。

 だってこの拗れた家庭を赤の他人がどうこうできると思えないから。

 

「必要ねえよ」

 

 その言葉は布団に横になる彼の口から聞こえた。

 

「あいつは焦凍を選んで俺を無かったことにした。母親は金目当てで愛情なんかねえ。だからもうどうでもいい」

 

 轟燈矢、彼は投げやりになってそう言った。何か行動の指針があれば、父親を否定するわかりやすい思想があれば別だったかも知れない、立ち上がり何かできたかも知れない。けど自分の位牌を見て、昔と変わらない末っ子しか見ない父親を見て、自分はもう何者ではないと、何者にもなれないと諦めてしまったのだ。

 

「結局俺はただの失敗作だったんだよ」

 

 僕はその言葉にただ黙ってしまう。

 無個性という要らないモノ扱いされる存在に生まれたにも関わらず母親から無償の愛を受けて育った僕には彼の境遇に何も言えない。

 そして塚内さんは、民事不介入が原則の警官であるがゆえに何も言えない。立場がある彼はこれ以上の深入りが出来ないのだ。

 だけどそんなことお構い無しにこの人は言う。

 

「いや確認しないと分からないじゃん」

 

「は?」

 

「ご両親の本音を聞こう。胸襟開いて腹を割って話そう。まずはそうすべきだ、まだ何も分かってないから」

 

「状況から分かるだろ、俺のことなんて覚えてもいないだろう」

 

「仏壇には埃一つない、線香があげてあった、花もお盆じゃないのに生花だ。誰かが君を想ってきちんと手入れをしている」

 

「?!」

 

「君は居なかったことになんかされていない」

 

「だがっ」

 

「記憶を再生しよう、抵抗するなら拘束もする。結果が君の言うとおりならその記憶を消そう。だからもう一度だけ、君は家族と話すべきなんだ」

 

 畳み掛けるような言葉。いつもらしくないと思うほどに強引なおじさん。だがその強引さが、頑なに内に籠ろうとする燈矢さんに届いた。 

 

「一度だけだ。当時のアイツがどう思っていたのかも知りたいからな。だが結果が、俺が単なる失敗作だった場合は、轟家とあんたら全員の俺に関する全ての記憶を消してもらう」

 

「いや、それは」

 

 塚内さんが静止しようとするも。

 

「ああ分かった」

 

 おじさんはしっかりと彼の言うとおりにすると頷いていた。

 

「塚内君、エンデヴァーとの繋ぎはお願いします」

 

「いや、ことはことだしマスコミにバレたらヤバい案件だってのにもう。分かったよ、根津校長経由でなんとか場を用意しよう」

 

 一歩も引かない様子のおじさんに根負けして、塚内さんは了承した。

 

「緑谷君も協力してくれるよね?」

 

 僕を巻き込んで。

 まあエンデヴァークラスの実力者を拘束と記憶再生を同時にやるのは大変ですしね。

 友人の身内なら無関係でもないし。

 ここまで関わって知らんぷりとかできないよね。

 後日の面談を思って僕は頭を抱えるのであった。

 

「どんなに大変でも、向き合えるなら向き合った方が良いんだよ」

 

 ひどく寂しそうなおじさんの呟きを、塚内さん燈矢さんと共に聞きながら。

 

 





 時系列は不安ですしズレがあるかも知れませんが今作では荼毘さんは、意識取り戻して施設焼いて脱走→自宅にて位牌と訓練中の末っ子発見→要らない子だったんだと落ち込んでた→おじさん遭遇、という流れです。
 末っ子発見の後に、ステインインパクトがあればエンデヴァーを否定してやるぜヒャッハー荼毘ダンスになってました。
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