原作改変有り、閲覧注意。
オールマイトの拳とエッジショットのピザ配達から突入は開始した。
存在感のあるオールマイトに中のヴィラン達の意識を集中させ叩き割った壁から捕縛に定評あるシンリンカムイが拘束をする。
そして小回りが利き速度が速いグラントリノとエッジショットが転移個性を持つヴィランの意識を断てば後は完了だ。
内部にいるヴィランの素性は把握されている、中には林間合宿襲撃では表に出てない者もいたがこの建物を調べる過程で判明したのだ。
都市内各所と各店舗に設置された監視カメラ、持たない者がいないのではないかと言うほど必須になった高性能通信録画機器であるスマホ、そこに職務熱心な警察官の努力があれば大概のことは調べ尽くせるのだ。もっともそれでも素性の分からない死柄木弔と黒霧という存在がいたが、その事実が黒幕であるオールフォーワンにとって重要な存在であると推察することができた。
作戦成功と雄英高校の謝罪会見でご機嫌で仲間達と騒いでいたヴィラン連合はここで一気に天国から地獄に突き落とされたのである。
死柄木弔が苦しまぎれに脳無を呼びださせようとするが捕縛された黒霧は出来ないと告げる。それは向こうの制圧が成功していることを示していた。
「これで終わりだ死柄木弔!!」
力強いオールマイトの宣言、それだけで萎縮し怯み降参し投降するヴィランとて少なくはない。溢れる存在感とパワーはヒーローとしての威厳と生物としての格の違いを相手に理解させるからだ。
だが、
「お前が!!嫌いだ!!」
死柄木弔は激昂する。
オールマイトに怯みすらしないで、内面にある鬱鬱とした感情を爆発させるように。
そして同時に液体のようなものが何も無い空間から溢れるように吹き出し脳無が大量に出現した。
咄嗟に飛び出して切り伏せようとするが、そんな僕の行動を高速で弾丸の如く飛ぶ押印が遮った。
転移という便利な個性を一つだけで我慢する筈がない、その予測から控えていたサー・ナイトアイは脳無の頭部を的確に打ち抜き同じく控えていたプロヒーローと武装警察官とともに鎮圧していった。
苦し紛れ、それは最悪の未来を誰よりも知るサー・ナイトアイが居る限り通用しない。
場所は変わりヴィラン連合のアジトの一つ八百万百による発信機で判明した脳無格納庫。
未だルーキー扱いされることすらありながら周囲の被害に目を瞑ればヒーロー随一の制圧力を誇るマウントレディによる一撃から制圧は開始した。
最前線にて指揮をとるのはナンバー4ヒーローでありシンリンカムイ以上の捕縛力を持つベストジーニスト。そして最悪の事態に備えてオールマイトに並ぶ戦力であるナンバー2ヒーローのエンデヴァーだ。
人質などがいない現状、施設ごと焼き払うという容赦の無い作戦をヒーロー側は視野に入れていた。
「脳無による抵抗も無し、命令が無ければただの人形のようですね」
「ギャングオルカは向こうで正解だったようだな」
施設破壊のマウントレディ、脳無捕縛のベストジーニスト、制圧戦闘のギャングオルカ、という予定だったがエンデヴァーが居るため向こうに回されたのだ。
「だが人形ならば整備をする専門の知識を持つものが必要だ」
「設備を見てもあくまで保管庫、製造する施設は別にあると見て間違い無いですね」
ならばあとは情報収集をするかと両ヒーローが歩きだそうとしたところで、ソレは現れた。
「予定とは少し違う展開だ」
響く声は不吉さをはらんでいた。
百戦錬磨のヒーロー二人はすぐさま臨戦態勢をとる。
「だがまあ、逆転なんて僕一人で事足りる」
敵には何もさせるな。
その思想が躊躇い無く拘束に動いたベストジーニストだが巨悪の一手を防ぐには余りにも足りない。
放たれた衝撃は眼前のヒーローと警察官と脳無格納庫、そして周囲のビル群すらもまとめて吹き飛ばす。
筈だった。
「赫灼熱拳ジェットバーン」
