異世界イズク   作:規律式足

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71話 マタタビ荘の騒乱。

 

 PM 3:40。

 

「予想より早く来たにゃん」

 

 ピクシーボブのあんまりな言葉に今の課題が無理難題だったのだと実感する。

 僕の収納魔法で水と食料はなんとかなったからよいものの、もし無ければ轟君の創りだした氷に齧りつく破目になっていたことだろう。

 

「つっても爆豪の言うとおり昼飯には間に合わなかったけどな」

 

「ゼリー食に旨えと叫んだのは初めてだよ」

 

「空腹は最高の調味料」

 

 疲労困憊の皆の様子。

 グランバハマル生活でサバイバルに慣れている僕と趣味が登山で道場の山籠りの経験あるかっちゃん以外は疲労困憊でボロボロだ。というか制服の夏服と山籠り向きではない靴を履いた状態でやっていい課題じゃないと思う。

 

「まあ、まだマシだったけどな」

 

 かっちゃんの呟きに皆がこれより上の段階があるのかと信じがたい表情で振り返った。

 

「だね。狩猟用の罠もなかったし、侵入者対策のブービートラップも設置されてなかったからね」

 

 この規模の森に野生動物が生息してないなんてありえないし、畑を荒らす大型野生動物対策は土地所有者の義務だ。普段ならいくつか設置されていることだろう。

 猟期やら罠の管理責任など色々な問題もあるが、山岳救助においては注意すべき要素である。特にヒーローは個性対策に力を入れ過ぎてこういった罠などを見落とす傾向にあるとか。

 

「大型野生動物と遭遇しねえのも不自然だ、あらかじめ追っ払ったんだろ」

 

 今回は口田君がいたから遭遇してもどうとでもなったけど、大型野生動物は普通に脅威だからね。

 

「ウソの災害や事故ルームじゃ体験できないことだったなあ」

 

 なんでも体験できる施設だけどどうしても事例の再現になってしまうからね。長時間の森林行軍は現地で体験するしかないよ。

 

「しかし何が3時間ですか」

 

 うん、飛空魔法を自在に操れるおじさんと違って3時間は僕でも無理。

 

「悪いね私たちならって意味アレ」

 

「実力差自慢の為か、やらしいな」

 

「ねこねこねこ、でも正直もっとかかると思ってた。私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった」

  

 ピクシーボブは舌をだしながら、僕、轟君、飯田、あとかっちゃんに指を向けたけど、かっちゃんはミルコに奪うように回収された。

 

「いいよ君ら特に、そこ四人っていつのまにか一人いないっ?!」

 

 恐ろしく早い回収、僕じゃなかったら見逃してたね。

 

「残った三人だけでも三年後が楽しみ!ツバつけとこー!!(プップップッ)」

 

「峰田バリアー!!」

 

 洸汰君の助言もあって対策を実行する。いくら年上美人でもツバは嫌です。

 持ち上げられてピクシーボブとの間の壁になった峰田君は、

 

「ご褒美の雫じゃー!!」

 

 なんか喜んでいた。レベルの高い変態だなあ。

 

「マンダレイ、ピクシーボブってあんな人でしたっけ?」

 

「彼女焦っているの適齢期的なアレで。この間のヒーロー女子会でミッドナイトが意中の相手のことで惚気倒していたのを見たから余計に(私もだけど)」

 

「先輩がすみません。よろしければウチのプレゼント・マイクなんてどうですか?独身ですよ」

 

「ううん、彼は結構よ(ブンブン)。あとMs.ジョークが」

 

「その気ないです(ブンブン)」

 

 なんかヒーロー達のやり取りも気になるけど、この後はどうするんだろ?色々済ませたら自由時間かな。

 

「とりあえずお前らバスから荷物降ろせ。部屋に荷物を運んだら食堂で夕食予定だったんだが、お前らが予想より優秀でかなり早く到着したからまだ夕食の用意ができてない」

 

 相澤先生に褒められると照れると同時になんか嫌な予感がするんですけど。

 そんな僕らの反応に相澤先生は合理的な件でのいつものニヤリとした表情になり、

 

「だから夕食までの時間、肉弾戦でオールマイトに次ぐと評価されているラビットヒーロー ミルコとタイマン組手だ」

 

 疲労困憊な僕達に追い打ちをかけた。

 

「「「「鬼かアンタァっ!!」」」」

 

「「「「嫌だァーーッ!!」」」」

 

「組手後に食堂で夕食、その後入浴で就寝だ。本格的なスタートは明日からだ、さァ早くしろ」

 

 6時間の森林行軍後に最強女ヒーローとの組手以上とされる本格的な訓練とは?

