異世界イズク   作:規律式足

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70話 林間合宿 魔獣の森を攻略せよ。

 

 楽しい時間は過ぎるのが早い。

 バスに乗ること一時間、相澤先生が言ったとおり止まった先は森を見下ろせる景色の良いところだった。停車したにも関わらずパーキングエリアでは無いことが不思議なのだが。

 

「休憩だ」

 

「おしっこ、おしっこ」

 

「峰田君だから水分摂りすぎちゃダメだって言われたのに」

 

「つか何ここパーキングじゃなくね?」

 

「ねえアレ?B組は?」

 

「おしっこ」

 

 うん、ここまでくると皆も嫌な予感しかしないよね。具体的に言うと雄英高校の何時もの感じ。

 

「何の目的もなくでは意味が薄いからな」

 

「よーう、イレイザー!!」

 

「ご無沙汰してます」

 

 む?この声は。

 

「煌めく眼でロックオン!」

 

「キュートにキャットにスティンガー!!」

 

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」

 

 ポーズを決めて現れた美人二人は、とある一件から関わりの出来た人達だった。あ、洸汰君もいる。

 

「今回お世話になるプロヒーロー「プッシーキャッツ」の皆さんだ」

 

「詳しく語れ、ヒーロー解説機」

 

「誰がヒーロー解説機だ。

 連名事務所を構える4名一チームのヒーロー集団で、山岳救助等を得意とするベテランチーム。横にいる少年はマンダレイのいとこの夫婦でヒーローをしているウォーターホースの息子の洸汰君で、その横にいるのはトップヒーローの一人にして現日本最強の女性ヒーローと名高いラビットヒーロー ミルコ」

 

「「「ヒーロー解説機じゃん」」」

 

「ってミルコまでいやがるのかよ!!」

 

「脱兎の如く参上した、ブイ!」

 

「あと一部の強すぎる生徒が原因で助っ人として参加して頂いたプロヒーローのミルコさんだ」

 

「つまりかっちゃんのせいだね」

 

「お前だろ」

 

 だってミルコがVサインを向けているのはかっちゃんにだし。

 しかし林間合宿でプッシーキャッツにお世話になるなら合宿先はマタタビ荘か。去年泊めて貰ったけど、廃校になった学校の宿泊施設を買い取っただけあって広いんだよね、温泉もあるし。

 

「出久兄ちゃんっ!!」

 

「久しぶりだね、洸汰君」

 

 こちらに気づいて飛びついてくる洸汰君。弟がいたらこんな感じかな?

 

「今日はプッシーキャッツの所でお世話になっているんだね?」

 

 洸汰君の頭を帽子ごしに撫でながらそう尋ねる。ニホンバハマルに戻ってきて、洸汰君にトラックに轢かれるところから助けたお礼を言われた時に付き添いとして彼女達も居たのだ。

 

「ウォーターホースは水辺での活動が中心だからね、夏は特に忙しいのよ出久君」

 

「マンダレイ」

 

 彼女は洸汰君がパパとママは仕事だからと言った後で補足するように教えてくれた。

 

「洸汰の恩人なんだし、信乃でいいわよ」

 

 その優しい笑顔に、アリシアさんを思い出してついときめいてしまう。やっぱり年上の女性は良いなあと思っていたら洸汰君が必死にシャツを引っ張りながら真剣な顔で告げてくる。

 

「気をつけろ出久兄ちゃん、ヤツラ(結婚適齢期ヤバいの)は兄ちゃん(将来有望な若い男)を狙っている。ってパパが言ってた」

 

「「おだまり洸汰」」

 

「ギュフ」

 

 マンダレイが頭を、ピクシーボブが首を掴んで洸汰君を回収されてしまった。苦しそうだけど肉球ついてるから大丈夫だよね?

 

「仲が良さそうやねえ」

 

「ですわねえ」

 

(((麗日とヤオモモがエルフ顔になっていることに気付いて緑谷!!)))

 

「離しやがれミルコォ」

 

「照れるな照れるな」

 

「クラスメイトのツンツン爆発野郎がウサ耳美人ヒーローにヌイグルミみたいに抱きしめられている件について」

 

「判決、死刑」

 

「「「異議なし」」」

 

「壮大な景色で爽快な立ちションだったぜ」

 

 とバスが停車してからグダグダなやり取りを続けていると仕切り直すように相澤先生がゴホンと咳をしてから説明を開始する(すぐに注意しなかったのは洸汰君と僕の関係からの気遣いだったようです)。

 

「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね」

 

 猫の手グローブで指差すマンダレイってなんかカワイイ。

 

「あんたらの宿泊施設はあの山の麓ね」

 

「「「遠っ!!」」」

 

「視認できるか出久?」

 

「ちょっと無理な距離。A組に視覚強化できる個性の子はいたっけ?」

 

「障子はいけるか?」

 

「すまん、眼球を増やしても視界を広げることしかできない」

 

「「「冷静っ!?」」」

 

 いやだってこの先の展開は予測できるし。

 

「じゃあ何でこんな半端なとこに」

 

「いやいや」

 

「バス戻ろうか、な?早く」

 

 うん、皆も気づくよね。

 

「今はAM9:30。早ければぁ、12時前後かしらん」

 

「ダメだおい」

 

「戻ろう!」

 

「バスに戻れ!!早く!!」

 

「12時半まで辿り着けなかったキティはお昼抜きね」

 

 エグい。

 

「悪いね諸君、合宿はもう」

 

 地面に手をついたピクシーボブによる個性発動。土の津波が必死に逃げる皆を押し流す。

 