身体能力ではなくその火力で最強の一角と称されるフレイムヒーローがいなければ。
異世界グランバハマルの恩恵、耐火の呪符という自身の個性の欠点を完全に無くすアイテムを得たエンデヴァーの火力は、闇の帝王の一撃すら相殺しきった。
「驚いたね」
「貴様がオールフォーワンか」
取るに足らないと見下していた存在の思わぬ反撃に巨悪は驚き、次のナンバー1ヒーローであるエンデヴァーは平和の象徴が戦い続けた巨悪と相対した。
「ベストジーニスト、皆を下がらせろ」
いつ以来かとエンデヴァーは思った。
ナンバー2と呼ばれるようになってからは遭遇すらしなくなった、勝てないかもしれない存在と戦うことになるのは。
「確かに今のデニムでは拘束しきれないか。頼むぞエンデヴァー」
「周辺一帯の避難も頼む。こうなればもはや秘密作戦どころではない、人員を掻き集めて市民を救ってくれ」
コイツは俺がやる。
エンデヴァーはそう宣言し、猛る戦意を表すかのように全身から炎を吹き出す。
「ランキングなどあるから誤解が生まれる」
それをオールフォーワンは眼なき顔で呆れたように見る。
「ナンバー1とナンバー2、オールマイトとキミ、同じ領域に居ないにも関わらず頑張れば勝てるように見えてしまう」
自身の影響力がオールマイトのせいで低下してきた頃に出来たヒーロービルボードチャート。実力あるヒーローを示すソレは巨悪にとって脅威でも何でもない。むしろどれから消せば人々は絶望するか示すリストに過ぎなかった。
オールマイトとその他。
区分などそれだけで充分なのだから。
「全くもってカワイソウだねえ、キミは」
しかし見下されたエンデヴァーは挫けない。
そんなことに、そんな事実を聞き飽きてないトップヒーローなど誰一人としていないのだから。
それでも上を目指したのが己なのだ。
「戦う前に一つだけ言っておく」
ゆえにこの機会でしか言えないことをエンデヴァーは伝える。
彼にとってのケジメを。
「目的はどうあれ、俺の息子である燈矢の命を救ってくれて感謝する」
ヴィランに礼を言うのはもっとも苛烈なヒーローであるエンデヴァーにしては屈辱の極み。
だが生きて再会できたのは目の前のヴィランが回収し非合法とはいえ最新の治療を施してくれたからだ。本心からの感謝を戦いにしこりを残さぬために告げる。
「ああ、あの失敗作の出来損ないか」
しかしソレは巨悪にとってはどうでも良いことで、当然のように思いを踏みにじる。
「なんだ、社会を引っ掻き回すことくらいは出来ると思っていたのに家族とお涙頂戴の再会して満足したのか」
つまらない、期待外れ。
そんな態度を隠しもしないで言う。
「せっかくわざわざ感情を誘導してやったのに、あれだけ手をかけてやったのにこうも使えないとは。
エンデヴァー、君の見立ては正しかったよ。アレは完膚なきまでに使い物にならない失敗作さ」
オールフォーワンを取り込むには強い感情が必要。ゆえに長き時をかけて死柄木弔という次の肉体を創り上げている。しかしそのスペアとして目をつけて、精神誘導の個性をかけて劣等感と焦燥意識を増大させた素体は肉体に欠陥あるだけではなく、肝心要の精神まで足りてなかったようだ。
元より趣味8割のサブプラン。失敗に落胆こそ無いがガチャで外れを引いた気分くらいにはなる。
「ケジメとして礼は言ったぞ。貴様は塵も残さず焼き尽くしてくれる」
その言葉にブチ切れるエンデヴァー。
もはや語る言葉無しと激情のままヘルフレイムを解き放つ。
なぜあの甘くすらあるオールマイトがこうも嫌悪を顕にするのか、その理由を悟った。
コレはあってはならぬ、人の世に居てはならない存在なのだと。
ヒーローが打ち倒さねばならない悪だと。
フレイムヒーローエンデヴァーは激情と義憤と使命感に燃え上がり巨悪へとその炎を向けた。
