異世界イズク   作:規律式足

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 独自設定、キャラ解釈あり、閲覧注意。
 今回のイズク君は駄目な人は駄目かも、評価と感想が怖いです。



89話 温度差。

 

「あの馬鹿がやらかさないと良いがな」

 

「いやナニを言ってんだお前」

 

 ヒーロー仮免許取得一次試験の開始直前、イレイザーヘッドこと相澤消太は観客席から受験者集団の動きを見て、もはや慣習に等しいいつものことが起きることを確信する。

 雄英高校体育祭にて個性に弱点や戦闘スタイルまで知れ渡っている雄英高校生、それを狙い有利に立ち回ろうと言う戦略。そのためか体育祭の視聴者は三年は企業、二年は学生、一年はヒーローと注目する層がおおまかに分かれているそうだ。

 正直雄英高校としては面白いことではない。中には雄英高校生を落とすことのみに力を入れる者、雄英潰しを成功したと誇る者などもいるからだ。

 だが抗議などは一切しない。雄英潰し?集中狙い?いいだろう、プロになれば個性バレ・戦闘バレは前提でしかない。教職として為すべきことは抗議などでなくどんな対策をされようと乗り越えられる実力をつけさせること、体育祭とは別次元に鍛え上げることだ。戦略は自力で真正面から打ち破る、それがヒーローなのだから。

 それはそれとしてあの異世界ボケがやらかさないと良いが、アイツは自分も相手も治せるから良いやという認識が根付いているから、手足の二・三本くらい吹き飛んでも気にしないんだよな。

 このルールなら接敵すれば二秒で突破できるだろうし本当に余計なやらかしはしないと良いのだが。

 知り合いの女ヒーローの軽口を聞き流しながら、実力という面で一欠片も心配してない教え子達を見る。自慢の生徒達、不確定要素(身内)が無ければ試験の突破を確信している。

 

「無視は酷いぞ、イレイザー」

 

 

『スタート!!』

 

 やはり囲まれた。

 集まる気配から分かっていたけど、クラスメイト達は僕をどうするか話し合っていて全員揃ったまま何の対策もしていない、いや何してんの君達?!

 

「杭が出ればそりゃ打つさ!!」

 

 他校生とも結託したのか同時に投げられる大量のボール。これだけの数ならどこかには当たってしまう。勝ち誇って言ったのが例のイケメン、やっぱりか。

 試験前に近づいたのも標的の確認が目的か、握手も発信機やらマーキングの可能性もあったから警戒して正解だったね。

 けど、

 

「殺られる覚悟はしてるよね?」

 

 ちなみに仮免許試験願書には怪我などは自己責任という項目がある、死にさえしなければセーフ。

 

「炎鳳(バライブード)」

 

「オイラに任せな」

 

 ボールごと襲撃者をまとめて焼き払おう(おじさんに頼んで全身火傷程度に調整済み、献上品は焼き芋)としたら後ろから飛んできた声がそれを遮った。

 

「峰田流・回天千本ノック!!」

 

 峰田君は新たに装備したサポートアイテムを握り、空中で自身を回転させ飛んできたボール全てを相手に向けて打ち返した。

 けれどそれだけではない。

 

「ク、もぎもぎも飛んできやがった!!」

 

 ボールだけで無くもぎもぎも混ぜて打ち返し何人かの者達はその餌食となる。

 

「アレが峰田の新装備、もぎもぎ対応バット『暴れん棒』!!」

 

「投げるだけでは飛距離も威力も伸びない欠点を改善するためのサポートアイテムで、峰田の細胞を使われているからもぎもぎもくっつかない!!」

 

「さらには圧縮訓練で自分の周囲360度全てに高速ピッチングマシーンを設置した状態でバッティング練習。ボールで全身滅多打ちにされたからか今ではどんなボールも対応できる!!」

 

「後半はドローンで空中、さらにパワーローダー先生が地中にも設置してくれてたぞ!!」

 

「ヤツこそ雄英の4番バッターだ!!」

 

「説明センキューッ!!」

 

