異世界イズク   作:規律式足

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87話 仮免試験まで。

 

 圧縮訓練がはじまってしばらく。

 必殺技、ということでいくつか技を出してみたもののどれも威力が高過ぎてヴィラン相手には使えないという結論に達した。グランバハマルで巨人やらドラゴンやら魔獣の群れやらを仕留めるために覚えた技の数々はヒーローが扱うには過剰過ぎる威力なのだ。

 

「そもそも必殺技が成り立つのも、戦う相手が強い場合に限るしね」

 

 通常攻撃で充分なら必殺技は不要。

 これはあまりにも当たり前過ぎる事実であり、必殺技が有名なオールマイトやエンデヴァーも相応の実力ある相手にしか使用していないのだ。

 なんだか圧縮訓練そのものを否定しているような気分になるが事実だから仕方ない。

 

「どうするかな」

 

 戦闘力に不足が無いのであれば救助訓練をしようかとも思うが、その場合は神聖魔法による治療役に専念すべきだ。

 いくつかの魔法は捜索にも向いているが、それは個性やサポートアイテムでも可能なこと。生まれ持った個性によって得手不得手どころか出来る出来ないが分かれるのだから、集団行動での役割分担では自分しか出来ないことに専念することが重要なのだ。となれば希少な治療こそが僕の役目だろう。

 とにかく、手加減を身につけるか。

 エクトプラズムを斬り伏せながら僕はとりあえずやることを決めた。

 

 

「サポートアイテムの補助が必要だよなー」

 

 昼飯。

 訓練すれば腹は減る。けどわざわざ食べにいくのも手間なので予め売店で買っておいた大量のパンを皆に配る。こういった時に収納魔法はやはり便利だ。

 

「流石は委員長、気が利くな」

 

 ことあるごとに飯田君が仕切ってくれるから、もはや名ばかりの委員長だけどこんな時くらいはやらないとね。

 

「いいや騙されるなお前ら。コイツが昼飯のことに気づいたのは自分の力でじゃねえ。麗日とヤオモモがエルフ顔で睨みつけてる緑谷の手にある同級生女子の手作り弁当のおかげだ」

 

 峰田君はたまに鋭くなるよね。

 塩崎さんがいつものように、いや夏休みになってからは久しぶりにお弁当をくれたからお昼ご飯の存在に気がつけたんだよね。

 

「そういえば緑谷は料理とか得意なの?合宿では家庭科でやったレベルくらいに見えたけど、異世界行ってたから慣れてたりしないの?」

 

 耳郎さんがそんな風に聞いてくるけど、

 

「適当に切って塩で煮るのが精々だよ。魚とかなら焼けるけどそれも正直美味しくなかったな」

 

 塩焼きでも焼き方一つで味が違う。ましてや山野に魔獣溢れるあの世界で外で煮炊きとか危険でしかないのだ。だから野外活動中は食べる物とかは干し果物と干し肉にパンが精々で、運が良ければ野生の果物を取るくらい。

 おじさんも料理チートの類はしてなかったなと思う、まあゲーム好きな高校生男子だからそこまで料理に詳しくないし、当時は異世界転移ネタとか少数だったしね。ちなみに異世界定番の料理チートであるマヨネーズ作りは止めときましょう。アレに必要な生卵を安全に食べれるくらい清潔なのは現代社会くらいなもので、その中でも世界的に異常なレベルで生卵を愛する日本くらいなのだ。

 

「話は戻すけど上鳴君はサポート科の開発工房に行ったら?メリッサも居るから力になってくれると思うよ」

 

 上鳴君の欠点、電気を周囲に放出しか出来ないためすぐにウェイになってしまうことだ。指向性を持たせようと試みたけど指先に集中とか霊丸みたく打ち出すことができないみたい。放出できても操れない、個性って融通が利かないのは利かないよね。

 

「そっか、なら行きやすいな。他にも工房に行く奴いるかー?」

 

 知り合いがいると判れば敷居も下がる。

 試験までの日数を考えたらすぐに行った方が良いし。いや今日行って明日できるものではないよね?それから習熟訓練するとして時間が足りるかな?

