オリ解釈ありです、閲覧注意。
「轟炎司君」
エンデヴァーの言葉に僕が項垂れていると、根津校長がヒーローに対するものではなく教え子に接するような声で語りかける。
「理解の及ばぬモノを自身の常識に当てはめるのは納得できる。けど君なら分かるだろう?緑谷出久という少年が如何なる存在か」
「いつまで教師面をしている、卒業してからどれ程の時間が流れていると」
「いつまでも、だよ。いつまでも僕は君の教師であり君が悩むなら道を指し示す存在でありたいと思っている。人生の先達としてね」
人生て、校長先生はネズミですよね。
と突っ込むトコかな?
「ホラここ笑うトコ」
狙ったのか。
「親父」
根津校長の言葉で、激昂して怒鳴ろうとしていた轟君も冷静になって告げる。
「緑谷は持っている人間でも力があるから好き放題言っているヤツでもねえ。トレント扱いされたり埋められたり水をかけられたりエルフに追いかけ回されたりと苦労してんだ」
「焦凍」
「「「「何言って(るの)んだお前?」」」」
「口下手な俺じゃ伝わらない」
エンデヴァーのみならず、母、姉、兄にも突っ込まれて唇をだして拗ねたように轟君は呟いた。
とはいえエンデヴァーとて反発して言ったはいいけど僕のことを悪く思っているわけではなさそう。
「まあ、とりあえず続きをいっとく?」
脱線しかけた話をおじさんが軌道修正してくれる。そうだ重要なのはエンデヴァーが父親として燈矢さんをどう想っているかだったね(駄目だったら全員の記憶消去だし)。
「というか、さっきから誰だ貴様ァー!!」
うん、根津校長や僕はともかくおじさんは知らないよね。エンデヴァーからしたら動けない自分の頭を鷲掴みにしてる人だし。
「あ、
「こんな便利個性(記憶再生)あるならウチで働けえー!!俺が推薦するからヒーロー免許は実技免除できるぞ!!」
あ、なるほど事務職のヒーローはこうやって資格を取ってたのか。戦闘に向いてないけど事務所運営に有用な個性ってあるもんね。
「いやーこれでも動画再生数200万超えてますからねえ、誘われてすぐに応じるのはファンに申し訳ないですから」
そしてなんですかおじさんのそのプロ意識。
せっかくの業界最大手からの勧誘を断るほどなんですか。というか流石国内最大のヒーロー事務所経営者、記憶再生の有用さを理解して即座にヘッドハンティングしているよ。
「まあそれは置いといて記憶再生ー(イキュラス エルラン)」
嬉しかったんだ燈矢が生まれてきてくれたことに。俺が成れと言わずにヒーローに成ると言ってくれたことが。その俺を超える火力にオールマイトを超える可能性を見たんだ。生んでくれた冷に感謝して、追いかけられる背中であろうと奮起したんだ。冬美という妹もできてより張り切る燈矢に眩しいものを見ていたんだ。
その身が俺以上に炎に耐えれないと知るまでは。
この体質を現代医療でどうにかできないのは俺が一番知っている。個性発動時間を短縮するくらいしか対応手段がないのは分かりきっている。だがそれではオールマイトを超えられないことを俺自身が証明してしまっている。テレビの先でいつものように笑うあの男、短時間の戦闘しか出来ない身でアレを超えることはできない。
焼けた身体を見たくなかった、父のように死んで欲しくなかった。生きていてくれるだけで嬉しい存在がこの手から零れ落ちることに耐えきれなかった。どれだけ言葉を尽くしてもやめてくれない訓練、分かってしまうのだその気持ちは、叶わぬ目標を諦めない気持ちは誰よりも理解できてしまうから、
諦めさせる手段はもうこれしかない。
より自分よりも優れた存在がいることで、諦めることに納得してもらうしかないんだ。
生きていてほしいから、ただそれだけなんだ。
夏雄では駄目だった、しでかした人として最悪の所業は失敗に終わり、燈矢に見限られたと誤解されてしまっている。超えなければオールマイトを超えなければ、そうすれば燈矢は諦められるから。俺が今オールマイトを超えさえすれば。如何に燃え盛ろうとマッチの火では太陽は超えられぬのだと、ヤツのオールマイトの平和の象徴の笑顔が告げているように見えた。
焦凍が生まれてくれて嬉しかった。
これで諦めてくれると思ったんだ。家族に、あの燈矢が生まれてきてくれた時に戻れると思ったんだ。
だが燈矢がその炎を焦凍に向けた時、それが不可能だと悟ってしまった。
ならばもう止まれない。
家族に戻れないなら『目的』を『オールマイトを超える次代』を育てあげるしかない。
冷に全て押し付けて、ヒーローに徹する。父親である資格はもう無いのだから。
「俺をつくって良かったって思うから!」
訓練を止めないで火傷を続ける燈矢の叫び。
違うんだと叫びたかった、そうじゃないのだと言いたかった。
お前が生きてくれることを望んでいるのだと言いたかった。やらかしてしまった所業でもう言うことのできないその叫びを身勝手に。
結局その叫びを向けたのは笑顔にしたいと思った人だった、唯一自分の気持ちを理解できると勝手な気持ちで感情を叩きつけた。
冷が追い詰められ焦凍に煮え湯をぶちまけたのはそれからすぐのことだった。俺はまた分けることで傷つかないようにするしか無かった。
「それで俺が馬鹿をやらかしたんだな親父」
ガチャリと扉を開けて現れた燈矢さん。
この後の記憶はエンデヴァーが後に引けなくなった瀬古杜岳のことだろう。
現れた彼に轟家一同は絶句する。
「てか本音を伝えろとか思ってたけど。そういえばずっと言ってくれてたんだな。炎を使うなって、焼けてくれるなって」
「燈矢、なのか」
「燈矢?」
「お兄ちゃん」
「兄貴」
「燈矢兄さん」
魔法の鎖を僕が解除するとエンデヴァーは他に目もくれずに彼を抱き締めた。強く、生きていることを確認するように此処にいるのだと実感するために。
「捜したんだ当時の俺は、おまえが生きてると信じて」
「悪いな親父、その時はもう確保されてたんだ。意識も殆ど無かったしな」
全員もみくちゃになるように彼に抱きつく、そこに今まであったわだかまりは完全ではなくても無くなったように見えた。
「なあ親父、お袋、俺はいてもいいのかな?ヒーローにならなくてもオールマイトを超えなくても。あんたたちの子供でいて、見ててくれるかな」
彼のその言葉にエンデヴァーは、冷さんは、
「俺の方が先に死ぬ、親だからな。でも命ある限りお前達を見ていたい、幸せに生きるお前達を見ていたいのだ」
「資格がないと思い知らされてその目を直視できなかった。でももう逸らさない、貴方がいなくなって見ることが出来なくなる辛さを思い知らされたから」
「父さん、母さん」
エンデヴァーの過去、その心情を知り、轟家はようやく家族に戻れたのだった。
「ところで緑谷君、記憶再生なのにエンデヴァーの思考ダダ漏れなのは可笑しくない?その時あったことを映像として再生するんだよね?」
「そういえば俺の時と仕様が違うような?」
「記憶の精霊のサービスでは?よくありますし」
「またお礼に祀ってお供物あげる必要あるかも?聞いとくね」
「お願いします」
冬美さん、夏雄君にはほとんど触れられませんでした。いやこの二人は本当に巻き込まれた感じなので。でも燈矢君が焦凍君に炎向けるまで、良い家族で入られたのではと思いました。
まあオールマイト頑張り過ぎですが、いくらオールフォーワンがまだ活動していても。