異世界イズク   作:規律式足

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 感想返信滞ってすいません。きちんと目を通していて創作の励みになっています。



65話 炎の先へ3。

 

 轟さん一家のわだかまりがとけて家族に戻れてからしばし、

 

「さて、落ち着いた所で説明と今後の話をしても良いかな?(パンッパンッ)」

 

 椅子に腰掛け机の上で腕を組んだ根津校長が話を始めた。

 

「勿論です根津校長(パンッパンッ)」

 

 死んだ筈の息子、その再会の裏にある不可解な点は親としてヒーローとして確認しないわけにはいかないからだ。

 

「では、息子さんとの再会だけどそれは彼陽介君(現在田淵先生モード)が関わっているね。道端に項垂れる燈矢君に声をかけたことが今回の件の始まりなんだ(パンッパンッ)」

 

「感謝いたします、息子を助けてくれてありがとう(パンッパンッ)」

 

 すると異世界おじさんは田淵先生の姿のままビンタ中のオールマイトから手を離し、グッと親指を突き立てた。それが返事のつもりらしい。

 

「そして今後の事についてだけど、ヒーローの身内については護衛や警備を見直した方が良いだろうね(パンッパンッ)」

 

「警備ですか、しかしヒーローが警備とは本末転倒のような(パンッパンッ)」

 

「燈矢君を拉致したヴィランの手際の良さ、おそらく転移系個性まで用いたことを考えるとその日たまたまではなく何日も監視されていたと見るべきだろうね(パンッパンッ)」

 

「そこまでするヴィランや裏組織が現在この国に存在すると(パンッパンッ)」

 

「そうだね、本来ならあり得ることではない。なにせヤクザやマフィアといった裏社会の組織は個性発現により二度滅んでいる。既存の組織に個性という暴力が加わることによる内部崩壊、そしてヒーロー台頭による外部の圧力による崩壊でね(パンッパンッ)」

 

 多くの裏組織は暴力が物を言っていた。だが拳銃などを容易く上回る個性によって旧体制の維持が不可能になってしまったのだ。ゆえに現存している裏社会の組織は全て個性発現期以降に改めて再構築されたものばかりなのだ。そういった意味では日本のヤクザは奇跡的に組織を移行できた稀有な事例といえる。

 諸外国のマフィアなどは攻撃性凶暴性こそ増したものの純粋な組織力では個性発現期以前とは比べものにならないほどに低下したのだ。

 

「都市伝説にある異能解放軍の残党でしょうか?(パンッパンッ)」

 

 個性発現期にて国家やヒーロー、オールフォーワン以外で個性持ちを思想にて一つの集団としてまとめあげた異能解放軍。首謀者の獄死にて崩壊したその組織だが闇に潜っているのではないかという説もあるのだ。

 

「いや、そちらではなく個性黎明期より暗躍していたヴィランであるオールフォーワンだね(パンッパンッ)」

 

「大規模なヴィラン犯罪の裏にいるとされる超大物ヴィランですか?私は未だに遭遇したことがありませんが(パンッパンッ)」

 

「数年前にオールマイトが討伐した筈なんだが、雄英高校襲撃を考えると仕損じたと判断すべきだね。おそらく保須市の騒動の裏にもヤツは関与していると思われるね。さて田淵先生と陽介君もそろそろ止めてもらって良いよ、お疲れ様」

 

 その言葉で今までずっとオールマイトと緑谷出久の頬をビンタしていたダブル田淵先生はその手を止めた。体育祭でのやらかしの説教前に田淵先生による指導を行っていたのだ。

 

「あの、なんかシバザキさんが変身もしていたような?」

 

 夏雄君による当然の疑問。記憶再生が個性だと思ったら他者に変身したのだからそう思うだろう。

 

「それについても説明するさ、では田淵先生ありがとうございました」

 

 根津校長がお礼の言葉とともに退室を促すが、田淵先生はかつかつとエンデヴァーの前に歩き、

 

「○△□〜➗☆☀Aっ!!」

 

 といつもの言葉にならない言葉を叫びながら固く握った右拳を振るいエンデヴァーを殴り倒した。

 

(た)

 

(田淵先生が殴っただと)

 

 突然の行いに驚愕する一同だが、当の殴られたエンデヴァーは立ち上げると深く頭を下げて、

 

「ご指導感謝致しますっ!!」

 

