異世界イズク   作:規律式足

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 感想からネタを頂戴してます、ありがとうございます。
 おじさんサイドです。


7話 恋する乙女と眼鏡ビームとおじさん。

 

「そういえば藤宮さんの個性って何なの?」

 

 某市某アパート。

 ゲーム理論を現実に当てはめる異世界帰りのおじさんとザマア系は良いけどNTR展開はダメな青年が生息する場所。

 買い出しのため不在な甥っ子に会いに来た同級生女性とおじさんは雑談に興じていた。

 

「あー、私はですねえ」

 

「あ、ごめん。コレ今はエチケット違反だった?おじさんその感覚まだ分かんなくて」

 

 言いにくそうな彼女の様子におじさんは慌てて発言を撤回する。軽い雑談のネタ、不快な気持ちにさせたいわけではないのだ。

 

「いえ大丈夫ですよ、最近言われるのは無個性の人をどうこう言うことなので。ただ私の個性もかなり微妙というか、記憶みたら恥ずかしいヤツなので」

 

「無個性を腫れ物扱いなのも差別っぽいけどね。あと微妙な個性?」

 

 おじさん世代において個性とは、いやこんなんあっても、的な微妙な力ばかりだ。だからこそ無個性差別もありはしても現在ほどの騒ぎにはならなかった側面もあるのだが。

 

「願望成長です。

 こう、自分の願望通りに肉体を成長させる個性です。常時発動してるタイプの個性で、いや私も小学生の時の私があんなんだった認識なかったから効果あったと思って無かったんですが」

 

 願望成長、その名の通り自分の成長に自身の願望を反映させる個性である。ただ成長速度に変化はなく、単に成長しただけと自覚症状も持ちにくい微妙な個性だ。なおいくら願っても個性を新たに身につけたりはできない。

 

「あー」

 

 その恥ずかしそうな彼女の様子におじさんは納得したように頷き。

 

「あの日敬文に恋したから、君は女の子らしく可愛くなったんだね」

 

 その彼女の乙女心に優しげに微笑んだ。

 

「んな顔すんならあのエロ媚薬くださいよ」

 

 顔を真っ赤にした藤宮さんは恥ずかしさを振り払うように関係を進展させる便利アイテムを要求した。敬文青年の今までの態度からやらかしたら記憶を消して自害しかねないとも思うが。 

 

「ん、なら弟君の小4らしからぬ成長も?」

 

「あの子って昔から早く大人に成りたいと言ってましたからね」

 

 大人というか見た目が軽薄な若者なのだが、個性はそこまで融通が効かないようだ。

 

「ただいまー」

 

 そんなこんなで敬文青年の帰宅である。

 

「何、今度はどんな異世界の話してたの?」

 

「いや藤宮さんの個性の話。そういえば敬文の個性は?」

 

 おじさんが事故にあったのはまだ彼に個性が発現する前である。

 

「それでさ、今日はマグロが安くて。夕飯は鉄火丼にしようよ」

 

 ピタリと一瞬固まった敬文は何も聞いていないという態度で話を続けた。貼り付けた笑顔のまま。

 

「いや敬文の個性。生活に気をつけるタイプもあるし」

 

 アレルギーのように身体に不調を起こす場合も無いわけではない。

 

「そうだ、今からぷよ○よで対戦しない?今日は負けないよー」

 

「やるーっ!」

 

「いやあっさり流され過ぎでしょ。どんだけ興味ないんだ個性」

 

 藤宮さんもそう溢すが、彼女も敬文の個性に覚えはない。外見に影響はないから発動タイプなのだろう。どちらにせよ嫌がる相手から聞き出すことはマナー違反だ。

 3人でぷよ○よをプレイすることしばし、

 

「眼鏡ビーム」

 

 眼鏡に落ちゲーの画面を反射させた彼は乾いた表情で告げた。

 

「それが僕の個性」

 

「攻撃タイプ?俺の世代だと珍しいなあ、だって大半右指を切り離すだけの個性とかだよ」

 

「全身に力を込めて眼鏡からビームを撃つの」

 

 ケラケラと笑うおじさんとは違い、敬文はトラウマを掘り起こすように語る。

 

「見かけは派手だけど、一発で全力でマラソンしたレベルで疲れるのに軽く突き飛ばす程度の威力しかない。そして眼鏡が毎回壊れる」

 

 うわあ、と藤宮さんは顔を引き攣らせる。

 

「現実はクソだ」

 

 敬文青年、魂の叫びである。

 ヒーローに成る、それがいかに狭き門であるか。彼のような個性も有り触れている現状を考えると実感できてしまう。

 ヒーロー、その候補にすらなれはしない者がどれだけいると言うのか。

 

「でも敬文、昔からファンタジーの方が好きでしょ?ゼ○の使い魔を読んでたし」

 

「まあね、ヒーローはあんまし興味ないよ。だって現実だし」

 

 ケロリとし表情で敬文青年はコントローラーを操っていた。

 

「さっきの件はなんなんだ」

 

 その切り替えに藤宮さんは呆れていた。

 

「藤宮さんはヒーローになりたくないの?」

 

「私の個性でどうなるんですか。あと最近主流のパッツンスーツとか恥ずかしくて無理ですよ」

 

「あー、あのエッチイの。エ○ァのパイロットスーツみたいだよね」

 

「ミッドナイト辺りからの流行りだっけ?あと女ヒーローって美人ばかりだよね」

 

「女ヒーローになるなら整形しろ、は女子の常識ですよ。まあ実力者はだいたい天然の美人ですけど」

 

「やっぱ人気商売だからかねえ」

 

「男は容姿に関係なく強さ基準だけどね」

 

 ピンポーン。

 そんな雑談をしながらゲームを楽しんでいると玄関のチャイムがなった。

 宅配かなと首を傾げてからおじさんが向かう。

 

 これは緑谷出久がおじさんと再会する少し前の出来事である。

 

 

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