 さらに付け加えるならバット自体も頑丈で武器として使えて、もぎもぎ以外にも煙幕玉、電撃玉、催涙玉と見た目の変わらない武装もあるけどこれは秘密だね。

 

「玉と棒捌きでオイラに勝てると思うなよ」

 

 バットを構えて襲撃者達に啖呵を切る峰田君はなんか普通に格好良かった。

 ちなみにメリッサの技術でリング形態になるから持ち運びも便利。なお自分で購入しようとしたら新車買えるくらいの値段らしいので、雄英生で良かったと思う。

 皆もまあこれくらいやるよなと余裕の態度。

 同級生の頑張りと実力は自分達が一番よく知っているからね。

 

「生意気っ?!」

 

 不快そうに顔を歪める連中。

 ならばさらに言わせてもらう。

 

「出る杭は打とうと下向く連中が、さらに向こうへ行く僕達に追いつける訳がないだろう」

 

 クラスメイト全員で人差しを上へと向ける。

 

「プルス・ウルトラ。雄英を舐めるな。ん?」

 

 なんだろ、あの気配。

 周囲の連中とは異なり、野生の獣のように身を潜めて存在を逸らしつつこちらを窺っている。

 気になるね。

 

「ごめん皆」

 

 殺気立つ周囲の連中よりも優先した方が良さそう、なんかそんな気がする。

 

「先に抜けるね」

 

 渡されたボールを全て落とす。落とされたボールは裂けた空間に一度飲まれ、近くの受験者のターゲットの側に開いた穴からこぼれ落ちる。

 

「しまっ」

 

 反応しても間に合わないよ。

 

「アイテムボックスは勇者の基本装備だよ」

 

 ま、本当の勇者ならこんな使い方はしないだろうけどね。周囲の目がある時は個性・勇者であるとアピールしとかないと。

 

『1名通過!』

 

 厄介そうなシンドウって人を狙えば良かったけど、彼はかなり警戒してたからね。

 

「どうしたイズク?」

 

「気になることがあってね」

 

 僕が通過し二人が脱落。

 峰田君の活躍もあって周囲の連中は警戒して距離を置き出した中、僕の様子を察したかっちゃんが問いかけてきた。

 

「人手はいるか?」

 

「試験を優先して、皆をお願い」

 

 相澤先生に連絡はまだ早いか。

 

「さて鬼が出るか蛇が出るか」

 

 こちらを窺っているのならカメラの死角に移動すれば接触してくるだろう。

 気配を絶つ練達者か。

 こっちだとあまり見ないタイプだな。

 

 

 

「あなたの事がもっと知りたいの。

 あなたはなんでヒーローを志してる?

 名誉?誇り?誰の為?」

 

 移動したら案の定現れた。

 士傑の制帽を被った女性。

 峰田君や上鳴君ならナンパされたとか盛り上がるのかね?けどさ、

 軽口のような質問にどこか切実さが透けて見えた。

 

「求められたから、望まれたから。

 応えたい、そう思ったことが僕がヒーローになる理由だよ」

 

 そうだ、グランバハマルから帰還した僕はどちらの世界の人間にも嫌悪感を抱いていた。あの時オールマイトが声をかけてくれなければ僕はヒーローになろうとしてなかっただろう。

 

「それは個性がそうさせてるからじゃないの?個性・勇者は勇者にさせる個性なんでしょ?」

 

 妙だな?

 ネットで考察されているのは知っているが、なんでそんなことにこだわる。

 

「ソレは本当にやりたいことなの?」

 

 個性が大元で人格やら趣味嗜好が形成される場合は多い。行動一つに個性は影響している。

 ぶっちゃけ戦闘向け個性だからヒーローを目指すという人ばかりだし。

 

「君は思うがままに生きてる?」

 

 思うがままに、か。

 確かに治癒能力が知られてから周囲から求められて窮屈には感じる。

 

「知りたいの、貴方のこと。綺麗に見えて血の香り漂う貴方のこと。もっともっと知って、チウチウしたいの」

 

 チウチウ?