その激戦は時間にして五分足らずだろうか、空まで届きそうな火柱が夜を照らしていた。
赫灼熱拳、エンデヴァーを象徴する必殺技を駆使しオールフォーワンの複数の個性を重ねた破壊の風を相殺し都市を人々をヒーローは守っていた。
途中でヴィラン連合のメンバーが泥のような個性で転移されたので纏めて焼き払おうとするも、再び別の箇所へと転移された。
ぶつかり合うたびに傷つくのはエンデヴァーばかり。個性による肉体強化の無いただ鍛えているだけの身では、他者から奪いさらにドクターによる調整まで施されているオールフォーワンに勝てる筈も無いのだ。
平和の象徴は未だに来ない。
それは彼が脳無に手間取っているからではない。あの馬鹿げた身体能力で人々を避難させろとエンデヴァーがそう頼んだのだ。
(勝てぬ訳だ)
エンデヴァーの胸にある感情は納得。
異世界からの恩恵、棚からぼた餅のようなチートアイテムである耐火の呪符で個性の副作用を打ち消そうとも目の前の弱った巨悪すら倒せない。
コレの全盛期を打倒したオールマイトとの差は明白に過ぎるというもの。
自らの努力は届かない。
超えられぬ崖の先にオールマイトの背中はあるのだと改めて実感した。
時間稼ぎにしかならない悪あがきのような激戦。その事実に絶望しつつも今は誇ろう、これは誰かの命を救う悪あがきなのだから。
「おのれ、取るに足らない端役風情が」
その粘りにオールフォーワンが苦々しく呟いた頃に、一条の光が空から降り立った。
「私が来たっ!!」
彼を象徴する言葉とともに。
「遅いぞ」
負け惜しみの言葉を吐いてからエンデヴァーは膝をつく。命を掛けた戦い、放ち続けた炎に彼の肉体は限界だった。
「ありがとうエンデヴァー、人々は全員避難し脳無は全て打倒し捕縛した。後はオールフォーワンを倒すだけだ!!」
「フン、後は任せたぞ。ナンバー1」
次へ繋ぐこと。
それが自分の役割なのだと、自身の宿命なのだとエンデヴァーは朧気ながらに理解した。
「随分と遅かったね。おかげで弔達は逃がすことができたよ。衰えたんじゃないかオールマイト」
「ヴィラン連合を取り逃がしたのはこちらの失態。だが人々を救う判断を誤りだとは思わないし悔いは無い」
ぶつかり合う拳と拳。
エンデヴァーの炎にて焼かれようと伝説の巨悪は未だに揺るがない。オールフォーワンの肉体強度は脳無を上回る程に常軌を逸していた。
「しかしオカシイなあその力、とっくに譲渡したと思っていたが未だに未練がましく抱えているのか私のワンフォーオールを」
「貴様のモノではない!!コレは貴様を倒すために受け継がれてきたヒーロー達の力だ!!」
「いやはや予定外が過ぎるよ。ヒーローへの信頼は思ったより崩せないし、取るに足らない小物は存外粘り、お前も譲渡してないから醜態を晒すのも困難だ」
どこで予定が崩れているのか、複数のプランを時に思いつきのまま趣味を混じえて同時に進行させるオールフォーワンだがここまで上手くいかないのはその長い生涯でも初めてのことだった。
ナニカを見落としている。
自身の思考から外れたナニカが予定を崩しているのだと薄々と察してはいた。
一体ナニが、いかなる因子が。
そんな風に戦いつつもオールフォーワンは考えていた。もっともいくら考えようと、異世界転移などというあまりにも有り得ないものが自らの予定を崩しているなどとは思いつきもしないだろうが。
魔王気取りの巨悪は、一人の使い捨てライターの勇気ある行動により未だにグランバハマルを知らない。
「揺るがないか、腹に空いた大穴による影響が無いのは気になるがまあいい。なら次だ」
戦いでは崩れないなら次は心。
「死柄木弔は志村菜奈の孫だよ」
オールマイトの心の拠り所が守りたかった存在を台無しにしてやったとオールフォーワンは告げた。
悪意をもって、笑顔を奪ってやろうと、その矜持に泥を塗ってやろうと。