 

「あとなるべく要望は決めておいた方が良いかも。じゃないと個性がいらないレベルでガチガチにサポートアイテムを装備させられそうだよね」

 

「発目君を思い出せばありえるな」

 

 そんな飯田君の実感籠もった言葉に雄英体育祭でサポートアイテム発表会を為したサポート科の生徒を思い浮かべて皆ウンウンと頷いた。

 あと僕もついてきてと頼まれたので一緒に行くことにした。そういえば工房とか行ったこと無かったね。

 

 手作り弁当を睨まれながらの昼飯を終えてサポート科の工房へと行く。やたらと重厚な扉に嫌な予感を感じて一緒に来た皆を下がらせたら、なんか吹き飛んだ。

 

「もうー、だからもう少し考えてから組もうって言ったのに」

 

「すいませんマイドーター。フフフ失敗は成功の母で私は貴方の新たな母ですよメリッサ」

 

「頼むから話を聞いてくれ二人とも。あと博士に言い寄るのは色々アウトだからマジで止めろ発目」  

 

「愛に年齢は関係ないのです」

 

「明らかに研究目的だろお前」

 

 先客にかっちゃんが来ていたのかなと思っていたら、どうやら発目さんのやらかしらしい。あととてもヤバい情報を得たけどヤバいからスルーしよう。

 

「突然の爆発失礼しました!!お久しぶりですね、ヒーロー科の将来の義息子と、えーと他は忘れました」

 

 覚えられ方がちょっと。

 

「だから、まだそんな関係じゃないから?!」

 

「流石にマイドーターからあれだけ話されたら興味無くとも覚えますよ」

 

 スルーしておこうスルーを。

 麗日さんの圧がヤバいことになっているし、突っ込んだら終わる気がしてならない。

 あと色々察して全力ダッシュした皆は逃さないよ。いつかのかっちゃんみたく拘束するよ。

 

「「「放せーっ!!」」」

 

 さ、一緒に逝こうか。サポート科工房という名の魔窟へ。

 

 そこからは言わば発目さん劇場だった。

 パワードスーツにはじまり電動ブースターなど試される。そのアイデアと技術はかなりのもので一つ一つ見たら良い点もあるのだけど、何かしらはやらかすので怪我が絶えません。

 

「イズクにはガントレットみたいな打撃の負担を減らす防具とかかなと思ったけど」

 

「攻撃が当たらないように立ち回る癖がついてるし、怪我しても神聖魔法で治しちゃうからね」

 

「なら邪魔にならないけど丈夫なスーツとかね。いくら治るからといっても傷ついて欲しくないわ」

 

「心配してくれてありがとうメリッサ」

 

「パートナーだからね」

 

 身体を採寸しながらのメリッサとの会話。正直サポートアイテムは必要無いと感じているけど、それでも彼女は出来ることをしようとしてくれる。パートナーか、オールマイトとデヴィッド博士みたいな関係に僕達もなれるかな。

 

(((そこ代われ、緑谷ァっ!!)))

 

 密着しながらのメリッサとのそんなやり取りを発目さんのベイビー達によってズタボロになっている一部男子達が恨みがましい目で見てたそうな。ちなみに麗日さんの方は何故か怖くて向けません。

 

 そんな圧縮訓練の日々は続き、コスチュームの改良など行ったり、潰し合いを避けるために試験会場の違うB組の皆(発目さん被害者はこちらにも多数)と情報交換を兼ねた交流などをしていたらあっという間に試験当日となった。

 





 緑谷✕発目のカップリングが好きな方はすいません。あとデヴィッド博士はきっちりと断ってますが、発目さんなので引きません。
 メリッサをヒロインにすると発目さんの扱いに悩みますね。
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