 と告げた。

 その言葉に田淵先生は満足気に笑い、ポンッポンッとエンデヴァーの肩を叩き親指を突き立ててから部屋をでていった。

 

「何アレ?」

 

 一部の者は理解できたが、あまりにも意味不明な行動であった。それが田淵先生で旧世代の教師なのかも知れない。

 

「さて気を取り直してオールマイト、君とオールフォーワンの関係を説明して貰えないかな?」

 

「あのそれはエンデヴァーのご家族の方にもよろしいのですか?」

 

 長時間のビンタにより両頬を河豚のようにぷっくりと膨らませたままオールマイトは尋ねる。

 

「もはや無関係ではないからね。君達がヤツを警戒して秘密主義を貫いたことが別の箇所に問題をおこしているのではないかと僕は思うのさ」

 

「それもそうですね、分かりました」

 

 そうして語られる個性黎明期から生き続ける一人の魔王の物語。ヤツに抗うために戦い散ったヒーロー達の敗北の歴史。オールマイトの代にて終止符を打った筈の語られることの無かった史実。

 

「そんなことが」

 

「ヤツは強大だった、下手に協力者を募れない程に。またどんなに強いヒーローでもヤツが個性を奪える以上無力化は容易く、こちらの損失は大きかったんだ」

 

 それがオールマイトがトップヒーローに協力を要請しなかった理由だ。確かにオールフォーワンが最優先で倒すべき悪ではあったが、治安維持の要であるトップヒーロー達をその戦いで失うわけにはいかなかったのだ。いや、

 

「エンデヴァー、君がいたから私は安心してオールフォーワンとの戦いに身を投じていたんだと思う」

  

 たとえこの命を散らそうと他に頼れるヒーローがいるからこの国は大丈夫だとそう思っていたのだろう。

 

「その事情はもっと早く聞きたかったものだな」

 

 勝てぬわけだとエンデヴァーは納得した。おそらく自分以上に事態を把握していたであろうヒーロー公安委員会、彼らの定めるランキングにオールマイトによるオールフォーワン討伐の功績が加点されていたのなら如何に成果をあげようと上回れるわけがなかったのだ。

 そしてオールマイト。

 平和の象徴であり単独で犯罪率を下げる彼に、本心では頼られていたという事実をもっと早く知っていればここまでエンデヴァーは拗れなかっただろう。

 

「エンデヴァー、私は遠からず引退する。私の後継者はいるが彼がヒーローとして表舞台に立つのはまだ先のことなんだ。だから私の後にナンバー1ヒーローになるのは君しかいないと思っている」

 

「その座を貴様から奪えなかったことに屈辱を感じているがな」

 

 目標であるヒーローに後を託されるのは誇らしい、だが超えたのではなく譲られたのではこの敗北感を拭うことは出来ないだろう。

 けれどヒーローとして自らが背負うものの重みを改めて自覚して決意を新たに歩むことを決めたのだった。

 

「それでシバザキさんの事情とは?異世界とかどうとか言っていたが」

 

「それは見せた方が早いね」

 

 そして流された異世界おじさんの17年。

 かなり端折られたものの緑谷出久との関係も明らかになり、その壮絶な人生を知ることとなった。

 一同その地獄ともラブコメともエルフヤバいとも言える日々を自身の目で見て、これからの彼の人生に幸あれと祈るようになっていた。

 そしてこちらの世界での最大のオチ(目覚めたら一家離散)まで見た所でこの日は解散となった。

 最後のオチで轟家はよりいっそう家族としてしっかりやり直そうと決めたようだった。

 なお異世界おじさんは再生途中から警告である鼻血をだしていたがオチを見た後に再び記憶を消していた。

 

 こうして轟家の問題は解決したのだった。

 勿論この後に緑谷出久とオールマイトは根津校長から体育祭の件の説教を受け、おじさん宅には新たにVHSプレイヤーとカセットテープを捧げた記憶の精霊の祭壇が出来たとか。

 

 




 
 こんな形で終わりです。
 冬美さんとの絡みも考えましたが、なんかしっくりこなくて。
 とりあえず轟家は家族としてやり直せて、エンデヴァーは次期ナンバー1ヒーローとしての覚悟を決めた感じです。また緑谷君の事情もワンフォーオールを含めて知ったので帰り際にきっちり謝罪しました。
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