「始まっている」

 

「光剣顕現(キライドルギド リオルラン)」

 

 けれど咄嗟に光剣で土流を斬り割る。これで僕の後ろにいた人達は助かったと思ったら、

 

「落ちろっ!!」

 

 と結局ミルコに蹴り飛ばされて森まで落とされてしまった。抵抗しないであのまま土流に呑まれた方がラクだったね。

 

「私有地につき個性の使用は自由だよ!今から三時間!自分の足で施設までおいでませ!この魔獣の森を抜けて!!」

 

 マンダレイの言葉を聞きながら僕達は森へと落ちるのであった。

 

 

「とりあえず人数と怪我の確認だね。捻挫とか打ち身の人いるー?」

 

「土まみれだが怪我人はいねえよ」

 

「しかしドラクエめいた名称だな」

 

「グランバハマルにもあったかそんなの」

 

「むしろ魔獣の森じゃない森なんてなかったよ」

 

 以前泊まった時も森の探検とかしなかったからなあ。当時は探検とか絶対に嫌な気分だったから。

 

「雄英こういうの多すぎだろ」

 

「文句言ってもしゃあねえよ、行くっきゃねえ」

 

「おい、なんかいんぞ!」

 

 峰田君が物音に気付いて指差せば、そこには土と木と石で構成された魔獣がいた。

 

「マジュウだー!」

 

「静まりなさい獣よ下がるのです」

 

「口田!!」

 

「いやアレは生物じゃないね」

 

「とんでもねえ個性だなオイ」

 

 僕の光剣、かっちゃんの爆破、轟君の氷結、飯田君の蹴撃でピクシーボブの個性で操作された魔獣は粉砕された。

 

「主に土で構成、補強に木材、爪や牙などの攻撃部位は石だね」

 

「壊せるには壊せるが素手だと厳しいか」

 

「個性でやるにしても最低三時間の長丁場」

 

「人員配備、役割分担が必須だな」

 

 僕とかっちゃん、轟君、飯田君で方針を固める。

 障子君と尾白君と砂藤君でも破壊はできるが負担は大きいだろうし、切島君は防げても身体が土に埋まるだろうね。

 

「出久、目的地までの道は知らねえか?」

 

「建物の外観はわかるけど場所は不明」

 

「なら、口田に鳥を使ってナビゲーションしてもらう必要があるな」

 

「? 真っ直ぐ行けゃいいんじゃねえの」

 

「乱戦で方向なんてすぐ分からなくなるわ。森だと目印ねえし見通し悪くて変化もねえ」

 

「下手したら逆方向だよ」

 

「口田もパワーあるから戦力になったがナビに専念してもらわねえとな」

 

「うむ、適材適所だ!!」

 

「とりあえず口田君にマタタビ荘見つけてもらうまで周囲に警戒しながら役割分担を決めよう。がむしゃらに動いて無駄に体力消耗できないし」

 

「出久、人数分の食いもんあるか?間違いなく昼まで辿り着くのは無理だ」

 

「ペットボトルの水と相澤先生愛用のゼリー食が大量にあるよ。あとはカップ麺と缶詰」

 

「異世界転移対策バッチリだな」

 

 かっちゃんの昼が絶望的だと聞いて落ち込んだ皆だけど僕の収納魔法という希望があった。流石に生食材は入れてないけど。

 そこから円陣を組んでから役割分担。

 前衛に僕とかっちゃん、後衛に飯田君と轟君。中心には最重要な口田をおいて索敵に向いた耳郎さんと指揮役の八百万さんを配置、その周りを護衛役として土魔獣相手に向かないメンバーで固める。機動力のある梅雨ちゃん、尾白君、瀬呂君は全体のサポートだ。

 

「ロボやら人ならまとめて撃退できる上鳴が使えねえのが痛いな」

 

「そこら中にカメラ設置してあるから、それらを壊してもらう?」

 

 この距離で土魔獣を操作できる仕組みはそれだろう。ピクシーボブはバインダーと繋がるカメラの情報から土魔獣を操っているのだ。

 

「壊したら誰が弁償すんだそんなもん。過度な破壊は厳禁だ」

 

「緑谷はグランバハマルで森とか慣れてんだろ?おじさんとかこんな時はどうしたんだ?」

 

「森を切り開いて突き進んだ」

 

「自然に優しくねえ連中だな」

 

 土魔獣対策として八百万さんに武器を創造してもらう案も出たけど、荷物の増加は機動力に関わるから却下された。ハンマーや斧って意外と振るだけで疲れるし、持ちながら走るなんてキツイからね。銃の類は簡単に持ち運べるサイズだと土魔獣には効かないし、弾丸なんか消耗品だしね。古代魔法具なんかいくらか持っているけどこれは使っちゃ駄目だよね。

 

「チチチ」

 

「建物を見つけたって」

 

「よし、行動開始だな。喉が乾いたらすぐに出久に言って水分補給。一時間ごとに休憩しながら進むぞ」

 

 喉の渇きは動きに直結するからね。消耗した分は後で払うとかっちゃんは言って、僕達は動きだした。

 

「ねえ、これならB組と合流した方が良くない?」

 

「戦力的にはそうした方が良いけど、同じ時間にスタートした保証がないんだよね」

 

 バスで一回りして時間をずらすとかできるし。

 

「行軍途中に見つけたらだな」

 

 こうして僕達は魔獣の森を攻略するのだった。

 





 改めて考えるととんでもない課題ですよね。というか休憩地点無いと無理じゃないですかコレ?
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