部屋作りがすぐに終わった僕は暇だから一階のくつろぎスペースでダラダラとしていた。
終われば今日一日は自由時間だが休日ナニソレな生活をしていたためやることが思いつかず鍛錬のために体育館まで足を運ぶ気分にもならなかった。
手持ち無沙汰と手持ち豚さんてなんか似てるなと思いながら収納魔法に貯めてある見たらつい買っちゃう新製品のカップ麺を並べて整理してると、
「どこいったぁーっ!!」
と泣きながら駆け出す峰田君がいた。
「何かあったの?」
何事かと思い聞いて見たら、
「ナニもねえんだよっ!!」
と叫び返された。
「?」
生徒の安全のための全寮制で初日からトラブルとかヤバくないかなと思いつつ理由を聞いてみれば、峰田君の準備した荷物の九割程が届いてなかったらしい。
「配送ミスかな?相澤先生に確認しようか。それで届いてたのは何があったの?」
生活必需品が無いと困るから先に聞いておかないとね、今の時間なら買いに行けるし。
配送に関しては、夏休み中であるがゆえにまだヒーロー科生徒以外の寮生活は始まっていない。けれどその量は膨大だからミスくらいあるだろうし誤配送なら確認しないと。
「ああ、勉強道具と着替えとスマホ充電器と家族と友人の写真しか無かったよ」
「大型家電が共有な寮生活なら充分じゃない?いやゲームとかの私物無いのは辛いけど」
それでも送った荷物の一割とか比率がおかしいような。残りがどれだけあるんだ。
「ああんっ?!オイラのお宝が全て無いんだぞ!!不充分この上無しだコラァ!!」
「いやお宝って、もしかして峰田君は寮生活の説明を読んでないの?」
これ誤配送じゃないのでは?
全寮制について書かれた書類、そこに記載されていた一文を思い出して峰田君の現状の要因に思い当たる。
「なんの騒ぎだあ」
「君たち!共有スペースは公共の場と変わらないぞ!あまり騒ぐものじゃない!」
「夕飯はどうしよっか?」
「初日からご馳走を頼むのもねえ」
どう伝えるものかと悩んでいると一段落した皆がガヤガヤと現れた。
夕飯か、ランチラッシュにお願いするならもう頼まないと。
「お、カップ麺」
「なあなあ夕飯はこれにしようぜ」
「共同生活初日に皆でカップ麺とかありじゃね?」
「私、あまり食べたことがないので気になりますわ」
「ケロ、けど一人暮らしの子は食べ飽きたりしてないかしら?」
「梅雨ちゃん。カップ麺はな、貴族の食べ物なんやで」
「「「どんな貴族?!」」」
夕飯はカップ麺パーティーかありだな。
見たら買っちゃう新作カップ麺とかかなり貯まりがちだから消費に丁度良いしね。
「そんなことよりオイラのお宝だあっ!!」
と、流されかけた峰田君が再び叫びを上げたので、驚いた皆に事情を説明してから、収納空間から取り出した書類を見せる。
「ホラここ、寮に送る荷物は安全面に万全を期すために家族と同性の教員に確認されてから寮に運ばれます。だから送る私物に関してはよく考えて下さい、って書かれているでしょ」
「うむ、それが当然だろう」
「わざわざ記載することか?」
「だから同人とか持ってこれなかったよ」
まあ転移個性対策だよね、マーキングはサインを刻むと自分の身体、小物一つとかでいける例もあるから。
「「「「いーーやぁーーー!!!」」」」
それに気付かずに精神的ダメージを受けてる人達もいっぱいいるけど。書類は最後まで読もうよ、契約の精霊とか介入してたらヤバいよ。
「だから空のダンボールに『悔いて改めなさい』と書かれた紙が入っていたのか。なんてことしやがる母ちゃん、オイラの部屋がまるで締め切り直前の真っ白な原稿じゃねえか」
真っ白な部屋に新しい夢を描くんだね。編集さんキレそうだけど。
「じゃ、一応の解決はしたから皆でご飯にしよっか。続きはその後で」
「カップ麺代は出すぜ緑谷」
「そのうちで良いよー」
後乗せ、お湯切り、増量、と八百万さんがカップ麺一つ一つをはしゃぎながら選ぶ姿を皆でほっこりしながら見ていると、かっちゃんが大きな荷物を持って玄関に歩いていた。
「どうしたの?」
「荷物を送り返そうと思ってな」
こっちはキチンと誤配送かなと持っていた物を見たら、それはミルコがプリントされた抱き枕だった。
「かっちゃん」
キチンと男の子なんだね君も。
「なんだその目は。自分で買ってねえよこんなん、ババアが『忘れ物だぞ♡』と入れてないモンまで送ってきやがったんだよ」
流石に抱き枕はスルーしたのか相澤先生。いやひっかかる峰田君のお宝がヤバ過ぎだったのかもしれないけど。
「わざわざ新しく買ってまで送りやがってあのババア」
怒りと恥ずかしさに顔を歪めてギチリと歯を噛み締めながらかっちゃんは言う。うんおばさんならやりそうなイタズラだなあ。純粋にミルコと離れ離れになるから気遣いで送った可能性も高いけどね。
「オイオイ爆豪よお、送り返すくらいならオイラにソイツを譲らないかい?」
あ、峰田君。
「キチンと愛すからさ♡」
「死ね」
そこからはまさに打撃と爆撃のコラボレーション。ブチ切れかっちゃんによる最強コンボは峰田君を峰田君だったナニかにするまで続いた。
コレ治すの僕だよねやっぱり。
かっちゃんの反応に盛り上がる女性陣を見ながら僕は峰田君だったナニかに神聖魔法をかけるのだった。