時間は前後します。
とあるキャラの人格面などオリ設定なので閲覧注意です。解釈違いならすいません。
雄英高校林間合宿襲撃事件から翌日。
雄英高校の会議室にてイレイザーヘッド、ブラドキングを除いた教師陣が集まり情報共有からの対策会議を行っていた。
私、ミッドナイトは席につきながらもかつてのヴィジランテ達の騒動を思い出しながら皆と意見を交わしていた。
治に居て乱を忘れず、帝国華撃団の父であるあの偉大な米田中将の言葉を胸に刻んでいなかったことによるヒーローの、雄英高校の、現政府の、私の、失態。
夢を叶えるために汗を流す学生達の青春の一時は、情けない大人達と悪意あるヴィランの手によって辛い記憶へとなってしまった。
認識を誤っていたのだ。
ことはもう敵活性化の恐れ、という時点では無かったのだ。
連中の目的はヒーロー社会を壊すこと。
己の衝動の発露に留まらない、より大きな思想。それはかつて存在した異能解放軍を想起させる。
ただ幸いだったのは爆豪君がプッシーキャッツのマタタビ荘に泊まることを聞きつけて強引に参加してきたミルコの存在。
彼女が夜の山を縦横無尽に駆け回りヴィランを撃退してくれたから被害はでないですんだ。なんでもプッシーキャッツのメンバーであるラグドールは脳無に執拗に狙われていたらしく、ミルコは助けたラグドールを背負って彼女のサーチのサポートを受けながら生徒の救助とヴィランの撃退をしてくれたのだ。けどその脚力で飛ぶように駆けるミルコの乗り心地は内臓がシェイクされたように感じるくらい最悪だったと顔を青くしたラグドール本人は言っていたらしいわね、乙女として吐くような失態はなんとか防いだみたいよ。
あと怪我人やガスを吸った生徒については緑谷君が治療してくれたから後遺症の心配もない。だからといって無かったことになんてならないけどあの子達の未来に影響しなくて良かったわ。
「生徒の拉致も狙われていたようだけど、防げたのは不幸中の幸いなのさ。脳無なんてシロモノを拵える連中に捕まったら子供達がどんな目にあったことか」
「ですね、ただでさえ雄英高校に在学する生徒は強力な個性の子ばかり。改造人間の素材として用いられてもおかしくない」
それが脳無という存在が発覚してから一番恐れている点ね。今までの事件で回収した複数の脳無、信頼できる医療関係者に調べてはもらっているが現代の技術で元に戻すことは不可能。いや改造された人間を治すことは医療技術の領分であるが、動く死体を元の存在に戻すのは死者蘇生という奇跡の領域なのだから。
仮に私達は脳無にされてしまった生徒達に攻撃をすることが出来るのだろうか。それは仮定すらしたくない出来事なのだ。
「メディアにも非難をくらってはいるが」
「擁護の声も少なからずありますね」
「転移個性前提の襲撃を防ぐ方が無理があるって意見がでてるな」
「むしろ個性診断による個性管理の重要性を指摘する識者もいるな」
「ただでさえ転移個性の人はスカウトって形で管理拘束されてるのに」
犠牲者がでてないがゆえのメディアと世間の評価、事実として同じことをされて防げる組織が存在しないからだろう。
「信頼云々ってことでこの際言わせてもらうがよ、今回で決定的になったぜ。いるだろ内通者」
「それは」
プレゼント・マイクの言葉に思い当たる節があり押し黙る一同。
今回の件、転移個性を警戒して例年の合宿先から変更した上での襲撃。それが何よりの証明になってしまったのだから。
そして、
「連中はミルコを想定してなかった。けど飛び入り参加とはいえ俺達教師一同はそれを知っていた。なら内通者は生徒ってことになるぜ」
ミルコの林間合宿の参加。
それが私達を容疑者から外してしまったのだ。
「まあ先日の異世界おじさんのおかげで俺達がシロなのは確定している。けど内通者探しは焦って行うべきではないだろ」
疑心暗鬼を恐れているからだけじゃない。
生徒が内通者であるならば、下手な介入は最悪の事態を招きかねないからだ。
ヴィラン連合、オールフォーワンの協力者や崇拝者の類ならまだ良い。けど人質などが取られているパターンなら調べることそのものが惨劇の引き金になりかねないのだ。
「内通者に関してはもっともだけど、学校として行わなければならないのは生徒の安全保証さ。今回の件は外部のミルコと生徒の緑谷君のおかげだしね。内通者の件もふまえ、かねてより考えていた事があるんだ」
『でーんーわーが来た!』
「すみません電話が」
「会議中っスよ!電源切っときましょーよ!」
(着信音ダサ)
(自分の声だ)
(携帯電話会社が企画してたなそういえば)
一旦退室したオールマイトが戻ってきた後、知り合いの刑事からの情報が伝えられた。
その情報を元に知恵者である根津校長を中心とした作戦が練られ、私達の行動方針と対策が決まり会議は終了することになったのだ。解散時のオールマイトの覚悟を決めた表情が何故か印象的だった。
帰宅。
つい先日引っ越しばかりのアパート、その扉の前で私は立ち竦んでいた。
いつもなら当たり前のように開けられるソレが、そこにあるのに触れることの出来ないゲームの背景のように感じてしまう。
自宅ではない。
ここは隣の想い人が住む場所だ。
疲れた時、癒やしが欲しい時、最近ではセガをプレイするより此処にきてしまう。此処に来て彼に会いたくなる。
けど、
メディアに報道された今回の事件。
その被害には彼が面倒をみていた緑谷君も親しくなった塩崎さんもいる。彼らの学校生活を守れなかったというヒーローとして教師としての失態を私は晒してしまったのだ。
怖い。
会いたいけど、会いたくない。
会いたいけど軽蔑されたくない。
会いたいけど嫌われたくない。
ヒーローをやっている上で、失態を晒した後の非難の目を向けられることはある。それが原因で、それに耐えられなくてヒーローを辞める人がいるくらい当たり前のごく普通のことなのだから。
けどもし彼にまでそんな目を向けられたら?
そんな想像をしただけで血の気が引くような感覚に囚われてしまう。
やっぱり止めよう。
ドアノブに伸ばした手を引っ込めて踵を返す。
辛い気持ちはある、無力感に蝕まれてもいる。けどそれはいつものことで何度だって経験したことだ。今日もまた一人で抱えて、一人ぼっちの部屋で乗り切ろう。そう決めたそんな時に、ガチャリと音がした。
触れてない扉が向こう側から開いた。
そこから出てきた彼は、室内の明かりのせいで表情が分からない。
ヒュっと喉が鳴る。
それは恐怖からでた怯えた末の声にもならない音だった。
「睡さん」
「ハ、ハイ」
ガチガチに固まる私に彼は、
「おかえりなさい、大変だったね」
人によっては怖く見えるらしい、私にとっては何よりも優しく見える表情でその言葉を告げてくれた。
そして私は気がつけば彼に抱きついて、泣きながらただいまと言っていたのだ。
辛い気持ちを受け止めてくれる彼に縋りついて。
今だけはヒーローのミッドナイトでは無く、ただの香山睡として。
いやヒーローだって人間ですし、女性ですから。泣きたい時もあるかなと。
被害者の手前、ヒーローは辛い顔なんて許されないだろうし。
ミッドナイトはもっと強い人だと思う方はすいませんでした。