異世界イズク   作:規律式足

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85話 部屋王、ベストセンス決定戦。

 

「部屋王ベストセンス決定戦、それは限られたスペースである自室をいかに自分らしくかつ快適に過ごせるようにコーディネートするかを競う祭典である。雄英高校に代々伝わるこの戦いは後の学校生活、即ちクラスカーストに大きな影響のある厳しくも恐ろしい弱肉強食の血を血で洗う戦いなのだ」

 

「変なモノローグ入れんなよ」

 

「ケロ、そもそも寮が出来たのはつい最近よ」

 

「せっかくだから定着させようかと」

 

「後輩が迷惑だろ」

 

「負の遺産になるのが確定ね」

 

 そんなわけで芦戸さんの提案である部屋お披露目会から部屋王ベストセンス決定戦へと変更。汚部屋化してたら嫌だけど引っ越し初日でそれはないでしょ。

 そんなわけで男子二階から開始、女子は人数的に少ないし三階からだしね。一番最初は僕の部屋だ。

 

「と言っても見せるものなんてないよ、息の荒い麗日さんと八百万さんは落ち着いて」

 

 以前ならオールマイトグッズをズラリと並べていたオタク部屋だけど今は最低限のものしか置いてない。

 

「うん、いくつかの写真が飾ってあって本棚に本が並んでるくらいだね」

 

「もっと個性だせよお前」

 

 だってねえ。

 

「いつ異世界に転移するか分からないのにモノなんて置けないよ。身の回りの物は常に整理しておかないと迷惑がかかるし」

 

「「「理由が酷いっ?!」」」

 

「異世界トラウマが抜けねえヤツだな」

 

「本棚のラインナップも酷いよ、『伝わるボディランゲージ』『野生動物の解体指南』『もし異世界に行ったら必要な物百選』『ガチサバイバル、オリツエタイシ編』とか」

 

「心の傷は深いなあ」

 

 なぜか皆から同情されてお披露目は終了。採点結果は低そうだね。

 その後二階は常闇君と青山君と続き、峰田君の部屋も見たけどお宝が何も無いからかデフォ内装そのまんまだった。

 続いて三階だけど、普通な尾白君と本と眼鏡だらけの飯田君、眼鏡棚だけでも面白いのに付け髭メガネとか星型サングラスも一緒に並べてあって吹き出した。上鳴君はチャラくて手当たり次第感半端ない、バスケットボールにスケボーに音楽プレイヤーにダーツとか統一感無いし。あとエロ本所持組の一人で峰田君が見つけ出してた。次の口田君の部屋はペットの兎がいた。カワイイと麗日さん達が触る中、僕はグランバハマルでよく食料にしてたなと思い出しながら見てたからか途中から兎が必死な様子で逃げていた。

 そして四階、まずはかっちゃんの部屋だけど。

 

「ニヤニヤするな女子共、期待するようなモンはねえぞ」

 

 ハート型の写真立てに入ったミルコとのツーショット写真とか無いかな?

 期待して入れば上鳴君の「抱き枕を送り返したらミルコ来んじゃね?」発言で返送を止めた抱き枕ぐらいしか面白いものはなかった。あと強いて特徴と言えば、

 

「幽遊白書とハンターハンターの漫画とアニメBlu-rayが全巻揃っているくらい?」

 

「良いだろ面白いし、バトルの参考になる」

 

「アニメか、見たことねえから興味ある」

 

 気になるのか轟君がジッと見てた。

 

「そのうち休日に一階で流すか」

 

「楽しみだ(パァァァ)」

 

 うん、轟君の今日一番の笑顔だね。結果もっとミルコとラブコメしてろよと女性陣がブーブーと文句を言う形で終わった。

 その次の切島君部屋だけど、女子に分からないと本人が言ったけどこれはなあ。とにかく自室でサンドバッグは近所迷惑だから止めようね。あと漢臭さの中からエロ本の臭いを嗅ぎつけた峰田君が見つけだして取ったどーとポーズを決めていた、エロ本の臭いとは一体。

 次の障子君の部屋は何も無かった、備え付けのつくえとベッドも撤去してあるし、物欲無いレベルじゃないよね。

 そして最上階の五階へ。

 瀬呂君の部屋は統一感のあるエイジアン、セロテープと関連あるのかな?そして再度峰田君がエロ本を発見、もう止めてあげてよ。

 次のイケメンかつクールな轟君の部屋に女子達は興味津々。中は和室に大リフォームされていた、フローリングは落ち着かないらしい。旅館を思い出してダラダラしたくなる部屋だね、部屋の隅のお笑いグッズの山が無ければだけど。

 男子最後は砂藤君。僕や尾白君とかっちゃんみたくあまり弄らない感じ、布団の模様にインパクトあるけどね。あと時間が余ったからシフォンケーキを焼いていたみたい、皆うまうまと食べて女子棟とつながる一階へと戻った。

 女子最初は耳郎さん、本人は恥ずかしがるけど楽器がいっぱいあって面白い。あともしかしてこの寮って防音凄いのかな?なら切島君のサンドバッグも平気だね。部屋より恥ずかしがって照れる耳郎さんが見所だと思いました。