 確かどこかで。

 

「お茶子ちゃんみたいに貴方に恋したい」

 

 そうか、林間合宿で麗日さんと梅雨ちゃんに襲いかかったヴィラン。

 

「渡我被身子か」

 

「そうだよ、知ってくれてるの?私も貴方を知っているよ緑谷出久君。弔君は興味ないみたいだけど、私は貴方のことを知って知って調べてもっと知りたい」

 

 今の姿は個性によるものか、変身されている人は無事なのか。

 

「貴方のボロボロな姿が見たいの」

 

「それぐらいならいつでも良いけど?」

 

 どうせ治せるし。

 

「え?」

 

 なんで呆気に取られたような反応をするかな?自分で言ったのに。

 

「あ、手早くね。さっきからターゲットが控室に行けと鳴ってるから」

 

 ヴィラン連合の一員である彼女は捕らえるべきだ。けど捕縛する権利が無い今の状態でやるべきことじゃない。誰かに連絡しようにもそこは警戒されてるしね。

 

「気持ち悪くないの?」 

 

「何が?」

 

「怖くないの?」

 

「切り刻まれる程度のことが?」

 

「私を化け物とか思わないの?」

 

「君は人間でしょ?」

 

 化け物って本当に化け物だからなあ。名状しがたいナニカとしか言えないんだよ。

 切り刻まれるにしても、自分以外の誰かに襲いかかるなら止めるけど、自分対象なら別に。

 

「イズク君は、私を拒絶しない。そっか拒絶しないんだあ、フフフ、フフフ。当たり前みたく受け入れてくれるんだあ」

 

「?」

 

「どうやらトガは、イズクのことを好きになりそうです」

 

「男女交際は今ちょっと余裕ないから無理かな」

 

 雄英高校のカリキュラムはマジで時間の余裕が無いんです。オールフォーワン捕えられても残党いるし、しかも目の前に。

 

「断る理由も、なんか普通で良いなあ」

 

 良いのか?

 

「今日は帰るねイズク君。黒霧さんに頼んでいるから追いかけられたりしたら、残りの脳無がでちゃうから」

 

 報告するにしても仮免許試験の後だな。

 

「あとこのケミィって人は大丈夫よ。安心して」

 

 それは良い情報だ。

 

「ねえ。トガさん?」

 

「なあに?」

 

「そんなにもこの社会で生きることは辛い?」

 

 その言葉に彼女は悲しげに顔を歪めて、

 

「肯定されないのは辛いよ。私はずっと否定しかされてないの。あの人達はマトモになりなさいとしか言わなかった。私は私でいたいのに」

 

「辛いねそれは」

 

 今の僕には去ってゆく彼女を止める気にはならなかった。

 グランバハマルに行かなければ僕は彼女をどう思ったんだろう。自分の抱く当たり前を押し付けて彼女を遠ざけたのかな?

 ヴィランになるのにも事情はある。

 それを全て肯定したら社会は成り立たない。

 今の社会から爪弾きにされたのが彼女で、僕は親と出会いに恵まれただけだ。

 

「ままならないね全く」

 

 今はまだ悩める。

 ヒーローになったら割り切らないといけない苦々しい葛藤を今は噛み締めるとしよう。

 

 





 トガちゃんイベントです。
 緑谷君は彼女の犯罪や麗日ちゃん達を傷つけたことには納得してませんが、自分が傷つくこと、人を傷つけたい趣味嗜好、同じになりたい願望は気にしてません。
 ヒーロー資格を得たら問答無用で捕まえますが、衝動から社会に馴染めなかった事情には同情しています。
 無個性であった時に見た社会の歪さ。
 グランバハマルでの価値観。
 おじさんの日常感。
 戻ってきた時の周囲。
 などからかなり歪な人格です。
 基本は善人で法は守るが、変な意味で許容範囲が広いと思ってください。
 これは合わない人がいるだろうなと思いつつも外せないイベントなので。
 最後にイズク君は、他人を救うけど人のことは基本嫌いです。
 
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