 

「あ、補習組は補習もあるから」

 

「「「「いっそ殺せぇっ!!」」」」 

 

 やる気満々で楽しげな様子のミルコを前に、真夏の空に僕達の悲鳴が響き渡るのであった。

 

 

 夕食。

 ミルコに蹴り飛ばされて地面を転がりまくってもお腹は空く。とりあえず細かな擦り傷切り傷は僕が神聖魔法で治したから跡も残らないだろう。

 見たかんじ他に職員やスタッフは居ないようなので、目の前に並べられたご馳走の山はピクシーボブとマンダレイ(ラグドールと虎はB組担当なのか居ない)の手作りなんだろうけど、女性ヒーローの女子力の高さに驚くよね。

 もっとも、かっちゃんの前の山盛り生人参という事例もあるから人によるのだろうけど。かっちゃんは自分の荷物から取り出してきたマイデスソースをたっぷりと生人参の山にかけてから無表情でボリボリと食べていた。その男気溢れる姿に男子一同はひたすら尊敬の眼差しを向けるのであった(同じことをやろうとは絶対に思わないけど)。

 

 

 入浴時間。

 マンダレイに頼まれて洸汰君も一緒だ。冗談なのか一緒に入浴するかと誘われたが(目が怖かった)、クラスメイトと温泉を楽しみにしていた僕は普通に断った。

 広いお風呂にテンション上がる僕達だったけど、当然そこには別の意味でテンション上げる問題児(ド助平)がいた。

 

「まァまァ、飯とかはねぶっちゃけどうでもいいんスよ」

 

 そうかな?美人ヒーローお手製ご飯とか貴重だと思うけど(洸汰君は日常的に堪能している)。

 

「求められてんのってそこじゃないんスよ。その辺わかってんスよオイラぁ」

 

 あ、洸汰君。先に身体を洗おうか。

 

「求められてるのはこの壁の向こうなんスよ」

 

 壁に向かって一人語る峰田君。

 入浴時間をズラさないのは雄英高校のミスなのか、それとも下着盗難を警戒してなのかどっちなんだろ?

 

「アイツを凍らせとくか?」

 

 割と物騒な提案をする轟君。

 かなり妥当な対処だと僕も思う。

 覗き事件なんておきたらこのまま林間合宿が中止になりかねないしね。

 

「峰田君やめたまえ!(わっ)」

 

「やかましいスよ」

 

 飯田君の注意もド助平にはどこ吹く風だ。

 

「壁とは超えるためにある!!プルス・ウルトラ!!」

 

 もぎもぎで叫びながら壁を登る峰田君。

 速いし、校訓を汚しているなあ。

 というかこれだけ騒いでいるのだから女湯にも聞こえているだろうに。避難しているよね彼女達?

 

「縛動拘鎖(レグスウルド スタッガ)」

 

 まあだからといって僕が何もしない訳にはいかないけど。

 とりあえず拘束しようと魔法を放つ僕だけど、ここで予想外のことが起こり、そして思わぬ悲劇が発生するのだった。

 

「ハッーハッハ、甘えぜ緑谷ァ?!その魔法は何度も見た!!」

 

 と予想していた峰田君が一瞬飛ぶことで魔法の鎖を回避して、

 グチュリ。

 峰田君の身体を外れた魔法の鎖の側面が、興奮したことでいつもとサイズの違うリトル峰田をえぐり擦ったのであった。

 

「▲○■ーー!?!?」

 

 言葉にならぬ叫びを上げた峰田君が意識を失って落ちてくるのであった。

 

「かっちゃん、明日からウチのクラスに女子が一人増えるかもね」

 

「あんな女子は嫌だな」

 

 ちなみに峰田君は飯田君が峰田のお尻を顔面キャッチ(二次被害)することで頭を打つことはありませんでした。

 治療行為として回復の呪符をリトル峰田に貼り付けたから多分大丈夫でしょう。

 

「こんなのにはなりたくないなあ」

 

 洸汰君の呆れ果てた呟きが一番心にキマした。

 

 こうして林間合宿初日は終了したのでした。

 





 ちなみに飯田君による峰田君のお尻顔面キャッチは原作そのまんまです。読み返したらこんな悲劇あったんですね。
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