 次の葉隠さんだけど、フツーに女子っぽくて皆ドキドキしてた。けどこの娘BL同人誌を持ち込もうとしたんだよね。

 

「女の子は皆、信長✕光秀の愛憎関係にワクワクしながら歴史を覚えるんだよ」

 

 さいですか。

 じゃあ芦戸さんの部屋へ、色合いにセンスある感じ柄が派手なのが好みなのかな?あと荷物のチェックに反応してたから同人誌を所持してる疑惑有り。

 麗日さんは一人暮らししてたからか物干しや蚊取り線香などリアルな生活感がある感じだった。

 上の階に上がっての梅雨ちゃんの部屋は、実家の自室そのままの落ち着いた感じの部屋、散りばめられたカエルグッズが彼女らしかった。

 そして最後の八百万さんだけどゴージャスな感じだけど、とにかくベッドのインパクトが強いね。うん、荷物をチェックしてるならベッドのサイズとか注意してあげてよと思いました。

 さて、全員の部屋を見終わりそれぞれ性格や個性と特徴が出て面白かったなと思いました。

 投票方式で決めた部屋王、なんと砂藤君。

 理由はケーキが美味しかった、からだそうです。部屋のコーディネートが関係無かったけど、まあ楽しかったから良しとしよう。

 

 

 綺麗な星空だ。

 ハイツアライアンスの中庭から空を見る。

 グランバハマルで良く見上げていた空を。

 

「なんだセンチメンタルな気分か?」

 

 かっちゃんがドカリと横に座ってきた。

 センチメンタルか、そうかも。

 

「皆との共同生活が楽しみだと思ってね。あと夏休み中だからちょっとキャンプ気分?」

 

「まだ初日だからな、慣れるまでそんな気分だろ」

 

 なら今の感じている気分は今だけの貴重な感覚なんだろうね。

 

「林間合宿がさ、」

 

「あん?」

 

「途中で中止にならなければ、皆とも夜空を楽しめたのかなって思うとさ。ちょっと切なくなるよね」

 

 予定したプログラムにはそんなお楽しみもあったからね。来年はもう無いかも知れないイベント、皆と作れなかった思い出。きっと楽しいだろう思い出と巡り会えなかった今が、ただただ悲しい。

 

「なら今やれば良いだろ」

 

「夜空が良く見えるー!」

 

「天体観測にうってつけな日だな」

 

「織姫と彦星が川を挟んだシマ争い!!」

 

「そんな物語だっけか?」

 

「静まれ黒影よ」

 

「無理するな常闇」

 

 ガヤガヤと中庭に現れるA組の皆。

 どうやら心配させてたみたいだね。

 

「思い出なんざ、生きてりゃこうして作れんだろ」

 

 ああそうだね。

 林間合宿の襲撃からヴィラン連合・オールフォーワン撃退、オールマイト引退までの張り詰めていた気分がようやく解けた気分だよ。

 

「こんな星空の夜には聞きたくなる歌があるんだ。記憶再生(イキュラス エルラン)」

 

 そうグランバハマルで出会った数少ない知り合い、容姿で差別こそしないが常にマウントを取ろうとする、歌は上手かったあの人。

 

「綺麗な人」

 

「氷の精霊みたい」

 

 伝説の守り手にして振るい手、凍神の眠り姫(僕が出会った時はもう姫って年齢じゃなかったけど)、メイベル・レイベール。

 

「可憐だ」

 

「轟ィ?!」

 

 見た目は美人だけど、実際は僕と会った時ですらニート志望の駄目人間だったのは黙っておこう。

 

「ところで聞きたい歌って?」

 

「そら異世界の記憶再生したんだから、異世界の歌じゃねえの」

 

「いや、これは昔おじさんが教えたヤツで、多分だけど皆も知っている歌というか曲だよ。かなり有名なミュージシャンの曲らしいし」

 

『パー♪♫ポー♬ペー 』

 

「え?」

 

「いやコレ」

 

「ショッピングモール?」

 

「旅行?」

 

「クレーンゲームか?」

 

 メイベルの唄う「ソ●ック・ザ・ヘッジホッグ」のBGM。懐かしいな、当時はこの曲で日本を思い出しては涙を流したものだよ。おじさんは嬉しさのあまりヤバい顔で気絶しては毎回膝枕されてたけど。

 

「「「て、やっぱりセ○かいっ!?」」」

 

「まあ日常ではあるわな」

 

「日本人なら「○郷」じゃないかしら?」

 

「いや梅雨ちゃん。僕は兎追ったのも、小鮒釣ったのも、グランバハマルで体験したから」

 

「現代っ子には懐かしくないっ?!」

 

「俺の故郷はそんな感じだったな」

 

「田舎っ?!」

 

「可憐だ」

 

 こうして星空を見上げながら記憶再生したりしてクラスの皆で盛り上がりながら夜を過ごした。

 いつもの日常に戻るために。

 そう、いつものヒーローを目指して切磋琢磨する日常へと。

 

 

 

「なあ緑谷、あの可憐な人のことを詳しく教えてくれないか?」

 

「轟君っ?!」

 

 

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