憎たらしいオールマイトに嫌がることをしてやった。
『なあ俊典』
その認めがたい事実。
先程捕らえようとしたヴィランの素性。
打ちひしがれるような後悔は、しかし昨夜の内に済ませていた。
『私は母親なのに、あの子に何もしてやれなかったんだなあ。ヒーローであろうと母親であることを捨てたのに、それでもあの子の未来を守れなかったんだなあ』
緑谷出久の中から死柄木弔が自らの孫だと気付いた、想い人の涙を流しながらの告白で。
先代である志村菜奈は孫がオールフォーワンに利用されている事実から愛息子の末路を察していた。一緒に過ごすことが出来ないならせめて幸せに生きて欲しいと願った息子の最期を。
「黙れ」
その言葉は衝撃の後に響いた。
「キサマはもう、何もしゃべるな」
この一撃は使命以上に私怨をのせて、初恋の人を泣かせたクズを叩き潰すために振るった。
その拳は周囲で見守る人々からも殴られたオールフォーワンからもこう感じていた。
音を置き去りにしていたと。
これが決着。
想定外の続いたオールフォーワンは、最後に思わぬ逆鱗を踏み抜き、今の自身の全力を出すことなく敗北した。
否、元より勝ち目などはなかった。
弱りきった巨悪が全盛期と同等の状態でかつてよりブチ切れたオールマイトに勝てる道理はないのだから。
(少しは貴女の心は晴れましたか、師匠)
胸に手を当てて自身の中に居る想い人に問いかける。ヒーローとしてではない拳でヴィランを打倒した己に苦いものを感じても、それでも振るわずには居られなかったのだから。
夜が明ける。
破壊された都市に朝日が差した。
地球が新しい朝を運んできてくれた。
このまま晴れてしまえば良いのにと思う。
この光で人々の心から闇が失くなればと。
ヒーローを、平和の象徴を志したあの日からずっと八木俊典はそう願っていた。
聞こえてくるヘリコプターの音、報道陣が来たのだろう。ならば見てくれ人々よ。
私のこの姿で心の闇を照らし、希望をもって生きてくれ。
ヒーローとして最後のスタンディング。
私はここまでで、
「次は君だ」
補足説明。
エンデヴァーは脳無格納庫、人質がいないため最悪その場所全て焼き尽くす予定だった。
エンデヴァーによる善戦のため、その場のヒーローと警官は離脱し避難誘導に専念。また向こうにもそれを伝えられる。同時にオールフォーワンによる転移でヴィラン連合は回収、誘拐被害者がいない上エンデヴァーに余裕がないためこちらもすぐに離脱。
オールマイトはオールフォーワンより避難優先、これはエンデヴァーの頼みとサー・ナイトアイからの進言が大きな理由。これによりエンデヴァーの実力は広く認められ、またヒーローの信頼も原作より大分マシに。
オールマイトVSオールフォーワン。
そもそも勝ち目がないのであっさり。
なのに逆鱗ぶち抜くラスボス。
なお緑谷君は無傷とはいかなかったヒーローと警察官の治療に専念。コイツがでたらあっさり終わったが仮免すら無いので無理だった。
オールマイトの引退は、元からの予定より最後の一撃が大きな理由。あの一撃は漢であってもヒーローではないので。
ヴィラン連合のシーン全カットかつ、ヒーローらしからぬオールマイトなので、かなり好き嫌い別れる展開だと思います。
ちなみにおじさんはミッドナイトにしばらく外出を控えて欲しいと言われたので素直に守ってました(その時にミッドナイトの送り迎えをしようかと提案してミッドナイトを悶えさせた)。
おじさんの登場をご期待の方はすいません。
彼の立ち位置として全てに絡ませられないので。
二作目の神野編終了。
ヒロアカ二次創作では個人的にここは大きな区切りだと思ってます(ここで完結する名作も多いので)。
これからもどうかよろしくお願いいたします。感想が日々のモチベーションです(感想返信とまっててすいません全て読んでます)。